「運ぶのは、これですか?」
「ああ、ちょっと重いけどよろしく頼むぜ。何せ、今夜の為にずっと前から用意
してたヤツなんだ」
船倉に訪れた複数の声に続いて、ザビーたちの入った樽が、運ばれていく。
「ホントに重たいですねぇ。何が入っているのですか?」
「それは、後でのお楽しみ。お嬢も、きっと喜ぶと思うぜ」
(『お嬢』とイウノハ、オヤビンのコトデスネ…)
という事は、自分が入ったこの樽が元親の前で開けられる・そして近くに元就が
いる確率が高い。
ならば、樽から出た所をふたりまとめて捕獲し、そのまま元親たちを人質に、船
ごと肥前へ向かえば良いのではないか。
(コレゾ、『瀬戸の花嫁プラス花婿・強奪作戦』デース!)
完璧だ、とザビーは動く樽の中で声を立てずに笑った。
「ああ、ちょっと重いけどよろしく頼むぜ。何せ、今夜の為にずっと前から用意
してたヤツなんだ」
船倉に訪れた複数の声に続いて、ザビーたちの入った樽が、運ばれていく。
「ホントに重たいですねぇ。何が入っているのですか?」
「それは、後でのお楽しみ。お嬢も、きっと喜ぶと思うぜ」
(『お嬢』とイウノハ、オヤビンのコトデスネ…)
という事は、自分が入ったこの樽が元親の前で開けられる・そして近くに元就が
いる確率が高い。
ならば、樽から出た所をふたりまとめて捕獲し、そのまま元親たちを人質に、船
ごと肥前へ向かえば良いのではないか。
(コレゾ、『瀬戸の花嫁プラス花婿・強奪作戦』デース!)
完璧だ、とザビーは動く樽の中で声を立てずに笑った。
日が沈んだ瀬戸内の海は、穏やかな波の音を除いて、静寂に包まれていた。
満天の星が夜空を彩る頃には、船上の宴もたけなわとなっていった。
「そろそろ、岸に着けなくていいのか?」
昼間、船に乗り込んだ時には見えていた陸が、随分と離れているのに気付いた元
親は、乗組員に尋ねた。
「いいんですよ。『今夜』はね」
「そうそう。心配しなくても、明け方にはちゃんと戻りますから。だから、お嬢
も『今夜』は寛いで下さいよ」
「な…バカヤロウ!何言ってやがる!」
強調された言葉の意味を察知した元親は、照れ隠しに声を荒げた。
「おふたりとも、今日はお疲れでしょう。後は我々で致しますので、そろそろお
休みになられては如何ですか?」
酒の空瓶を片付けながら、毛利の兵がにこやかに提案してくる。
すると、それに呼応するように、長曾我部の海賊からわざとらしいまでに大袈裟
な声が返ってきた。
「ああ、参ったなあ。この船って戦仕様だから、客室なんて豪勢なモンついて
ねぇぞ?」
「そうだよなあ。一応、軍議の部屋はあるけど、休憩するようなトコじゃねえし」
「おや、困りましたねぇ。流石に元就様に、我々のような雑魚寝をさせる訳には
いきませんし」
「……となると、お嬢の部屋しかないよなあ」
「えぇ!?」
「それは良いですね。元親様のお部屋なら、元就様も異存はないでしょう」
「──無論だ」
鷹揚に頷いた元就を見て、元親は益々頬を紅潮させる。
「俺の…?」
「我の前ではその人称代名詞を改めよ、といつも言っているだろう」
「わ…私の部屋…船内の小さな一室だから、そんなに広くないよ?」
「構わぬ。それとも、散らかっているのか」
「違うけど…」
「ならば、何の問題もないではないか。案内せよ」
手を取られた元親は、隣に立つ元就を一度だけ戸惑いがちに見つめたが、やがて
意を決したように「こっち」と、元就を先導するようにして歩き始めた。
花嫁衣裳を着ているので、いつもよりかなり狭い歩幅でしずしずと進む元親に
合わせて、元就もゆっくりと足を動かす。
やがて、船内の奥へて向かうふたりの背中に「ごゆっくり~♪」と、意味深な呼
びかけが聞こえてきた。
満天の星が夜空を彩る頃には、船上の宴もたけなわとなっていった。
「そろそろ、岸に着けなくていいのか?」
昼間、船に乗り込んだ時には見えていた陸が、随分と離れているのに気付いた元
親は、乗組員に尋ねた。
「いいんですよ。『今夜』はね」
「そうそう。心配しなくても、明け方にはちゃんと戻りますから。だから、お嬢
も『今夜』は寛いで下さいよ」
「な…バカヤロウ!何言ってやがる!」
強調された言葉の意味を察知した元親は、照れ隠しに声を荒げた。
「おふたりとも、今日はお疲れでしょう。後は我々で致しますので、そろそろお
休みになられては如何ですか?」
酒の空瓶を片付けながら、毛利の兵がにこやかに提案してくる。
すると、それに呼応するように、長曾我部の海賊からわざとらしいまでに大袈裟
な声が返ってきた。
「ああ、参ったなあ。この船って戦仕様だから、客室なんて豪勢なモンついて
ねぇぞ?」
「そうだよなあ。一応、軍議の部屋はあるけど、休憩するようなトコじゃねえし」
「おや、困りましたねぇ。流石に元就様に、我々のような雑魚寝をさせる訳には
いきませんし」
「……となると、お嬢の部屋しかないよなあ」
「えぇ!?」
「それは良いですね。元親様のお部屋なら、元就様も異存はないでしょう」
「──無論だ」
鷹揚に頷いた元就を見て、元親は益々頬を紅潮させる。
「俺の…?」
「我の前ではその人称代名詞を改めよ、といつも言っているだろう」
「わ…私の部屋…船内の小さな一室だから、そんなに広くないよ?」
「構わぬ。それとも、散らかっているのか」
「違うけど…」
「ならば、何の問題もないではないか。案内せよ」
手を取られた元親は、隣に立つ元就を一度だけ戸惑いがちに見つめたが、やがて
意を決したように「こっち」と、元就を先導するようにして歩き始めた。
花嫁衣裳を着ているので、いつもよりかなり狭い歩幅でしずしずと進む元親に
合わせて、元就もゆっくりと足を動かす。
やがて、船内の奥へて向かうふたりの背中に「ごゆっくり~♪」と、意味深な呼
びかけが聞こえてきた。
「さーて、いよいよお楽しみだな」
「用意は出来てんのか?」
「バッチリっス!」
「新婚初夜かぁ…今までコッソリお嬢の寝姿を覗いた事はあるけど、流石に今回
はマズイよなぁ」
「頼むからやめて下さい。元就様に知られた日には、我々『捨て駒』通り越えて、
『厳島の人柱』確定です」
「用意は出来てんのか?」
「バッチリっス!」
「新婚初夜かぁ…今までコッソリお嬢の寝姿を覗いた事はあるけど、流石に今回
はマズイよなぁ」
「頼むからやめて下さい。元就様に知られた日には、我々『捨て駒』通り越えて、
『厳島の人柱』確定です」
様々な人々の表情と思惑を、夜空に輝く月が、興味深げに見下ろしていた。




