自身が纏っている衣服に視線が集中したのを感じて、元親は少々照れながら頭を掻いた。
「まぁその、なんだ…せっかくの御呼ばれだし、ちったぁめかし込んで来た訳よ。
見慣れねぇ服かもしれねぇが、南蛮じゃ海賊は皆こんな格好をしてるらしいぜ?」
見慣れねぇ服かもしれねぇが、南蛮じゃ海賊は皆こんな格好をしてるらしいぜ?」
「そうでしたか…いやいや、その帽子も含め本当に良くお似合いですぞ」
「長曾我部殿のその御姿を見れば、元就様もさぞかしお喜びになりましょう」
「こっ…これ、御客人に滅多な事を申すでない!!」
隣の者に腕をつつかれ慌てて両手で己の口を塞いだ門番の姿を見て、元親はプッと吹き出す。
「いや、俺は褒めてもらえて嬉しいぜ?…ありがとうな」
「「「……………っ!!!」」」
「ん? …どうした?」
「いっいえ、その…」
「我等は長らくこうして元就様にお仕えしておりますが…」
「礼を言われた事など、無きゆえ…」
おろおろしながら互いに視線を彷徨わせ合う門番達に向かって、
『んな、硬ぇ事言うなって!』と言いながら元親がポンポン肩を叩くと、
『でっ、ですがその………』と、ついには門番達の動作までがギクシャクし始める。
だが普段自分を取り巻く者達とのあまりの反応の違いに、元親が半ば面白がって
門番達と肩でも組もうとした時だ。
ちょうど屋敷の外へ出てきた毛利の家臣の声が響く。
『んな、硬ぇ事言うなって!』と言いながら元親がポンポン肩を叩くと、
『でっ、ですがその………』と、ついには門番達の動作までがギクシャクし始める。
だが普段自分を取り巻く者達とのあまりの反応の違いに、元親が半ば面白がって
門番達と肩でも組もうとした時だ。
ちょうど屋敷の外へ出てきた毛利の家臣の声が響く。
「…何をしておられるのですか、長曾我部殿」
「あっ…悪ぃ、もう毛利の奴を待たせちまってたか?」
「そうではございませぬが、我々にも事情がございますゆえ…
どうぞ屋敷の中へお急ぎ下され」
どうぞ屋敷の中へお急ぎ下され」
「分かった。
ああそうだ…門番の兄さん達、悪ぃがこれ預かっててくれねぇか?」
ああそうだ…門番の兄さん達、悪ぃがこれ預かっててくれねぇか?」
元親が握った鎖を思い切り引き寄せた拍子に蒼天を裂くかのような勢いで飛んできて、
程なく大きな衝撃と共に地面に突き刺さった碇槍…。
それを見た毛利の門番達はガクガクと震えながら、揃って何度も首を横に振る。
程なく大きな衝撃と共に地面に突き刺さった碇槍…。
それを見た毛利の門番達はガクガクと震えながら、揃って何度も首を横に振る。
「とっ…とんでもございませんっ!!!!」
「…かような代物を、それがし達ごときが預かるなど、とても…」
「だがこれからこの城の主の持て成しを受けるってのに、帯刀はご法度だろ?」
「…でっ…ですが…」
「まぁ、そう硬ぇ事言わずに頼むぜ!」
「……はっ…ははぁっ!!!」
毛利軍の門番全員に最敬礼で見送られながら、元親は元就の居城へと足を踏み入れた。
そして初老に差し掛かる頃合いにも関わらず、きちんとした姿勢で目前をスタスタと歩く
毛利の家臣に言葉を投げかける。
そして初老に差し掛かる頃合いにも関わらず、きちんとした姿勢で目前をスタスタと歩く
毛利の家臣に言葉を投げかける。
「で…『我々の事情』って、一体何なんだ?」
「拙者の口から言わずとも、じきにご理解いただけましょう。
ですがその前に、おそれながら是が非にも教えていただきとう事柄がございます」
ですがその前に、おそれながら是が非にも教えていただきとう事柄がございます」
「…あっ…あぁ、俺に分かる事なら何でも聞いてくれよ」
ある部屋の前で突然クルリと元親に向き直ると、家臣は至極真面目な顔で重々しく口を開く。
「長曾我部殿は、いかなる食物を好まれるのか」
「………はっ?」