「マジだって。嘘は言わねぇ。信じろ」
我ながら滑稽な台詞だ。乳房に触れる為に信頼を得ようとするなど、青臭いにも程があると元親は己を嘲る。
確かに決して間違いは言っていないが、どうにも無知のくせに何事も確認しなければ気がすまない女の真っ直ぐさには調子が狂う。
それすら愛しく感じることにも、だが。
「男っつうのはな、女がキレイでいてくれるから戦に出ても平気でいられるモンなんだよ」
僅かに苛立って低い声音で続けた。元親には今更このような台詞は童貞のそれのようで恥ずかしいだけなのだが、
それより更にわかってない女は至極大真面目に会話しようとする。(これじゃ俺が、えー、羞恥ぷれい?だ。クソ)
「意味が通じぬわ…何より、そなた、我のどこに…」
言いかけて元就は言葉を止めた。自分のどこに美があるのか、と問おうとしたのだが答えはその前に気付いた。
我ながら滑稽な台詞だ。乳房に触れる為に信頼を得ようとするなど、青臭いにも程があると元親は己を嘲る。
確かに決して間違いは言っていないが、どうにも無知のくせに何事も確認しなければ気がすまない女の真っ直ぐさには調子が狂う。
それすら愛しく感じることにも、だが。
「男っつうのはな、女がキレイでいてくれるから戦に出ても平気でいられるモンなんだよ」
僅かに苛立って低い声音で続けた。元親には今更このような台詞は童貞のそれのようで恥ずかしいだけなのだが、
それより更にわかってない女は至極大真面目に会話しようとする。(これじゃ俺が、えー、羞恥ぷれい?だ。クソ)
「意味が通じぬわ…何より、そなた、我のどこに…」
言いかけて元就は言葉を止めた。自分のどこに美があるのか、と問おうとしたのだが答えはその前に気付いた。
この男は別に、自分を美しいと言っている訳ではないのだ。そう、子を作ろうとしているだけで、愛しんでいるのではない。
何の調略か、と問うたのは他ならぬ我だ。妻にと望まれているのも一重に政の為なのは自明の理。
長曾我部側にも世継ぎが必要なのはけだし当然。男なのであるから、妾に産ませればいいようなものを。
どうやらこの男の基本思考は、人の繋がりとは過度にも思える馴れ合いを根底に置いているようであるから、
曲がりなりにも一応は女の身である自分を娶ろうとするのは、無理があるが有り得ぬ流れではないのやもしれぬ。
今、長曾我部が言うのは飽くまで一般論だ。慈しみ合う男女とはもしやこのような触れ合いをするものか。
それならば、男は馬鹿正直にその作法に乗っ取っているだけ、なのだ。
何の調略か、と問うたのは他ならぬ我だ。妻にと望まれているのも一重に政の為なのは自明の理。
長曾我部側にも世継ぎが必要なのはけだし当然。男なのであるから、妾に産ませればいいようなものを。
どうやらこの男の基本思考は、人の繋がりとは過度にも思える馴れ合いを根底に置いているようであるから、
曲がりなりにも一応は女の身である自分を娶ろうとするのは、無理があるが有り得ぬ流れではないのやもしれぬ。
今、長曾我部が言うのは飽くまで一般論だ。慈しみ合う男女とはもしやこのような触れ合いをするものか。
それならば、男は馬鹿正直にその作法に乗っ取っているだけ、なのだ。
(子が欲しい。早計かもしれぬが…逆に言えば織田か豊臣か、とにかく攻め込まれぬ内に産むのは悪くない。
――――同じか、長曾我部。そうであろうよ。我らの利害は一致している)
――――同じか、長曾我部。そうであろうよ。我らの利害は一致している)
その身に宿さぬ男の体ならば、尚更。種は出来るだけ多く撒いておいた方がよかろう。
そして、また――――おいていかれる、のか
虹はすぐに消えてしまうのだから
虹はすぐに消えてしまうのだから
「…また妙なコト考えてっだろ、お前ぇ」
元就がまたふいに肌寒さを意識していると、元親が彼女の鼻をつまんだ。滑稽な様子だがされた元就は不快さに首を振る。
放されたが鈍く痛む鼻先を指でさすり、ついでにもう片方の手で涙を拭った。
している本人は意識していない幼い仕草に元親の心臓が揺れる。突き放しておいて可憐さで誘惑する女の卑怯さ。
ただでさえ抑えに抑えて我慢しているというのに、このままでは爆発しそうだ。
やや乱暴に唇を重ねる。かちりと音をたてる白い歯はどちらのものであったか。
「ひとりでごちゃごちゃしてねぇでよ、まずは口に出して言ってみ?」
「貴様の言う妙な事など、何もないわ。阿呆」
罵られて額の血管が浮くのを感じたが、元親は平素を装う。しかし声音に苛つきが混ざるのは止められなかった。
「言えよ、何考えてる。欲しいモンはなんだ」
元就がまたふいに肌寒さを意識していると、元親が彼女の鼻をつまんだ。滑稽な様子だがされた元就は不快さに首を振る。
放されたが鈍く痛む鼻先を指でさすり、ついでにもう片方の手で涙を拭った。
している本人は意識していない幼い仕草に元親の心臓が揺れる。突き放しておいて可憐さで誘惑する女の卑怯さ。
ただでさえ抑えに抑えて我慢しているというのに、このままでは爆発しそうだ。
やや乱暴に唇を重ねる。かちりと音をたてる白い歯はどちらのものであったか。
「ひとりでごちゃごちゃしてねぇでよ、まずは口に出して言ってみ?」
「貴様の言う妙な事など、何もないわ。阿呆」
罵られて額の血管が浮くのを感じたが、元親は平素を装う。しかし声音に苛つきが混ざるのは止められなかった。
「言えよ、何考えてる。欲しいモンはなんだ」
女が、うんざりした顔で答えた。
聞いた男は一瞬目を見張って、それから怒りで顔を赤くした。
聞いた男は一瞬目を見張って、それから怒りで顔を赤くした。
「子…跡継ぎだ。知れた事であろう長曾我部、そちら側とて…」
「いい加減にしろよ毛利元就…!」
「いい加減にしろよ毛利元就…!」
突然吼えた男に元就は身を縮こまらせた。怒りを誘う言葉は言っていないはずだが。
しかし、元親は乱暴に元就の胸を握った。ぐにぐにと力任せに揉みしだいて、腫れる乳首を爪で引っ掻いた。
「…いっ…」
元就が痛みで顔を歪めたが無視する。先に自分の心を無視したのはこの女の方なのだから。
「んなよぉ、イイ顔しといて今更世継ぎが欲しいから、は無ぇよなぁ…?」
は、と元就は意味が判らず眉を眉間に寄せる。男が、また鬼の目になっている。いや、最初からそうだったのか。
「お前よ、もしかして…ガキこさえるためならどんな野郎にでも股開く、とか言わねぇだろうな」
「何を判らぬことを。子を作ろうとしてきたのはそなたが先ぞ」
「聞き分けろ、元就。いいか、何でもやるって言った。欲しいモノなんでも。それはなぁ、これも言ったな?
お前に惚れてるからだ。クソ、それをお前、…また家とか国とか下らん事で見ない振りする気かよ!」
叫ぶ最中にも既に元親は後悔し始めている。違うとはわかっている。この女は、本当に判っていないのだ。
肘を立て逃げようとする元就を容易く押さえつける。こんなに非力なくせに。無防備すぎる。
それは、無知が故、自覚の無さが故だ。
元親は宴の席で元就の背後に控えていた兵士を思い出した。この離れにまでも付いて来たぎらついた目の男を。
部下の中にもあからさまに欲情を向ける男がいるのに。危なっかしくて見ていられない。
しかし、元親は乱暴に元就の胸を握った。ぐにぐにと力任せに揉みしだいて、腫れる乳首を爪で引っ掻いた。
「…いっ…」
元就が痛みで顔を歪めたが無視する。先に自分の心を無視したのはこの女の方なのだから。
「んなよぉ、イイ顔しといて今更世継ぎが欲しいから、は無ぇよなぁ…?」
は、と元就は意味が判らず眉を眉間に寄せる。男が、また鬼の目になっている。いや、最初からそうだったのか。
「お前よ、もしかして…ガキこさえるためならどんな野郎にでも股開く、とか言わねぇだろうな」
「何を判らぬことを。子を作ろうとしてきたのはそなたが先ぞ」
「聞き分けろ、元就。いいか、何でもやるって言った。欲しいモノなんでも。それはなぁ、これも言ったな?
お前に惚れてるからだ。クソ、それをお前、…また家とか国とか下らん事で見ない振りする気かよ!」
叫ぶ最中にも既に元親は後悔し始めている。違うとはわかっている。この女は、本当に判っていないのだ。
肘を立て逃げようとする元就を容易く押さえつける。こんなに非力なくせに。無防備すぎる。
それは、無知が故、自覚の無さが故だ。
元親は宴の席で元就の背後に控えていた兵士を思い出した。この離れにまでも付いて来たぎらついた目の男を。
部下の中にもあからさまに欲情を向ける男がいるのに。危なっかしくて見ていられない。




