「すまねぇ、遅くなった。大丈夫か?」
佐助は漸く妻と再会した。
遠征から帰ると家が蛻の殻になっていて、手掛りを元に荒っぽい方法で捜し出した。
力ずくだったが今はそんな事に構って居られない。
「平気」
少し痩せた妻は健気に答えた。
その目立って来た腹に佐助は手を当てて話し掛ける。
「おーい、父ちゃんだぞー。ただいま」
ポコン、と何かが妻の腹の中で跳ねた。
「ははっ、返事してら」
男か女か生まれるまで分からないがどちらでも良い。今から楽しみだ。
「じゃ、我が家へ帰りますか」
妻を抱え大鴉に掴まって空を飛びながら気がついた。
(そうだ、名前考えなきゃな)
親から一文字ずつ取ろうかと考えたがどうも上手くいかない。
妻の顔を見る。月下為君、軍神の懐刀――。
「あ」
「何?」
佐助はヘラっと笑う。
「いや、別に」
一緒になって欲しいと妻に差し出した、深い翠色を湛えた翡翠の玉簪。
(女なら翠も良いか)
もう一つ忘れていた事を思い出した。
「なぁ、帰ったらそばがき作って」
「良いけど……」
妻が怪訝な顔をする。
正月の蕎麦切りならまだしも、そばがきを食べたがるのは珍しい。
「よーし、しっかり掴まってろよ!」
佐助は速度を上げた。
――早く帰ろう。そばがき食べて、子どもの名前考えて、仕事もしなくちゃ。
ああ、それにしても疲れたな。帰ったらまず一眠りしよう――
一番大事な光を大切に抱えて佐助は飛ぶ。
暁の中、その姿は朝日へ吸い込まれて行った。
佐助は漸く妻と再会した。
遠征から帰ると家が蛻の殻になっていて、手掛りを元に荒っぽい方法で捜し出した。
力ずくだったが今はそんな事に構って居られない。
「平気」
少し痩せた妻は健気に答えた。
その目立って来た腹に佐助は手を当てて話し掛ける。
「おーい、父ちゃんだぞー。ただいま」
ポコン、と何かが妻の腹の中で跳ねた。
「ははっ、返事してら」
男か女か生まれるまで分からないがどちらでも良い。今から楽しみだ。
「じゃ、我が家へ帰りますか」
妻を抱え大鴉に掴まって空を飛びながら気がついた。
(そうだ、名前考えなきゃな)
親から一文字ずつ取ろうかと考えたがどうも上手くいかない。
妻の顔を見る。月下為君、軍神の懐刀――。
「あ」
「何?」
佐助はヘラっと笑う。
「いや、別に」
一緒になって欲しいと妻に差し出した、深い翠色を湛えた翡翠の玉簪。
(女なら翠も良いか)
もう一つ忘れていた事を思い出した。
「なぁ、帰ったらそばがき作って」
「良いけど……」
妻が怪訝な顔をする。
正月の蕎麦切りならまだしも、そばがきを食べたがるのは珍しい。
「よーし、しっかり掴まってろよ!」
佐助は速度を上げた。
――早く帰ろう。そばがき食べて、子どもの名前考えて、仕事もしなくちゃ。
ああ、それにしても疲れたな。帰ったらまず一眠りしよう――
一番大事な光を大切に抱えて佐助は飛ぶ。
暁の中、その姿は朝日へ吸い込まれて行った。




