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  • チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
  • 自由の代償(中編)

チェンジ・ロワイアル@ ウィキ

自由の代償(中編)

最終更新:2024年02月15日 11:44

匿名ユーザー

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戦いが始まったと分かれば杉元のスイッチが即座に切り替わる。
全方位から常に死が迫る日露戦争を、骨の髄まで味わって来た男だ。
動くべき時に動けない愚行を今更犯す筈も無く、右手を跳ね上げ引き金を引く。
コルト・パイソンが火を吹き、肉の壁と見紛う脚を食い千切った。
更には内部で爆発した弾丸が神経を破壊する。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

残念ながら巨人への効果的なダメージにはならない。
対未確認生命体用の特殊弾も、規格外のサイズを誇る巨人相手では豆鉄砲に等しい。
的が大きい故、自他共に認める射撃下手の杉元でも当てられるのはほんのちっぽけな慰めか。
大した傷で無くとも攻撃は攻撃、小癪な真似に出た一匹の虫が最初の標的に選ばれた。

地上の蟲に鉄槌を下す神の如く、上空より襲来する足底。
大質量の急接近に空気が悲鳴を上げ、危機感をこれでもかと高めさせた。
道で蠢く目障りな蟻を潰すように、人間一人の命が容易く奪われる。
だが自らの終わりを黙って受け入れるかは別。
纏わり付く死を幾度となく跳ね退けたからこそ、只の人間でありながら不死身の異名を手に入れた男なら尚更だ。
迫る脅威を火薬に、自らを弾丸に変え疾走。
蓬莱人の身体能力でも十分な距離を取らねば無事では済まない。

「うおおおっ!?」

回避成功を喜ぶ暇もなく、振り下ろしたばかりの足が襲って来た。
たっぷり蓄えた猪のような親指が視界いっぱいに映り込む。
骨が折れる程度では済まない、半身が粉砕されるのは確実。

「甜花!」
「う、うん……!」

死を遠ざけ、巨人に立ち向かうのは杉元一人の役目に非ず。
金塊争奪戦でアイヌの少女や脱獄王がそうだったように、此度も彼の仲間が黙っていない。
ビルドと斬月、合図へ頷き二人の戦士が銃撃を開始。
ライドブッカー、ドリルクラッシャー、無双セイバー。
三つの銃口から放たれたエネルギー弾が巨人の足を狙い撃つ。
爪が割れ肉が弾け飛び、病院前の地面を赤く彩る雨が降り注ぐ。

「痛っ!爪!爪が当たった!」

杉元の額へ爪の欠片が突き刺さったが事故である。
ともかく蹴りの勢いが僅かに弱まり、反対に杉元は両脚の筋肉を総動員。
数秒前までの位置を巨人の足が通過、背中へ嫌な風圧を感じながら跳び退いた。

仲間への援護が上手くいった代償として、怒りの矛先が二人のライダーに変更。
同じ銃撃でも威力で言えば彼らの方が上、しかしうなじ以外の攻撃は決定打になり得ない。
再生が始まっている足で地面を踏みしめる姿から、エネルギー弾が堪えた様子は微塵も無し。
殲滅を促す脳からの指令と、絶えず湧き出る憎悪に突き動かされ拳を振り下ろす。
拳一発蹴り一撃が災害級の威力だ、直撃すれば仮面ライダーの装甲があっても無事では済まない。

「ま、やっぱりそう来るよな…!」

敵意が今度は自分達に向けられるのも承知の上だ。
巨人の蹴りを杉元が躱した時点で、ビルドはとっくに次の行動に出ている。
ライズホッパーに跨り、後ろに斬月を乗せ準備完了。
拳が地面に叩きつけられたのは猛発進した直後のこと。

「ひぃん……!は、速い……!」
「キツいだろうけど振り落とされるなよ!」

猛スピードで駆けるライズホッパーに、斬月は目が回りそうだった。
変身せずにいたら確実に地面を転がっていただろう。
とはいえ相手が相手だ、ビルドだけならまだしも斬月が一緒ならばこれくらいの機動力は必須。
巨人が大股で一歩踏み出せば、たったそれだけで呆気なく追い付かれる。
加えて巨人は肉体の密度が薄い、巨体に反して俊敏な動きも可能という厄介さ。
巨人討伐に慣れた調査兵団であっても、基本は『遭遇しない』のを大前提とする理由の一つ。

しかしライズホッパーは、飛電インテリジェンスが開発を行ったスーパーマシンだ。
全速力の巨人であっても簡単には追い付けない。
これが殺し合い開始直後のような暴走だったら、巨人はビルド達から引き離されたままだろう。
されど忘れるなかれ、今の巨人は洗脳と憎悪の影響で対象の殲滅に最適解を弾き出す殺戮マシーン。
速度で勝る相手だろうと決して逃げられない。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

大地を陥没させん程に踏みしめ跳躍。
ただそれだけで暴風が巻き起こり、装甲越しから容赦なく叩きつける。
上空から眼下の標的へ狙いを定め拳を突き出す。
落下の勢いも上乗せした一撃の急接近は、走行中のビルド達へ更なる警鐘を鳴らす。
ライズホッパーの速度を上げるも猛烈な悪寒は消えてくれない。
ビルドの脳がフル回転し次の行動を決定、走っているだけでは拳を避けるのは不可能。
だが手はある。

「ちょっとだけ無茶やるから耐えてくれ!」
「えっ?ひゃっ、きゃああああああっ……!?」

拳が振り下ろされた先に哀れな死体は無い、潰された地面が見えるだけだ。
直撃の寸前にハンドルを操作し、何とライズホッパーは前方へと大きく飛び跳ねた。
地面を離れ宙へと逃げ込んだ安心は長続きせず、再び脅威が急接近。
どこへ行こうと関係ない、降り立つ前に捕えるべく巨人は反対の手を伸ばす。
巨大な掌に掴まれ、後は握り潰されるか腹の底へ真っ逆様の二択。
尤も、それを予測できないビルドではない。

斬月の手を取り、ライズホッパーを乗り捨てる形で跳ぶ。
落下するバイクには目もくれず、伸びたままの腕へ着地。
じっとしていれば摘ままれるか潰されるかだ。
ラビットフルボトルの成分でハイジャンプを行い、巨人から遠ざかる。
無論、巨人がそのまま見逃すのは有り得ない。

「ピ~カ~!!」

相手の動きに注意を払い続けるのはこちらも同じ、でんこうせっかで追いかけて来た善逸が妨害に動く。
鬼との戦い、特に上弦や無惨との死闘では1秒たりとも集中力を切らせなかった。
僅か一瞬の気の緩みが即座に死へ繋がるのを、嫌と言う程に知っている。
気絶しそうな恐怖の中でも巨人から決して意識を逸らさず、ピカチュウのわざを発動。
天空より降り注ぐ一筋の光。
神が下す裁きの如く、眩い雷光が巨人を――貫かない。

「ピカ?ピカアアアアアアア!?(あれ?ええええええええ!?何で!?今雷落ちたよね!?)」

まさかの大外れに、たちまち頭はパニック状態。
巨人目掛けて雷を落とした、自分の攻撃なんだからそれは間違いない。
なのに当たらなかったのは一体どういう訳か。
幾ら何でもあんな巨大な相手に外す、なんてことはないだろうに。
DIOや姉畑相手には綺麗に命中したのが、何故今に限って外れるのだろうか。

かみなりはでんきタイプのポケモンが使う中でも高火力のわざだ。
しかし10まんボルト等と違い、常に必中する訳ではない。
天候によって命中率が左右され、晴天時には半分の確率でしか当たらない。
現在は日がほとんど沈んだ為、晴天時程低くはないがそれでも確実に命中するかと言えば否。
雨天時に起きたPK学園での戦いの時とは異なり、こういったかみなりが外れる事態も出てくるのである。

そういったポケモントレーナーの常識を善逸が知る訳が無く。
まして対峙中の巨人にはもっと関係無い。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

また一人滅ぼすべき者が目の前に現れた。
それだけ分かれば十分であり、それ以外を考えなどしない。
完全に再生を終えた足が地面を蹴り上げる。
拳の餌食に選ばれたのは、人間よりも小さな生物。
なれど巨人が止まる理由には断じてならず、振り下ろす鉄拳はさながら巨岩の投擲。
青褪め甲高い悲鳴が耳を劈こうとも知ったことではない、黄色い体躯が拳の真下に消え失せる。

手をどかせばそこには赤い染みが、見当たらなかった。

「ピ、ピカ~~~~~~!!!!!」

汚い高音の叫びは標的がまだ無事な証拠。
音の発生源を即座に探し当て、我武者羅に駆け回る黄色い体躯を睨み付ける。
但し巨人が見たのは、複数体のピカチュウが逃げる姿だった。

「ピカピ!?ピッピカチュウ!?(ってあれ!?なんか俺増えてる!?)」

自分のことながら善逸も困惑を隠せない。
これもまたピカチュウが使えるわざの一つ、かげぶんしんだ。
名前の通り分身を作り出し、攻撃の回避率を上げる効果を持つ。
今さっき潰されたのは分身の一体であり、本体はこうして逃げ延びた。

増えたなら纏めて潰せば良い。
巨人が足を振るえば、たったそれだけで分身全てが薙ぎ払われて消滅。
あっという間に本体一匹へ逆戻り。
再度かげぶんしんを行う余裕は与えず、掌が善逸の逃走を阻む。

「どおおっせええええいっ!!!」

なれば巨人を阻む者もまた、当然の如く現れる。
颯爽と駆け付けた不死身の杉元、抜き放つ得物は和泉守兼定。
鬼の副長と恐れられ、英霊にまで至った剣豪の愛刀。
杉元が知る老剣士程使い慣れてはおらずとも、蓬莱人の身体能力と自らの技能で補う。
気合一閃を絵に描いた刃は、巨人の指を数本纏めて斬り落とす。

「ついでにこれもだ!」

善逸を掴む筈の指が無くなり、黄色い獣はすり抜けるように逃げた。
憎悪の矛先は最初と同じく杉元へ変更。
だが杉元は動じない、殺気だなんだを向けられるのは最早日常茶飯事。
刀を納め両手を自由に、翳した掌から火球を連続で発射。
弾幕ごっこと違って見栄えを全く考えない、威力優先の火炎地獄。
たちまち肉が焼ける臭いが立ち込めた。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

それがどうしたと言わんばかりの咆哮。
体中が焼かれようとも知ったことか、火球諸共薙ぎ払う。
腕を振るう単純な動作が、まるで大木を叩きつけたかの強力無比な一撃と化す。
跳んで避け切れるかは微妙なところ、自ら地面に倒れ込みやり過ごすのを選択。
頭の上を大質量が横切る感覚、思わずヒヤリと寒気が走った。

「杉元!」

自身を呼ぶ声に何だと聞き返さず、意図を察知し急ぎ後退。
入れ替わりに前へ出たビルドがカードを取り出す。
巨人と目が合い、こちら何をする気か察したかは不明だが腕が伸ばされた。
次の手に出る前に叩きのめすつもりか。

『メロンスカッシュ!』

突如横合いより投擲された物体が腕に命中、肉を削ぎ骨を砕く。
ロックシードのエネルギーで強化されたメロンディフェンダーだ。
敵の意識が外れたなら大技をぶつけるチャンス、ゲーム内でのお約束である。
これは画面の向こうの世界では無く現実で、実行に移した斬月は緊張感に襲われているが。

『FAINAL ATTACK RIDE BUI・BUI・BUI BUILD!』

斬月が標的にされる前にビルドも動かねばならない。
ディケイドライバーにカードを装填、解放されたエネルギーがグラフ型の滑走路を作り出す。
スマッシュを撃破した蹴り技はここでも健在、グラフを滑り急加速し巨人へ足底を叩きつけた。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!??!』

咄嗟に両腕が伸ばされるも、瞬間的なスピードはビルドに軍配が上がる。
脚部へ当たった足底のキャタピラが高速回転、蹴りの勢いに加えて皮膚を削り取っていく。
時間を置かずに再生こそされるだろうが、巨体を支える箇所の損傷だ。
巨人の体勢が崩れ膝を付く。
痛覚が薄い巨人が痛みへ叫ぶことはない、代わりに悉く小賢しい真似に出た者達への憎悪を一層滾らせる。

そしてこの瞬間に5人目の戦士が動く。

「変身!」

『蒼き野獣の鬣が空になびく!ファンタスティックライオン!流水三冊!紺碧の剣が牙を剥き銀河を制す!』

物語の語り手を思わせる電子音声が剣士の降臨を知らしめる。
青い装甲と胸部のライオンはそのままに、より重厚さを増した姿。
右肩には神獣が、左腕にはおとぎ話の力をそれぞれ纏う。
神楽も一度は見たが、自身が変身を行うのはこれが初めて。

仮面ライダーブレイズ・ファンタスティックライオン。
三冊のワンダーライドブックで変身するブレイズの強化形態。

「おっしゃ!やってやるアル!」

巨人は膝を付き、意識は完全にビルドら4人へ向けられている。
少し離れた位置でブレイズになったブレイズは完全にノーマーク。
康一を助け出すには正に絶好のタイミングだ。

飛行能力を持つブレイズならばうなじへ近付くのも難しくない。
そう考え飛び出そうとした所へ戦兎が待ったを掛け、自分達が隙を作るから待つよう言われた。
反論する前に各々動き出し、悩んだが勝手な行動が大きな過ちを引き起こすのは自分が一番分かっている。
逸る気持ちを抱え続け、とうとうその時は来た。

右肩のペガサスボールドが天を翔ける力をブレイズに与える。
翼を広げ地から足を離した際の機動力は、タケコプターとは比べ物にならない。

(これならいけるネ…!)

自由に空を飛び回る解放感に、こんな状況でなければ喜んだかもしれない。
僅かに浮かんだどうでもいい感想を追いやり、意識全てを巨人へ集中。
自分の罪を知っても責めず、仲間として受け入れてくれた者達が作ったチャンスだ。
つまらないミスでふいにするのは許されない。
村で康一に何が起きたか考えるのも、助け出してから聞けば良い。
銀時を失って錯乱した自分を立ち直らせてくれた康一を、託された聖剣で取り戻す。
決意の固さはそのまま柄を握る力の強さに変わる。

(もう少し…!)

うなじまで後もう僅かの距離。
背後からの気配に気付いたのか、巨人の首が揺れ動いた。
それでも速いのは自分の方だと勝利を確信、ブレイズの聖剣が寒風諸共うなじを切り裂く。

「これで…!」

取ったと、その場にいる全員が思った。
康一を閉じ込める肉の檻をこじ開け、無事救出。

そんな都合の良い展開は、キンッという音と共に否定される。

「なっ!?」

流水は巨人のうなじを正確に狙った。
本来の巨人討伐に用いる装備で無くとも、ブレイズの能力と無数のメギドを斬って来た流水があれば、康一本体を引き摺り出すのも不可能ではない。
だが現実の光景は無情だ。
流水はうなじを斬れず皮膚に弾かれた。
皆が作ったチャンスは脆く呆気なく失われ、巨人の瞳がブレイズをハッキリ捉えて離さない。

巨人となったエレン・イェーガーの能力は、単に巨体を利用し暴れ回るだけではない。
ロッド・レイスが所持していた薬により手に入れた硬質化。
正史において、ライナー・ブラウンを始め巨人化能力者との戦闘で幾度も発揮された力だ。
当然精神が別人になっても硬質化能力は健在。
東エリアの街で起きた戦闘時でも使われ、雨宮蓮達を大いに苦戦させた。

硬質化に関しての情報を戦兎達に教えなかった件で、神楽を責めるのは酷だろう。
何せ神楽が覚えている暴走した時の康一は、このような能力を一度も使わなかった。
こんな力が巨人にあったなど、神楽にだって予想外。

といった事情も巨人の知ったことではない。

またもや滅ぼすべき蟲が現れた。
不意を打つつもりだったようだが硬質化を破れず、結果間抜けにも凍り付いたまま。
殺さない理由がどこにあると言う。

「っ!!あっぶね…!!」

小蝿を仕留める気安さで平手打ちがブレイズを襲う。
硬直から咄嗟に動けたのは、やはり万事屋銀ちゃんの従業員として数々の大事件を解決して来た経験からか。
ファンタスティックライオンの固有能力の一つ、肉体のゲル化を使用。
液体を叩いたところで無意味。
しかしこれも制限の対象になっているのか、ブレイズの意思とは無関係に短時間で実体化。
尤も既に地面へ着地を終えており、ビルド達に並ぶ。

「な、何で急にカッチカチになったネ?新八みたいに一人でシコシコやってるアルか?」
「シ……!?あ、あの、それって……あうう……」
「んなハッキリ言ってやるなよ。男ならまぁ…」
「ピカ!?(なななななんで俺を見るの!?)」
「急に下ネタぶち込むんじゃないよ。ってかそんな場合じゃないでしょーが」

ほんのちょっぴり流れたギャグ漫画の住人ならではの空気は、巨人が発するプレッシャーで消し飛ぶ。
おふざけが通用する時間は完全に終わりだ。

二本足でどっしりと大地に立ち、地蟲を睥睨する憎悪の化身。
姿形はこれまでと何ら変わっていない。
しかし纏う存在感が否応なしに理解させる。

ここからが地獄の始まりだと。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

天地を揺るがす雄叫びが開戦の合図。
体を支える左足はそのままに、右足を大きく振り上げ指先が空を睨む。
踵部分が硬質化、断頭台の如く降ろされた鉄塊に全員の肌が総毛立つ。
避けろと言ったのは誰か、短い言葉を聞き届けるより早く跳び退く。

巨体を利用し、硬質化で威力を高めた踵落とし。
直撃せずとも発生する衝撃波が吹き飛ばす。
己の意思とは無関係に体が宙を舞い、地面への激突は時間の問題。

「俺は…不死身の杉元だ!!」
「ピカ~~~!?」

異名を名乗り上げ己を鼓舞、足場のない状態でありながら踏み止まる。
幻想郷の住人だから可能な飛行能力だ。
偶然傍を横切った黄色い獣を掴み、直後眼前へ迫る拳。
慌てて急降下し回避、頭上を通過する鉄拳を見ないままに善逸を降ろす。
巨人の二撃目を一々待つつもりはない、再度飛び上がり火球を連射。
場所を空中に移しての第二戦だ。

「ホアチャアアアアアアアッ!!!」

杉元とは別方向から飛翔する青い剣士。
ブレイズも飛行能力を駆使して落下を防ぎ、攻撃を再開。
海賊の船長のようなフックを振り回し、ライドブックの力を引き出す。

ブレイズの動きに呼応し空中に水が生み出される。
真下に流れ落ちる筈の水はなんとリング状へ変化。
更には妖精やライオンがリングを通って現れ、巨人に攻撃を仕掛ける。
おとぎ話の住人達を味方に付ける、これこそ変身に使った二冊目のライドブックの力だ。

炎の弾幕と妖精が狙うのは巨人の両腕。
腕を一時的にでも使用不能にさせれば、再びうなじを狙いに行ける。
だが巨人の腕に二人の猛攻はまるで効果が無い。
うなじを守ったのと同じ硬質化を、今度は両腕に使用。
僅かな焦げ目と掠り傷が精一杯の悪足掻きなど、脅威には程遠い。
しゃらくさいとばかりに左右へ拳を突き出した。

「チッ…!」

巨体からは考えられない程に速い。
攻撃を中断し回避へ集中。
掠めるだけでもまず致命傷は免れず、おまけに避けても発生する暴風で体勢を崩される。
死線を何度も潜り抜けて来た杉元と言えど、ここまで巨大な敵との戦闘は未知の領域。
気付かぬ内に緊張の汗を流す。

拳の通過位置を大きく移動し背後を取る。
ブレイズも同じ考えだったのか、反対方向から巨人の背を狙うのが見えた。
腕の破壊が難しいなら、多少無理してでもうなじを攻撃。
名刀と聖剣を抜き、囚われの少年が埋まっている箇所へ急接近。
硬質化はさせぬとばかりに振るわれた二刀はしかし、切っ先すらも届かない。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

腰を大きく捻り、伸ばした腕が半円を描く。
ストレッチにも似た動きを巨人が行えば、それは災害と変わらない。
全身を叩きつける暴風に揉みくちゃにされ、強制的にうなじから引き離される。
武器を落とさず握り締めれただけでも奇跡に近い。
装甲を纏うブレイズでもノーダメージは恐らく不可能、生身の杉元は言わずもがな。
ロクな受け身も取れないまま、あわや地面の染みと化す。

『KAMEN RIDE GHOST!』

『レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ!ゴースト!』

『メロンアームズ!天・下・御・免!』

『ジンバーメロン!ハハッー!』

待ち受ける末路は二人の仲間の手で変えられた。
仮面ライダーゴーストとジンバーメロンアームズの斬月が、それぞれ杉元とブレイズの元へ急行。
前者は幽霊のように浮遊が可能であり、後者はメロンディフェンダーを使った飛行能力を有する。
杉元達を空中で受け止め事なきを得た。

「助かった!」

礼もそこそこに、またもや放たれた拳を避ける。
善逸以外は空中戦が可能であれど、状況は何も良くなっていない。
さりとて文句を言っても始まらない。
手持ちの武器をガンモードに変形し、ゴーストは二丁の銃からエネルギー弾を発射。
斬月もゴーストに倣い、ソニックアローで矢を射る。
二人が狙うのは巨人の顔面、怯ませ隙を作り出す。

硬質化させた腕で防ぐも、巨人を相手取るのはゴースト達のみではない。
うなじ部分を目指し杉元と神楽が再度接近。
エネルギー弾の掃射に気を取られ、今度は一手反応が遅れる。
しかし、正気を失っても脅威の察知能力までは失くしていない。
刃の到達を待たずに跳躍、後方へ轟音を立てて着地。

巨人が大きく動けばその分空気は揺れ、余波が周囲に被害を齎す。
咄嗟に距離を取ったお陰で巨人に衝突こそされなかったが、吹き飛ばされるのは避けられなかった。
そこを助けたのはゴースト。
パーカーゴーストを複数召喚し杉元達を支える。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

巨人はうなじへの攻撃を避ける為だけに跳んだのではない。
降り立った場所は丁度、聖都大学附属病院のすぐ傍。
着地の振動だけでガラスが大量に割れるのもお構いなし、白亜の宮殿をガッチリと掴む。

「おい、まさか……」

嫌な予感は見事に的中。
壁に亀裂が走ったかと思えば、力任せに引き剥がす。
一階部分と既に禁止エリアへ面した病棟こそ無事だが、残りは巨人の得物と化す。
標的は無論、空を飛び回る目障りな連中。
存分に怪力を駆使し投擲、命を救うための施設が無骨な凶器へと変わった瞬間だった。

「っ!神楽!」
「わ、分かったネ!」

名前を呼ばれただけで瞬時に意図を察したのは、命懸けの戦いに慣れているからか。
ゴーストがカードを取り出し、ブレイズは聖剣の柄に手を置く。
一刻の猶予も無い、焦りを隠さず各々迎撃に移る。

『FAINAL ATTACK RIDE GHO・GHO・GHO GHOST!』

『流水抜刀!ペガサス!ライオン!ピーターファン!三冊斬り!ウォ・ウォ・ウォ・ウォーター!』

6体のパーカーゴーストと一体化し、それぞれの紋章エネルギーが右脚に力を宿す。
英雄たちの力を借り技の威力を更に強化した横で、ブレイズも剣を引き抜いた。
流水の力の源である水がエンブレムから湧き出し、渦潮へと変え鉄塊目掛けて射出。
飛来する病院の勢いを一時的に押し留め、流水片手に突撃。
ゴーストもまた蹴りを放ち、高威力の打撃と斬撃が病院を粉砕する。
パラパラと地面へ小雨のように破片が落ちる中、巨人は既に次の手に出ていた。

「おいまたかよ!?」

悲鳴染みた声が出るのも無理はない。
今投げたのは二階から上の箇所、ということは一階部分はまだ使える。
吹き抜けと化したロビーに手を突っ込み、さっきと同じく引き剥がした。
もう一度投げるつもりだろうが、技を放ったばかりのゴーストとブレイズが動くにはほんのちょっぴり遅い。
となれば、残る二人がどうにかするのみだ。

「仕方ねえ!気合入れろ大崎!」
「う、うん……!」

『ロックオン!メロンオーレ!ジンバーメロンオーレ!』

プレッシャーと恐怖で縮こまりそうになるも、ソニックアローを強く握って震えを誤魔化す。
二つのロックシードから流れ込んだエネルギーが、アークリムに充填され緑に輝く。
杉元もまた炎の翼を展開し、両腕に霊力を集中。
具体的なイメージは出来ていない、ただ目の前の障害を叩きのめす殺意を糧に技を形作る。

「今だ!」

巨人が投擲の構えを取ったタイミングでそれぞれ撃ち込む。
病院が目の前まで飛んでくるのを、わざわざ待つ意味はない。
ソニックアローを振るい、アークリムより緑の光刃が巨人を切り裂く。
タイミングを合わせた杉元の掌からはこれまでの火球ではなく、一筋のレーザーが放たれた。
妹紅のスペルカード、『原罪【正直者の死】』を思わせる攻撃だ。
手から離れかけた病院の残骸諸共、斬撃と光線が薙ぎ払う。

巨人が手にした凶器は木っ端微塵に砕け、煙が巨体を覆い隠す。
二撃目も凌いだ、だが終わりはまだやって来ない。
自身を包む煙を払い除け、巨人は地を蹴り跳ぶ。
追い打ちを掛けられ更に破壊された病院には見向きもしない。
一蹴りでこちらを見下ろす羽虫達の元へと辿り着く、否、彼らをも見下ろす位置まで跳んだ。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

鼓膜を破りかねない咆哮を発し、右手を振り下ろす。
硬質化で一点を強化した拳を食らえば、人間など途端にひき肉だ。
巨人が自分達の頭上を取ったその時点で、全員回避へ動き出している。
されど此度は落下の勢いをも味方に付けた、悪夢の如き一撃。
直撃を避けても、地面を叩いた衝撃波は空にいようと関係なしに襲い掛かった。

「んなくそ…!」

何とか宙で踏み止まろうとしても上手くいかない。
というか飛行能力自体が発動されない。
不死以外で妹紅の肉体に課せられた、もう一つの制限がここで影響し出す。
支給品で飛行可能となったジューダス等と違い、杉元は肉体の能力で最初から空を飛べる。
但し永久的に飛ぶ事は不可能であり、一定時間経過で杉元の意思に関係無く地へ落とされるのだ。

これまで飛ぶ機会は度々あったものの、長時間の飛行は今回が初めて。
制限へ気付くには遅過ぎた。
為す術なく砲丸のように吹き飛んだ挙句、病院とは名ばかりの瓦礫の山へ突っ込む。

「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
「きゃあああああああああっ!?」

ライダーに変身し重量が増していようと最早関係無い。
浮遊能力でさえまともに機能しない中、ゴーストの視線が捉えたのは自分同様吹き飛ばされる白武者。
彼女が空を飛ぶ為の盾は、足元を離れ何処かへ姿を晦ましている。
それを見た時、既に自分が受け身を取るなどは二の次となった。
パーカーゴーストをどうにか呼び出し、彼女の元へと向かわせる。
英雄達が彼女を受け止めるのが見えると同時に、全身へ衝撃と痛みが来た。

「がはっ……」

ゴーストが纏う防護スーツとパーカーの恩恵で、これでもダメージは抑えられた方。
とはいえ流石に無傷とはいかず、吹き飛んだ時の勢いも殺せていない。
ドライバーが外れて変身解除、佐藤太郎の肉体を戦場に晒す。
処置を受けた箇所と新たに負った傷へ、冷たい夜風が酷く沁みる。

「戦兎さん……!」

パーカーゴースト達のお陰で斬月は無傷で着地できた。
駆け寄る白武者へ安堵の笑みを浮かべるも、向こうからしたら全然笑えない。
自分を守るために、彼はまた傷付いた。
頑張ろうと、彼の力になろうと決意したのに結局はこうだ。
仮面の下で顔がくしゃりと歪む。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

甚大な被害、されど全滅には未だ至らず。
それを、怒れる巨人は断じて認めない。
求めるのは自分以外の死。
生存者が一人でもいる限り巨人は止まらない、憎悪は掻き消えない。
絶望感と死を予感させる大地の震動。
圧倒的な暴力の化身を前に、ちっぽけな存在が立ち塞がった。

「ピ、ピカアアアアアアアアアアアア!!!!」

巨人を相手取るには余りに小さい体躯。
黄色い体は怯えで蒼白に変色し、放って置けば倒れそうなくらいに震えている。
溢れる涙は両目がふやけんばかりの量。
今すぐにでも逃げ出したい、考え付く限りの名前を口にし助けてくれと叫びたい。
骨の髄まで蝕む恐怖に蝕まれ、己が情けないと自覚しながらも善逸が選んだのは戦闘の続行。
赤丸の頬がバチバチと放電、溜め込んだ電気を解き放つ合図だ。
邪悪なスタンド使いにも絶叫を上げさせた10まんボルト、だが今回ばかりは大きな効果を望める自信が無い。

「一人でカッコ付けてんじゃねーヨ……」

小さな体に抱え込んだ不安を笑い飛ばし、隣へ女が並び立つ。
オレンジ髪の海賊は額から垂れる血を拭い、恐れを微塵も宿らせない視線で巨人を射抜く。
既にブレイズの変身は解除された、再生能力もない生身のまま堂々と現れるのは自殺行為。
だが神楽の目は死んでいない、勝負を投げ出し自暴自棄になったつもりはない。

「男が馬鹿やったら、止めるのは女の役目ってマミーがしょっちゅう言ってたネ。姉御や家賃家賃うるせーババアも同じこと言う筈アル」

得物は聖剣ではなく細い棒。
うなじを斬るのはおろか殴れば逆にへし折れそうな、巨人相手には頼りなさを覚える武器。
だけど神楽には分かった。
理由は上手く言えないけれど、今の自分ならこの棒の力を引き出せる気がする。

「だからお前がこれ以上馬鹿やる前に、二日酔いの銀ちゃんみたく大人しくさせてやるネ」

雲が現れる。
空を覆い隠し星の輝きを遮る無粋な帳に非ず。
神楽の背後へ黒々とした雲が出現し、時折電気を迸らせる。

本来、この技を神楽が使う事は不可能。
魔法の天候棒が手元にあっても、技を使うのに必要な知識が神楽にはない。
気象学を熟知し、天才的なセンスの持ち主であるナミだからこそ使えたのだから。
しかし、PK学園でDIOを吹き飛ばしたように此度もまた、神楽自身にも説明は付かないがやれると分かった。
善逸が幾度も放った電撃が、肉体に宿る記憶を呼び起こしたのか。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

具体的な理由は分からない。
ただ今は、目の前で望まぬ暴力を強いられる仲間を取り戻す。

「雷光槍(サンダーランス)=テンポ!!!」
「ピ~カ~チュウウウウウウウウウウウウウ!!!」

光が巨人を貫く。
呪いを祓い、憎悪を焼き潰し、閉ざされた魂を照らす輝き。
黒雲から放たれる一筋の光と、ピカチュウが最も得意とするわざ。
重なり合った二つの電撃が雷の槍となり、巨人の進行を押し留めた。

『!!!!!??!!』

巨人にとっても予想外の威力だったのか、猛烈な痺れに動きが止まる。
強靭な生命力を誇る動物系古代種の能力者にも、絶大なダメージを与えた技だ。
そこへ10まんボルトの威力も加算されれば、巨人と言えども無視できない。
堪らず片膝を付く間にも痺れが襲い、鬱陶しくて仕方ない。

『ッ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!』

なれど、巨人は己の沈黙を受け入れない。
少しばかり動きが鈍くなったから何だと言う、この程度で滅びから逃れられるなど有り得ない。
自らの憎悪を燃料に立ち上がる。
握り締めた拳を硬質化、狙うは大技を放った直後の一人と一匹。

「ピカ~~!?(ぎゃああああ!また立った!お姉さん早く逃げないと…!)」
「うぐ…康一…!」

変身解除される程の勢いで地面に叩きつけられ、悲鳴を上げる体に鞭打って巨人を止めたのだ。
技が命中したとはいえ、神楽の方も息切れを起こし座り込む。
隣で善逸が何と言ってるのか不明だが、焦り自分を急かしてるのは間違いない。
言われなくてもじっといしているつもりはない、しかし巨人が黙って逃走を許してはくれない。

怒りの鉄拳がまた一つ罪を重ねる、それを防ぐは手首を射抜く緑の矢。
再生し掛けた箇所がまたもや焼かれ、焦げた臭いが漂う。
ギロリと、擬音が聞こえそうな射殺さんばかりの視線。
睨み付けられた白武者はビクリと震え、心臓が五月蠅いくらいに鳴る。

「うぅ……」

神楽達を助ける為咄嗟に矢を放った。
絞り出した勇気に巨人が返すのは感心の拍手ではなく、絶対的な暴力。
自身を苛む痺れを振り払おうと、大股で一歩進む。
たったそれだけで足底が斬月のカメラアイを覆い隠し、終わりまでの時間を短縮。
怪獣に踏み潰される映画のモブキャラはこういう心境なんだろうか。
一瞬浮かんだ場違いな感想諸共、蟻のように潰される。

『KAMEN RIDE DRIVE!』

守ると約束した少女の死へ異を唱えるは、高らかに名を上げた電子音声。
視界の端に赤い影が映り込み、次いで感じる浮遊感。
体が地面から離れてる、まさか死んであの世に昇る真っ最中なのか。
悪い想像に思わず顔を上げ、見えたのは赤い仮面の戦士。
初めて見るけど自分の知るヒーローだと分かり、そこでようやく彼に抱き上げられていると気付いた。

真っ赤な装甲、胴体部分へ装着されたタイヤ。
まるで車をモチーフにしたかの姿は、仮面ライダードライブ。
相棒のベルトと共に機械生命体との戦いに挑んだ、とある刑事が変身した戦士。
最上との戦いの際には見なかった仮面ライダー、能力は未知数だがこの場においては変身して大正解だ。
ドライブの基本形態であり、高速戦闘に特化したタイプスピード。
一時的に高速移動を可能にし、斬月の救出も間に合った。

視覚センサーが巨人の動きを細かく把握、集約された情報がメット内部に表示。
神楽達が放った電撃は残留しているらしく、一挙一動がこれまでよりも幾らか遅い。
となれば今しかない、戦況を一気に変えるにはここ以外になかった。
勝利への法則が組み立てられ、道筋が完成。
後はその通りに動けるか否か。

「ひゃっ……!せ、戦兎さん……!?」
「甜花。このまま動くからあいつの足を狙えるか?」
「え、そ、それって……抱っこしたまま……わ、分かった……!」

上擦った声で承諾。
巨人への恐怖はある、戦うことへの緊張感だって全然無くなってない。
でも彼が、助けになりたいと思ったヒーローが自分を頼ってくれた。
プレッシャーと、同じくらいの嬉しさと、勇気をくれる。

頷き合い、ドライブの全身を反重加速フィールドが覆う。
用いるのは二本の足だけであるにも関わらず、スーパーカーをも追い越すトップスピードを発揮。
上空より振り落とされる拳に方向転換、ブーツ部分のグリップパーツが急激な移動にも振り回されないようアシスト。
余裕の回避をやってのけた。

『ロックオン!ソイヤッ!メロンスカッシュ!』

生きたモンスターマシンへ乗りながらにも関わらず、斬月の狙いは正確無比。
生身の人間を遥かに上回る視覚センサーと、射撃精度の低下を防ぐソニックアローのレーザーポインダ。
戦極凌馬が開発した高機能システムにアシストされ、エネルギー矢を発射。
足首部分の肉が弾け飛ぶ。
ただでさえ痺れが抜けていないのに加え、ドライブのスピードに翻弄された結果だ。
硬質化が間に合わず被弾を許すこととなった。

『FAINAL ATTACK RIDE D・D・D DRIVE!』

斬月の攻撃は始まりに過ぎない。
矢が放たれたのと同じタイミングでカードを装填、タイヤ型のエネルギー体が複数出現。
本来は敵を包囲し蹴り技に繋げるが、今回は使い方が違う。
エネルギー体はドライブ自身を背後から弾き飛ばし更に加速、地面を削りながら装甲ブーツが巨人の足へ追い打ちを掛ける。
骨をも砕き、皮数枚で繋がった足がどうなるかは言うまでもない。

『!!!!!!??!!』

巨体を支える二本の内、片方損傷の影響は少なくない。
巨人の憎悪を嘲笑うように足首が引き千切れ、途端にバランスを崩す。
踏み潰されるだけのちっぽけな蟲にしてやれた、二度目の屈辱。
再生が完了するまでを敵は待ってくれない。

『KAMEN RIDE SABER!』

『勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』

斬月を降ろし、新たなライダーの力を解放した
勇ましい名乗りと共に火柱が立ち昇る。
火炎を切り裂き現れたのは、ドライブとはまた違う赤のライダー。
ゼロワン同様令和の時代で物語を紡いだ、とある小説家のもう一つの姿。
仮面ライダーセイバー。
全知全能の書を巡る争いを終わらせ、二つの世界を守った剣士。

そして、もう一つの炎が迸る。

「ぐうるおごあああああああああああああああああああ!!!!!」

瓦礫が四方八方へ弾け飛ぶ。
戦線復帰を妨げる無粋な檻は必要無いとばかりに堂々と参戦。
最早言語としてまともに機能しないナニカを叫ぶそいつへ、誰もが意識を向けざるを得ない。

夥しい量の赤を全身に塗りたくった少女。
老いて色を失ったのとは違う、一種の美しさが宿った白髪すらも赤に染めて。
だというのに生命力へ満ち溢れている。
最も死へ近い有様でありながら、誰よりも激しく己の死を否定する。
何度死に誘われようと抗い跳ね退け、冥府の遣いすらも戦慄させるその姿やまさしく――

「俺は……不死身の杉元だ!!!」

不死鳥の如き翼を広げ、両手が放つもまた火炎。
大地を、空気を、人を焼き潰す灼熱の塊。
『不滅【フェニックスの尾】』。
そこに美麗さはない、殺意を収束させた砲弾が憎悪を撒き散らした巨体を焼く。

「相変わらずメチャクチャだな…」

『FAINAL ATTACK RIDE SA・SA・SA SABER!』

杉元に驚かされっぱなしな自分へ、呆れ笑いを浮かべる。
ああしかし、仲間の奮闘をこうも見せられたなら柄にもなく滾ってしまうじゃあないか。
こういうのはアイツのが似合うだろと、どこぞの筋肉馬鹿を思い出しカードを装填。
セイバーへの変身後、手元に現れた剣が炎を纏う。

火炎剣烈火のエンブレムが生み出した炎はやがて、燃え盛る竜へと変化。
不死身の兵士に負けじと剣を振るう。
竜と不死鳥、二体の伝説が同じく伝説上の怪物を喰らう。

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

右腕が消し炭と化し、全身は焼け爛れた。
なれど憎悪と言う名の炎は、自身を苦しめるどんな火よりも激しく燃えている。
立てないからどうした、片腕が使えないから何だという。
腕はまだもう一本残ってる、自分は死んでない。
何より、滅ぼすべき者達が滅んでいない。

憎悪の理由も分からず、何故滅ぼすのかも考えられず。
止まる事の出来ない己への嘆きなど抱く訳もなく。
硬質化させた左拳を振り下ろす。

『流水抜刀!ワンダーライダー!』

『この動物!この動物の力が、剣に宿る!』

だが巨人が止まらないように、彼女は仲間を決して諦めない。
傷の痛み、重しと化して体中へ纏わりつく疲労。
その全てを知ったことかと捻じ伏せ、聖剣を抜き放つ。

泥棒猫の肉体に再度装着される装甲。
水流を断ち切り現れた姿は先程と一変。
百獣の王の意匠はそのままに紫のフードを纏う。
スペクター激昂戦記。
流水の本来の使い手が出会った戦士の力を秘めた、ブレイズの派生形態。

姿形が今更変わろうと巨人が特別な反応を見せはしない。
そうだ、相手が誰でも関係無い。
たとえ打倒主催者の志を共にして、再会を約束した仲間であっても。
葛藤も迷いも一切宿らせない、無慈悲な拳が振り下ろされた。
大地を叩き、周囲一帯を覆い隠す土煙。
仲間であった筈の少年の手で、余りに呆気なく少女の物語が幕を閉じる。

『必殺読破!流水抜刀!この動物一冊斬り!ウォーター!』

なら、今聞こえたこれは何だ。

拳の下に少女はいない。
どこに行ったとの答えは、遥か頭上から電子音声が告げる。
纏う炎は己が身を滅ぼす為に非ず、自由を手にした鳥のように羽ばたく為だ。
見上げる者と見下ろす者、人と巨人の視線が入れ替わればそれは終わりの始まり。
憎悪を断ち切る剣が煌めく。

「康一…今助けるアル!」

宣言を聞いても巨人がブレイズを見る目は同じ。
憎悪以外何もない、忌々しい害虫へ向ける目だ。
今更そんなもので怯みはしない。
自分がしくじり、巨人が猛威を振るい続けた先に待つのはきっとロクなもんじゃあない結末。
康一にとっての悲劇が約束されている。

地球に来て、万事屋銀ちゃんの従業員としてかぶき町に住んで随分経つ。
色んな依頼を受けて、それを解決したのだって一度や二度じゃない。
珍騒動に巻き込まれるのだってすっかり慣れたけど、全部が笑い飛ばせるバカ話で終わった訳じゃない。
時には人が死ぬような事件だってあった。
殺した奴、殺された奴、そいつらと関りの深い人々。
誰もが幸せなんかじゃ無かった、細かい違いはあっても良いことなんて無かったのだ。
友を、そして家族を失う悲しみ。
誰かの命を奪ってしまう絶望。
どちらも知ったからこそ、康一に自分と同じ苦しみを与えるなどあってはならない。

『■■■■■オオ■■■■■■オオオ■■■■■■■!!!!!』

咆える、怒りを籠めて咆える。
それでも間に合わない、残った腕の迎撃も、うなじの硬質化も遅過ぎる。
特大の電撃に始まった総攻撃と、放送前に起こった戦闘での消耗。
疲労が足枷となったのは巨人も同じだった。
まるで、彼をこれ以上進ませまいとするように。

「康一ィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!」

彼女の剣を届かせるように。

阻む全てが遅い、誰にも止められないし止まってやらない。
正しいことに使えるはずと、そう託してくれた流水でやり遂げるのだ。
水と炎、対となる力を纏った聖剣が走る。
切り裂く、彼を閉じ込める檻を。
本当の彼を踏み躙る、憎悪の鎧を。

「―――――――――――――――――――」

それは何と言ったのか。
変わらぬ憎悪か、或いは少女へ向けた感謝の念か。
拾い上げた者は一人もおらず、彼自身にも分からない。

巨人はもうここにいない。
解放された少年を迎える風が吹き、今度こそ幕が下りた。

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  • 本スレ①:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1615384066/
  • 本スレ②:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1633849195/l30
  • 本スレ③:https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1664632643/l30
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