「俺は忍びの房術に誑かされた色ボケらしい」
「え?ちがったっけ?」
「違うな」
くつくつと笑うその顔は厭になるくらいに男前だ。
「ふうん。じゃあ俺がいない間、何人くらいの女の子がここに…のっかったの?」
「さあなあ…」
「かわいい?きれい?胸がおっきくて、おしりもやわらかくって、いいにおいがして、かみもさらさら?」
「ああ、そうだな」
「片倉さんはそういう子が好みなの?」
「どういうのだ?」
しれっとそんなことばっかりいう片倉さんのくちびるを撫でていた指が、あたたかいものに包まれた。
片倉さんは俺の、鉄くさくって血生臭そうな指先をくわえて、爪のかたちをなぞるように舌を這わせる。
「かわいいこ?」
ちゅっ…と軽く指先が吸われる。ぴくりと腰が震える。
「きれいなこ?」
最初よりも深くくわえられて、熱い舌が関節に絡みついて、硬い歯がごりっと骨を削りそうな勢いでかみついてきた。
「んっ…胸は、おっきいほうがいい?」
噛んだことを詫びるかのように舐められる。それにほうっと息をついた瞬間に、もう一度、きつく噛まれた。
「…っ…おしりは、おっきくて、やーらかいのがいい?」
ちゅぷりと指が濡れた音を立ててくちびるから抜き出された。歯型がついた自分の指をぼうっと見ていたら、片倉さんの手が俺の腰帯をほどき始めた。
「いいにおい、した?」
自分から腰を浮かせて、脱がそうとするのに協力する。こんなごつい手をしているくせに片倉さんは器用で、すごく手際よく脱がせてくる。
「さらさらで、きれいなくろいかみだったんだろうね」
上は、自分で脱いだ。いまさら隠すような仲じゃないし、もったいぶるほどの裸でもない。
さすがに全部脱ぐと寒くて、ぞわりと肌が粟立つ。
肉刺のできたごつごつとした手で腰の線を撫でられてはあっと息が漏れる。白い、息だ。
自分が育てた野菜の出来を確かめるように、丹念に、ひどく慎重な手つきで片倉さんの手が俺の肌を這いまわる。
触ると骨が尖っている細いばかりでそそられない薄い腰、うっすらと筋肉の線が見える下腹からあばらを数えながらほとんど影を落とさない平坦な胸へ。
寒さにつんとたちあがる胸のいただきを掠められて甘えた声が出た。
くっきりとした鎖骨のくぼみを二、三度指先が撫でて、それから喉仏のない首へ。
急所に触れられる緊張感から無意識に手が武器を探してさまようが、ただ片倉さんの夜着の裾を乱しただけだった。
「…髪が伸びたな」
そういえば切らないできた、肩を過ぎるくらいに伸びた髪を物珍しげに片倉さんはつまむ。
「片倉さんは、長いほうがすき?」
小首をかしげればふわふわとした質感が肌に触れてくすぐったい。
「ああ、そうだな」
ずっと一緒にいた真田の旦那ですら俺の髪の今のこの長さを珍しがったのだから、片倉さんにとっては本当に珍しいものだろう。
だって、すでに自分がめずらしいんだもの。
正直似合わない、柄じゃないとは思うが、片倉さんはこの髪の長い俺を好きだといってくれた。
「そ、好きなんだー」
脱がされて放りだされたままの服へと手を伸ばして、布地の中に冷たく硬い金属の感触を見つける。
それをしっかりと握って、俺は珍しく見下ろした状態の片倉さんを見る。笑う。そして。
「あ、ごめん。散らかしちゃった」
さすけったらうっかりさん、と舌を出して、握った手のひらをひらいた。
苦無で断たれた橙の髪がはらはらと片倉さんに、着物に、布団に、畳に、散らばっていく。
「あーすっきりした。切るの忘れてたんだよね」
「そうか」
さすがにびっくりしたのか一瞬だけ、片倉さんは目を見開いて、でもそれから、笑った。
「なんだ、その面は」
わらった。かたくらさんが。ぼうっと、顔が、なんだかあっつい。
なんだって、あんたこそ、その顔はなんだっていうんだ。
たまらなくなって、俺は身体を倒して片倉さんのくちびるにむしゃぶりついた。
激しく動いた拍子に切った髪が散らばったけど、まあ後で掃除すればいい。
「え?ちがったっけ?」
「違うな」
くつくつと笑うその顔は厭になるくらいに男前だ。
「ふうん。じゃあ俺がいない間、何人くらいの女の子がここに…のっかったの?」
「さあなあ…」
「かわいい?きれい?胸がおっきくて、おしりもやわらかくって、いいにおいがして、かみもさらさら?」
「ああ、そうだな」
「片倉さんはそういう子が好みなの?」
「どういうのだ?」
しれっとそんなことばっかりいう片倉さんのくちびるを撫でていた指が、あたたかいものに包まれた。
片倉さんは俺の、鉄くさくって血生臭そうな指先をくわえて、爪のかたちをなぞるように舌を這わせる。
「かわいいこ?」
ちゅっ…と軽く指先が吸われる。ぴくりと腰が震える。
「きれいなこ?」
最初よりも深くくわえられて、熱い舌が関節に絡みついて、硬い歯がごりっと骨を削りそうな勢いでかみついてきた。
「んっ…胸は、おっきいほうがいい?」
噛んだことを詫びるかのように舐められる。それにほうっと息をついた瞬間に、もう一度、きつく噛まれた。
「…っ…おしりは、おっきくて、やーらかいのがいい?」
ちゅぷりと指が濡れた音を立ててくちびるから抜き出された。歯型がついた自分の指をぼうっと見ていたら、片倉さんの手が俺の腰帯をほどき始めた。
「いいにおい、した?」
自分から腰を浮かせて、脱がそうとするのに協力する。こんなごつい手をしているくせに片倉さんは器用で、すごく手際よく脱がせてくる。
「さらさらで、きれいなくろいかみだったんだろうね」
上は、自分で脱いだ。いまさら隠すような仲じゃないし、もったいぶるほどの裸でもない。
さすがに全部脱ぐと寒くて、ぞわりと肌が粟立つ。
肉刺のできたごつごつとした手で腰の線を撫でられてはあっと息が漏れる。白い、息だ。
自分が育てた野菜の出来を確かめるように、丹念に、ひどく慎重な手つきで片倉さんの手が俺の肌を這いまわる。
触ると骨が尖っている細いばかりでそそられない薄い腰、うっすらと筋肉の線が見える下腹からあばらを数えながらほとんど影を落とさない平坦な胸へ。
寒さにつんとたちあがる胸のいただきを掠められて甘えた声が出た。
くっきりとした鎖骨のくぼみを二、三度指先が撫でて、それから喉仏のない首へ。
急所に触れられる緊張感から無意識に手が武器を探してさまようが、ただ片倉さんの夜着の裾を乱しただけだった。
「…髪が伸びたな」
そういえば切らないできた、肩を過ぎるくらいに伸びた髪を物珍しげに片倉さんはつまむ。
「片倉さんは、長いほうがすき?」
小首をかしげればふわふわとした質感が肌に触れてくすぐったい。
「ああ、そうだな」
ずっと一緒にいた真田の旦那ですら俺の髪の今のこの長さを珍しがったのだから、片倉さんにとっては本当に珍しいものだろう。
だって、すでに自分がめずらしいんだもの。
正直似合わない、柄じゃないとは思うが、片倉さんはこの髪の長い俺を好きだといってくれた。
「そ、好きなんだー」
脱がされて放りだされたままの服へと手を伸ばして、布地の中に冷たく硬い金属の感触を見つける。
それをしっかりと握って、俺は珍しく見下ろした状態の片倉さんを見る。笑う。そして。
「あ、ごめん。散らかしちゃった」
さすけったらうっかりさん、と舌を出して、握った手のひらをひらいた。
苦無で断たれた橙の髪がはらはらと片倉さんに、着物に、布団に、畳に、散らばっていく。
「あーすっきりした。切るの忘れてたんだよね」
「そうか」
さすがにびっくりしたのか一瞬だけ、片倉さんは目を見開いて、でもそれから、笑った。
「なんだ、その面は」
わらった。かたくらさんが。ぼうっと、顔が、なんだかあっつい。
なんだって、あんたこそ、その顔はなんだっていうんだ。
たまらなくなって、俺は身体を倒して片倉さんのくちびるにむしゃぶりついた。
激しく動いた拍子に切った髪が散らばったけど、まあ後で掃除すればいい。