慶次は赤いりんごあめを一つ買って、元就に手渡した。
受け取る時に、少しだけ手が触れた。
慶次は笑っていた。
やはり少し困ったような表情だったのが気になったが、
一ヶ月前まで元就に、よく見せていた、あのおおらかな笑顔に似ている気がした。
元就は、十分だ、と、思った。
これで十分だ。
多くを求める方が間違っている。
己は、女としては、多くが欠けているのだから。
受け取る時に、少しだけ手が触れた。
慶次は笑っていた。
やはり少し困ったような表情だったのが気になったが、
一ヶ月前まで元就に、よく見せていた、あのおおらかな笑顔に似ている気がした。
元就は、十分だ、と、思った。
これで十分だ。
多くを求める方が間違っている。
己は、女としては、多くが欠けているのだから。
元就は、貰ったりんごあめを舐めた。
慶次の目が泳ぐのが目の端に止まった。
元就は、嫌われたのかもしれない、と、感じた。
はじめての時に、醜態をさらしすぎたか、と、思う。
自分らしくなくおののき、取り乱し、随分とみっともない姿をさらした。
慶次の態度が変わったのは、はじめての次の日からだ。
理由はそれくらいしか思いつかない。
慶次の目が泳ぐのが目の端に止まった。
元就は、嫌われたのかもしれない、と、感じた。
はじめての時に、醜態をさらしすぎたか、と、思う。
自分らしくなくおののき、取り乱し、随分とみっともない姿をさらした。
慶次の態度が変わったのは、はじめての次の日からだ。
理由はそれくらいしか思いつかない。
―――――普通の女は、ああいうときにどうするのだろう。
――――――――――おそらくは、もっと、うまくやるのだろう。
――――――――――おそらくは、もっと、うまくやるのだろう。
ぼう、としながら、考える。
「俺にも少し」
慶次が元就の手をとって、りんごあめに齧り付いた。
丸かったりんごあめに、大きな囓り跡がつく。
驚いて慶次を見れば、視線が合った。
照れたように慶次は笑った。
元就は目を逸らした。
顔に血が集まっているのが分かった。きっと耳まで赤くなっている。
情けない。
元就はそう思う。
丸かったりんごあめに、大きな囓り跡がつく。
驚いて慶次を見れば、視線が合った。
照れたように慶次は笑った。
元就は目を逸らした。
顔に血が集まっているのが分かった。きっと耳まで赤くなっている。
情けない。
元就はそう思う。
「おう、慶次じゃねえか、久しぶりだな!」
聞き慣れない陽気な声に顔を上げれば、見慣れない小男が居た。
狸のような、愛嬌のある雰囲気の男だ。
慶次は一瞬驚いて、それから満面の笑みを浮かべた。
狸のような、愛嬌のある雰囲気の男だ。
慶次は一瞬驚いて、それから満面の笑みを浮かべた。
「あれ? ひっさしぶり。どうしたんだいこんな所に」
「おめえの所の祭りじゃねえか、まつ殿に三河土産も持ってきたぞ!
来たのはいいが道に迷っちまってな、後で案内してくれたら大助かりだ。
連れともはぐれちまったんだが、見なかったか?
髪が白くって、目が青くって、背のでかい女なんだがよ…
ん? そっちの、見ねえ顔だな。おめえのあたらしい女か」
「おめえの所の祭りじゃねえか、まつ殿に三河土産も持ってきたぞ!
来たのはいいが道に迷っちまってな、後で案内してくれたら大助かりだ。
連れともはぐれちまったんだが、見なかったか?
髪が白くって、目が青くって、背のでかい女なんだがよ…
ん? そっちの、見ねえ顔だな。おめえのあたらしい女か」
―――――あたらしい女。
――――――――――我の前に慶次殿は。
――――――――――我の前に慶次殿は。