「…………なあ、アレ……」
「……初期症状として火照りはあるが……馬鹿な、計算していないぞ」
愕然とした毛利の顔。
「いや、元就は火照ってねえぞ?」
つっこみを入れるとそれも元に戻った。
「この程度で我が氷の面を崩せると思うか。それに、この技の真価はこれからよ」
小さな笑みを浮かべ、毛利は腕を閃かせた。
「散れ!」
「うお?」
微かに光が爆ぜ、そして毛利はぐったりと身をもたせかけた。
呼吸が忙しなく、甘い。
同時に遠く聞こえていた外の破砕音もやむ。
「……え」
それは外にいる奴の方がヤバイ状態なんじゃねえのか。
「ふ、大事あるまい…」
ああ俺明日、政宗に殺されるかもしれない。こいつのついで、で。
何か凄く哀しくなったが、毛利は苦しげな程荒い息をつきながらこちらにもたれている。
自業自得だろうが何だろうが、こっちも放って置けねぇよなあ、と夜着を肩口から滑り落とした。
「ん……」
たったそれだけであまやかな吐息をついた。
露わになった肩は薄く丸い。
呼吸に合わせ上下する真っ平らな胸も、どこか背徳感と保護欲を刺激する。
嗅いだことのない良い香りが、一層強くなる。頭の芯が痺れ、くらくらとする。
淫の手。それは夜中の灯火のように、対した男を引き寄せる効果もあるのか。
引き寄せられるように手を伸ばす元親を、毛利が薄く笑う。
それも、指先が触れたとたんに甘い声音に変わった。
頭の隅で、城の庭あたりで同じ状況に陥っている人間のことをどうしようもなく考える。
嵐のような勢いで暴れていたのだろうし、側に誰かいたのだろうし、
いなかったとしても、破砕音が唐突にやめば様子を見に行く人がいるだろうし。
……政宗裏目だ、すげー裏目だ。
女に見えるような格好をさせたりしなきゃ、俺だって心配しやしねえ。
あいつの部下がヘタな真似するとはおもわねえ。けどな。
「ふん。……何を、上の空で……耳を澄ませ、気配を読んでみよ。奥州の竜、下におるぞ」
冷血毛利は言い切った。
「マジでか?」
「頭だけではなく、耳も、悪いか。確かに名を、呼んだ」
気もそぞろな愛撫でも否応なしに高ぶるのか。
毛利の切れ切れな言葉は、冷静に言葉を紡ごうとしているぶん、内にこもる熱を思わせる。
毛利の細い腕が伸びて、首筋に絡む。こちらを見よ、と言うように。
その腕はやはりぞくりとするほど冷たく、元親は一度身震いした。
腕を絡めようとして、上背が足らずに伸び上がるようにしているその姿。
上の空で悪かったな、などと口にするのも野暮ったい。
「なあ、膝にだっこして良いか?」
「……………阿呆。好きにせよ」
どうも氷の顔が崩れるのは呆れかえった時が多い。
羨ましくなるほど真っ白な体を抱き上げ、宣言通り膝の上にのせると、
毛利はやはりきちりと座り直した。何だか人形を膝に乗せているような気持ちになる。
姫若子と呼ばれていた頃にこうしてヤってみたかったかな、とすこしだけ思った。
奔放な、しかしつややかな銀糸の髪に淡い象牙の肌、女であれば傾国の美姫となると言われた元親。
指を絡めようとしても真っ直ぐにこぼれ落ちる淡い色の直毛、陽に透けそうな白絹の肌、
どこもかしこも小作りで上品な、はかない人形めいた毛利。
こっちはこっちでこのまま絶世の美姫になれそうなものを、
守られるのが似合う小さくか細い体に知略を詰め込み、恐怖の為政者になることを選んでいる。
「こんだけちーさいのも結構良いな」
元親が幾分近づいた耳元に口づけて囁くと、やっぱりびくんと震えてから毛利は
「何、度も何度も……我を侮辱す、るつもりでないならば、その口を閉じよ」
とはねつけた。しかし元親は言いたいことを我慢しない。
「なんでだよ、いーだろが、でかいと可愛い格好似合わねーぞ?
元就……でいいんだよな?そんだけちっちゃいなら可愛い格好したっていいじゃねぇか」
「待て、話がずれ……装いは関わり……っ、あぁ、ぁっ」
気にせず細い首を甘がみすると、毛利の背が反った。
小さな行為に返る反応が激しすぎて少し戸惑う。共に高ぶっていく方が、元親の好みなのだ。
そして無防備に晒される胸元には、やっぱりふくらみはひとっかけらもない。
それでも異様なほど惹きつけられた。
「……初期症状として火照りはあるが……馬鹿な、計算していないぞ」
愕然とした毛利の顔。
「いや、元就は火照ってねえぞ?」
つっこみを入れるとそれも元に戻った。
「この程度で我が氷の面を崩せると思うか。それに、この技の真価はこれからよ」
小さな笑みを浮かべ、毛利は腕を閃かせた。
「散れ!」
「うお?」
微かに光が爆ぜ、そして毛利はぐったりと身をもたせかけた。
呼吸が忙しなく、甘い。
同時に遠く聞こえていた外の破砕音もやむ。
「……え」
それは外にいる奴の方がヤバイ状態なんじゃねえのか。
「ふ、大事あるまい…」
ああ俺明日、政宗に殺されるかもしれない。こいつのついで、で。
何か凄く哀しくなったが、毛利は苦しげな程荒い息をつきながらこちらにもたれている。
自業自得だろうが何だろうが、こっちも放って置けねぇよなあ、と夜着を肩口から滑り落とした。
「ん……」
たったそれだけであまやかな吐息をついた。
露わになった肩は薄く丸い。
呼吸に合わせ上下する真っ平らな胸も、どこか背徳感と保護欲を刺激する。
嗅いだことのない良い香りが、一層強くなる。頭の芯が痺れ、くらくらとする。
淫の手。それは夜中の灯火のように、対した男を引き寄せる効果もあるのか。
引き寄せられるように手を伸ばす元親を、毛利が薄く笑う。
それも、指先が触れたとたんに甘い声音に変わった。
頭の隅で、城の庭あたりで同じ状況に陥っている人間のことをどうしようもなく考える。
嵐のような勢いで暴れていたのだろうし、側に誰かいたのだろうし、
いなかったとしても、破砕音が唐突にやめば様子を見に行く人がいるだろうし。
……政宗裏目だ、すげー裏目だ。
女に見えるような格好をさせたりしなきゃ、俺だって心配しやしねえ。
あいつの部下がヘタな真似するとはおもわねえ。けどな。
「ふん。……何を、上の空で……耳を澄ませ、気配を読んでみよ。奥州の竜、下におるぞ」
冷血毛利は言い切った。
「マジでか?」
「頭だけではなく、耳も、悪いか。確かに名を、呼んだ」
気もそぞろな愛撫でも否応なしに高ぶるのか。
毛利の切れ切れな言葉は、冷静に言葉を紡ごうとしているぶん、内にこもる熱を思わせる。
毛利の細い腕が伸びて、首筋に絡む。こちらを見よ、と言うように。
その腕はやはりぞくりとするほど冷たく、元親は一度身震いした。
腕を絡めようとして、上背が足らずに伸び上がるようにしているその姿。
上の空で悪かったな、などと口にするのも野暮ったい。
「なあ、膝にだっこして良いか?」
「……………阿呆。好きにせよ」
どうも氷の顔が崩れるのは呆れかえった時が多い。
羨ましくなるほど真っ白な体を抱き上げ、宣言通り膝の上にのせると、
毛利はやはりきちりと座り直した。何だか人形を膝に乗せているような気持ちになる。
姫若子と呼ばれていた頃にこうしてヤってみたかったかな、とすこしだけ思った。
奔放な、しかしつややかな銀糸の髪に淡い象牙の肌、女であれば傾国の美姫となると言われた元親。
指を絡めようとしても真っ直ぐにこぼれ落ちる淡い色の直毛、陽に透けそうな白絹の肌、
どこもかしこも小作りで上品な、はかない人形めいた毛利。
こっちはこっちでこのまま絶世の美姫になれそうなものを、
守られるのが似合う小さくか細い体に知略を詰め込み、恐怖の為政者になることを選んでいる。
「こんだけちーさいのも結構良いな」
元親が幾分近づいた耳元に口づけて囁くと、やっぱりびくんと震えてから毛利は
「何、度も何度も……我を侮辱す、るつもりでないならば、その口を閉じよ」
とはねつけた。しかし元親は言いたいことを我慢しない。
「なんでだよ、いーだろが、でかいと可愛い格好似合わねーぞ?
元就……でいいんだよな?そんだけちっちゃいなら可愛い格好したっていいじゃねぇか」
「待て、話がずれ……装いは関わり……っ、あぁ、ぁっ」
気にせず細い首を甘がみすると、毛利の背が反った。
小さな行為に返る反応が激しすぎて少し戸惑う。共に高ぶっていく方が、元親の好みなのだ。
そして無防備に晒される胸元には、やっぱりふくらみはひとっかけらもない。
それでも異様なほど惹きつけられた。




