忍び達は主達の向かい合わせの位置に並んで、両足を抱えて腰掛ける。
「構わずに足を伸ばせ、窮屈じゃろう」
遠慮がちに足を伸ばしきると皆の足首からつま先のあたりまでがぶつかり合う。
主達がえい、えい、と忍び達の足をつついてくるので
「はしゃぎすぎですってば!もう!!」
やれやれ、と応戦につき合ってやる。
身体がほぐれたところで皆で酒を一口ずつまわし飲みし、皆で談笑に興じた。
「構わずに足を伸ばせ、窮屈じゃろう」
遠慮がちに足を伸ばしきると皆の足首からつま先のあたりまでがぶつかり合う。
主達がえい、えい、と忍び達の足をつついてくるので
「はしゃぎすぎですってば!もう!!」
やれやれ、と応戦につき合ってやる。
身体がほぐれたところで皆で酒を一口ずつまわし飲みし、皆で談笑に興じた。
軽く酔いがまわってきて、体が気だるく感じはじめる頃。
「ふう、ひとやすみさせてくださいね」
謙信が湯に足だけを残して湯船の縁に腰掛け、風にあたる。
信玄の毛の薄い頭に滲む汗をてぬぐいで撫でるように拭う。
「ふう、ひとやすみさせてくださいね」
謙信が湯に足だけを残して湯船の縁に腰掛け、風にあたる。
信玄の毛の薄い頭に滲む汗をてぬぐいで撫でるように拭う。
「はーあ、せっかくいい場所なのにさぁ…何、ふたりとも枯れちゃってんの?」
もっといいところ見せてよ、とせっつく
「おいおい、そんなに言ってくれるな、佐助」
「そう、こころせくこともないでしょうに。…それに」
はぁー、とため息をついて
「てんがみている…」
邪淫は神に背く行為だからと自分を頑なに戒める。信仰心の呵責が邪魔をして
一線を越えることをためらってしまっている。
「ま、そういうことじゃから無理を言うな」
信玄は謙信の信仰を踏みにじってしまうことを良しとせず、自ら事を起こすことは
できずにいる。
もっといいところ見せてよ、とせっつく
「おいおい、そんなに言ってくれるな、佐助」
「そう、こころせくこともないでしょうに。…それに」
はぁー、とため息をついて
「てんがみている…」
邪淫は神に背く行為だからと自分を頑なに戒める。信仰心の呵責が邪魔をして
一線を越えることをためらってしまっている。
「ま、そういうことじゃから無理を言うな」
信玄は謙信の信仰を踏みにじってしまうことを良しとせず、自ら事を起こすことは
できずにいる。
しがらみに囚われずに素直になってしまえばいいのに、と忍び達はもどかしく思う。
そこで、ここはひとつ、ふたりをけしかけてみようと密かにたくらむ。
そこで、ここはひとつ、ふたりをけしかけてみようと密かにたくらむ。
「ねぇ…それってさ、俺たちに対しての嫌味?」
努めてひねくれた物言いで謙信を攻撃する。
忍び達の態度の急変ぶりにきょとんとする信玄と謙信。
「謙信様のおっしゃるとおりならば…私達はお傍にいることもかなわぬ程に、
汚れた存在…」
「…俺たちはとっくに神様から見放されちゃってるやねぇ。忍びの仕事は
なんでもありだし、物心つく前から汚いことばーっかり仕込まれるんだからさ」
努めてひねくれた物言いで謙信を攻撃する。
忍び達の態度の急変ぶりにきょとんとする信玄と謙信。
「謙信様のおっしゃるとおりならば…私達はお傍にいることもかなわぬ程に、
汚れた存在…」
「…俺たちはとっくに神様から見放されちゃってるやねぇ。忍びの仕事は
なんでもありだし、物心つく前から汚いことばーっかり仕込まれるんだからさ」
忍び達からそんなにトゲのある言葉が返ってくるとは思わず、謙信は慌てて訂正する。
「あっ、いえ、おまえたちをそのようにいうつもりは…」
「いーや、そういうふうにしか聞こえないって」
「立場が違いますものね、人の上に立つお方から見れば、くのいちなど卑しい
雌犬同然…」
「汚れ仕事は俺たちの役目。…まっ、人以下の扱いには慣れてっからね」
「あっ、いえ、おまえたちをそのようにいうつもりは…」
「いーや、そういうふうにしか聞こえないって」
「立場が違いますものね、人の上に立つお方から見れば、くのいちなど卑しい
雌犬同然…」
「汚れ仕事は俺たちの役目。…まっ、人以下の扱いには慣れてっからね」
「…ちがう!そんなっ…おまえたちをいやしいなどとは、ただのいちども…」
「へぇ…」
「ふーん…」
いつになく冷たい態度を見せる忍びたちに
「………はぁ、わたくしがいけませんでしたね」
素直に忍び達の言い分を受け入れて非礼を詫び、許しを請う。
「へぇ…」
「ふーん…」
いつになく冷たい態度を見せる忍びたちに
「………はぁ、わたくしがいけませんでしたね」
素直に忍び達の言い分を受け入れて非礼を詫び、許しを請う。