「母さんって何をしてた人?」
夜、忍具の手入をしている父に翠は尋ねた。
「どうした急に?」
手を休めず父は応える。
「男の人達が言ってた。『恐ろしい女だ』って」
一瞬父の手が止まった。
「聞き違いさ」
「本当だもん。私は『げっかいくん』の娘だから皆の首を斬――」
突然父が拳で力任せに床を叩いた。
翠は驚いて黙る。こんな乱暴な父を見たのは初めてだ。
父は溜め息を吐いて暫く眉間に手を当て考えていたが、真直ぐ翠の目を見て
話し始めた。
「良いか翠。母ちゃんの事をとやかく言う奴は多い。
でも、連中が何と言おうと母ちゃんは誰より強くて優しい人だった――本当さ。
嫌な事や辛い事を沢山乗り越えて父ちゃんなんかと一緒になってくれたし、
命懸けでお前を産んでくれた。
生きた時間は短かったけど母ちゃんは一生懸命生き抜いたんだ。
その母ちゃんそっくりのお前も強くて優しい子だよ。
父ちゃんが言うんだ、間違い無いぞ」
父が初めて語る母は男達が話していたものと程遠い。
だが翠は父の話を信じる事にした。
「でも怒った母ちゃんはおっかなくてなぁ。
言付け破って父ちゃん忍術教えちまったからきっとあの世でカンカンだ」
慌てて翠は言う。
「私が怒らないでって母さんに言う。父さんは悪くないって」
「ありがとよ。母ちゃんお前には甘いだろうからきっと父ちゃん見逃して貰えるな」
父は翠の頭を撫でて悪戯っぽくパチリと片目を閉じる。
まだ翠が幼く、比較的世も安定していた頃だった。
夜、忍具の手入をしている父に翠は尋ねた。
「どうした急に?」
手を休めず父は応える。
「男の人達が言ってた。『恐ろしい女だ』って」
一瞬父の手が止まった。
「聞き違いさ」
「本当だもん。私は『げっかいくん』の娘だから皆の首を斬――」
突然父が拳で力任せに床を叩いた。
翠は驚いて黙る。こんな乱暴な父を見たのは初めてだ。
父は溜め息を吐いて暫く眉間に手を当て考えていたが、真直ぐ翠の目を見て
話し始めた。
「良いか翠。母ちゃんの事をとやかく言う奴は多い。
でも、連中が何と言おうと母ちゃんは誰より強くて優しい人だった――本当さ。
嫌な事や辛い事を沢山乗り越えて父ちゃんなんかと一緒になってくれたし、
命懸けでお前を産んでくれた。
生きた時間は短かったけど母ちゃんは一生懸命生き抜いたんだ。
その母ちゃんそっくりのお前も強くて優しい子だよ。
父ちゃんが言うんだ、間違い無いぞ」
父が初めて語る母は男達が話していたものと程遠い。
だが翠は父の話を信じる事にした。
「でも怒った母ちゃんはおっかなくてなぁ。
言付け破って父ちゃん忍術教えちまったからきっとあの世でカンカンだ」
慌てて翠は言う。
「私が怒らないでって母さんに言う。父さんは悪くないって」
「ありがとよ。母ちゃんお前には甘いだろうからきっと父ちゃん見逃して貰えるな」
父は翠の頭を撫でて悪戯っぽくパチリと片目を閉じる。
まだ翠が幼く、比較的世も安定していた頃だった。




