統一戦線の歌(Einheitsfrontlied)(『そして人間は人間であるから…』)は、ドイツ労働者運動で最も知られた歌の一つである。作詞は ベルトルト・ブレヒト、作曲は ハンス・アイスラー による。特に エルンスト・ブッシュ による演唱で広く知られるようになった。
成立
本歌は1934年末、 エルヴィン・ピスカトル の依頼により、1935年ストラスブールで行われた第一回国際音楽オリンピアードのために作られた。そこで初演され、約3000名の労働者歌手によって歌われた。印刷物としては1937年、スペイン内戦の最中にマドリードで初めて出版され、「統一戦線の歌」として エルンスト・ブッシュ により刊行された。音楽オリンピアード自体は、共産党と社会民主党間の対立に彩られたものであったが、この歌には統一を求める意志が込められている。
背景
この歌は、ワイマール共和国下の労働者運動の状況および1933年以降の初期状況を背景としている。1917年以降、ドイツの労働者政党は分裂しており、ワイマール共和国において国家を支える立場をとるドイツ社会民主党(SPD)と、これを根本的に拒否するドイツ共産党(KPD)の間に深い対立が存在した。コミンテルンの方針に従い、社会民主党は「社会ファシスト」(社会ファシズム論)と中傷された。ナチスの政権掌握後、SPDとKPDが禁止されると、ブレヒトを含む一部の声から、共産党と社会民主党が統一戦線を組む以外に、ナチスに立ち向かう方法はないとの主張が強まった。
歌詞の内容
歌詞は四つの連と、四行ずつのリフレインからなる。ブレヒトは、資本主義的生産条件下でのプロレタリアートの基本的立場を示すとともに、「そして人間は人間であるから」という統一の利害を強調している。これにより、共産主義者と社会民主主義者の労働者は、長年の党派間抗争を超えて共通の敵であるファシズムを認識し、統一戦線として戦うべきことを理解させる構成となっている。
主な歌詞(原文の意訳)
左、二、三! 左、二、三!
同志よ、お前の場所はここである!
労働者統一戦線に加われ
お前もまた労働者であるからだ
同志よ、お前の場所はここである!
労働者統一戦線に加われ
お前もまた労働者であるからだ
作曲について
統一戦線の歌は、アイスラーの他の作品に比べて簡素であり、音楽教育を受けていない者でも容易に歌える構成である。初版は典型的な傾向歌の特徴をもち、行進曲風の拍子と大人数合唱を特徴とする。1948年、アイスラーはシンフォニックな第二版を作曲し、ファシズムと結びつけられた行進曲的要素から距離を置こうとした。ブッシュはこの版を用い、「オーロラ・プロジェクト」の録音に採用した。これは、初期東ドイツにおけるクラシック神話形成への言及とも考えられる。1935年、アイスラーはマルセル・ルービンに宛てて次のように書き送っている。「この歌は非常に簡単に歌えるものでなければならぬ。叫ぶな、偽りの軍事的喚声もなし!速すぎず、遅すぎず!」
翻訳・カバー
イェーブ・ロゼンタール は、ウィルナのゲットーで本歌のイディッシュ語版を作った(עס האָט אונדז דאָס לעבן גערופן …)。
1977年、 ハンネス・ヴァーダー がアルバム『Hannes Wader singt Arbeiterlieder』でカバー。
1973年、 ブレッツマン/ファン・ホーヴェ/ベニンク がフリージャズ版を録音。
左派ロックバンド トーン・シュタイン・シェルベン も本歌を『Warum geht es mir so dreckig?』(1971年)の一曲「Macht kaputt, was euch kaputt macht」に添えて演奏。
その他パンク系カバーも多数存在する(例: Tut das Not、 Commandantes)。
インストゥルメンタル版は チャーリー・ヘイデン のジャズ・アルバム『Liberation Music Orchestra』(1969年)で『Song of the United Front』として収録されている。