戦国BASARA/エロパロ保管庫

虎竜・隠れ鬼3

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momo

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屋敷の中に戻ると、ちょうど良くというよりかは折悪しく、狙いすました
ように片倉殿とかち合ってしまった。明らかに『真っ直ぐ』とは程遠い
機嫌の理由は、おそらくすぐ後ろにいる忍の所為であろう。
「おい真田、政宗様は一緒じゃねえのか。どこかでお見かけしなかったか」
平素より更に低い声もそれを裏付けている。
部下よ、一体何をした。
あの趣味はどうにかならないのかと内心で己の部下に不満を訴えつつ、別の
理由もあって返答に詰まった。
嘘をつくのは好きではない。見かけたどころかほんの少し前までは確かに
一緒にいたのだし、副官が主君を探しているのだ、自分の持つ情報は正直に
伝えることが望ましい。
しかし、あのかたは『誰にも言うな』と仰せになった。
隠れ鬼に最後までお付き合いしなかった分、それくらいの言いつけは守って
然るべきではないだろうか。
俺が答えないことをどう判断したのか、片倉殿は忌々しげに舌打ちをした。
「何のための警護役だ。まったく……」
御尤もな呟きに続く声は一層低かったが、聞き流すことはできなかった。
「……今更『隠れ鬼』をされるとも思えねえが……」
頭の中に残り続けていた語句を再び耳にして、つい問い返してしまう。
「片倉殿。奥州では、隠れ鬼とは鬼を決めずに遊ぶものなのでござるか?」
「何言ってんのダンナ。鬼がいなくちゃ隠れ鬼になんないっしょ」
これも尤もなはずの佐助の発言をよそに、片倉殿の表情が僅かに変わった。
「―――――政宗様か?やっぱり一緒だったのか」
さすがは片倉殿、と言うべきか。
俺の問いは、奥州の『隠れ鬼』について疑問を抱いているからこそのもの。
鬼のいない隠れ鬼という条件、しかも奥州限定ともなれば、疑問の出処を
推測するのは容易だったのであろう。
そして俺にも推測できた。政宗殿のあの『隠れ鬼』は奥州でも特殊なもので、
しかもやはり特別な意味があるようだ。片倉殿の反応がそれを物語っている。
……が、何の予備知識もない部下には全く意味不明だったとみえて。
「お二人とも、俺様にもわかるように説明してくれないかなあ?」
声こそ普段と変わらないが、表情がいけない。この表情をしている佐助に
逆らうのは愚の骨頂と、俺は長年の経験でよく知っている……のだが、
何故か片倉殿も、いつの間にやらそれをご存知であったらしい。
重ねて問うが部下よ、一体何をした。
とはいえそちらの問いは厳重に心の中に封じておくことにして、まず
片倉殿がその謎の遊戯について説明をしてくださった。
「謎というほどのこともねえ。ただの『鬼のいない隠れ鬼』だ。……いや、
本当は目に見えねえ何かから隠れていたのかもな」
「目に見えぬ、何か……」
「お小さいころから、桁外れの責任を抱えてこられたかただ。そうやって
ひとときだけでも解放される時間がなけりゃ、身体より先に心が参っちまう」
傳役として副官として、長いこと姫君に仕えてきた片倉殿の言葉は重く、
去り際の一幕と相俟って胸中を複雑なものが過ぎる。


―――――お館様。国主たる重圧、某には計り知れぬものと存知まするが。



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