アナザーディケイドとの戦いはあくまで殺すのではなく、暴走を止めること。
変身者である新八を正気に戻す為の戦い故に、本気の攻撃は控えるべきだろうか。
蓮のそんな考えは僅か数秒で消し飛んだ。
変身者である新八を正気に戻す為の戦い故に、本気の攻撃は控えるべきだろうか。
蓮のそんな考えは僅か数秒で消し飛んだ。
「ガァアアアアアアアアアアッ!!」
人間どころか獣に近い雄叫びを上げ、拳が放たれる。
その勢いたるや、アーマージャックにも引けを取らない程だ。
マガツイザナギで防いだものの、衝撃の余波が容赦なくジョーカーを襲う。
吹き飛ばされそうになるのを踏み止まり、しかし一息つく暇は無い。
即座に距離を詰めたアナザーディケイドの剛腕が、ジョーカーの仮面ごと頭部を粉砕すべく振るわれた。
ライダーの身体能力を総動員してのバックステップにより回避、同時にアルセーヌを出現させる。
放たれたのは二つ、ラクンダとスクンダ。
これまでの戦闘で度々使用した、耐久力と敏捷性を低下させるスキルがアナザーディケイドを襲う。
その勢いたるや、アーマージャックにも引けを取らない程だ。
マガツイザナギで防いだものの、衝撃の余波が容赦なくジョーカーを襲う。
吹き飛ばされそうになるのを踏み止まり、しかし一息つく暇は無い。
即座に距離を詰めたアナザーディケイドの剛腕が、ジョーカーの仮面ごと頭部を粉砕すべく振るわれた。
ライダーの身体能力を総動員してのバックステップにより回避、同時にアルセーヌを出現させる。
放たれたのは二つ、ラクンダとスクンダ。
これまでの戦闘で度々使用した、耐久力と敏捷性を低下させるスキルがアナザーディケイドを襲う。
「オラオラオラオラオラオラァッ!」
間髪入れずに衝撃が連続してアナザーディケイドに叩き込まれる。
新八を止めるべく戦うのはジョーカーだけではない。
放送前から彼と行動を共にしていた少年、承太郎もだ。
近接戦において無類の強さを誇るスタンド、その破壊力に翳り無し。
ラクンダにより耐久力を削がれた肉体へ、遠慮なしに殴りかかった。
新八を止めるべく戦うのはジョーカーだけではない。
放送前から彼と行動を共にしていた少年、承太郎もだ。
近接戦において無類の強さを誇るスタンド、その破壊力に翳り無し。
ラクンダにより耐久力を削がれた肉体へ、遠慮なしに殴りかかった。
「ウグァッ!!」
だが拳が直撃した当のアナザーディケイド本人に、痛がる素振りは見られない。
己の肉体へのダメージなど知った事では無いとばかりに、スタープラチナへ拳を放つ。
攻撃を中断し両腕でガードの構えを取る。
間一髪で防御に成功はしたが、腕に走るのは痺れるような鈍い痛み。
顔を顰めた承太郎の反応に構う事無く、続けて拳を放ち続けた。
己の肉体へのダメージなど知った事では無いとばかりに、スタープラチナへ拳を放つ。
攻撃を中断し両腕でガードの構えを取る。
間一髪で防御に成功はしたが、腕に走るのは痺れるような鈍い痛み。
顔を顰めた承太郎の反応に構う事無く、続けて拳を放ち続けた。
「ペルソナ!」
稀代の大怪盗の名を冠するペルソナが放つはマハエイハ。
呪怨属性のスキルに、アナザーディケイドの肉体は蝕まれる。
しかし相手は仮面ライダーの破壊者を更に歪めた、悪魔の如き怪人。
負の感情が込められたスキルなど多少鬱陶しい程度のものでしかなく、ダメージは期待できない。
呪怨属性のスキルに、アナザーディケイドの肉体は蝕まれる。
しかし相手は仮面ライダーの破壊者を更に歪めた、悪魔の如き怪人。
負の感情が込められたスキルなど多少鬱陶しい程度のものでしかなく、ダメージは期待できない。
「オラオラオラオラオラオラオラ」
尤もジョーカーからしても、これで倒せるとは微塵も思っていない。
攻撃を僅かにでも止め、自分の方へ意識を向けさせれば問題なし。
そうすれば承太郎がすぐに立て直せる。
ジョーカーの狙い通り、すかさずスタープラチナのラッシュを放ち再度打って出た。
攻撃を僅かにでも止め、自分の方へ意識を向けさせれば問題なし。
そうすれば承太郎がすぐに立て直せる。
ジョーカーの狙い通り、すかさずスタープラチナのラッシュを放ち再度打って出た。
「グゥウウウウウウウウ…!!」
破壊力のみならずスピードも桁外れ。
JUDOでさえ警戒した速さの拳を前にしても、アナザーディケイドは健在。
スタープラチナのラッシュに対抗するように手刀を振るい、拳を全て捌く。
胴体や顔面部を狙ったはずのラッシュは一つ残らず防がれた。
JUDOでさえ警戒した速さの拳を前にしても、アナザーディケイドは健在。
スタープラチナのラッシュに対抗するように手刀を振るい、拳を全て捌く。
胴体や顔面部を狙ったはずのラッシュは一つ残らず防がれた。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
されど承太郎もまた拳を放ち続ける。
魔王と戦った時と同じだ、攻撃の手を緩めれば即座に殺されるに違いない。
だからひたすらラッシュを放つも、状況を変えるべく動き出したのは相手の方。
スタープラチナの拳を捌く手を片手のみに変えたのだ。
当然腕一本のみでは限界があり、防ぎ漏らした拳が幾つも体へヒットする。
魔王と戦った時と同じだ、攻撃の手を緩めれば即座に殺されるに違いない。
だからひたすらラッシュを放つも、状況を変えるべく動き出したのは相手の方。
スタープラチナの拳を捌く手を片手のみに変えたのだ。
当然腕一本のみでは限界があり、防ぎ漏らした拳が幾つも体へヒットする。
殴打の嵐を受けたというのに怯みはせず、空いた方の手でスタープラチナの腕を掴んだ。
「っ!?」
思いもよらぬ行動に承太郎の両目が見開かれる。
掴まれたスタープラチナの腕からはミシミシと不快な音がし、本体の承太郎にも痛みが伝わった。
このままでは握りつぶされる、判断したのとスタンドを操作したのはほぼ同時。
拘束から抜け出そうと、アナザーディケイドへ片手で拳を幾度も放つ。
掴まれたスタープラチナの腕からはミシミシと不快な音がし、本体の承太郎にも痛みが伝わった。
このままでは握りつぶされる、判断したのとスタンドを操作したのはほぼ同時。
拘束から抜け出そうと、アナザーディケイドへ片手で拳を幾度も放つ。
「グォオオオオオオオ…!」
何度殴られてもアナザーディケイドは拘束を緩めない。
狙いはこのままスタープラチナの腕を潰す事なのか?
違う。単に腕を潰すよりも、もっと強力な一撃で承太郎を仕留める気だ。
アナザーディケイドの腹部にある、ベルトのような物体。
本来ディケイドに変身する為のディケイドライバーに似た装飾のそれは、血走った眼球にも見える。
無論ただの飾りでは無い。
それを証明するように腹部からは紫色のエネルギー波が溢れ出し、スタープラチナを拘束するのとは反対の手に集まって行くではないか。
この一撃を食らうのは確実に危険、承太郎の脳が危険信号を鳴らす。
狙いはこのままスタープラチナの腕を潰す事なのか?
違う。単に腕を潰すよりも、もっと強力な一撃で承太郎を仕留める気だ。
アナザーディケイドの腹部にある、ベルトのような物体。
本来ディケイドに変身する為のディケイドライバーに似た装飾のそれは、血走った眼球にも見える。
無論ただの飾りでは無い。
それを証明するように腹部からは紫色のエネルギー波が溢れ出し、スタープラチナを拘束するのとは反対の手に集まって行くではないか。
この一撃を食らうのは確実に危険、承太郎の脳が危険信号を鳴らす。
『JOKER!MAXIMAM DRIVE!』
「ライダーキック!」
だが忘れてはならない、今の承太郎には共に戦う戦士がいることを。
マキシマムスロットに装填されたメモリが、必殺のエネルギーをジョーカーに付与する。
アーマージャックとの戦闘では拳に纏わせたソレは、今回はメモリから右脚へと伝導された。
跳躍したジョーカーはアナザーディケイド目掛けて右足を叩きつける。
マキシマムスロットに装填されたメモリが、必殺のエネルギーをジョーカーに付与する。
アーマージャックとの戦闘では拳に纏わせたソレは、今回はメモリから右脚へと伝導された。
跳躍したジョーカーはアナザーディケイド目掛けて右足を叩きつける。
口から自然と飛び出した名前。ある意味では仮面ライダーの代名詞とも言える必殺技。
ルブランにて見た翔太郎の記憶に登場した怪人、ヒートドーパントを下したのもこの蹴りだ。
ライダーキックが捉えたのは顔面や胴体ではない、スタープラチナを拘束する腕だった。
ルブランにて見た翔太郎の記憶に登場した怪人、ヒートドーパントを下したのもこの蹴りだ。
ライダーキックが捉えたのは顔面や胴体ではない、スタープラチナを拘束する腕だった。
エネルギーを一点に集中させた攻撃による衝撃は無視できない。
拘束が解かれた瞬間、承太郎はスタンドを解除。
続けて横へと大きく移動。エネルギーを纏ったアナザーディケイドの拳が放たれたのはその直後。
ネズミの速さの外套の効果で移動速度が強化されていた為、ギリギリの所で回避は間に合った。
拘束が解かれた瞬間、承太郎はスタンドを解除。
続けて横へと大きく移動。エネルギーを纏ったアナザーディケイドの拳が放たれたのはその直後。
ネズミの速さの外套の効果で移動速度が強化されていた為、ギリギリの所で回避は間に合った。
「マガツイザナギ!」
空振りした瞬間の隙に叩き込まれる、マガツイザナギの長得物。
豪快に振り回された斬撃は、当たりこそしたものの怯ませるには至らない。
続けてスキルを放とうとするジョーカー、だが直ぐに回避へと変更。
跳躍したのと同じタイミングで、足底の真下を腕が通過した。
豪快に振り回された斬撃は、当たりこそしたものの怯ませるには至らない。
続けてスキルを放とうとするジョーカー、だが直ぐに回避へと変更。
跳躍したのと同じタイミングで、足底の真下を腕が通過した。
所々が砕け散った床へはまだ着地せず、アナザーディケイドの胸板を蹴り上げる。
無論ダメージを期待しての事では無いし、事実敵は微動だにしない。
蹴り上げた際の反動を利用し後方へと移動、ついでにアルセーヌのスキルを放った。
夢見針が命中したものの、予想通り効果は無し。
眠ってしまえば取り敢えず暴走は止まると期待したが、そう都合良くはいかないようだ。
無論ダメージを期待しての事では無いし、事実敵は微動だにしない。
蹴り上げた際の反動を利用し後方へと移動、ついでにアルセーヌのスキルを放った。
夢見針が命中したものの、予想通り効果は無し。
眠ってしまえば取り敢えず暴走は止まると期待したが、そう都合良くはいかないようだ。
だがアナザーディケイドの意識はまたもやジョーカーの方へと移った。
またとない攻撃の機会である。
またとない攻撃の機会である。
「スタープラチナ・ザ・ワールド」
囁くような声は、時間停止発動の合図。
喧噪に包まれていた展望室が一瞬にして静まり返る。
アナザーディケイドとジョーカーだけではない、同じ階で戦闘中のエボルトとJUDOもだ。
完全な静寂に包まれた風都タワーで動く事が可能なのは、承太郎ただ一人のみ。
とはいえ止められる時間は無限ではない。僅かに得た猶予は無駄に出来ない。
拘束されていた腕の痛みなど気にしちゃあいられない、動かせるのならそれで十分だ。
喧噪に包まれていた展望室が一瞬にして静まり返る。
アナザーディケイドとジョーカーだけではない、同じ階で戦闘中のエボルトとJUDOもだ。
完全な静寂に包まれた風都タワーで動く事が可能なのは、承太郎ただ一人のみ。
とはいえ止められる時間は無限ではない。僅かに得た猶予は無駄に出来ない。
拘束されていた腕の痛みなど気にしちゃあいられない、動かせるのならそれで十分だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
時の止まった世界において承太郎の攻撃を防ぐ術は無い。
同じタイプのスタンドを持つDIOか、時間を操る力を持ったスウォルツならば対応出来ただろう。
アナザーディケイドにそういった力は無く、変身者である新八と肉体のフィリップも同様。
だから時の止まった世界での承太郎は実質無敵。
スタープラチナのラッシュを、アナザーディケイドは一方的に叩き込まれるばかり。
同じタイプのスタンドを持つDIOか、時間を操る力を持ったスウォルツならば対応出来ただろう。
アナザーディケイドにそういった力は無く、変身者である新八と肉体のフィリップも同様。
だから時の止まった世界での承太郎は実質無敵。
スタープラチナのラッシュを、アナザーディケイドは一方的に叩き込まれるばかり。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
だが拳を放っている最中にも、承太郎の表情には焦りが見えた。
バトルロワイアルで戦った剣士、志々雄と魔王も時間停止中にスタープラチナのラッシュをモロに食らい、派手に吹き飛んだのは記憶に新しい。
柱の男や魔族の肉体にも己のスタンドの力は有効だった。
だというのに今殴り続けている相手は、硬い。異様な程に硬過ぎる。
バトルロワイアルで戦った剣士、志々雄と魔王も時間停止中にスタープラチナのラッシュをモロに食らい、派手に吹き飛んだのは記憶に新しい。
柱の男や魔族の肉体にも己のスタンドの力は有効だった。
だというのに今殴り続けている相手は、硬い。異様な程に硬過ぎる。
「オォォォラァァァッ!!!!!」
2秒が経過し最後の一発を叩き込む。
百に届くかと言う数の拳を受けたアナザーディケイドは、これまでの相手と同じように後方へ吹き飛ばされる。
が、突如として出現した灰色のオーロラの中に姿を消した。
何処へ行ったと考えるより早く灰色のオーロラは承太郎の背後に出現、飛び出しながらアナザーディケイドは拳を突き出す。
百に届くかと言う数の拳を受けたアナザーディケイドは、これまでの相手と同じように後方へ吹き飛ばされる。
が、突如として出現した灰色のオーロラの中に姿を消した。
何処へ行ったと考えるより早く灰色のオーロラは承太郎の背後に出現、飛び出しながらアナザーディケイドは拳を突き出す。
「ペルソナ!」
マガツイザナギの長得物と拳が激突、余りの力強さにジョーカーは歯を食い縛ってふらつく体を強引に立たせる。
その一瞬の隙に強化された瞬発力を承太郎は発揮、一旦アナザーディケイドから距離を取った。
その一瞬の隙に強化された瞬発力を承太郎は発揮、一旦アナザーディケイドから距離を取った。
アルセーヌのスキルは間違いなく効いている。
デクンダのようなステータス低下を打ち消すスキルを使われた形跡は無い。
つまり能力を低下されて尚も、この強さと言う事か。
本気の攻撃は控えるなど全く馬鹿げた考えだった、新八を正気に戻す以前に自分達の身が危うい。
デクンダのようなステータス低下を打ち消すスキルを使われた形跡は無い。
つまり能力を低下されて尚も、この強さと言う事か。
本気の攻撃は控えるなど全く馬鹿げた考えだった、新八を正気に戻す以前に自分達の身が危うい。
確かにバトルロワイアルにおけるアナザーディケイドは、固有能力の大半を封じられている。
しかし単純な肉体スペックだけでも、他のアナザーライダーを凌駕する力を持つ。
パワーに特化した仮面ライダーゲイツの強化形態、ゲイツリバイブ剛裂でもまともなダメージを与えられず、
グランドジオウによって召喚されたライダー達の技ですら撃破には至らなかった程に堅牢だ。
しかし単純な肉体スペックだけでも、他のアナザーライダーを凌駕する力を持つ。
パワーに特化した仮面ライダーゲイツの強化形態、ゲイツリバイブ剛裂でもまともなダメージを与えられず、
グランドジオウによって召喚されたライダー達の技ですら撃破には至らなかった程に堅牢だ。
JUDOと戦っていた時は必死に破壊衝動へ抗っていたが、今は身を任せているのも大きく影響している。
新八の抵抗により枷を付けられているに等しかった力を、暴走状態となった事で存分に振るえるようになった。
新八の抵抗により枷を付けられているに等しかった力を、暴走状態となった事で存分に振るえるようになった。
「グォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
全てを破壊する。
その為ならば自身の負傷すら無視し襲い掛かる悪魔を前に、スタンド使いとペルソナ使いの二人もまた衰えぬ闘志を以てして迎え撃つ。
その為ならば自身の負傷すら無視し襲い掛かる悪魔を前に、スタンド使いとペルソナ使いの二人もまた衰えぬ闘志を以てして迎え撃つ。
○
トリガーを引く度にそれぞれの銃口から、エネルギー弾と高熱硬化弾が発射される。
一発一発に十分な殺意を乗せた銃弾は敵の装甲から火花を散らし、じわじわと体力を削り取る役目を持つ。
だがどちらの弾もその役目は果たせず、躱され、或いは弾き落とされる。
普通の人間は発射される前ならまだしも、発射された後で銃弾に対し出来る事など無い。
精々狙いが外れているようなけなしの信仰心を振り絞って、いるかどうかも分からない神に祈るくらいだろう。
対処出来た二人は普通では無いし、そもそも人間ですら無かった。
一発一発に十分な殺意を乗せた銃弾は敵の装甲から火花を散らし、じわじわと体力を削り取る役目を持つ。
だがどちらの弾もその役目は果たせず、躱され、或いは弾き落とされる。
普通の人間は発射される前ならまだしも、発射された後で銃弾に対し出来る事など無い。
精々狙いが外れているようなけなしの信仰心を振り絞って、いるかどうかも分からない神に祈るくらいだろう。
対処出来た二人は普通では無いし、そもそも人間ですら無かった。
『おっ、と』
強化グローブに覆われた拳でエネルギー弾を防ぎながらも、トランスチームガンを連射する。
体を捩ったり地面を転がっての回避だけでなく、こうした対処法は向こうも同じようにやっていた。
今もそう、高熱硬化弾が手刀ではたき落とされた。
別に目を見開き口をあんぐりと開けて驚くような光景でも無い。
ブラッドスタークでやれる事は、ディケイドにも可能と言うだけのこと。
体を捩ったり地面を転がっての回避だけでなく、こうした対処法は向こうも同じようにやっていた。
今もそう、高熱硬化弾が手刀ではたき落とされた。
別に目を見開き口をあんぐりと開けて驚くような光景でも無い。
ブラッドスタークでやれる事は、ディケイドにも可能と言うだけのこと。
ブラッドスタークもディケイドも撃った弾の数は覚えておらず、そもそも計算して撃つこと自体していない。
通常の銃火器ならば装填された残弾や、予備の弾の数を考えて無駄撃ちを避けるだろう。
既に分かり切っているように、仮面ライダーやトランスチームシステムの怪人が使用する武器もまた普通の範疇には収まらない。
ライドブッカーは無尽蔵のエネルギー源を持ち、トランスチームガンは生成ユニットを搭載している。
どちらの銃も弾切れと言う概念は存在しない。トリガーを引けば引いた分弾が発射される。
残弾など気にはせず、ただ相手を殺す事のみに意識を回していた。
だがこのまま撃ったり避けたり防いだりを続けた所で、埒が明かないのも事実。
通常の銃火器ならば装填された残弾や、予備の弾の数を考えて無駄撃ちを避けるだろう。
既に分かり切っているように、仮面ライダーやトランスチームシステムの怪人が使用する武器もまた普通の範疇には収まらない。
ライドブッカーは無尽蔵のエネルギー源を持ち、トランスチームガンは生成ユニットを搭載している。
どちらの銃も弾切れと言う概念は存在しない。トリガーを引けば引いた分弾が発射される。
残弾など気にはせず、ただ相手を殺す事のみに意識を回していた。
だがこのまま撃ったり避けたり防いだりを続けた所で、埒が明かないのも事実。
状況を変えるべく先に動いたのはブラッドスターク。
銃弾を防ぐ左手は止めず、反対にトランスチームガンを持った右手は下ろした。
戦闘の放棄ではない。自身の身体を赤い影のように変化させ、ディケイドへと急接近。
元の世界ではナイトローグとの、バトルロワイアルではウェザードーパントとの戦闘に使用した移動方法。
至近距離へと到達し実体を露わにすれば、何時の間にやら左手にはバルブの付いた短剣が握られていた。
専用武器であるスチームブレードを振り下ろす。リーチは短いがこの距離なら確実に当てられる。
響く音は甲高い金属音。当たったのはディケイドの装甲ではなく、細身の刀身。
ライドブッカーをガンモードからソードモードへと瞬時に変形させ、防御したのだった。
とはいえこの程度はブラッドスタークにとっても想定内。
銃弾を防ぐ左手は止めず、反対にトランスチームガンを持った右手は下ろした。
戦闘の放棄ではない。自身の身体を赤い影のように変化させ、ディケイドへと急接近。
元の世界ではナイトローグとの、バトルロワイアルではウェザードーパントとの戦闘に使用した移動方法。
至近距離へと到達し実体を露わにすれば、何時の間にやら左手にはバルブの付いた短剣が握られていた。
専用武器であるスチームブレードを振り下ろす。リーチは短いがこの距離なら確実に当てられる。
響く音は甲高い金属音。当たったのはディケイドの装甲ではなく、細身の刀身。
ライドブッカーをガンモードからソードモードへと瞬時に変形させ、防御したのだった。
とはいえこの程度はブラッドスタークにとっても想定内。
エメラルドグリーンのバイザーに隠された視覚センサーと、人間の8倍の視細胞を持つ緑の眼が交差する。
会話は無い、ただそれを合図に互いの刃が振るわれた。
会話は無い、ただそれを合図に互いの刃が振るわれた。
一手早かったのはスチームブレード。
リーチが短い分、取り回しにおいては若干の有利が傾く。
武器内部に組み込まれた機能を使い、刃全体を急速加熱する。
ルブラン前での戦闘でシロの下顎を溶かし斬ったように、人体やら並の装甲などバターと変わらない。
熱せられた刃を防いでも変形しない、ディケイドの専用武器には関係の無い話だが。
ディヴァインオレというディケイドの各部装甲にも使われている特殊な鉱石は、ライドブッカーの刃にも加工済み。
スチームブレードとの打ち合いを可能にしていた。
リーチが短い分、取り回しにおいては若干の有利が傾く。
武器内部に組み込まれた機能を使い、刃全体を急速加熱する。
ルブラン前での戦闘でシロの下顎を溶かし斬ったように、人体やら並の装甲などバターと変わらない。
熱せられた刃を防いでも変形しない、ディケイドの専用武器には関係の無い話だが。
ディヴァインオレというディケイドの各部装甲にも使われている特殊な鉱石は、ライドブッカーの刃にも加工済み。
スチームブレードとの打ち合いを可能にしていた。
「悪くない反応だな」
振り上げられた刃を防がれ、反対に顔面へ突き出された切っ先を弾きながらディケイドが言う。
唐突な称賛を向けられても特に大きな反応はせず、そりゃどうもとだけ返しブラッドスタークは首を狙った一撃を防いだ。
唐突な称賛を向けられても特に大きな反応はせず、そりゃどうもとだけ返しブラッドスタークは首を狙った一撃を防いだ。
単純なスペックだけ見れば、勝っているのはブラッドスタークの方。
元々トランスチームシステムとは、仮面ライダーのハザードレベルを上げる為のライバルという役目で開発された。
それ故か基本的な性能は高めに設定されており、仮面ライダーと違ってハザードレベルが上がらない欠点を能力の高さで補っている。
加えてJUDOがバトルロワイアルにてディケイドに初めて変身したのに対し、エボルトは元の地球にいた時からブラッドスタークへ変身していた。
仮面ライダーエボルに戻るまでの「繋ぎ」に過ぎないとはいえ、エボルト自身の戦闘技能の高さも相まって他のライダー達と互角以上に渡り合うくらいには使いこなしている。
元々トランスチームシステムとは、仮面ライダーのハザードレベルを上げる為のライバルという役目で開発された。
それ故か基本的な性能は高めに設定されており、仮面ライダーと違ってハザードレベルが上がらない欠点を能力の高さで補っている。
加えてJUDOがバトルロワイアルにてディケイドに初めて変身したのに対し、エボルトは元の地球にいた時からブラッドスタークへ変身していた。
仮面ライダーエボルに戻るまでの「繋ぎ」に過ぎないとはいえ、エボルト自身の戦闘技能の高さも相まって他のライダー達と互角以上に渡り合うくらいには使いこなしている。
ではエボルトが圧倒的に有利なのかと言えば、それは否。
確かにエボルトにとってブラッドスタークは使い慣れた力だ。
しかし変身前の肉体はそうではない。
今更改めて説明する内容でもないが、バトルロワイアルにてエボルトに与えられた肉体は桑山千雪と言う争いとは無縁のアイドル。
体力作りをこなし運動能力を高めてはいるが、それらはステージ上でのパフォーマンスを成功させる為のものであり、間違っても戦闘目的では無い。
手先の器用さも雑貨作りに向けているものであり、人殺しの技術に活かしたものではない。
屋台の射的では百発百中の腕前を持っていても、本物の銃を人間相手に撃った経験など有り得る筈がない。
根本的に戦い向きではない肉体を、変身後のスペックとエボルトの戦闘技術でどうにか補っている状態なのである。
しかし変身前の肉体はそうではない。
今更改めて説明する内容でもないが、バトルロワイアルにてエボルトに与えられた肉体は桑山千雪と言う争いとは無縁のアイドル。
体力作りをこなし運動能力を高めてはいるが、それらはステージ上でのパフォーマンスを成功させる為のものであり、間違っても戦闘目的では無い。
手先の器用さも雑貨作りに向けているものであり、人殺しの技術に活かしたものではない。
屋台の射的では百発百中の腕前を持っていても、本物の銃を人間相手に撃った経験など有り得る筈がない。
根本的に戦い向きではない肉体を、変身後のスペックとエボルトの戦闘技術でどうにか補っている状態なのである。
一方でJUDOの肉体、門矢士は仮面ライダーディケイドの本来の変身者である。
それ故に精神こそ別人であれど、ディケイドに変身した際には驚くほど馴染むのだ。
元々万能超人と言えるだけのスペックを有し、実際に疲労回復の早さにはJUDOも僅かながら感心を抱いた。
おまけに幾つものライダー世界への旅や、旅の果てに待ち受けたライダー大戦を経て磨き上げられた能力もまた、士の肉体へ強さを齎している。
それ故に精神こそ別人であれど、ディケイドに変身した際には驚くほど馴染むのだ。
元々万能超人と言えるだけのスペックを有し、実際に疲労回復の早さにはJUDOも僅かながら感心を抱いた。
おまけに幾つものライダー世界への旅や、旅の果てに待ち受けたライダー大戦を経て磨き上げられた能力もまた、士の肉体へ強さを齎している。
よってこの戦闘、一概にどちらが有利不利とは判断できないものである。
数十度目の剣の打ち合いになった頃、ブラッドスタークは右手を至近距離のディケイドに向けた。
ライドブッカーをスチームブレードで防ぎつつ、右手のトランスチームガンの引き金を引く。
防御に使うべきライドブッカーは間に合わず、手はどちらも柄を握り締めたまま。
高熱硬化弾が連続してディケイドに命中、アーマーの機能に衝撃が緩和されてもダメージを完全に防いではいない。
火花を散らしながら後退、ブラッドスタークに逃がす気は無いらしくトリガーは引かれ続ける。
致命傷とまではいかないが、こうも撃たれ続ければ非常に鬱陶しい事この上ない。
ライドブッカーをスチームブレードで防ぎつつ、右手のトランスチームガンの引き金を引く。
防御に使うべきライドブッカーは間に合わず、手はどちらも柄を握り締めたまま。
高熱硬化弾が連続してディケイドに命中、アーマーの機能に衝撃が緩和されてもダメージを完全に防いではいない。
火花を散らしながら後退、ブラッドスタークに逃がす気は無いらしくトリガーは引かれ続ける。
致命傷とまではいかないが、こうも撃たれ続ければ非常に鬱陶しい事この上ない。
「退けいっ!!!」
大地を震わせるかの如き怒声をディケイドが放つ。
怒鳴られた程度で攻撃を躊躇する相手では無い。
だがどうした事だろうか、ディケイドが怒声を放った途端にブラッドスタークの装甲から火花が大きく散ったではないか。
突然のダメージに銃撃は中断され、困惑しつつも距離を取った。
怒鳴られた程度で攻撃を躊躇する相手では無い。
だがどうした事だろうか、ディケイドが怒声を放った途端にブラッドスタークの装甲から火花が大きく散ったではないか。
突然のダメージに銃撃は中断され、困惑しつつも距離を取った。
『妙ちくりんな攻撃だな…』
ボヤく相手に種明かしをするつもりは無いが、今のがディケイドの能力だとはJUDOも把握して怒声を放った。
ディケイドの顔面部、人間で言えば丁度口に当たる箇所に搭載された機能。
これはブームボイスと言い、ディケイドの雄叫びを高周波として放つ立派な武器の一つ。
10mの岩石でさえ破壊可能な威力は、実戦でも有用なようだ。
ディケイドの顔面部、人間で言えば丁度口に当たる箇所に搭載された機能。
これはブームボイスと言い、ディケイドの雄叫びを高周波として放つ立派な武器の一つ。
10mの岩石でさえ破壊可能な威力は、実戦でも有用なようだ。
攻撃の正体をご丁寧に教えてくれるとは期待しちゃあいない。
コブラロストフルボトルをトランスチームガンに装填すれば、呼応するかのようにディケイドもカードをドライバーに叩き込む。
再度ガンモードに変形させたライドブッカーを向けられ、ブラッドスタークも己の銃を突き付けた。
コブラロストフルボトルをトランスチームガンに装填すれば、呼応するかのようにディケイドもカードをドライバーに叩き込む。
再度ガンモードに変形させたライドブッカーを向けられ、ブラッドスタークも己の銃を突き付けた。
――STEAM BREAK!COBRA!
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
10枚の巨大なカード型エネルギーを潜り抜け、銃弾は光線に形を変えた。
光の束はブラッドスタークを呑み込まんと迫り、同時に放たれた銃弾に相殺される。
ブラッドスタークの放ったコブラ型のエネルギーもまた、ディケイドへは届かなかった。
光の束はブラッドスタークを呑み込まんと迫り、同時に放たれた銃弾に相殺される。
ブラッドスタークの放ったコブラ型のエネルギーもまた、ディケイドへは届かなかった。
距離が開いた今、ディケイドはついさっき手に入れたばかりのカードに手を伸ばす。
1号から始まるプロトタイプとは違う、しかし仮面ライダーと確かに呼ばれていた戦士の力。
1号から始まるプロトタイプとは違う、しかし仮面ライダーと確かに呼ばれていた戦士の力。
『KAMEN RIDE RYUKI!』
赤いスーツに銀色の装甲。
どこか騎士を思わせるその戦士の名は、仮面ライダー龍騎。
願いを懸けてのライダーバトル、別の世界では有罪無罪を懸けてのライダー裁判への参加資格を得たライダー。
この地ではクウガやアギトと同じく、純粋な破壊の手段として姿を現した。
どこか騎士を思わせるその戦士の名は、仮面ライダー龍騎。
願いを懸けてのライダーバトル、別の世界では有罪無罪を懸けてのライダー裁判への参加資格を得たライダー。
この地ではクウガやアギトと同じく、純粋な破壊の手段として姿を現した。
『わざわざお揃いの色に合わせてくれたのか?』
自身の身体を指さしながら冗談めかして言うブラッドスタークを無視し、ディケイド龍騎はライドブッカーを構える。
ツレねぇなと苦笑いし、ブラッドスタークもまた己の武器二つをライフルモードへと合体させた。
ツレねぇなと苦笑いし、ブラッドスタークもまた己の武器二つをライフルモードへと合体させた。
(さて、そろそろ動いても良い頃合いだがねぇ……)
視線はディケイド龍騎から逸らさず、頭に思い浮かべるはこの状況を変えられるかもしれない人物。
戦闘に参加していない仲間が動き出す瞬間を、じっと待っていた。
戦闘に参加していない仲間が動き出す瞬間を、じっと待っていた。
○
(よ、よーし、バレてないぞー……)
承太郎と蓮はアナザーディケイドと、エボルトはJUDOとそれぞれ戦闘を繰り広げている。
しかし一人足りない。
風都タワーに向かったチームの人数は4人、残る一人はどちらとも戦っていなかった。
ホイミスライムのホイミンは風都タワーに突入して以降、姿を消していた。
しかし一人足りない。
風都タワーに向かったチームの人数は4人、残る一人はどちらとも戦っていなかった。
ホイミスライムのホイミンは風都タワーに突入して以降、姿を消していた。
戦いが恐くなったから?自分一人だけは助かりたいから?
そんな理由では無い。ホイミンだって心に恐怖を宿しながらも、新八を助ける為にここへやって来たのだ。
そんな理由では無い。ホイミンだって心に恐怖を宿しながらも、新八を助ける為にここへやって来たのだ。
では何故姿を消しているのか。
彼が他の者に比べて戦闘力が劣っているからか?
確かにそれは否定できない。市街地での戦闘ではJUDOの不意を打つのにこそ成功したものの、与えた傷は余りにも小さかった。
二人の破壊者と正面切っての戦闘は、例えシャルティエの晶術込みでも厳しいだろう。
だがそれは一番の理由では無い。
彼が他の者に比べて戦闘力が劣っているからか?
確かにそれは否定できない。市街地での戦闘ではJUDOの不意を打つのにこそ成功したものの、与えた傷は余りにも小さかった。
二人の破壊者と正面切っての戦闘は、例えシャルティエの晶術込みでも厳しいだろう。
だがそれは一番の理由では無い。
ホイミンが姿を消しているのは、JUDOへの攻撃を成功させる為だ。
無論、ただ単にJUDOへ攻撃を当てた所で市街地の時同様、大して意味は無い。
しかし狙う箇所が腰に巻いた白いベルト、ディケイドライバーならどうだ。
承太郎が理解した通り、ディケイドへの変身は士やJUDOの力によるものではない、あくまでディケイドライバーの力によるもの。
出発前にエボルトも言っていた。ディケイドという名に聞き覚えは無いが、仮面ライダーである以上は共通の弱点があると。
それこそが変身する為のベルト。仮面ライダーにとっては第二の心臓と言っても過言ではない。
ベルトを破壊するか、或いは強引にでも剥ぎ取ってしまえば瞬く間に変身は解除されるのは間違いないらしい。
無論、ただ単にJUDOへ攻撃を当てた所で市街地の時同様、大して意味は無い。
しかし狙う箇所が腰に巻いた白いベルト、ディケイドライバーならどうだ。
承太郎が理解した通り、ディケイドへの変身は士やJUDOの力によるものではない、あくまでディケイドライバーの力によるもの。
出発前にエボルトも言っていた。ディケイドという名に聞き覚えは無いが、仮面ライダーである以上は共通の弱点があると。
それこそが変身する為のベルト。仮面ライダーにとっては第二の心臓と言っても過言ではない。
ベルトを破壊するか、或いは強引にでも剥ぎ取ってしまえば瞬く間に変身は解除されるのは間違いないらしい。
と言ってもそう簡単にベルトをピンポイントで狙わせてくれる程、軟な相手ではない。
そこで名乗り出たのがホイミンだった。
アンチバリア発生装置により姿を、肉体のスキルにより気配を消せる彼ならばJUDOの隙を突いてディケイドライバーをどうにか出来る可能性が高い。
当然いきなり奪おうとしても失敗する可能性が高い。
その為展望室へ承太郎達が飛び込んだ際にもホイミンだけは姿を消して、様子を見るのに徹していた。
ホイミンも風都タワーに来たと知れば一度背後を取られている以上、取るに足らない弱者と見下しつつも警戒はされるはず。
だからこうして、JUDOに姿は決して見せずチャンスを窺っていたのだった。
そこで名乗り出たのがホイミンだった。
アンチバリア発生装置により姿を、肉体のスキルにより気配を消せる彼ならばJUDOの隙を突いてディケイドライバーをどうにか出来る可能性が高い。
当然いきなり奪おうとしても失敗する可能性が高い。
その為展望室へ承太郎達が飛び込んだ際にもホイミンだけは姿を消して、様子を見るのに徹していた。
ホイミンも風都タワーに来たと知れば一度背後を取られている以上、取るに足らない弱者と見下しつつも警戒はされるはず。
だからこうして、JUDOに姿は決して見せずチャンスを窺っていたのだった。
(新八君……)
アナザーライダーと化し暴走する仲間の姿に、ホイミンは胸が酷く痛んだ。
本当なら展望室で倒れている新八を見つけた時、傍に駆け寄って回復呪文を唱えたかった。
けれど今出て行ったら作戦が水の泡だとシャルティエに説得され、ぐっと堪え今に至る。
本当なら展望室で倒れている新八を見つけた時、傍に駆け寄って回復呪文を唱えたかった。
けれど今出て行ったら作戦が水の泡だとシャルティエに説得され、ぐっと堪え今に至る。
(僕は…僕に出来る事をやるんだ…!)
変身を解除されればJUDOは一気に弱体化する。
そうなれば倒すのは容易いし、JUDOをどうにかしたらエボルトも承太郎達の加勢に行けるのだ。
それで新八の暴走が止まったら、ホイミで彼の傷を癒してあげよう。
全ては自分が成功するかどうかに掛かっている。絶対に失敗は出来ない、してはならない。
そうなれば倒すのは容易いし、JUDOをどうにかしたらエボルトも承太郎達の加勢に行けるのだ。
それで新八の暴走が止まったら、ホイミで彼の傷を癒してあげよう。
全ては自分が成功するかどうかに掛かっている。絶対に失敗は出来ない、してはならない。
(よし、今ならいける!)
JUDOはエボルトに意識を向けており、ホイミンに気付く様子は無い。
狙うならここだと急ぎ、されど慎重さも忘れずに背後から近づいて行く。
狙うならここだと急ぎ、されど慎重さも忘れずに背後から近づいて行く。
その際視界に一瞬映ったのは、アナザーディケイドと承太郎達の戦い。
仲間の死に深く悲しんでいた新八は、承太郎の強い言葉により銀時の意思を継ぐと決意した。
それなのに今は仲間同士で戦っている。
暴走する仲間を正気に戻そうと、承太郎と蓮は諦めずに立ち向かっている。
仲間の死に深く悲しんでいた新八は、承太郎の強い言葉により銀時の意思を継ぐと決意した。
それなのに今は仲間同士で戦っている。
暴走する仲間を正気に戻そうと、承太郎と蓮は諦めずに立ち向かっている。
その光景はホイミンの心をざわつかせる。
ああ、彼らは何て、何て――
ああ、彼らは何て、何て――
――見るに堪えないのだろう。ゴミの悪足掻きとは、本当に笑えるくらいに惨めだ。
「うわぇ!?」
素っ頓狂な声を出し動きを止めた。
今自分は何を考えた?人間を、仲間達に何を思った?
承太郎達が戦っているのなら自分だって頑張らないと。
そう改めて決意を抱いたはずなのに、出て来たのは全く違う感情。
仲間を侮蔑し嘲笑うようなそれが、本当に自分が思い浮かべた事なのか?
承太郎達が戦っているのなら自分だって頑張らないと。
そう改めて決意を抱いたはずなのに、出て来たのは全く違う感情。
仲間を侮蔑し嘲笑うようなそれが、本当に自分が思い浮かべた事なのか?
自分自身の事ながら信じられず、ホイミンはその場に立ち尽くす。
それが大きな失敗と気付いたのは、直後の事である。
それが大きな失敗と気付いたのは、直後の事である。
余りの衝撃ゆえに、自分の置かれた状況をほんの一瞬とはいえ頭から追い出してしまったのだろう。
アンチバリア発生装置は姿こそ消す効果を持つが、気配までは消せない。
だから肉体の持つスキルを駆使していた。
しかし大声を出してしまえば、自分から居場所を敵に教えるのと変わらない。
アンチバリア発生装置は姿こそ消す効果を持つが、気配までは消せない。
だから肉体の持つスキルを駆使していた。
しかし大声を出してしまえば、自分から居場所を敵に教えるのと変わらない。
だから、そう。
『ATTACK RIDE STRIKE VENT!』
失敗の代償は、己の身で支払う事となる。
「うわぁああああああああああ!!?!」
気付いた時には既に遅く、ホイミンの身体は炎に包まれた。
物理攻撃に耐性を持つスライムの肉体と言えど、それ以外の攻撃までは耐え切れない。
全身が焼き潰される激痛に立っていられず、その場でのたうち回る。
物理攻撃に耐性を持つスライムの肉体と言えど、それ以外の攻撃までは耐え切れない。
全身が焼き潰される激痛に立っていられず、その場でのたうち回る。
その様を見下ろしながら、ディケイド龍騎は続けて炎を放つべく右腕を向けた。
装着されているのは龍の頭部のような手甲、ドラグクロー。
龍騎の契約モンスター、ドラグレッダーの頭部を模した打撃武器だ。
元々龍騎が持つストライクベントのカードを、ディケイドはアタックライドのカードで使える。
ミラーモンスターを倒す威力の炎は、続いて放たれはしなかった。
装着されているのは龍の頭部のような手甲、ドラグクロー。
龍騎の契約モンスター、ドラグレッダーの頭部を模した打撃武器だ。
元々龍騎が持つストライクベントのカードを、ディケイドはアタックライドのカードで使える。
ミラーモンスターを倒す威力の炎は、続いて放たれはしなかった。
――ELECTRIC STEAM!
電撃を纏った特殊弾が発射される。
標的は勿論ディケイド龍騎。連射性能を強化したトランスチームライフルの弾を、ドラグクローで防御する。
チラとホイミンに視線をくれてやり、直ぐに興味は失せたのかブラッドスタークへと炎を放った。
地面を転がりながらバルブを操作、照準は依然としてディケイド龍騎に向けられたままだ。
標的は勿論ディケイド龍騎。連射性能を強化したトランスチームライフルの弾を、ドラグクローで防御する。
チラとホイミンに視線をくれてやり、直ぐに興味は失せたのかブラッドスタークへと炎を放った。
地面を転がりながらバルブを操作、照準は依然としてディケイド龍騎に向けられたままだ。
――ICE STEAM!
スチームブレード内部で生成されたエネルギーが、銃弾に付与される。
三発連続で発射された弾を再びドラグクローで防ぐ。
だが失敗だったと悟る。ドラグクローが凍り付き、使い物にならなくなった。
凍結はまだ続いており自分の腕まで凍らされる。それは御免だとドラグクローを躊躇せずに投げ捨てた。
所詮はカードの効果で出現させた武装の一つ。惜しくも何ともない。
代わりにライドブッカーをソードモードで構える。
三発連続で発射された弾を再びドラグクローで防ぐ。
だが失敗だったと悟る。ドラグクローが凍り付き、使い物にならなくなった。
凍結はまだ続いており自分の腕まで凍らされる。それは御免だとドラグクローを躊躇せずに投げ捨てた。
所詮はカードの効果で出現させた武装の一つ。惜しくも何ともない。
代わりにライドブッカーをソードモードで構える。
『ホイミン君!しっかりするんだ!ホイミン君!』
焦燥感を隠さず何度も呼びかけるシャルティエに、どうにか首を動かす事で反応する。
痛みから逃れようと必死にのたうち回った甲斐があったのだろう、身体に纏わりつく炎は消えていた。
といっても状況は全く良くは無く、ホイミンの負った傷は決して軽くない。
心優しいスライムの死を望まないソーディアンは、必死に叫んだ。
痛みから逃れようと必死にのたうち回った甲斐があったのだろう、身体に纏わりつく炎は消えていた。
といっても状況は全く良くは無く、ホイミンの負った傷は決して軽くない。
心優しいスライムの死を望まないソーディアンは、必死に叫んだ。
『ホイミン君!急いで自分に向けて回復呪文を唱えるんだ!』
「う……うん……。ホイミ……』
「う……うん……。ホイミ……』
ホイミンの身体が淡い光に包まれ、焼かれた痛みも多少は緩和する。
尤もホイミは元々回復量が多くは無い上に、殺し合いでは制限の対象。
一度唱えた程度ではまだ安心できない。
尤もホイミは元々回復量が多くは無い上に、殺し合いでは制限の対象。
一度唱えた程度ではまだ安心できない。
『ホイミン君、一回だけじゃ駄目だ!魔力が続く限り唱えてくれ!』
「分かった……。ホ、ホイミ……ホイミ……」
「分かった……。ホ、ホイミ……ホイミ……」
弱々しく頷きながら、言われた通りにホイミを何度も唱える。
果たしてその効果はあった。
塵も積もれば何とやら、一度の回復効果は低いが複数回唱えた為痛みも大分引いている。
代わりに相応の魔力は消費されたが、躊躇って呪文を唱えず死ぬよりは遥かにマシだろう。
果たしてその効果はあった。
塵も積もれば何とやら、一度の回復効果は低いが複数回唱えた為痛みも大分引いている。
代わりに相応の魔力は消費されたが、躊躇って呪文を唱えず死ぬよりは遥かにマシだろう。
ホイミンの命は助かった。
しかし当初の狙いであったディケイドライバーへの攻撃は達成出来ず。
既にホイミンの姿を見られてしまった以上、同じ手は通用しないと見るべきだ。
しかし当初の狙いであったディケイドライバーへの攻撃は達成出来ず。
既にホイミンの姿を見られてしまった以上、同じ手は通用しないと見るべきだ。
「伏兵を忍ばせていたようだが、当てが外れたな」
『残念ながら、そうみてぇだな…』
『残念ながら、そうみてぇだな…』
ため息交じりに言葉を返しながらも、トランスチームライフルは撃ち続ける。
ライドブッカーで銃弾を斬り落としながらディケイドが接近、横薙ぎに振るわれた剣をブレード部分で受け止める。
流れるようなディケイドの剣裁き、的確に急所を狙ってくる刃を時には躱し、又は受け流す。
ライドブッカーで銃弾を斬り落としながらディケイドが接近、横薙ぎに振るわれた剣をブレード部分で受け止める。
流れるようなディケイドの剣裁き、的確に急所を狙ってくる刃を時には躱し、又は受け流す。
ホイミンの作戦が失敗したのは、アナザーディケイドと戦闘中の承太郎達にも見えた。
炎に包まれ絶叫を上げた彼はシャルティエの助言もあり、どうにか助かった模様。
偽りの破壊者を前に他へ気を回すなど自殺行為。
二人ともそう理解はしているものの、実際に仲間の絶叫を聞き、痛みに悶える姿をチラリとでも見てしまえば動揺が走るのは避けられない。
迫るアナザーディケイドの拳に対処が遅れてしまえば、後はもうされるがまま。
咄嗟の防御も間に合わずジョーカーが殴り飛ばされた。
炎に包まれ絶叫を上げた彼はシャルティエの助言もあり、どうにか助かった模様。
偽りの破壊者を前に他へ気を回すなど自殺行為。
二人ともそう理解はしているものの、実際に仲間の絶叫を聞き、痛みに悶える姿をチラリとでも見てしまえば動揺が走るのは避けられない。
迫るアナザーディケイドの拳に対処が遅れてしまえば、後はもうされるがまま。
咄嗟の防御も間に合わずジョーカーが殴り飛ばされた。
「ぐぁあああ!!」
「雨宮!?チッ!!」
「雨宮!?チッ!!」
地面を転がる仲間へ目をやったほんの一瞬で、アナザーディケイドは承太郎の眼前まで接近していた。
間に合うか、いや間に合わせなければ。
動揺を即座に押し殺してスタープラチナを操作する。
しかし遅い。1秒にも満たない硬直ですら、アナザーディケイドには絶好の隙でしかない。
マゼンタと紫を混ぜ合わせたような色合いの爪をスタープラチナへ突き刺そうとし――
間に合うか、いや間に合わせなければ。
動揺を即座に押し殺してスタープラチナを操作する。
しかし遅い。1秒にも満たない硬直ですら、アナザーディケイドには絶好の隙でしかない。
マゼンタと紫を混ぜ合わせたような色合いの爪をスタープラチナへ突き刺そうとし――
「グォオオオ!?」
背中に桜色の光弾が命中した。
それも一発のみでなく、二発三発と次々に当たってはアナザーディケイドの背に僅かな痛みを齎す。
ダメージとしては小さいものだが、予期せぬ攻撃に動きは止まった。
スタープラチナに爪は数ミリ届かず、反対に拳を叩き込まれる。
殴られた衝撃で後退したその瞬間に、アナザーディケイドへ急接近する影が見えた。
それも一発のみでなく、二発三発と次々に当たってはアナザーディケイドの背に僅かな痛みを齎す。
ダメージとしては小さいものだが、予期せぬ攻撃に動きは止まった。
スタープラチナに爪は数ミリ届かず、反対に拳を叩き込まれる。
殴られた衝撃で後退したその瞬間に、アナザーディケイドへ急接近する影が見えた。
「僕はあっちを相手にする」
承太郎とジョーカーではない誰かへ伝えたその者は、アナザーディケイドの頭上を悠々と飛び越えて行く。
目指す先に居るのはブラッドスタークと戦闘中のディケイド。
自身へ迫る存在にディケイドが気付き、視線を寄越せば挨拶も無しに剣を振るった。
目指す先に居るのはブラッドスタークと戦闘中のディケイド。
自身へ迫る存在にディケイドが気付き、視線を寄越せば挨拶も無しに剣を振るった。
「幻影刃!」
踏み込む勢いは一切殺さず、右手の剣を真っ直ぐに突き立てる。
乱入者へ驚くより早くブラッドスタークへ蹴りを放つ。
ガードされたが距離はある程度取った。ライドブッカーで突き技を防ぐ。
刀身に伝わる衝撃、しかしディケイド本人にダメージは無し。
乱入者の正体をこの目で確かめてやろうとすれば、突っ込んで来た筈の姿が消えている。
何処へ行ったという疑問は、背後からの殺気ですぐに解けた。
乱入者へ驚くより早くブラッドスタークへ蹴りを放つ。
ガードされたが距離はある程度取った。ライドブッカーで突き技を防ぐ。
刀身に伝わる衝撃、しかしディケイド本人にダメージは無し。
乱入者の正体をこの目で確かめてやろうとすれば、突っ込んで来た筈の姿が消えている。
何処へ行ったという疑問は、背後からの殺気ですぐに解けた。
「ここだ!」
再度繰り出される突き。
防御は間に合わないと悟り、真横へ跳んで回避。
こちらを串刺しにする目論見は外れ、直前まで自分が立っていた位置を通過する者をディケイドは冷静に眺める。
黒に身を包んだ、銀髪の少女。天使のような翼と光輪が異彩を放っていた。
防御は間に合わないと悟り、真横へ跳んで回避。
こちらを串刺しにする目論見は外れ、直前まで自分が立っていた位置を通過する者をディケイドは冷静に眺める。
黒に身を包んだ、銀髪の少女。天使のような翼と光輪が異彩を放っていた。
「何が…」
唐突な乱入者の存在はジョーカー達にも困惑を齎した。
ディケイドへ斬り掛かった少女は何者なのか。
こちらへ攻撃しなかった事から、味方と思いたい。
ディケイドへ斬り掛かった少女は何者なのか。
こちらへ攻撃しなかった事から、味方と思いたい。
殴られた箇所を擦りつつ立ち上がったジョーカーの元へ、新たに駆け寄る人物が一人。
「大丈夫ですか!?」
今度も女だ。
白いフードを被った女がジョーカーを心配そうに覗き込む。
いきなり問い掛けられて固まるも、一拍置いて大丈夫だと返す。
ジョーカーの返答に女はホッとした表情となる。
その反応からは悪意は微塵も感じられ無い。取り敢えず味方と見て良いと判断した。
白いフードを被った女がジョーカーを心配そうに覗き込む。
いきなり問い掛けられて固まるも、一拍置いて大丈夫だと返す。
ジョーカーの返答に女はホッとした表情となる。
その反応からは悪意は微塵も感じられ無い。取り敢えず味方と見て良いと判断した。
「環さん」
今度はフードの女に話しかける者が現れ、ジョーカーは見た目に思わずギョッとする。
カメレオンに似た頭部と、どこか騎士の装甲を連想させる体。
今の自分が言えた事では無いのだが、奇怪な外見をしていた。
声からして男だろうカメレオン風の騎士は、ジョーカーの困惑を意に介さず女と会話を続ける。
カメレオンに似た頭部と、どこか騎士の装甲を連想させる体。
今の自分が言えた事では無いのだが、奇怪な外見をしていた。
声からして男だろうカメレオン風の騎士は、ジョーカーの困惑を意に介さず女と会話を続ける。
「私はジューダス君の援護に回ろうと思う。こっちは頼めるかな?」
「わ、分かりました!でも、気を付けてくださいね?」
「分かっているさ。君こそ無理はしないようにな」
「わ、分かりました!でも、気を付けてくださいね?」
「分かっているさ。君こそ無理はしないようにな」
穏やかな声色で告げた男は、一度ジョーカーを見て頷いた。
彼女は任せたとでも言ったつもりなのだろうか。
真意を測りかねるジョーカーへそれ以上何かをするでもなく、ディケイドの元へと駆けて行く。
何故か手にはクリスマス用のキャンドルを持っていたが。
彼女は任せたとでも言ったつもりなのだろうか。
真意を測りかねるジョーカーへそれ以上何かをするでもなく、ディケイドの元へと駆けて行く。
何故か手にはクリスマス用のキャンドルを持っていたが。
「やれやれ、取り敢えずお前らは味方って事で良いのか?」
女達のやり取りから敵では無いと判断したのか、何時の間にか承太郎が傍に居た。
「えっと、はい!ここで誰かが戦ってるのが見えて…あっ、私は環いろはって言います」
「雨宮蓮だ、よろしく。それでこっちが…」
「空条承太郎。悪いが今はこれ以上自己紹介している暇はねぇ」
「雨宮蓮だ、よろしく。それでこっちが…」
「空条承太郎。悪いが今はこれ以上自己紹介している暇はねぇ」
承太郎の言う通り、今は長々と話している場合で無いとはいろはにも分かる。
唸り声を放つ悪魔の如き異形。
結界が展開されていないから、魔女やウワサの類では無いだろう。
しかし放たれる威圧感は、これまで戦って来た存在とは比べ物にならない程凶悪。
レイジングハートを握る手が緊張で汗ばむのを抑えられない。
唸り声を放つ悪魔の如き異形。
結界が展開されていないから、魔女やウワサの類では無いだろう。
しかし放たれる威圧感は、これまで戦って来た存在とは比べ物にならない程凶悪。
レイジングハートを握る手が緊張で汗ばむのを抑えられない。
「あれは……」
「仲間だ。ふざけた支給品のせいで、今は正気を失っちまってる」
「そうなんですか!?元に戻す方法とかは…」
「とにかく攻撃してダメージを与える、それしかないらしい」
「仲間だ。ふざけた支給品のせいで、今は正気を失っちまってる」
「そうなんですか!?元に戻す方法とかは…」
「とにかく攻撃してダメージを与える、それしかないらしい」
シンプルだが最も骨が折れそうな方法である。
生憎と敵はこれ以上は会話させてくれないらしい。
生憎と敵はこれ以上は会話させてくれないらしい。
「グゥオガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
数が三人に増えた所で破壊するのに変わりは無いのだろう。
一際大きく咆哮を上げ、三人目掛けて突っ込んで来た。
一際大きく咆哮を上げ、三人目掛けて突っ込んで来た。
(まさかここに奴がいたとは……)
ディケイドと対峙するジューダスは、内心の驚きを表情には出さず睨みつける。
敵の姿には見覚えがあった。
黎斗から見せられた画像、そこに映っていた鎧の参加者。
画像の状況から見て間違いなく、リオン・マグナスを殺した者だ。
敵の姿には見覚えがあった。
黎斗から見せられた画像、そこに映っていた鎧の参加者。
画像の状況から見て間違いなく、リオン・マグナスを殺した者だ。
過去の自分を殺した者を前に、ジューダスの警戒心は強さを増す。
別に自分がこの世で最も強いなどと大口を叩く気は無いが、ソーディアンマスターとしての実力は確か。
そのリオンに勝った相手となれば、甘く見るべきでないと思うのは当然の事だろう。
自分自身の敵討ちとまでは言わないが、思う所が何も無いという訳でもない。
よってもう一体の異形はいろは達に任せ、自分はこちらを相手にすると決めた。
別に自分がこの世で最も強いなどと大口を叩く気は無いが、ソーディアンマスターとしての実力は確か。
そのリオンに勝った相手となれば、甘く見るべきでないと思うのは当然の事だろう。
自分自身の敵討ちとまでは言わないが、思う所が何も無いという訳でもない。
よってもう一体の異形はいろは達に任せ、自分はこちらを相手にすると決めた。
ジューダスにとって思わぬ存在はディケイドだけではない。
こちらから少し離れた位置に横たわる金髪の女、そいつの傍に転がる一本の剣。
リオンだった頃から知っている、最も付き合いの長い存在もまた風都タワーにいたのだ。
こちらから少し離れた位置に横たわる金髪の女、そいつの傍に転がる一本の剣。
リオンだった頃から知っている、最も付き合いの長い存在もまた風都タワーにいたのだ。
「お前も巻き込まれていたとはな、シャル」
『その呼び方はまさか……いや有り得ない…!だって坊ちゃんはもうこの世にいるはずが……』
「ソーディアンにも痴呆は起こるらしいな」
『うっぐぅ!その一切遠慮のない言葉は、やっぱり坊ちゃんのもの!いえですが、それだと放送で名前を呼ばれたのは…?』
「何を言って……ああ、そういう事か」
『その呼び方はまさか……いや有り得ない…!だって坊ちゃんはもうこの世にいるはずが……』
「ソーディアンにも痴呆は起こるらしいな」
『うっぐぅ!その一切遠慮のない言葉は、やっぱり坊ちゃんのもの!いえですが、それだと放送で名前を呼ばれたのは…?』
「何を言って……ああ、そういう事か」
どこかズレた会話に違和感を覚えるも、ややあってその理由が分かった。
バトルロワイアルには異なる時間、というより異なる歴史からリオンとジューダスがそれぞれ連れて来られた。
なら参加者だけでなく、支給品にも同じ事が起きているのだろう。
今ここに転がっているシャルティエはリオンが使っていた時代から来ている。
だから彼にとって一番新しい記憶と言えば、スタン達の脱出を見届けマスター共々力尽きた最期の光景。
ジューダスである自分も、名前を付けたカイルの事も知らない。
バトルロワイアルには異なる時間、というより異なる歴史からリオンとジューダスがそれぞれ連れて来られた。
なら参加者だけでなく、支給品にも同じ事が起きているのだろう。
今ここに転がっているシャルティエはリオンが使っていた時代から来ている。
だから彼にとって一番新しい記憶と言えば、スタン達の脱出を見届けマスター共々力尽きた最期の光景。
ジューダスである自分も、名前を付けたカイルの事も知らない。
後でこいつにも説明が要るかと独りごち、まずは目先の問題に対処すべく双剣を構える。
『助っ人に来てくれた、って事で良いのか?お二人さん』
「勿論だ。こちらは殺し合いを止める気でいる。そちらは違うとは言わないだろうね?」
『なら安心しろよぉ。俺の目的はボンドルドを倒して帰る事だからな』
「勿論だ。こちらは殺し合いを止める気でいる。そちらは違うとは言わないだろうね?」
『なら安心しろよぉ。俺の目的はボンドルドを倒して帰る事だからな』
どこか上辺半分にも聞こえる会話が耳に届く。
背後を見れば、赤い装甲と緑の装甲が各々武器を構えながら言葉を投げ合っていた。
一応二人とも今は味方として扱うが、心を許す気は全く起きない。
黎斗は元より、赤い装甲の参加者の魂も『悪』だ。
表面上どう振舞おうと、ラブボムによる感知からは逃れられない。
背後を見れば、赤い装甲と緑の装甲が各々武器を構えながら言葉を投げ合っていた。
一応二人とも今は味方として扱うが、心を許す気は全く起きない。
黎斗は元より、赤い装甲の参加者の魂も『悪』だ。
表面上どう振舞おうと、ラブボムによる感知からは逃れられない。
(だが今は…)
「数を増やした程度で安心するのなら、程度が知れるわ」
「数を増やした程度で安心するのなら、程度が知れるわ」
リオンを殺した男を倒す事に集中する。
本物と偽物の破壊者、破壊者に抗う者達。
それぞれが3対1の形となり、戦いは次のステップへと移行する。
それぞれが3対1の形となり、戦いは次のステップへと移行する。