「某、昔は長く伸ばしていたのでござる。…が、初陣で…」
例の初陣かと頷き、槍に一度視線をよこしてから幸村を見やった。
「切っちまったのか?まあ、長くちゃ邪魔になるだろうがな」
いくらか沈痛な―又は怯えの混じったその顔を。
気づかないふりで言うと、否、と幸村は律儀に首を振った。
暖かな体温もすうと戻される。
言いたくないことなら言うな、と言っただろ。
そのくせ聞いてしまった自分に唾を吐きかけたい気持ちでいると、幸村はゆっくりと口を開いた。
「…技を出した折、髪に燃え移ってしまったのでござる。気づけばあたり一面焼け野原、鎧の中も火傷しそうなほど暑く、髪も焼け焦げ…某、もはやこれまでかと…佐助が霧隠れの術を使い、某に水をかけねばどうなっていたことか」
沈痛な表情だった。
「あのな…いや、いい。大変な目に会ったことは分かった。じゃあ、そこだけ長いのは燃え残りってわけか」
脳裏に浮かんだ気遣う言葉はうそ臭く、政宗はさっさと話をすすめる。
しっぽのようにひと束だけ長い髪を指に絡めながら。
「うむ、焦げてちぢんだ髪も後で佐助が切ってしまった。どうせならすべて切ってしまえばよいとも思うのだが、余計に怒られてしまったのでござる」
「余計ってことはアレか、よっぽど絞られたな?」
「……しばらく半狂乱でござった……」
恐怖の記憶の殆どはこっぴどく叱られた部分にあるらしく、幸村はより陰鬱な顔になった。
幸せそうな幸村でも、そんな顔は出来るらしい。
例の初陣かと頷き、槍に一度視線をよこしてから幸村を見やった。
「切っちまったのか?まあ、長くちゃ邪魔になるだろうがな」
いくらか沈痛な―又は怯えの混じったその顔を。
気づかないふりで言うと、否、と幸村は律儀に首を振った。
暖かな体温もすうと戻される。
言いたくないことなら言うな、と言っただろ。
そのくせ聞いてしまった自分に唾を吐きかけたい気持ちでいると、幸村はゆっくりと口を開いた。
「…技を出した折、髪に燃え移ってしまったのでござる。気づけばあたり一面焼け野原、鎧の中も火傷しそうなほど暑く、髪も焼け焦げ…某、もはやこれまでかと…佐助が霧隠れの術を使い、某に水をかけねばどうなっていたことか」
沈痛な表情だった。
「あのな…いや、いい。大変な目に会ったことは分かった。じゃあ、そこだけ長いのは燃え残りってわけか」
脳裏に浮かんだ気遣う言葉はうそ臭く、政宗はさっさと話をすすめる。
しっぽのようにひと束だけ長い髪を指に絡めながら。
「うむ、焦げてちぢんだ髪も後で佐助が切ってしまった。どうせならすべて切ってしまえばよいとも思うのだが、余計に怒られてしまったのでござる」
「余計ってことはアレか、よっぽど絞られたな?」
「……しばらく半狂乱でござった……」
恐怖の記憶の殆どはこっぴどく叱られた部分にあるらしく、幸村はより陰鬱な顔になった。
幸せそうな幸村でも、そんな顔は出来るらしい。




