戦国BASARA/エロパロ保管庫

花の名はもう呼べない2

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「さ…いやゆき殿」
「ごぶさたでございましたね。さあ、こちらへ」
幸(ゆき)、という名の女の手が幸村を店の奥へと誘う。
その手を取り、束の間女の薄い色の瞳と見つめ合い、いたたまれず幸村は視線を逸らした。
店の奥は住居になっている。もう何度となく訪れた場所だが、ここに来るたび幸村は落ち着かぬ気になる。
それは部屋全体に微かに染み付いた女の香りか、その部屋の中で知らぬ顔で笑う女のせいか。
「…その花は?」
「ん?あ、ああ…」
貰ったものだ、と答えようとして、何気なくそれをゆきに差し出した。
「…ありがと」
特に深い意味のある行動ではなかったが、ゆきは微かに頬を染めて笑った。
ゆきの歩みはひどく鈍く、また段差を上る事が辛そうなので、先に中に上がった幸村が抱き上げてやる。
最初はかなり嫌がられたが、ゆきは今では諦めて好きにさせていた。
「身体の調子はどうだ」
「結構いいですよ。無理をしなければ五年は生きられるでしょうね」
「それしか生きられぬのか」
「さて。他に私のようなものを知らぬので」
「…俺を恨んでいるか。佐助」
「…ゆき、ですよ」
へにゃりと眉を下げた困り顔は何一つ変わっていないのに。幸村はきつくくちびるを噛み締めた。
二年前の戦で、猿飛佐助は死んだ、そう伝えられている。それは間違いなどではなく、確かに『猿飛佐助』という名高い忍びはあの日死んだのだ。
無謀な戦であった。
しかし、避けられぬ戦であった。
幸村の軍は信玄とは別行動を取り徳川の別働隊を防ぐ任務を与えられていた。
もし防げなければ武田軍は挟撃に合い殲滅させられるだろう。
佐助は何度もぼやいていた。
死ぬのは御免だ、これは死にに行くのと同じだと。
圧倒的な兵力差だった。
騎馬の移動力と貫通力で敵陣を引き裂き、忍びの刃が士分を狙い撃つ。
けれど一人減り二人減り。
周囲を敵に囲まれ、本多忠勝までもが戦場に現れた、その時。
ぼろぼろの手裏剣を捨てて奪った刀を振るっていた佐助は、退却を進言した。
『俺が殿軍をつとめます。旦那は早くお館様の元へ』
『…任せた』
『承知』
行かせれば必ず死ぬると幸村は思っていた。
けれど佐助しか退却の時間を稼げないとわかっていた。
真面目くさった返事をして、おどけて笑って、佐助は幸村の背中を押した。


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