ウルウさんが入室しました
ウルウ->(ポウフェナ草原地帯早朝
ウルウ->(喪服姿の召使い
ウルウ->(いつも隣に居るはずのお嬢様と一緒ではなく
ウルウ->(独り草原にて"型"の稽古のような動き
璃雨さんが入室しました
璃雨->(高級住宅街の方向から草原へと現れる 金色の長い髪 水色の道士服
璃雨->(草原を抜けるように、黒塗りの和風お屋敷の方向へ歩いて行く
ウルウ->、
ウルウ->おや。(視界の端に見慣れた姿を見つけ
璃雨->…(草原の緑をなんとなしに見渡し、
璃雨->、(見慣れた人の姿を発見し、視線がそこで止まる
ウルウ->(スッと腕を下ろし
ウルウ->おはようございます。(璃雨へと歩む
璃雨->ええ。 おはよう。漆さん。(微笑み
ウルウ->朝早くからお仕事ですか?(璃雨の前まで立ち
璃雨->いえ。 この近くで泊まりがあったものだから。今はその帰りよ。
ウルウ->あぁ、そうでしたか。
ウルウ->引き止めてしまいましたね。
璃雨->此処に来たのは…近くの家の方からこれを受け取ったからよ。(何か、大判のノートのようなものを見せ
璃雨->回覧板、かしら。
ウルウ->おや。わざわざどうもすいません。
ウルウ->(回覧板へ手を伸ばし
璃雨->いえいえ。(微笑み、受け渡す
ウルウ->(回覧板を受け取り
璃雨->……。(ウルウの姿を見ている
ウルウ->、どうかされましたか?
璃雨->、…いえ。
璃雨->…ええ。用件はそれだけよ。(いつもの微笑を浮かべ
ウルウ->…はい。
ウルウ->こちらは後で黒様にもお見せしておきます。(回覧板を持ち
ウルウ->…まだ眠られてる頃でしょうから。
璃雨->そうね。まだ早朝だもの。
璃雨->…漆さんは、ここで何を?
ウルウ->おや。見せるようなものではないのですが。
ウルウ->(少し笑みを浮かべて
ウルウ->毎朝少しだけ鍛錬をしております。
ウルウ->蒼菖蒲家に育てていただいたこの体、鈍らせるわけには行きませんから…
璃雨->そうだったの…。
璃雨->うふふ、だから有事の際にも咄嗟に動けるのね。素敵な事だわ。
ウルウ->いえ…まだまだ参華様には遠く及びませんよ・・・・・・・
璃雨->……。
璃雨->…でもなんだか、(話題の矛先をずらすように
璃雨->初めて見た一面かもしれないわ。そういう所もあるのね、って。
ウルウ->本来見せるものではありませんから。
ウルウ->私めはファイターではありませんから…出来ることなら戦う事は避けたいですから…
璃雨->…そうね。戦う必要が無ければ…。
ウルウ->何かを守るため以外では…戦う事もありませんから…
璃雨->護る、ため……。
ウルウ->えぇ、守るためなら戦います。
ウルウ->蒼菖蒲家の家訓ですから。
璃雨->…そうね。とても、あの家らしいと思ったの。
ウルウ->えぇ、そういう家のはずですから。
ウルウ->守りたい人を死なせてしまうなんて…いけませんからね…
璃雨->………、漆さん…?
ウルウ->おや・・・・・・・
ウルウ->いけませんね。何か、
ウルウ->気にしないでください。 護る事に夢中になってしまう…蒼菖蒲家の悪い癖ですから。
璃雨->…、いえ、……。(少し、迷うような表情を見せ
璃雨->……、 後悔、しているの?
ウルウ->っ、(璃雨を見上げ
ウルウ->、、、・・・・・・・(璃雨を見つめ
ウルウ->後、悔、ですか?
璃雨->……護れなかった事を。
璃雨->…… そういう風に、聞こえたものだから。
ウルウ->・・・・・・・
ウルウ->・・・・・・・ふふふふふふふ。(璃雨を見て
ウルウ->いえ、在りませんよ。 そんなもの。
ウルウ->ええ。一切。
璃雨->………。(笑うウルウを見上げて
璃雨->…それは、
璃雨->『彼女は今もあの屋敷に居る』から、かしら。
ウルウ->ぇえ、そうですよ。
ウルウ->そうですよ…失ったわけじゃないですから…
璃雨->……そう。
璃雨->そうね……。(あなたがもっと、本心でそう言っているのなら、
璃雨->(もっとはっきり、頷いていたのだけれど。
ウルウ->今から四百と七十七日前………
ウルウ->執事長の参華様は玄源武黒様を………
ウルウ->・・・・・・・
ウルウ->私めの元へ、
ウルウ->授けて頂けました…………………
璃雨->………………
ウルウ->一雑用係、一葬儀屋に過ぎなかった一介の召使いである私めに、
ウルウ->(ぼうっと、自らの両掌を見つめ
ウルウ->玄源武黒様を授けて頂けたのです…………………
璃雨->………………。
ウルウ->その日から…私めは生涯、黒様を"護る"事が出来ている…
ウルウ->蒼菖蒲家に生まれた者として…これ以上望む事など御座いません…
ウルウ->今の黒様を縛る黒魔術は…私めにしか扱えません…
ウルウ->聖なる騎士である壱葦様でも、完璧を追い求めた弐棋様でも、執事長であった参華様でも、全てを知れる史葉様でも、正しき道を行く伍箕様でも、あらゆる者を魅了する陸路様でも………………なく、私めにしか…
ウルウ->だから、
ウルウ->(璃雨を見つめ、一目でソレと分かる歪んだ作り笑いを浮かべ
ウルウ->後悔など、一切御座いません。
璃雨->………………。
璃雨->(………純粋に歪んだその人の、作られた笑みを見つめ、考える。
璃雨->(……私は、この人に、どんな応えを返せばいい?
璃雨->(宗教家としての言葉なら、悲しいくらい、いくらでも出てくる。
璃雨->(彼を否定しない。彼女の生を否定しない。彼の価値観を問わない。己を出さず、優しい言葉を吐けばいい。そういった人間を受け入れるのが、宗教の役割なのだから。
璃雨->(……だけどもう、それはできない。
璃雨->(この人の前で、心を封じ込めた、ただの「宗教家」でいることができない。
璃雨->(何故なら―――。
璃雨->………………。
璃雨->………本当は、
璃雨->解っているんでしょう………?
ウルウ->…いえ、
ウルウ->解かりません…
璃雨->…(顔を苦渋に歪めて、ウルウを見つめる
璃雨->…黒様は、死んでいるわ。
璃雨->そして、死者はもう、
璃雨->何も映さない。 何も聞こえない。 何も想わない。
璃雨->死んでしまえば、そこでおしまい。
璃雨->後にはもう、肉体以外の何も残りはしないわ。
璃雨->……それが、
璃雨->私の信じる、本当の死生観。
ウルウ->・・・・・・・
ウルウ->死んでたら…消えねばなりませんか…
ウルウ->死んだ後も…この世界に残ったままではいけないでしょうか…
璃雨->……鎖に繋がれるのは貴方だけ。
璃雨->……そうね。
璃雨->貴方の好きにすればいい……。
璃雨->その筈よ。
ウルウ->・・・・・・・
璃雨->……ごめんなさいね。
璃雨->掌を返すような事を言っている。…その自覚はあるわ。
ウルウ->ふふふふふふふ。
ウルウ->良いんですよ、別に。
璃雨->……。
ウルウ->(哀しく璃雨を見つめ
ウルウ->貴方に理解されたかった訳じゃないですから。
璃雨->……。そうでしょうね、きっと。
璃雨->あなたにとって私は……いえ、黒様を除いたほとんどすべての人間は、背景に等しい存在だったでしょう。
璃雨->……私もそれは、解っていたつもり。
璃雨->あなたの事なんて、初めから信じていなかったわ。
璃雨->私にとってあなたは……いえ、すべての人間は、信頼に遠い存在だから。
ウルウ->あぁ、
ウルウ->なんだ…、そうでしたか………
璃雨->ええ。
璃雨->私は、ただ……
璃雨->あなたに寄生しようとしていたみたい。(ぽつりと
璃雨->芭珀にするみたいに、信者の人達にするみたいに……
璃雨->……きっと私は、他人の喪失に依存しなければ生きていけないのよ。
璃雨->……だから未だに、一人で生きる事もできないんだわ。最近になって、やっと気付いたの。
ウルウ->そう、でしたか………
ウルウ->可笑しい話です…
ウルウ->私めは何も持っていない。
ウルウ->禁術でこの世に縛る黒様を…"護る"使命以外なにも…
ウルウ->・・・・・・・
ウルウ->そんな私めに、寄生を…?
璃雨->……何も持っていない人間に、
璃雨->理解をしている風に寄り添って、…その体裁だけで、比較的居心地の良い場所は手に入るのよ。
璃雨->…私はあの家で、ずっとそうやって生きてきたの。…自覚も無いままに。
ウルウ->奇妙だ…
ウルウ->何も持っていない人間…?
ウルウ->そんなの抜け殻と変わりませんよ…
璃雨->…「喪失」を持っている人間、と言う方が正しいかもしれないわ。
ウルウ->それだけで安心感を…? 居心地の良い居場所を…?
璃雨->彼らは抜け殻ではないけれど…、人の世では、とても生きにくい喪失を抱えている。
璃雨->私は彼らに、…いえ、芭珀に、
璃雨->「気狂い」のレッテルを張って、甲斐甲斐しく面倒を見る事で、
璃雨->…妹の世話に苦心する姉という立場を手に入れていたの。
璃雨->うふふっ、あの子ね、今合コンに行ってるのよ。(突然笑い出し
ウルウ->おや。
ウルウ->「気狂い」のくせに、ですか…?
璃雨->ええ、そうよ。
璃雨->泊まりになったみたいよ。楽しんでるみたい。今日の昼には帰ってくるんじゃないかしら。
璃雨->ふふっ…、おかしな話よね。
璃雨->初めからあの子は、私の手を離れたって大丈夫だったのよ。
璃雨->離れられなかったのは、私の方だったんだわ…。
ウルウ->それなら………
ウルウ->今度は貴方が、
ウルウ->「喪失」した人間になってしまった…というワケでしょうか?
璃雨->……。
璃雨->そう、かもしれないわね。
璃雨->…少なくとも、あの家ではとても生きにくい。
ウルウ->それで…
ウルウ->貴方は自分の生き方を失った…
璃雨->…そんな大袈裟な話ではないわ。
璃雨->…私は宗教家だもの。…喪失を抱えた人間なんていくらでもいる事を知ってる。
璃雨->……また、誰かに根を張って生きていくんでしょう。(他人事のように
ウルウ->そんな抜け殻にばかり話しかける貴方は…………
ウルウ->死体としかお喋りが出来ない私めと何が違うんでしょうか?
璃雨->…何も変わらないわ。
璃雨 :…いえ、 ……今まで自覚も無かった、私の方が性質が悪い。
璃雨->…ふふ、いいえ、そんな言い方はあなたに失礼ね。
ウルウ->結局…
ウルウ->貴方は今、幸せじゃないんだ………
璃雨->……ふふっ、
璃雨->あなただってそうでしょう……?
ウルウ->ふふふふふふふ・・・・・・・
ウルウ->えぇ。(哀しく璃雨を見つめ
璃雨->やっぱり…解っているんじゃない…。
ウルウ->………哀しいなんて言い回って歩く男が居ますか?(璃雨へと力なく笑い
ウルウ->全ての「喪失」は………新しく得るナニカへの代償………
ウルウ->私めは多くのモノを犠牲に…「黒様をお護りする栄誉」を得た…
ウルウ->もう、それだけなのです…………………
璃雨->……そう思い込む事でしか、喪失を埋める術を見出せなかった。
璃雨->……それが、始まりなのね……。
ウルウ->真相は…今となっては…解からぬ事です…
ウルウ->ですが………おそらくは、
ウルウ->(黒様の待つ屋敷へと視線を移し
ウルウ->そうなのでしょうね…
璃雨->………………。
ウルウ->私めも変わりません。
ウルウ->気付きたくない心に…気付かぬふりをしているだけ…
璃雨->………、(己の胸元を押さえ
璃雨->そうね……。あなたは現実を、きちんと認識しているのだもの。(胸にちらついたわざめきを押さえるように
ウルウ->…そうなんでしょうかね…もう私めには……解かりませんから………
璃雨->……。
璃雨->私もそう。
璃雨->解りたくないんだわ…。己を信じる事もできないから…。
ウルウ->・・・・・・・
ウルウ->それでも貴方は…
ウルウ->私めに"普通に生きる"事を望みますか…?
璃雨->……。
璃雨->確かに、おかしいわね。
璃雨->放っておけば良いのに。
璃雨->若しくは、信者達と同じように、
璃雨->耳触りの良い事だけを言い続けて、あなたの喪失に寄生していればいいのに。
璃雨->なんで、そうしないのかしらね。
ウルウ->謎かけですか。
ウルウ->私めへではなく、貴方自身への。
璃雨->ええ。そうね。
璃雨->…答えは出せないみたいだけれど。
ウルウ->おそらくはその問い…
ウルウ->答えを見つけるのは貴方ではなく………
璃雨->……私にも出せない答えを、
璃雨->……あなたに、見つけられるかしら。
璃雨->……見つけられるほど、あなたは私に興味を持ってはいないでしょう。
ウルウ->…………………
ウルウ->えぇ、足りないのでしょうね………
璃雨->……。
璃雨->……ごめんなさいね。長々とお時間を取らせて。(ふと
ウルウ->………いえ。
璃雨->…こんな事を、口にする事になるとは思わなかったものだから。
ウルウ->私めも…同じです……
璃雨->…うふふ、まだ一日は始まったばかりなのにね。
ウルウ->今日は…以前と同じような一日で居られるでしょうか……
璃雨->……解らないわ。
璃雨->…でも、少なくとも、私は急には変われないでしょうね。
ウルウ->えぇ………急に変われるような事ならココまでなりませんから………
璃雨->うふふ、それもそうね。
璃雨->…それじゃあ、私はそろそろ。
璃雨->……教団の方に戻るわ。(ウルウから視線を外して
ウルウ->…えぇ、(止めようとはせず
璃雨->(ウルウから少し離れ、
璃雨->…お互い良い一日にしましょう。漆さん。(ウルウに向け、自嘲するような笑みを浮かべる
璃雨->(それはいつも浮かべている微笑とは全く質の異なるもの
ウルウ->えぇ。
ウルウ->我々の一日はまだ始まっていませんから・・・・・・・(背の屋敷を意識し
璃雨->ええ…。(ウルウに返し、
璃雨->(ポウフェナの草原を歩き、街の方へ離れていく
ウルウ->…………………
璃雨->(……如何して。
璃雨->(……如何して話してしまったのかしら。
璃雨->(…………信じる事も出来ない癖に。
璃雨さんが退室しました
ウルウ->…………………(その背を見送り
ウルウ->(芭珀様はもう大丈夫…二人で話した事だってある…彼女はもう生きていける…
ウルウ->(では、大きな拠り所が無くなった時…
ウルウ->貴方はどうやって生きて来たのでしょうか…………………
ウルウ->(背後へ振り向き、黒様の屋敷を見上げる
ウルウ->参華様…貴方は今、生きていますか…?
ウルウ->貴方の残した"黒様"と"召使い"は…
ウルウ->今でも…………………
ウルウさんが退室しました
最終更新:2013年03月05日 06:40