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慰安旅行・幸村編3

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bsr_e

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日が沈まぬ内にと急ぎ足で出ていく市を見て幸村は思った。
佐助もここに居ればよいのに、と。
一緒に見ていればきっと「綺麗だね。」と自分に語りかけてくれただろうに。
だけど佐助は今―――。

幸村の脳裏に先程の二人が蘇る。
殆んど何も身に付けていない佐助と男らしく(?)裸一貫で堂々としている信玄。
それが余計に二人の行為を生々しく想像させた。

どうしてだろう。
何故自分ではいけないのか。
俺が一番、佐助の側に居ると言うのに。

知らぬ間に目に涙が溢れてくる。
「ぬあああぁぁ!!!」
このままでは行かぬ!めそめそとなんと情け無い!
幸村は景気付けに叫ぶと湯船にさぶりと頭まで潜った。
「おい、どうかしたのか!?」
突然の奇行に唖然とした顔して家康が聞いてきた。
勢い良く立ち上がる。
「大丈夫でござる!某、先に暇させていただくでござる!」

「なんだったんだ?」
「なんと、忙しい女子よのう……。」
ざぶざぶと威勢良く出口に向かう幸村を二人は見送った。

「あれ?ゆっきー上がるの?」
「慶次殿?」
脱衣場への戸を開くと慶次と濃姫が連れ立って立っていた。
「あら真田幸村、貴女も着てたの?」
濃姫はつややかな動作で首をかしげて幸村を見た。
「じゃ、私先に行くわね。慶次。」
「あ、うん。お濃ちゃん、後でね。」
するりと二人の横をすり抜けて濃姫は慶次と幸村に手を振って去っていった。
「そうか、そう言えば仲が良うございましたな。」

「ん、まあねえ。それより、ゆっきーどしたの?」
「何がでござるか?」
「だーって、泣いてんじゃん。」
慶次は幸村の顔を覗き込むように身を屈めた。
「それに、さっちゃんも居ないし。珍しいよね、一緒に居ないの。」
「さ……佐助は……あ、お。」
そこまで言って幸村の瞳からブワっと涙が溢れた。
「わわ、ゆっきー!落ち着いて!落ち着いて!」

慶次は慌てて幸村を脱衣所まで連れて行くとボタボタ泣く幸村の身体を拭いて浴衣を着せた。
「かっかたじけな……い。っく。」
「いんやー?あんま聞かないほう良い事聞いちゃったみたいだし。こっちもゴメンね。」
上手く言葉が出せなくて、頭をぶんぶんと振る。

違う。違うのだ。慶次殿は悪くない。
悪いのは、佐助を諦められない。馬鹿な俺だ。
別に蔑ろにされた訳ではない。
偶に有るこんな時を除いて、二人は幸村に対して何一つ対応を変えては居ない。
自分の居ない二人の時間が増えただけなのだ。
それが、そんな事がこれほど辛いとは思わなかったのだ。

幸村が泣き止むまで慶次は黙って隣に座っていた。
「根掘り葉掘り聞かぬのでござるか?」
何時もは何があったとか、興味深深で聞いてくる慶次が黙っているので、幸村は思わず口にした。
「あはは、聞いて欲しいなら聞くけどさ。」
そうじゃないでしょ?と苦笑しながら慶次は首を傾げた。
その笑顔は困ったようであったけれど、何時もとそれほど変わらない。

どうして何時も何時も笑っていられるのだろう。
何事も無く過ごす人は居ない筈なのに。
「慶次殿は何時も変わりませぬな。」
首を振って幸村は言った。
「某は修行が足りませぬ。思いを胸にしまったまま笑う方法が未だ見つからず。口惜しい限り。」
何難しい事言ってんのと、何時ものホッとする様な顔で慶次は笑った。

「そう言えば慶次殿は露天風呂には行かぬのでござるか?」
「ああ、夜中人の居ない時にゆっくり行こうかと思ってさ。」
今、行ったらむさ苦しそうだもんねえ。と慶次がにやりと笑うので幸村もそうでござるなと釣られて笑った。
「それで、魔王の奥方も?」
「ああ、お濃ちゃんは光秀にじゃんけんで負けたとか言って……。良く分んないけどさ。」
「さようでござるか。……良く分りませぬな。じゃんけん?」
「ね。」

お市殿の話と言い、夫婦とは男と女の関係とはかくも難解なものなのか。
先ほどの泣きべそは何処へやら、じゃんけんの意味で頭を悩ませながら、幸村は慶次と別れ部屋へ戻ったのだった。
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幸村編は以上です
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