戦国BASARA/エロパロ保管庫

けわい4

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nozomi

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閑話休題。
蔵の前にようやくたどり着き、扉を開けようとする慶次の袖を掴んで、家康がふるふると首を振る。慶次を見上げるその目にはわずかに涙がたまっていた。
こうして見ると完全に十九歳の乙女である。
家康と刃を交えたこともある同盟相手の西海の鬼や独眼流が今の彼女を見たら、どのような顔をするだろうか。
きっと見ものだと想像して、慶次はくつくつと肩を震わせた。

「なにがおかしいんだ、おめえ」
家康が涙目のまま慶次を睨み、慶次の腕を掴む。
痛い痛い。さすがに槍をよく使うだけあって、握力は並の男に負けない。
しかし、やはり問答無用。家康の制止もむなしく、蔵の重い扉はギ、ギギと軋んだ音を立てて開いた。
薄暗い室内に、戦国最強の男が片膝立ちで座っていた。うつむいたその表情はまったく読み取れない。

「……いつも本多忠勝ってあんな感じに座っているのかい?」
「ま、まあな。た、忠勝……?」

家康の控えめに呼ぶ声に、忠勝が起動する。その顔がいきなり上がり、同時に左目が紅く光ったのに驚き、慶次は思わず家康の手を強く握った。
忠勝の右目がカッと見開く。こちらは普通の人間と変わらない目で、慶次は少しホッとした。
さて今、忠勝の視界には二人の人間。一人は、主君の友人である前田慶次と即座に認識できた。そして、もう一人は……?

「!!!!!??!」

家康の存在を認めた瞬間、ギュギュ、シュ、ピーという奇怪な音を立てて忠勝が動きを止めた。どうやら混乱しているらしい。
「忠勝、よもやワシの顔を忘れた訳じゃねえよな?」
恐る恐る前に進み出た家康は、忠勝の右手の甲にそっと触れた。
「慶次が見立ててくれたんだ。……どうだ?」

その瞬間、慶次は忠勝の兜からわずかに露出した肌が真赤になり、頭頂部から蒸気が噴き出すのを目撃した。
――なかなかに壮観だ。恐らく、人生で一度も見られないのではないのだろうか。

「アンタ好きな人は?……って、聞くだけ無駄かあ……」
慶次の小さな呟きは、この主従には届いていない。


「恋っていいねえ」

結局家康の自室に移動した二人は、世間話を肴に茶を飲んでいた。そうしたら、慶次がいきなり先ほどの言葉を口にしたので、家康は思わずむせてしまった。
「な、なんだおめえ、いきなり」
「いやあ、家康もちゃんと恋してるみたいで安心したよ」
何が安心だ、と慶次を睨みつけつつ、人に色恋の話題をさんざっぱら振っておいて、おめえ自身はどうなんだと訊きたくなるのを家康はグッと堪えた。
慶次の胸にいまだに残っているであろう傷を、さらに抉ってしまうことになってしまうかもしれないからだ。

わずかに気まずそうな顔をした家康の心情を汲んだか汲まずか、慶次は一際華やかな笑顔になった。
そしてにこやかに言い放った。

「あ、そういえばその着物代は家康にツケといたから…痛ぇ!」
容赦ない拳骨が慶次の頭に振り下ろされたのは、慶次がその言葉を言い終わるか言い終わらぬかの一瞬であった。


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