「…倍払う。これで売らないとは言わせねぇぜ?」
「……」
「客が欲しいもんを売るのがあんたの仕事だろ?
分かったらさっさと…」
分かったらさっさと…」
またも政宗の言葉が終わり切らない内に、
男はつかつかと政宗に歩み寄ると、その手から簪を奪い、
先ほどの小判をやおら政宗の襟元に落とし入れた。
男はつかつかと政宗に歩み寄ると、その手から簪を奪い、
先ほどの小判をやおら政宗の襟元に落とし入れた。
「うわっ」
冷たい感触に思わず小さく悲鳴を上げると、
それを恥じる心を隠すように、キッと男を睨みつけた。
それを恥じる心を隠すように、キッと男を睨みつけた。
「なっ何しやがる!」
「…金を粗末にするもんじゃねえ。」
そう諭すように言う男に、政宗は噛み付いた。
「てめぇの稼いだもんをどう扱おうが、俺の勝手だろうが!
…俺は生まれてこの方、てめぇの食い扶持は
てめぇで稼いで来てるんだ!
そこいらのガキと一緒にするんじゃねぇ!!」
…俺は生まれてこの方、てめぇの食い扶持は
てめぇで稼いで来てるんだ!
そこいらのガキと一緒にするんじゃねぇ!!」
僅かに息を乱し、頬を紅潮させて怒る政宗の様子をじっと見ると、
男はただ「分かった」と静かに頷いた。
男はただ「分かった」と静かに頷いた。
拍子抜けする政宗に、男は何やら紙に包まれた物を懐から取り出し、
政宗の細い手に握らせる。
政宗の細い手に握らせる。
「なんだよ、これ…」
「ガキ扱いの詫びだ。やるよ。」
そう言うと男は踵を返し、行李を背負うと
板間の縁に腰掛けて草履を履き始める。
板間の縁に腰掛けて草履を履き始める。
「……」
その後ろ姿をなんとなく落ち着かない気分で見詰めた後、
政宗は男から渡された小さな紙の包みを開けて見る。
政宗は男から渡された小さな紙の包みを開けて見る。
中に詰まっていたのは、色とりどりの可愛らしい飴だった。
「てめぇ!!」
まだ子供扱いするのかと怒る政宗に、男は初めて声を立てて笑った。
「ふざけやがって…!待ちやがれ!」
「じゃあな。」
男は最後にそう一言だけ政宗に告げ、
番頭に軽く頭を下げると、さっさと見世から出て行った。
政宗が履き物も履かずに見世の入口まで走り出ると、
時間柄ほとんど通る者のない大通りに、男の後ろ姿を見つけた。
番頭に軽く頭を下げると、さっさと見世から出て行った。
政宗が履き物も履かずに見世の入口まで走り出ると、
時間柄ほとんど通る者のない大通りに、男の後ろ姿を見つけた。
(なんだ、あの野郎…!気に食わねぇ!!)
少しでも好みだと思ってしまった自分に腹が立つ。
政宗は遠ざかってゆく後ろ姿を睨みながら、
飴を何個か口に放り込むと、乱暴に噛み砕いた。
政宗は遠ざかってゆく後ろ姿を睨みながら、
飴を何個か口に放り込むと、乱暴に噛み砕いた。
これが女郎・政宗と、筋者上がりの簪職人・小十郎の出会いだった。
(終)




