(しくったなー……)
薄暗い部屋に行灯の火が揺らめく中、何度となく繰り返したぼやきが頭に浮かんで消えた。
両肩は外され口には猿轡、それから首元から鎖が伸びているのが見える(恐らく首輪でも付けられたのだろう)。
武器や忍道具と共に装束も剥がれ、申し訳程度に襦袢一枚を着させられている。
ありがたい事に両脚には重篤な怪我は無いようだが、部屋に漂う妙に甘ったるい匂いのせいで体に力が入ってくれない。
松永軍が何がしかの香を用いていたのは以前見かけた事があるし、この部屋に漂っているのもその手の物なのかもしれない。
武器や忍道具と共に装束も剥がれ、申し訳程度に襦袢一枚を着させられている。
ありがたい事に両脚には重篤な怪我は無いようだが、部屋に漂う妙に甘ったるい匂いのせいで体に力が入ってくれない。
松永軍が何がしかの香を用いていたのは以前見かけた事があるし、この部屋に漂っているのもその手の物なのかもしれない。
織田軍の様子見ついでに大和まで足を伸ばして、お陰様でこの様だ。
欲をかいた俺が悪いと言えばその通り。けど、あの梟雄に風魔がついてるだなんて誰も想像し得ないだろう。
この情報だけでも伝えておきたかったが、何分その手段も脱出の糸口すらも見いだせないだけに口惜しい。
欲をかいた俺が悪いと言えばその通り。けど、あの梟雄に風魔がついてるだなんて誰も想像し得ないだろう。
この情報だけでも伝えておきたかったが、何分その手段も脱出の糸口すらも見いだせないだけに口惜しい。
(しかしまぁ、何で殺されないかね)
風魔に徹底的に打ちのめされ、てっきりそのまま地獄行きかそうでなくともそれはそれは凄まじい拷問が待っているか、と考えていた俺の予想は裏切られ、それどころか今繋がれているのは恐らく牢屋ですらない。
背中の感触からするに布団に寝かされ、時折白粥を無理やり口に含まされたりする以外は普段の俺からしてみればかなりの好待遇だ。
一応首輪を外そうともがいてはみたものの、力の抜けた体じゃろくすっぽ何もできやしないし、僅かに出来た掠り傷すら丁寧に処置されちまうんだから、尚更理解に苦しむ状況だ。
一応首輪を外そうともがいてはみたものの、力の抜けた体じゃろくすっぽ何もできやしないし、僅かに出来た掠り傷すら丁寧に処置されちまうんだから、尚更理解に苦しむ状況だ。
だいぶ時間の感覚が無くなってきたが、捕らえられてから4日は経っているはずだ。
その間俺を殺さない、ましてや拷問すらしないって事は、俺自身に何らかの用事があるという事だろう。死ぬ気で抵抗するか本当に死ぬか、その判断は相手の動きを待ってからでも遅くはない――そう考え、大人しく相手の成すがままにしている。
今思えば、その時点で俺の頭は香にやられ始めていたのかも知れない。奴が……松永が、欲しい物は何としてでも手に入れる性質である事は知っていたはずなのだから。
その間俺を殺さない、ましてや拷問すらしないって事は、俺自身に何らかの用事があるという事だろう。死ぬ気で抵抗するか本当に死ぬか、その判断は相手の動きを待ってからでも遅くはない――そう考え、大人しく相手の成すがままにしている。
今思えば、その時点で俺の頭は香にやられ始めていたのかも知れない。奴が……松永が、欲しい物は何としてでも手に入れる性質である事は知っていたはずなのだから。