素っ気無い答えを聞いて再び佐助は目を閉じた。
どのくらい経っただろうか。
何かが膝の上に乗り、新しい音が加わった。
人の寝息だ。
目を開けると佐助の膝に頭を乗せ横たわった肩が呼吸に合わせ動いている。
琥珀は閉じられ珍しく熟睡していた。その剥き出しの背が如何にも寒々しい。
「あ、おい――」
起きなよ風邪引くぞ、と言うつもりだったが懐から長手拭を取り出して掛けやった。
相手は身を丸めて手拭に包まる。
(こいつ疲れてるのに何でこんな所まで……)
スダジイの幹に頭を預けると、鉢金が硬い音を立てた。
どのくらい経っただろうか。
何かが膝の上に乗り、新しい音が加わった。
人の寝息だ。
目を開けると佐助の膝に頭を乗せ横たわった肩が呼吸に合わせ動いている。
琥珀は閉じられ珍しく熟睡していた。その剥き出しの背が如何にも寒々しい。
「あ、おい――」
起きなよ風邪引くぞ、と言うつもりだったが懐から長手拭を取り出して掛けやった。
相手は身を丸めて手拭に包まる。
(こいつ疲れてるのに何でこんな所まで……)
スダジイの幹に頭を預けると、鉢金が硬い音を立てた。
――落ち込む時なんてあるの?
琥珀色の瞳を瞬かせた娘に訊かれた。
「そりゃ俺にも色々あるよ。で、ここに来て息抜きすんの」
静かで良い場所だろ、と言うと娘は頷いた。
「さて、そろそろ帰るか」
身体を起し大きく伸びをする。
先に立ち上がった佐助が手を差し出すと娘は素直に握り返して立ち上がった。
――帰ってどうする
佐助の裡で声がした。
この娘は薄暗い閨に帰って行くしかない。
また涙で琥珀を曇らせ庭の片隅で塞ぎ込むだろう。
嘆き、苛まれ、傷付く。今のままでは死ぬまでその繰返しだ。
だったら、だったらいっそ――
「このまま――」
突然強い風が二人に吹き付けて思わず娘は目を閉じ、佐助の声は掻き消された。
「何?」
風に乱された髪に手をやりながら問うと佐助は笑った。
「何でも無い。行くぞ、日が暮れちまう」
琥珀色の瞳を瞬かせた娘に訊かれた。
「そりゃ俺にも色々あるよ。で、ここに来て息抜きすんの」
静かで良い場所だろ、と言うと娘は頷いた。
「さて、そろそろ帰るか」
身体を起し大きく伸びをする。
先に立ち上がった佐助が手を差し出すと娘は素直に握り返して立ち上がった。
――帰ってどうする
佐助の裡で声がした。
この娘は薄暗い閨に帰って行くしかない。
また涙で琥珀を曇らせ庭の片隅で塞ぎ込むだろう。
嘆き、苛まれ、傷付く。今のままでは死ぬまでその繰返しだ。
だったら、だったらいっそ――
「このまま――」
突然強い風が二人に吹き付けて思わず娘は目を閉じ、佐助の声は掻き消された。
「何?」
風に乱された髪に手をやりながら問うと佐助は笑った。
「何でも無い。行くぞ、日が暮れちまう」