「天下ねぇ……」
あまり深く考えたことはなかった。
まつと慶次を乗せた船は遠ざかり、もう見えない。一緒に見送った部下は涙を拭っていた。
まつと慶次を乗せた船は遠ざかり、もう見えない。一緒に見送った部下は涙を拭っていた。
陸は窮屈でいけない。
それに、正直言えば、そこまで権力や政に興味があるわけでもない。
だが、今、天下から遠くないところに元親は立っているのだ。
それに、正直言えば、そこまで権力や政に興味があるわけでもない。
だが、今、天下から遠くないところに元親は立っているのだ。
「やれやれ、ちっと考えてみるかな」
力が大きくなれば責任も大きくなる。部下のこと、民のことも考えねばならない。
豊臣はいろいろなものを持ちこみすぎた。戦に、天下の行方に、そして。
豊臣はいろいろなものを持ちこみすぎた。戦に、天下の行方に、そして。
つい先ほど見送ったまつ。
船が出る直前、彼女は丁寧に三つ指をついて、言った。
そう、あのとき、元親を戦場に送り出したときのような、はっきりとした声で。
船が出る直前、彼女は丁寧に三つ指をついて、言った。
そう、あのとき、元親を戦場に送り出したときのような、はっきりとした声で。
「それでは、本日はこれにて……」
――それでは、今日のところはこのへんで。
次がないとは言わなかった。
次がないとは言わなかった。
男女の恋もまた、これに同じ。




