『小十郎…儂は生まれて初めて、天の采配を恨むぞ…。』
片倉小十郎はその森に足を踏み入れるなり、眉を顰めた。
鉄錆と、獣の臭い。大量の血と、それに誘われた山犬のものだと知れる。
物音は無い。しんと静まり返る森は、戦い終わった戦場の空気と、ひどくよく似たものをその身に包んでいた。
地に転がった肉を食んでいた山犬は、近付く人間の気配を察すると素早く闇の中に姿を消した。
無益な争いを好まない分、動物とは賢いものだと小十郎は思う。
灯りは無くとも、青白い月光に目の前に広がる惨状はしらじらと明らかになった。
数にしておよそ二十人程度だろうか。いかにも野盗か野伏せりかといった風体の男達の骸が散乱している。
小十郎は表情も無くそれらを見下ろすと、どれも刀傷で絶命している事を認めた。
政宗がやったのだろう。それは分かっている。
しかし肝心の政宗の姿が何処にも見えない。
鉄錆と、獣の臭い。大量の血と、それに誘われた山犬のものだと知れる。
物音は無い。しんと静まり返る森は、戦い終わった戦場の空気と、ひどくよく似たものをその身に包んでいた。
地に転がった肉を食んでいた山犬は、近付く人間の気配を察すると素早く闇の中に姿を消した。
無益な争いを好まない分、動物とは賢いものだと小十郎は思う。
灯りは無くとも、青白い月光に目の前に広がる惨状はしらじらと明らかになった。
数にしておよそ二十人程度だろうか。いかにも野盗か野伏せりかといった風体の男達の骸が散乱している。
小十郎は表情も無くそれらを見下ろすと、どれも刀傷で絶命している事を認めた。
政宗がやったのだろう。それは分かっている。
しかし肝心の政宗の姿が何処にも見えない。
「政宗様!何処に居られるのか!」
そう声を張り上げて呼ぶが、返事はない。
言い様のない不安を押さえ込みながら、さらに森の奥に踏み入ると、
見慣れた鉄の塊が地面に打ち捨てられるように転がっているのが目に入った。
それは、見間違える筈もない。弦月の前立てに飾られた政宗の兜だった。
慌てて拾い上げると、それは血飛沫を浴びている訳でも、ひどく破損している訳でもない。
ただ、その主の姿だけが見当たらなかった。
言い様のない不安を押さえ込みながら、さらに森の奥に踏み入ると、
見慣れた鉄の塊が地面に打ち捨てられるように転がっているのが目に入った。
それは、見間違える筈もない。弦月の前立てに飾られた政宗の兜だった。
慌てて拾い上げると、それは血飛沫を浴びている訳でも、ひどく破損している訳でもない。
ただ、その主の姿だけが見当たらなかった。
「政宗様…ッ!!」
小十郎がもう一度主の名を呼ぶと、背後に生えている枝振りの見事な樹の上部がガサガサと騒ぎ、
声が降って来た。若い娘のものだった。
声が降って来た。若い娘のものだった。
「小十郎か?」
「…!政宗様?!そこに居られるのですか?!」
「ああ。」
「何故そのような所に…ご無事なのですか?!」
「一遍に聞くんじゃねぇよ。これから説明する。…もうその辺に山犬は居ないな?」
「…!政宗様?!そこに居られるのですか?!」
「ああ。」
「何故そのような所に…ご無事なのですか?!」
「一遍に聞くんじゃねぇよ。これから説明する。…もうその辺に山犬は居ないな?」
政宗の問い掛けに、小十郎は律義に周囲を見回す。
「居ないようです」
「OK 今降りる。」
「OK 今降りる。」
再び枝を揺らす音が響き、地面に藍色の影が降り立った。
それは兜を被っていないことを除けば、稽古事を嫌がって城を出た時と
まるで変わった様子のない政宗だった。
それは兜を被っていないことを除けば、稽古事を嫌がって城を出た時と
まるで変わった様子のない政宗だった。
「お、兜拾ってくれたのか。Thank Youな。」
小十郎の手から兜をかっさらうと、いつものように被り、顎紐を締めた。
「ったく山犬には餌と間違われるわ、逃げた木の上じゃ兜に虫が入るわ
参ったぜ…って、どうした小十郎?」
参ったぜ…って、どうした小十郎?」