生け花の稽古を放棄した政宗は、特に行き先も決めず
馬の走りたいように走らせた結果、あまり馴染みのない場所に辿り着いていた。
米沢城からかなり離れているだろうその深い森は
一面彩やかな紅葉に染まり、今にも燃え立たんばかりだった。
馬の走りたいように走らせた結果、あまり馴染みのない場所に辿り着いていた。
米沢城からかなり離れているだろうその深い森は
一面彩やかな紅葉に染まり、今にも燃え立たんばかりだった。
「…so beautiful…すげぇな。」
ゆったりと馬を歩かせながら、政宗は馬上からその美しさに眼を細める。
(…出て来て正解だったぜ。四六時中城に引きこもってたんじゃ、
生きてても死んでるのと変わりゃしねぇからな。)
生きてても死んでるのと変わりゃしねぇからな。)
そんな事を思いながら上機嫌で馬を進ませていると、
樹々の隙間から何かがまばゆく煌めいているのが目に入る。
政宗は馬上から降りると、手頃な木に馬を繋いだ。
そしてその輝きに引き寄せられるようにして、森に踏み入った。
樹々の隙間から何かがまばゆく煌めいているのが目に入る。
政宗は馬上から降りると、手頃な木に馬を繋いだ。
そしてその輝きに引き寄せられるようにして、森に踏み入った。
「池か。」
湖とまでは行かないが、かなり大きな池がそこに広がっていた。
澄んだ水が日の光を弾いてきらきらと輝き、赤や黄色の落葉が
錦のように水面の端々を彩っている。
澄んだ水が日の光を弾いてきらきらと輝き、赤や黄色の落葉が
錦のように水面の端々を彩っている。
適当な場所に腰掛け、政宗はしばしその光景に見入った。
奥州の短い夏と長い長い冬の狭間に、
一瞬だけ紅く燃えて消える、儚い季節。
政宗の一番好きな季節でもあった。
一瞬だけ紅く燃えて消える、儚い季節。
政宗の一番好きな季節でもあった。
小十郎も連れて来ればよかった。
そう自然に考えた自分に、政宗は舌打ちする。
稽古を放り出した上に一人で飛び出したのだから、
城に帰れば当然盛大に叱られ、長い説教が待っている事だろう。
だが、小十郎に叱られる事も説教も慣れっ子の政宗には、
それは別にどうと言う事はない。
政宗が憂鬱に思っている事は、また別に存在した。
稽古を放り出した上に一人で飛び出したのだから、
城に帰れば当然盛大に叱られ、長い説教が待っている事だろう。
だが、小十郎に叱られる事も説教も慣れっ子の政宗には、
それは別にどうと言う事はない。
政宗が憂鬱に思っている事は、また別に存在した。
「なーにが稽古だよ。馬鹿こじゅ。」
そう呟きながら、政宗は兜を脱いだ。
秋とは言え僅かに日差しが熱を持っていたし、辺りに人の気配も(ついでに忍の気配も)
無いので、少しくらい窮屈な物を脱いでも良いだろうと判断したのだ。
本当は鎧も脱ぎたかったが、再び着るのが面倒そうなので止めた。
秋風が髪に触れるのを感じながら、政宗はぼんやりと思い出す。
秋とは言え僅かに日差しが熱を持っていたし、辺りに人の気配も(ついでに忍の気配も)
無いので、少しくらい窮屈な物を脱いでも良いだろうと判断したのだ。
本当は鎧も脱ぎたかったが、再び着るのが面倒そうなので止めた。
秋風が髪に触れるのを感じながら、政宗はぼんやりと思い出す。
まだ本当に幼かった頃…小十郎に連れられ、こんな風に見事な紅葉を見た事があった。
我儘を言って輿には乗らず、結局小十郎の馬に乗せて貰い、
もっと速く走れとねだっては小十郎を困らせていた。
その時の小十郎の困り顔を思い出し、政宗は口の端で密かに笑った。
我儘を言って輿には乗らず、結局小十郎の馬に乗せて貰い、
もっと速く走れとねだっては小十郎を困らせていた。
その時の小十郎の困り顔を思い出し、政宗は口の端で密かに笑った。
まだ何も失っておらず、本当の苦しみも知らなかった頃の話だ。
遠い昔と言うよりは、他人の思い出を垣間見ているような
気分で、政宗はその情景を思い起こした。
気分で、政宗はその情景を思い起こした。
楓の葉が、ひらりと肩に一枚舞い降りる。
彩かなそれを手に取り、眺めながら政宗は呟く。
彩かなそれを手に取り、眺めながら政宗は呟く。
「…俺にお前らの万分の一の綺麗さでも有ったら、
稽古しても絵になったろうな…。」
稽古しても絵になったろうな…。」
幸い、その寂しげな呟きを聞く者も、今にも折れてしまいそうな
儚さを覗かせる細い背中を見る者も、この場には居なかった。
儚さを覗かせる細い背中を見る者も、この場には居なかった。
〈その頃の米沢城〉
「おい!戦でも始まんのか?片倉様がバリバリに武装して馬で出てったぞ!」
「ああ、なんか野伏りがネジロにしてるって噂の森に
筆頭が入ってくの見たって報告が有ったらしいぜ?!」
「マジかよ?!俺らも加勢に行くべ!」
「バッカ!片倉様に「俺の留守中は死んでも城を守れ」って言われてんだよ!
地獄見てーのかテメー!」
「い、いや。片倉様にだきゃあ怒られたくねぇ…(ブルブル)」
「…だろ?(ブルブル)」
「ああ、なんか野伏りがネジロにしてるって噂の森に
筆頭が入ってくの見たって報告が有ったらしいぜ?!」
「マジかよ?!俺らも加勢に行くべ!」
「バッカ!片倉様に「俺の留守中は死んでも城を守れ」って言われてんだよ!
地獄見てーのかテメー!」
「い、いや。片倉様にだきゃあ怒られたくねぇ…(ブルブル)」
「…だろ?(ブルブル)」