悪魔との取引。
キリスト教圏に伝わる文化的モチーフであり、人と悪魔の間で執り行われる契約のことを指す。
悪魔は若さや知識、富や名声を引き合いに人間を誑かして、その対価に契約者に魂を要求する。
多くの場合、これらの寓話は契約者の破滅によって幕を閉じる。
悪魔の手引きで得た美点が元となって堕落するか、あるいは悪魔を騙し込もうとして敢えなく敗北し、死よりも悲惨な末路を遂げる。
だが時に狡猾な人間が悪魔の裏をかき、魂を明け渡すことなく悪魔をやり込める例も散見される。
子や信徒を諭す道徳的モチーフとして語られることもあれば、間抜けな悪魔をせせら笑う喜劇として語られることもあるが――
いずれにせよ、"悪魔と取引をしてはならない"という認識はキリスト教徒の大多数に共有されている認識と考えて相違ない。
またの名を、〈ファウストの取引〉もしくは〈メフィストフェレスの取引〉とも呼ぶ。
◇◇
――demon,In the name of devil.
◇◇
いっぱいいっぱいだ。
もういっぱいいっぱいである。
それが、
煌星満天の現状に対する率直な感想だった。
「ねえ……今日、いろんなことありすぎじゃない……?」
どん底といちばん上を交互に体験し続けている。
最高と最悪の間をバウンドしまくっている。
まるでスーパーボールか何かになった気分だと、満天はげっそりした顔でそう思った。
顔が良いだけの変態をボディーガードにされたかと思えば、憧れの〈天使〉とちゃん付けで呼び合う仲になれて。
かと思えばどう見てもカタギじゃない謎の入れ墨男に恐喝され、今は地獄みたいな二択を迫られている。
ノクトは「決まったらメールで連絡しろ」と言い残して既にファウストの事務所を立ち去っている。
が、それをいいことに話を反故にしたならあの男がさっき以上の恫喝的手段を取ってくるだろうことは満天でも分かる話だった。
選択の猶予はもう然程残されていない。
選択肢はふたつ。
〈蝗害〉と、〈抗争〉。
どちらもアイドルとは縁もゆかりもない、というかあってはならないたぐいの命題である。
というかアイドルでなかったとしても絶対に関わりたくない、人生で一度も視界に入ってほしくないテーマだった。
とはいえ満天にはどっちの地獄かを選ぶ権利はあっても、選ばないという道は選べない。
芸能界を掌握しているというあの入れ墨男に逆らえば、もう後はプロデュースとかそういう以前の話になってしまう。
なので選ばなくちゃいけないのだが、もちろん誰だってこんな二択には向き合いたくない。
煮えたぎる血の池地獄で泳ぐか針山地獄で串刺しにされるかをわくわくしながら選べる奴がいたならそいつは破綻者である。
満天は(今は悪魔だけど)そういう非凡さとはまったく無縁な人間だった。今後とも無縁なままでいたいとも思っている。
「ね、ねえ――あのさ。まさかとは思うんだけど、ほんとに行かせるわけじゃないよね?
あのおっかないおっさんはああ言ったけどさ、キャスターは良いアイデアとかもう浮かんでるんでしょ?
まさか自分のアイドルをそんなヤバい場所に送り込むプロデューサーなんていないもんね、うんうん。
私はキャスターのことよ~~く分かってるから大丈夫だよ。愛想ないし無茶言うし何でも勝手に決めるけど、根っこの部分では私のこと」
「残念ですが、こうなっては"選ばない"のが一番の悪手です。我々は既に、どちらの地獄がマシか考えるフェーズに入っています」
「ひ、ひぃん……ワ、ワァ……」
さめざめと泣く満天。
さっきまでの夢見心地のような幸福はもうどこかへ飛んでいってしまった。
禍福は糾えるなんとやらというけれど、それにしたっていささか緩急を付けすぎじゃないか。
こんなに振り回さなくたっていいじゃないか、と満天は本当にこの世の終わりのような気分になった。
そんな彼女に、「煌星さん」とキャスター……ファウストが声を掛ける。声色はいつも通りの冷静。単調。感情の宿らない、クールなそれだ。
「あなたは典型的なシングルタスク型です。よってあまり多くのことを考えさせると途端にボロが出て滅茶苦茶になりますね」
「う……自覚はあるけど、なんで今急にディスって来るの……? キュートアグレッションってやつ……?」
「それに希望的な情報を与えると途端に気が抜けるきらいもあります。飴と鞭の使い分けが大変な、非常に面倒臭……プロデュースのしがいがある方だと言えます」
「今面倒臭いって言わなかった?」
「なので基本、あなたに共有する情報と方策は意図的に絞ってきました。
煌星さんにはあくまでアイドルとしての活動に注力していただきたかったので。
――ですが、今回の件は流石に例外です。私も鬼ではありませんし、何より煌星さんの言う通り、今日はいろいろありすぎている」
ふう、と小さく嘆息して。
ファウストは眼鏡の奥の双眸を、怜悧に輝かせる。
鈍い光だ。燦然たる輝きとは違う、鈍色の光だった。
「まず第一に。
件の話ですが、実のところ我々にとってもそれほど悪い話ではありません」
「……えっ? ――いやいやいやいや! どこが!?
バッタまみれになってYOU DIED...するか半グレに揉みくちゃ(物理)されるかの二択のどこがいい話なの!?」
「この都市で起こっている災いを最前線で見聞きできれば、その分今後どうやって活動していくかのビジョンを明確にすることができる。
それに、
輪堂天梨以外のマスターとも情報共有や、場合によっては協定を結べる可能性があります。
無軌道で無作法な暴力に積み上げたものを積み木の如く崩されるリスクを減らしつつ、我々の最大の弱点である戦力面での不足を補える」
「ぅ、うーん……。まあそれはそうかも、だけど……でも危険なのは事実でしょ。
リスク回避のためにもっとおっきなリスクを背負ってたら意味なくない……? 本末転倒、っていうか……」
「そうですね。ですからこれはハイリスクハイリターン、私ならば確実性を取って選ばない選択でした。
だがこうなった以上は仕方がない。大きなリスクを背負って、より大きなリターンを勝ち取るしかありません。
それができればあの男に対しても本当の意味で対等、ともすればそれ以上に接することができる。案外数時間後には、煌星さんがあの威丈高な男を顎で使っているかもしれませんよ」
「後が怖いからあんまりうれしくないかも……」
まったく安心できる話ではなかったが、しかしファウストの言うこと自体は満天にも分かる。
〈蝗害〉も〈抗争〉も、この都市で現在進行形で起こっている聖杯戦争絡みの問題なのだ。
特に前者は満天がマスターとして此処に来た時点で既に始まっていた異常であり、今も被害をもたらし続けている。
つまり、いつ自分の身に降りかかってもおかしくない戦争の火というわけだ。
ファウストの言う通り、ある日突然これらの暴力が満天をぐちゃぐちゃに蹂躙したって何の不思議でもない。
であればそうなる前に実情を知り、対処なり回避なりのすべを見つけ出すのもひとつの手である――理屈は通っている。
とはいえ、これはファウストによるある種の慰めであることも満天は分かっていた。
得られるリターンは確かにあるが、それにしたって不確実すぎるしリスクの方が巨大すぎる。
情報欲しさに命を落としたら何の意味もない。ファウストはスパルタだが、度を越えた無茶はさせないことを満天は知っている。
こうなったからには気持ちを切り替えて、事態を最大限に利用するしかない――彼の考えはそんなところだろう。
どちらにせよ、これから満天が文字通り死ぬほど過酷な弾丸ツアーに出かけねばならないことは変わらない。
「それに……」
「……それに?」
「いえ。これは今伝えるべきことではありませんでした」
小さくネクタイを直して、ファウストは話を切る。
彼の言わんとした内容は満天には想像もつかないが、彼がこうして口を滑らせかけるというのは少し珍しい光景だった。
「ところで。
あちらが待ってくれる時間には限度があるでしょう。そろそろどちらの仕事にするか決めなくてはなりません」
「……う゛。あ゛~……やっぱり……?」
「私の意見は後に回しましょう。まずは煌星さん、あなたの意向を聞かせていただきたい」
「意向も何も、許されるならどっちにも行かないでとんずらしたいんだけど……」
「なるほど。これからは路上ライブ路線に切り替えると」
「い、言ってみただけだってば……! んぅー……う゛ーーーーー……!!!」
文字通り頭を抱えて、濁点たっぷりの唸り声をあげる満天。
絵面こそコミカルだが、彼女にしてみれば大袈裟でなく運命の分かれ道になり得る場面だ。
どちらを選ぼうが地獄は地獄。できることならお近づきになりたくない世界が広がっていることは変わらない。
それでも、どちらかひとつ選ばなければいけないというのなら。
――満天はゆっくりと、おっかなびっくり口を開いた。
「どっちかって言うなら…………バッタのほう……」
「理由をお聞きしても?」
「いや、だって……反社と関わるのは干される干されない以前の話じゃん。
もし後でヘンなゴシップ捏造されても嫌だし、生きて帰るの前提だったらまだそっちの方がマシかなって……」
アイドルに限らず、芸能人という仕事が日本中の妬み嫉みを一身に集めるものだということは満天もよく知っている。
ただちやほやされるだけで済むならいいが、どんなにキラキラ輝いていても、その光の影では誰かが虎視眈々と悪意の牙を研いでいるものだ。
……そのことを満天は、憧れるあの子を通してよく実感した。
もっとも、本当はただでさえコミュ障なのに血の味に飢えてナイフ舐めてそうな人種(満天個人の偏見である)となんてまともに関われるわけがないので、そういう意味でお近づきになりたくなかったというのもあったが。
とにかく、血なまぐさい不良達の抗争に首を突っ込むよりはまだ獰猛なバッタの群れの方がいい。満天はそう判断した。
"意向"と"理由"を聞いて――ファウストは「なるほど」と呟き、頷く。
「煌星さんの考えはよく分かりました」
「いや、できればどっちも行きたくないっていうのが一番だけどね?
私虫嫌いだし……バッタのあのでっぷりしたお腹想像するだけで今も鳥肌立ってるし……」
「私も同じ考えです。どちらか選ぶなら、〈蝗害〉の方が理に適っている」
満天のうじうじ台詞についてはスルーしつつ、ファウストが表明した意見は彼女に対する同調だった。
〈抗争〉よりは〈蝗害〉の方がいい、と。ファウストはそう言ったのだ。
「断っておきますが、これに関しては煌星さんの意思に委ねるつもりでした。
経緯がどうあれ仕事は仕事です。煌星さんが"自分に合う"と思ったなら、私の意見よりもその感覚を優先するべきですから」
「合う合わないで選んだわけじゃないけど……理に適ってる、ってどういうこと?」
「〈抗争〉は最悪恨みを買います。あの男が〈蝗害〉と並んで提示してきた時点で、そこには聖杯戦争の影が差しているのでしょう。
であれば両勢力、共に複数のマスター及びサーヴァントを抱えている可能性が高い。
そんな場所に姿を晒し、名を轟かせることに意味はありません。それよりはまだ、〈蝗害〉というある種共通の敵を調べた方が有益です」
「……あ、確かにそれもあるか……。
聖杯戦争について知ってる側からしたらこのタイミングで首を突っ込んでくる奴なんて、自分は関係者ですって言ってるようなものだよね」
争っている両勢力を平等に取材するなど不可能である。
どうやっても片方が敵となり、しかも残った方が味方になってくれる保証もない。
つまり、危険と今後抱えるリスクに対してリターンが極端に少ない。
単純な危険性で言うなら蝗害の方が上かもしれないが、それでもどうせ身体を張るなら徒労以下の結末になる可能性は避けた方が賢明だろう。
「では、〈蝗害〉でよいのですね」
「……っ」
「もう一度言いますが、今回の件に関しては煌星さんの意思を尊重します。
〈抗争〉と関わるデメリットを伝えましたが、〈蝗害〉だって決して順風満帆とは行かない難題です。
――最悪死ぬ。我々が共に、夢半ばで敗退する。その危険性を等しく孕んでいることに変わりはありません」
満天が唇を噛む。
命を懸ける/賭ける――それはこの世界では当然のことで、みんながやっていること。
でもこうして改めてそのことを直視すると、とてもではないがすぐに頷けなどしなかった。
選ぶしかない。選ぶしかないなら、こっちだと。
決まっていても、身体は石のように固まってしまう。
仕方のないことだった。煌星満天はアイドルで、今は悪魔でもあるけれど。
それ以前に、どうしようもないほどに、ひとりのどこにでもいるような少女だったから。
「……五分後に、もう一度同じ質問をします。それまでに今度こそ決めておいてください」
「あ――キャスター!」
ファウストは身を翻した。
五分。それは生き死にの懸かった命題に対するシンキングタイムとしてはあまりにも短い。
だが満天が今彼のことを呼んだ理由は、その時間設定に文句をつけたいからではなかった。
スーツ姿のプロデューサー。見慣れた背中に、満天は少し戸惑った声色で言葉をかける。
「その……もしかして、怒ってる……?」
ファウストの言葉はいつも通り理路整然としていて、合理主義な性根を隠そうともしないものだ。
にもかかわらず満天がこう思った理由は、それはもうひと月の付き合いによるものと言うしかない。
声のトーン。話す速さ。些細な仕草のひとつひとつ。雰囲気。
頭の悪い自分に、やけに饒舌かつ詳細に物を語ること。
「あ、えと……私も、さ。一応、ちゃんとできることやるつもりではある、よ。
うん――いろいろ言ってるけど、どうしても出ちゃうけど。
キャスターが私のこと考えてくれてるのは分かってるし、だから……」
しどろもどろ、おずおず……と。
借りてきた猫のように縮こまって、視線を泳がせながら。
それでも自分の相棒にして、プロデューサーたる彼に言葉を紡ぐ満天。
その姿を見て、ファウストは一瞬だけ停止した。
だが次の瞬間には再び歩みを進め始める。その上で、彼女へ言うのだ。
「それは杞憂というものです、煌星さん。
あなたはよくやっている。今この状況においても、死物狂いで考えて賢明に逆境へ立ち向かっている。
先の〈天使〉との接触にしてもそうだ。アレはあなたの頑張りがなければ成し遂げられない成果でした」
「で、でも……」
「――どうかお気になさらず。
今日に限って言えば、あなたは何も間違いを冒していない。それに、この不満は……」
――煌星満天は、十分すぎるほどに"頑張っている"。
ファウストはいつも通りの角張った言葉を通じてそう語る。
逆境の中にあっても自分の意見を持ち、言葉にできることもそうだし。
何よりやはり先刻の、〈天使〉……最強のアイドルたる輪堂天梨とのコミュニケーション。
あれは、間違いなくファウストだけでは成し得ない成果だった。
だからこそ。その心配は杞憂であると、ファウストは満天へ言うのだ。
悪魔は、人の子へ語るのだ。
「……自分自身に対するものですから」
マスターとはサーヴァントを従える者。
サーヴァントとはマスターに使役される者。
されど煌星満天とはアイドルで。
ゲオルク・ファウストとはプロデューサーである。
アイドルとは導かれ輝く者。
プロデューサーとは導き輝かせる者。
――ゲオルク・ファウストは怒っている。自分自身の不徳に。
悪魔は、苛立っている。契約を結んだ愚かな人間に情けをかけられている事実に。
メフィストフェレスは、憤っている。
そして同時に、この世の何より残酷に研ぎ澄ましている。
人の営みを嘲笑い、破滅を運ぶ己の気性を。
己が目的を何より尊び、賢しらな慢心を弄ぶ本来の在り方を。
思い出しながら対峙する。光に灼かれ狂いし"かの者"と。
悪魔とすら契約を結び、熾天に辿り着かんとする"人間"と。
悪魔を契約を結んではならない。
その先にあるのは、必ずや闇色の破滅であるから。
悪魔を嘲ってはならない。
嘲笑う側である筈のモノを見下せば、それは威信にかけてあらゆる"悪"を練ってくるから。
策謀と策謀が交差する。
見えざる線にて、呉越同舟を装いながら喰らい合う。
ヒトの形を残した少女はそこへ辿り着けないし、何より今宵の悪魔がそれを望んでいない。
彼らは共に、輝きの影にあるもの。
万象すべてを照らす光の星の傍らに侍る、仄暗い闇の輩(ともがら)なれば。
(さあ――――状況を整理しよう)
闇より深く、黒より冥く。
人と悪魔は駆け引きを交わす。
それは知恵ある者にしか見えぬ世界。
おぞましき、地獄へ落ちる瀬戸際の攻防。
いつだとてヒトは思い、悩み。
悪魔は、それに付け込む。
然るべき国ならば子どもでも知っている普遍の寓話が。
この仮想都市にても、当然のように繰り広げられようとしていた。
◇◇
らしくない姿を見せた。
ゲオルク・ファウストは反省と共に今しがたの自分を振り返る。
否、この場においては"ゲオルク・ファウスト"と呼ぶのは不適であろう。
彼の真実は悪魔そのもの。ヒトを誑かし、試し、知恵を競べ合う寓話の住人そのもの。
すなわち、悪魔〈メフィストフェレス〉。
ファウストを詐称してこの仮想都市に舞い降りた醜悪なるモノ、汚穢なるモノ。
愛すべからざる光、闇色の天体そのものである。
(――奴はこの東京の芸能を司っている。少なくとも、そのようにあれる立ち位置を有している)
煌星満天というアイドルを掌握するべく手を伸ばした魔術師は、まさしく傑物であった。
社会戦に限るならば、かの男……
ノクト・サムスタンプという男は紛れもなくこの聖杯戦争のトップランカーであろう。
たかだかひと月で彼は社会を支配した。芸能というひとつのジャンルを、統括した。
まさに悪魔の如き手合いである。常人では決して、彼の領域に並び立つことは適うまい。
それを可能とするならば、その時点でまともな人間ではない。よってノクトもまた、決して尋常の質ではない。
ノクト・サムスタンプは狂っている。狂気のように先鋭化された情熱と、それに伴い伸びた能力がこの偉業を可能としている。
正真の悪魔でさえ認める所業。〈はじまりの六人〉かくやあらん。されども、今の彼は完全無欠に非ず――悪魔は、そう確信していた。
(……が、思えば実に白々しい。
奴が聖杯戦争を経験済みだとするならば尚のこと、ほざいた言葉には矛盾が同伴している。
一時とはいえ思うようになってしまった事実は恥じるに値するが、されるがままに終わらなかったことだけは評価点となり得るか)
芸能を司る。
機嫌ひとつで、発言ひとつで人間ひとりの進退を決められる。
なるほど、確かに脅威だろう。
煌星満天という駆け出しのルーキーにしてみればそれは生死を握ったに等しい圧力であろう。
だが。
此処は正常な、尋常な社会ではなく。
いつ崩れるとも知れない曖昧な天秤の上に成り立った仮想都市である。
群れなす民は虚構。聖杯戦争のためだけに用立てられた"それらしい"舞台装置。
それを踏まえて考えれば、先の邂逅で魔術師が弄した言葉にはひとつ明確な欺瞞が見えてくる。
『なのでもし俺がその気になれば……例えば、アイドルひとり干すことくらい、簡単だ。
そっちが路上ライブだけで頑張るんだ、とか言い出したら、尻尾巻いて逃げ帰ることしか出来ないがね』
奴自身そのことを自覚していた根拠はある。他でもない、奴の吐いた言葉がその論拠だ。
(――詐欺師め。こんな世界で大衆へ映像を届ける機構(システム)に"干された"からと言って、それが何だという?)
この世界は、砂上の楼閣である。
都市機能のすべてが、波打ち際に拵えられた砂の城に等しい。
すなわち脆い。
すなわち儚い。
いつ消えてもおかしくなく、消えたとて誰も驚かない。
何しろ現在進行形で都市を食む〈蝗害〉を抱えているような状態なのだ。
そんな世界のメディア――テレビ、雑誌、ラジオ、ネット配信。
そうした諸々が、一体いつまで持続するというのか。
考えてみれば分かる。どう考えても時間の問題だ。
今夜か、明日か、明後日か。どう過大に評価してもそれ以上は保たないだろう。
何だったら今この瞬間に社会を壊す"何か"が起きて、すべてが崩れ去っても不思議ではない。
芸能界という枠組み自体が、持続可能かつ安定が共通観念として保証された"社会"の中でのみ許される砂の城だ。
であればその前提が何ひとつ満たされないこの社会で、それにこだわることに意味はない。皆無と言って、差し支えない。
少なくとも悪魔はそう思うし、そんな存在を相手に大立ち回りができるあの男にしたって気付いていないわけはない。
つまり、あの場で魔術師が口にした脅迫に価値はない。にもかかわらず、何故悪魔をも驚かせられる詐欺師がそんな見得を切ったのか。
理由は複数考えられる。だがその最たるものは、間違いなくこれであろう。
――煌星満天はその程度の言葉で揺らされるくらいに、月並みな"人間"でしかないからだ。
満天にとって。
アイドルとは、画面の中で輝く者。
整備されたステージの上で人々を照らす者。
それは決して間違いではなく、悪徳でもない。
泰平の社会、世界屈指の"安全"に保証された国で育った少女の常識がそれであることは至極健全かつ真っ当である。
そんな彼女にとってあの脅し文句は、間違いなく覿面に効き。
かつ彼女の〈プロデューサー〉は、その場では正論を突き付けられない。
じきに崩れ去る社会など気にするだけ無駄だなんて、それは"導く者(プロデューサー)"に口にできる言葉ではないからだ。
口にすれば信用を失う。
心が離れる。
プロデュースは途切れ、シンデレラの魔法は解ける。
そうなれば何がどうであれメフィストフェレスの敗北だ。
あの言葉は煌星満天だけに向けられた悪意で、指摘することのできない狡猾な虚言だった。
(己を魅せるステージなど、手段を問わなければ幾らでもある。
戦火の中、死骸の山、絶望の淵、世界の存亡……挙げ連ねれば両手の指でも足りない。
そしてそのすべてがこの都市では当たり前に実現可能な範疇だ。
既得権益の結集で成り立った衆生の社会に追放されたところで、その社会が地獄ならば輝く術に事欠く筈もない)
"路上ライブ"でいい。
何なら、その方が場合によっては効率で勝る。
死にゆく世界にひとり立つ希望の星。
勇気と輝きをもって立つ姿に民衆が何を思うかは歴史が証明している。
手段を選ばなければ、大衆の星(ジャンヌ・ダルク)なんていつでも生み出せるのだ。
そしてじき、世界は死を迎える。
末期の病巣を幾つも抱えたこの針音都市の余命は、誰がどう見ても残りわずか。
であれば"そっち"の路線に切り替えた方が利口なのは明らかだ。
だがメフィストフェレスは、悪魔たる彼はそれをせず。
魔術師の持ち掛けてきた取引に歩みを止め、その掌で踊る道を選んだ。
――彼のプロデュースするアイドルは、最効率の道に耐えられる超人ではないからだ。
(つくづく腹が立つ。よもやこの悪魔(おれ)が、人間に足元を見られるとはな)
最短距離を選んで事を進めるのは簡単だ。
しかしそれでは、悪魔の願望は満たされない。
目先の利益を重んじて、目指すところへの着地をしくじるようではそれこそ本末転倒だ。
ノクト・サムスタンプは、煌星満天のプロデューサー/サーヴァントがそれを選べないことさえ承知していた。
だからああして、世界の不変性を前提にして揺さぶった。
それをすれば、そんな世界で生まれ育った少女は必ずや意のままに揺れ動くから。
そこに寄り添えば足が止まる。寄り添わなければ、すべてが崩れる。
まさしく妙手。人間の詐欺師は、あの時悪魔をすらも己が物差しで推し測り操ってみせた。
かくも不自由なものだ、ヒトに寄り添うというものは。
そして――かくも腹の立つものだ。
ヒトに、嘲笑われるというものは。
(だが透けているぞ。お前だとて、こんな見え透いた手を弄したくはなかった筈だ)
事もあろうに、導き/謀るべき契約者に噴飯を見抜かれるとは。
かつてない屈辱だ。同時に、懐かしき感覚だ。
メフィストフェレスは人間という生き物を、その真髄を、他のどの同族よりも知っている。
彼はかつて、それを見たから。
それを見てしまったからこそ、こうして神敵たる悪魔にあるまじき茶番めいた過程にうつつを抜かしているから。
(魔術師。お前は今、行き詰まっているな)
知っているからこそ、見透かせるからこそ、悪魔は怒り闘志を燃やす。
愛すべからざる光とは、すなわちすべてのヒト、その叡智に対する大敵。
隣人にして、いついかなる時も破滅に誘う油断ならない陥穽なれば。
(少なくとも、俺達のような零細の主従を小間使いにしなければならない程度には不自由を強いられている。そうだな? 不遜なる人間め)
◇◇
個人タクシーの運転に揺られながら、ノクトは過去を述懐する。
もちろん運転手には暗示を施し済みだ。よってこの空間にいる"意志ある人間"は、実質ノクトひとりと言って差し支えない。
満天の許を去ったのは、無論彼女に対する情けなどではない。
答えを聞くのも、その後追って指示することも遠隔で済む話だ。仲良く連れ立って取材に向かうわけでもなし。
であれば足を止めて時間を無為に使うよりも、返事を待ちながら別な案件に取り組んだ方が合理的というもの。
ノクト・サムスタンプは、そういう考え方をする男だった――それはさておき。
〈はじまりの聖杯戦争〉にて、ノクト・サムスタンプが召喚したサーヴァントはおよそ最高の相棒と言ってよかった。
ノクトは魔術師としては、決して物差しの目盛りを逸脱した存在ではなかった。
だが彼はその手管、そして計略を回す脳髄の出来において極めて非凡だった。
それは形式と既得権益に支配された魔術界にて轟く美点ではなくとも。
勝利することが目的にして最善とされる、聖杯戦争という土俵においてはこの上なく輝く鈍色の宝石であった。
彼の存在は常に、他六人にとっての悩みの種だった。
黒白、禍炎。奇術師に盲目のホムンクルス。
老獪なる現人蛇の眉をさえ顰めさせる働きを、ノクトは常に成してきた。
その暗躍を、時に蛮行を支えてきたのが彼のサーヴァントであったことに疑いの余地はない。
魔術師の脳髄と英霊の異能は、間違いなく最大の噛み合いを見せた。
社会を操り、人心を操り、東京という都市ひとつを管轄下に置いて勝利を希求した。
誰もノクトを止められない。だから蛇杖堂を筆頭に、舞台そのものを壊して彼に対抗し始めたのは必然の流れだったと言っていい。
結果として東京は崩壊し、第一次聖杯戦争は最悪の形でその幕を閉じる。
されど――唯一無二の〈白〉を知った今で尚、かの戦いを経験した者達の頭にはサムスタンプの名と存在が刻み込まれている。
詐欺師。大悪党。あらゆる行動を起こす時、常に彼の顔と名前がついて回る。
それほどまでに暴れたのだ、ノクトは。そしてこの"二度目"の聖杯戦争でも、ノクトは同じ手段で覇権を握ろうとしていた。
が。
「……分かってたことだが、前ほど上手くは行かねえな」
此度、ノクトが招いたサーヴァントは策謀とは無縁の狂戦士。
前回は不可能であった、戦力差を埋め得るサーヴァントでは間違いなくある。
しかし彼には、〈継代〉ならばできた仕事のすべてができない。
よって生まれるのは当然の不自由。ノクト・サムスタンプという魔術師をして、ひと月もの時間を費やしながら"都市のすべてを道具にできていない"事実が彼の悪戦苦闘を物語っている。
仮に今も彼の隣に暗殺教団の主が侍っていたならば、冗談でなく主従の数が今の半分程度までは削られていたことだろう。
〈
継代のハサン〉の宝具。『奇想誘惑(ザバーニーヤ)』。
それは衆生を操る異能。無垢で、無辜である市井の民を暗殺者に変える力。
まさしくノクトの手管と、最高の相性を発揮する魔技だ。
かの暗殺者の存在があれば、ノクト・サムスタンプは都市ひとつをすら思いのままに操る神になれた。
されど今、〈継代〉の異能は彼の傍になく。
だからこそノクトは恋に狂った美青年の戯言に嘆息しながら、来たる決戦の時に備えて牙を研ぎ続けるのを余儀なくされている――。
(あいつの不在を除いても、やはり前回とは事情が違いすぎる。
祓葉め、おてんばにも程があるぞ本当に。いくら楽しかったからって、規模を広げすぎだ)
数十組、ともすればそれ以上の参加者。
選別が進んだ今ですら、恐らく二十組以上の主従が残っている現状。
頭数の多さは不測の事態を招く。戦力の把握は困難を極め、確固に与えられた社会能力は迷路のように複雑怪奇。
此処までは先刻も振り返った内容。
そしてノクトの頭を悩ませているのは、前回と比べ、目に見えてサーヴァントの水準(レベル)が上がっていることもあった。
――聖杯戦争とは
ルール無用、常識の通用しない世界。
そんな土俵でさえ策謀で動き、戦力以外の観点で盤面を支配しようとするなら相応の能力とセンスが必要になるのは自明だ。
だが、だとしても。どれだけ完璧にやれたとしても、覆しようのない根本的な天敵というものが存在する。
〈継代〉を欠いた今だからこそ、そして祓葉が羽目を外しまくっている今回だからこそ浮かび上がるその問題。
それは、煌星満天に課した"難題"にも顕れていた。
策を練り、細工を凝らして外堀から盤面を支配しようと目論む者達の天敵。
詐欺師を喰らう者。それは、いつだとて……
策や奸計の通用しない、もっと言うなら話がそもそも通じない。
その上、圧倒的な暴力を持ち合わせた――"特記戦力(バランスブレイカー)"とでも呼ぶべき存在である。
当然の話だが、頭脳戦というのはそれを理解できる相手にしか通用しない。
例えば契約書を片手にあれこれ甘い言葉を囁いたとして、返答が拳や銃弾であったら何の意味もない。
話は聞かない、サインもしない、その上でお前の全部を寄越せと殴りかかってくる手合いはいつだって策士の天敵だ。
〈蝗害〉は、まさにその最たる例だった。
総数不明の大群ですべてを貪る黒い暴風に契約書とペンを差し出したところで、次の瞬間には骨まで食い尽くされて終わるだけ。
そうでなくとも前回の聖杯戦争で、ノクトがこれに近い手段で対抗されていたことは先に述べた通りだ。
〈継代〉を失い、相対的に以前より小回りの利かなくなったノクトにとっては、以前にも況してこの手が苦しい。
それは先日交戦した褐色肌の少女……真名を
トバルカインというあの英霊との時にも心底痛感した点であった。
(覚悟の決まった馬鹿どもに、蝗害のような災害連中。
極めつけに、前回に輪をかけて怪物になってるだろう祓葉……まったく頭が痛い。いつから聖杯戦争は馬鹿の見本市になったんだ?)
ノクトに足りないものは絶対的に戦力だ。
ロミオがいるのに何を贅沢な、と言われたならノクトは瞬時にこう返す。
それで足りるわけがねえだろ、と。敵の頭数が前回の数倍に増えているのだ、狂戦士の無茶苦茶一辺倒で勝ち抜けるほど甘い筈がない。
単一の武力ではなく、陣営レベルでの"戦力"をこそ、サムスタンプの魔術師は欲している。
(〈蝗害〉を従えてるのは――最悪の事態を想定して顔見知りに絞って考えてるが、まあ十中八九イリスだろ。ていうか既にそう決め撃ってる。
サーヴァントの性質を知らない以上なんとも言えないが、あまりに駒の動かし方が直情的で無責任すぎる。
祓葉に袖にされてやさぐれモードの白黒(メンヘラ)が八つ当たりまがいに暴れさせてると考えると、それが一番現状と合致する)
前回の戦争を共にしたマスター達は、ノクト・サムスタンプのやり口というものを嫌というほど知っている。
万一本当に〈蝗害〉=〈はじまりの六人〉の誰かという図式が成り立つのなら、ノクトにしてみれば居場所を突き止められた時点でゲームオーバーだ。
ロミオは狂っているのを除けばたいへん優秀なサーヴァントだが、それでもあの規模と暴威を発揮できる怪物相手では防戦が精々だろうことは想像に難くない。
白兵戦で強いのと、戦争で勝てるのとは別問題なのだ。怪力無双の荒くれ者でも、拳銃を持った集団に囲まれたら終わりなのと同じ。
おまけにノクトのようなコツコツ積み立てて地盤を築く質の魔術師は、ああいう土地ごと一切合切喰らい尽くすタイプの手合いとは絶望的なまでに相性が悪い。最悪、一ヶ月かけて積み上げた体制が小一時間でパーになる。考えただけで死にたくなる話だ。
蛇杖堂寂句に協力を申し込んだのも、あの老人も自分ほどではないにしろ、そういう手を取られると困る部類だと見込んだからという側面もあった。持ちつ持たれつでスコアを稼げたならそれで良し。もしも自分より先にあっちが壊滅的な暴力に晒されたならそれはそれで良いモデルケースになる。
ノクトの意図など当然あの老獪な蛇には筒抜けだろうが――別にそこは構わない。
お前の弱みを知っているぞと言外に示すのは交渉術の基本だ。足元を見られないためには、まず先に足元を見るのが一番なのである。
その点、煌星満天の登壇はノクトにとって不測の事態でこそあったが、同時に渡りに船でもあった。
腹に一物抱えた知恵者の奸計を逆に利用し、友好を装って事実上の首輪をつける。
NPCとは明確に異なる"資格持ち"を動かしながら、偵察と更なる契約の余地を見出せる。
彼女には二つの選択肢を提示こそしたものの、実際のところ、満天達がどちらの仕事を選ぶかは読めていた。
それこそまさに、〈蝗害〉だ。反社案件はアイドルにとってご法度……というのはさておいて、あの頭の切れるキャスターが望まない形で自分の要石を喧伝して回る方を選ぶとは思えない。
対等の皮を被った小間使い。上下関係を紐付けた契約関係。
気付いた時にはもうしがらみで雁字搦め。一挙一動すべて、ノクトの指先に委ねるしかない――要するにいつものやり口だ。
そう思っていた。
だが満天と実際に対面し、あのキャスターの話を聞いて……少し、事情が変わった。
(精霊……いや、悪魔に近かったな。映像で見るのとじゃだいぶ印象が違った。
あのキャスター、一体何者だ? ひょっとすると思っていた以上のビッグネームかもしれねえな)
煌星満天。彼女は、本物になろうとしている。
幻想種との干渉を根源到達への手段と信じた一族の末裔であるノクトは、妖精、精霊、その他様々な"本物"に触れ契りを交わしてきた。
その彼だからこそすぐに分かった。今は幼体に過ぎないが、彼女の生物としての区分は間違いなく"あちら側"の存在と化している。
キャスターの宝具による後天的な悪魔化。
彼女のアイドルとしての知名度の上昇に伴って成長する、最年少の悪魔。
もちろん伏せられている情報も無数にあるのだろうが、キャスターの説明は概ねノクトの認識と合致していたので、少なくとも語られた部分に関しては真実だろうと推察できた。
正直に言って、驚いた。横紙破りも甚だしい。とうとうそんな無茶苦茶まで飛び出してくるかと天を仰ぎたくなった。
だが――
(――使える。あの小娘は上手く使えば、道理を跳ね除けて戦果を持ち帰る打ち出の小槌になり得る)
蛇杖堂に満天の話を共有するつもりはない。
する意味がない。
ノクトの計略を以ってしても難敵極まりないあの老君を出し抜けるかもしれない金の卵だ、誰が教えてなるものか。
〈はじまりの六人〉の中に、もはや只人などひとりもいない。
能力的な話でもそうだが、何より精神面で彼らは既に尋常ならざる領域に達している。
太陽に眼を灼かれ、植え付けられた狂気のごとき渇望。
彼らは主義も思想も、辿ってきた人生も性質もまるで違う亡者達であるが。
しかしある一点において、彼らは常に共通している。
――その行動のすべてが、最終的に
神寂祓葉という〈太陽〉に帰結すること。
神寂祓葉を魅せること。
神寂祓葉に、勝利すること。
そしてそれは、合理と理性を尊ぶ傭兵崩れのこの男でさえ例外ではない。
〈蝗害〉を討ちたいなど所詮は目先の目標だ。
本当に探しているのは、求めているのは更にその先。
あの不条理そのもののような少女へ届く、熾天をも射止める輝きである。
ノクト・サムスタンプは、それを見つけた。
まだまだ未熟で、祓葉の輝きとなど比べるべくもない幼体だが。
その荒削りなんてものではない原石に、彼は可能性の光を見た。
天へと至り宇宙で歌う、そんな未来の片鱗を見た。
完成した煌星満天ならば、神寂祓葉に届くかもしれない。
苦境と苦心の中に舞い降りた願ってもない〈地の矛〉。
それはノクト・サムスタンプにとって注視せざるを得ない"希望"であり。
そして同時に――悪魔を手玉に取り切れない、"弱み"でもあった。
◇◇
(今ならば分かる。奴ら〈はじまりの六人〉が誰に殺され、誰に蘇らされ、そして誰を目指しているのか)
元々、メフィストフェレスはその可能性を脳裏の片隅に置いていた。
聖杯戦争が、二度繰り返されている可能性だ。
この針音都市は聖杯戦争という儀式のセオリーをあまりに無視しすぎている。
監督役はおらず、仮想世界とはいえ民間への被害も完全に野放し状態。
ずっと疑問には感じていた。何故、この針音の聖杯戦争はこうまで歪であるのかと。
それに対してのひとつの答えとなり得る仮説が、"聖杯戦争二周目説"だった。
まずはじまりに誰かが聖杯を手に入れ、神の如き力を持って世界を創造した。
目的など見当もつかないが、責任感や真面目さとは無縁の人物が玉座に座ってしまった結果だと考えれば辻褄は合う。
言うなれば、どうしようもなく自分勝手な子どもが作り上げた箱庭。
子どもだからつまらないルールには反発するし、設けもしない。
みんな好き勝手振る舞って殺し合い、その果てに勝ち残れたなら万々歳。
幼稚、勝手、無責任で超弩級の馬鹿。そんな神がこの都市のどこかにいるとすると、話が通ってしまうことにある時気付いた。
とはいえ、メフィストフェレスはこの説を本気で追っているわけではなかった。
辻褄は合うし話が通っているというだけで、仮説にしたってあまりに荒唐無稽が過ぎる。
偶然と曲解から生まれる陰謀論と大差ない愚説として、ほぼ一笑に伏していたと言ってもいい。
されどそんな馬鹿の極みのような話が、思わぬところで正解と認められてしまった。
聖杯戦争は二周目だ。
頭の悪い神は実在する。
そして。
メフィストフェレスは――恐らく既に、それを視ていた。
〈天使〉輪堂天梨のライブを偵察した帰り道。
路傍ですれ違った、白髪の少女。
悪魔の中の悪魔に、無条件の戦慄を抱かせた"光"。
根拠は皆無に等しいほど薄弱だが、メフィストフェレスという悪魔の直感が間違いないと断じている。
(あの〈白い少女〉だ。あの餓鬼が奴らの、そしてこの世界の〈太陽〉だった)
アレが、この世界の神だ。
針音の都市を生み出せしモノ。
〈熾天の冠〉を最初に戴冠した王者。
己とは似て非なる、愛すべからざる光。
神の如き悪魔、悪魔の如き神であったのだ。
ノクトとのやり取りの傍らで、恋する狂人が口を滑らせたのを悪魔は覚えていた。
『嗚呼、運命の悪戯で、一度は破れたはずの想いに再び向き合うマスター』。
『この男はこう見えて、恋に生きる一途な男なのさ』。
『それはもう、死の運命すらも覆して挑む第二の挑戦さ』。
『彼の恋路の険しさと言ったら、並大抵の神話では太刀打ちなんてできないほどさ!』。
バーサーカーの吐く言葉など、取るに足らない戯言。真に受ける方がどうかしている。
されど。
最も有名な"恋する男"が――たとえ狂気の中にあったとしても、〈恋〉で法螺を吹く筈がない。
向く方向の定まった狂気は、時に賢者の智慧よりもよほど信用に足るものだ。
神は実在し、そしてノクト・サムスタンプは神に懸想している。
そう仮定し、メフィストフェレスは改めて神の人物像に思いを馳せた。
(……幼稚。自分勝手。無責任。そして、純粋)
何故、自分が下した敗者達を蘇らせた?
ノクトは主従の組み合わせがシャッフルされたと語っていた。
厄介な相手が複数いるとも。であれば、仮称〈はじまりの六人〉全員が蘇生され、もう一度マスター資格を与えられていることはほぼ確実。
――何故? その行為に、何の意味がある?
普通に考えればデメリットしかないことは明らかだ。
手の内と人となりがバレている、おまけにその手で屠ったのなら悪感情もひとしおだろう。
神にどんな目的があるにせよ、その行動に合理的な理由は見当たらない。
だがこれを先ほど挙げた人物像に照らし合わせて考えると、ひとつ仮説が浮かんでくる。本当に、頭の痛くなるような話だが……
(もう一度、遊びたい)(今度はもっと大勢で)
(気心の知れた相手も呼んで)(つまらないルールも、縛りもなし)
(もう一度みんなで、"聖杯戦争"というゲームを楽しみたい……?)
悪魔とは人を見透かし、甘言を囁くもの。
故に人心にはこの世のどんな生き物より精通している。
だからこうして、わずかな情報だけでも人物の本質に辿り着ける。
の、だが。導き出された解は、悪魔でさえ顔を顰めずにはいられない最低最悪。
邪悪よりたちの悪い純真無垢だ。この世に存在してはならない種類の光であると言う他はない。
(――く)
故に悪魔は、その最悪を祝福する。
(そうかそうか。確かにこれは難儀な恋路だなあ)
あまりに見る目がないが、焦がれたのはお前の落ち度だ。
悪魔が嗤う。嗤いながら、自分へ挑んだ人間について考える。
(お前は決して、己の狂気(こい)から逃れられない。
どれほど賢しらに合理主義を気取ろうと、最終的には愛しの太陽に向かってしまう。
そうでなければお前達は、光に灼かれた亡者どもは黒焦げの魂を保てないのだろう?)
ノクト・サムスタンプは間違いなく、弩級の知恵者だ。
その手腕、油断ならなさ、秘める脅威性は本物の悪魔でさえ舌を巻く。
事実一度はやり込められた。少なくともメフィストフェレスはそう思っている。
だが惜しい。本当に惜しまれることに、二度目の生を得た彼は完全な存在ではなくなってしまった。
徹底した合理主義に基づいた、一寸の無駄もない男。
その魂に、今はひとかけらの矛盾が根付いてしまっている。
完璧であればあるほど、それが矛盾した時に生まれる影響は大きいものだ。
そして。悪魔とは、そういう弱みに嬉々として付け込むからこそ、恐れられてきたのである。
悪魔と取引してはならないと、そう言い伝えられているのである。
(ならばお前はもう――俺の契約者(アイドル)を捨てられない)
お前は俺に、俺のモノに、希望を見たな。
であれば仲良くやろう、末永く。
恋する素敵なお前には――このシンデレラストーリーと心中する権利をくれてやる。
◇◇
アイドルとしての知名度の向上が、悪魔・煌星満天の成長とリンクする。
それは本来なら、実にわかりやすく、そして"やりやすい"趣向だった。
芸能界の要点を軒並み押さえ、それ以外の分野にも幅広く手を伸ばしているノクト・サムスタンプである。
彼の合理主義と、この地で地道に準備した権力人脈その他諸々を最大限に活用し。
なおかつ、手段を選ばないでいいのなら――都市の誰もに知られた最強のトップアイドルを作り上げるなど、至極造作もないことだった。
それこそ一日でもあれば、ノクトは満天をトップアイドルとして、ひいては対特記戦力用の秘密兵器として完成させられる自信があった。
ただ。
ひとつだけ、頭の痛い問題もあった。
(……クソッタレが。あの野郎、まさか此処まで見越してやがったのか?)
――――煌星満天の人間性が、あまりにも月並みすぎたことである。
あのわずかな時間の対話でも十分に分かった。
満天は凡人だ。おまけに、たぶん馬鹿だ。
長所より欠点の方が間違いなく多いし、本人もそれを自覚しているから劣等感が強く、自分という人間に自信をまったく持っていない。
そのくせ理想だけは高い。彼女はキャスターの意向云々を抜きにして、本気でトップアイドルの座を目指している。
ひねくれていながら同時に純真。まったく矛盾している。合理性の欠片もありゃしない。
だからこそ煌星満天は今、恐るべき契約魔術師の頭を意図せず悩ませることに成功していた。
(本人の意思を無視して条件だけ満たさせるのは簡単だ。だがそうやって出来上がった〈悪魔〉は、使い物になるのか?)
理想と現実のギャップに潰れて沈まれては元も子もない。
それに、嵌められたと怒り狂われれば祓葉にも届き得る新たな特記戦力が、感情のままに自分へ向かってくることになる。
そして、一番の問題は……
(いや、そもそも……本当に"それだけ"か? だとしたら話が上手すぎやしねえか――?)
ここは駆け引きで使う部分ではないと、キャスターは満天に言っていた。
であれば駆け引きに使う部分とはどこか。
決まっている。悪魔・煌星満天という存在のロジック、そのブラックボックスの部分すべてだ。
満天に対する期待は、単にキャスターの言葉を鵜呑みにしてのものではない。
恐らくこの針音都市の誰よりも、"本物"と触れ合った経験が豊富である故のきわめて合理的な期待である。
事実、動画で見た時よりも今の彼女は人外として洗練されているように見えた。それも、ノクトの期待を後押しした。
蝗害を駆逐し、旧い顔馴染みどもを鏖殺し……そして最後には、かつて届き得なかった天星を射落とす。
そういう希望を、彼に抱かせた。何がどうあっても、結局ノクトもまたひとりの亡者なのだ。
――神寂祓葉という宿命から、彼ら六人は決して逃げられない。
祓葉に届くかも、という希望は例外なく彼らを縛る。
蛇杖堂寂句が、天蠍にそれを見たように。
〈脱出王〉が、最上の舞台を目指して躍動するように。
一度見てしまったなら、抱いてしまったなら彼らはそれを捨てられない。
ノクト・サムスタンプは先の直接対決にて、間違いなく煌星満天とそのサーヴァントに首輪を付けたが。
しかし同時に、ノクト自身もまた彼女達に首輪を付けられた。
煌星満天という悪魔(アイドル)を、もうノクトは忘れられない。
彼はあの時、捕まえたと同時に、捕まったのだ。
◇◇
悪魔メフィストフェレスと、アイドル・煌星満天の交わした〈契約〉についておさらいをしよう。
煌星満天は、メフィストフェレスから輝くための力を賜った。
悪魔の力だ。完成すればこの都市の神にも手が届くかもしれない、とても大きな力だ。
対価として悪魔は、彼女に"希望と充足"を求めた。劇的なる瞬間。彼のかつての契約者が見た、留まりたいと願うほどの刹那を。
その方法に、満天は自らの大願成就をもって応ずると誓った。
すなわちシンデレラストーリーの大団円。トップアイドルという夢を叶える姿をもって応えると述べたのだ。
以上をもって契約は成立。
満天の物語は始まり、彼女は輝きの頂点へと続く階段を登り始めた。
されど、悪魔との契約はいつだって無情なもの。
誓いを反故にすればその瞬間に契約者は死に、魂は悪魔の胃袋の中へと堕ちる。
満天が諦めること。
満天の心が折れること。
それが"回収"の条件である。
以上をもって契約は不履行となり、ペナルティが下る。そして真なる悪魔が、悪魔と取引した愚かな人間の魂を糧に顕現する。
――そしてこの部分についての話を、メフィストフェレスはノクトに対して意図的に伏せていた。
(お前は優秀だ。上手く使えば、俺達にとっても大きな益をもたらす。
だから代わりに使われてやる。せいぜい仲良くやろうじゃないか、こちらはとっくにその構えだ)
シンデレラストーリーを踏み躙ることは簡単だ。
乙女の夢見る心を弄び、悪意のままに押し上げることは実に容易い。
だがあいにく。煌星満天は、それで満足できるほど利口ではない。
煌星満天は現実をよく分かっていて、その上で夢を追いかけている。
少女の理想は強情で、だからこそズルで叶えても満足しない。それどころか、十中八九ぺしゃりと潰れる。
瞬間、契約の不履行は確定し。望みの"瞬間"にありつけなかった悪魔は、満天の魂を喰らって顕現する。
天の太陽へも届くかもしれないアイドルの矢は放たれぬまま、十二時過ぎの魔法は解けてしまう。
これは"もしも"の話であるが。
仮に満天が、理想に達するためなら周りのすべてを果実同然に踏み躙って進める質だったならば。
そんな"茨の女王"めいた人間であったならば、どんなに血の通わない過程であろうが魔法は解けなかったろう。
けれど煌星満天は泥臭い。ダメダメで、抜けてて、要領が悪くて、コミュ障で、そのくせ理想はとっても高い。
故に彼女は認めない。望まない道で叶えた夢、スポットライトでは満足できない。
だから、ノクト・サムスタンプでは彼女のプロデューサーたり得ないのだ。
彼のやり方はとても理に適っていておまけに最高速度だが、今宵のシンデレラは非常に面倒臭い。
(しかし俺達の契約に関しては、何ひとつ手を出させない。
焦れったい思いをしながら、じっくりと、まっとうな手段でこの末子成功譚を応援してくれ。
せっかちは良くないぞ? 無理に手を引けばせっかくの希望(あくま)が台無しだ。のんびり行こうぜ、なあ――――)
ノクトのああも直接的な接触は想定外だった。
彼に"仕事"を押し付けられ、協力関係という名の首輪を付けられたのは失態だった。
満天を〈蝗害〉という危険に近付けなければならないことも、正直今から頭痛さえ覚えている。
だが。それでも、悪魔メフィストフェレスによる煌星満天育成計画の大筋は変わっていないし変えるつもりもない。
――満天をトップアイドルにする。
――この滅びゆく都市で、それでも彼女の理想を遂げさせる。
――天の御使いを超えて輝く地の星を、実現させてみせる。
神を超えるなどまだまだ先の話だ。
そもそも前提の契約が履行されていない。
〈天使〉も超えていないのに〈神〉を見据えるなんて鬼が笑うというもの。
「――――この俺に上等かましたんだ。望み通り、ケツの毛まで毟り取ってやるよ」
◇◇
「一勝一敗、ってか?
俺は高えぞ、このエセプロデューサーが」
此処まで、詐欺師と悪魔は一言の言葉も交わしていない。
それどころか通信も交わしていない。彼らの思考は己の中で完結している。
だとしても、彼らほどの次元になれば。
与えられた情報と、垣間見た相手の人となりだけで、こうして心理戦を交わし合える。
互いに首輪を付け合った形になったことは、もはや認めるしかない。
もっと俗っぽく言うならば一勝一敗。
詐欺師と悪魔は、互いに白星を献上し合った形だ。
されど腹立たしいことに、得の方がその屈辱に勝っている。
これはメフィストフェレスも感じていることだ。
規格外に頭のいい男がふたり、利害の一致なれども手を組んだ。
そしてノクトの方は、その上で蛇杖堂の怪物とも関係を築けている。
蛇杖堂を利用しつつ、いずれ蹴落とす算段を立てられた事実は非常に大きい。
あの老人は怪物だ。どう崩すかと手をこまねいていれば、気付いた時には奴の腹の中という可能性も大いにあり得る。
――〈プロデューサー〉との共謀。
――成長した〈悪魔〉による強制排除。
ふたつの作戦を構えられるようになったことは、ノクトにとって間違いなく前進だった。
その上〈蝗害〉、そうでなくとも〈抗争〉への調査まで進むのだから願ったり叶ったり。
焦れったいサクセスストーリーを眺めなければならないことだけは不服だったが、こればかりは必要経費と飲み込むしかなかった。
いいだろう、上等だ。
お前の手管に乗ってやる。
ただし、俺は高いぞ。
期待に応えられないようであれば、ふたり仲良く地獄(ゲヘナ)へ還って貰う。
「……ああ、それにしても」
ふう、と小さく息を吐く。
車窓から覗く空には、雲の切れ間から覗く太陽。
じっと見ていると、だんだん視界が濁ってくる。
虹彩が訴えるこの痛みが、心地よくなったのはいつからだろう。
〈夜の女王〉から賜った妖精眼(グラムサイト)さえ灼く星の光。
あの輝きに、ノクトは今も囚われている。ロミオはそれを、恋と呼んだ。
「――神を撃ち落とす灯、か。そりゃ、なんとも悪くない響きだ」
◇◇
ノクト・サムスタンプ。
そして彼の同類どもは、メフィストフェレスにとっても目障りな存在である。
可能であればどこかのタイミングで一斉に排除したい。
だが少なくとも、今はまだそれを考えられる状況ではない。
ひとまず満天、及び彼女のアイドル活動を支え導く周辺環境に対しては暗黙のセーフティーネットを張り防衛線とした。
であれば今度は、こちらが奴との契約を履行する番。
悪魔としての思考を終え、プロデューサーとしての――ゲオルク・ファウストとしての顔に戻る。
輪堂天梨には既に、会談の予定時刻と場所を送信してある。
〈蝗害〉or〈抗争〉の調査とどちらを優先するかは臨機応変に判断したいところだが、その前に問題がひとつ。
時計の針は、ファウストが満天に踵を返してからちょうど五分後を示していた。
刻限だ。これ以上の猶予は与えられない。
眼鏡を掛け直し、再び少女の前へと出る。
「さあ、煌星さん。回答を」
紡いだ言葉は端的、されど冷血ではない。
悪魔メフィストフェレスもまた、ノクト・サムスタンプのことを心からは笑えない。
サムスタンプの魔術師は、恋を知って完璧ではなくなった。
そしてメフィストフェレスの悪魔は、疑問を抱いた結果今も探求を強いられ続けている。
少女が、悪魔の顔を見た。
深呼吸の末、ゆっくりとその口を開く。
そうして、はっきりとした声音で紡がれた"回答"に。
悪魔は、かつての契約者の顔で、静かに口元を歪めた。
◇◇
ご依頼の件について
Kiraboshi-6660@xxxxx.ne.jp
宛先:RandJ-28@xxxxx.ne.jp
お世話になっております。
先ほどの件ですが、話し合いの結果、〈蝗害〉の調査の方でお引き受けさせていただきます。
つきましては人員、および提供いただける設備についての提示をお願いできればと思います。
お互いにとって実のあるお仕事になるよう祈っております。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
◇◇
【台東区・芸能事務所/一日目・夕方】
【煌星満天】
[状態]:健康、色々ありすぎて動揺したりふわふわしたりで心がとても忙しい
[令呪]:残り三画
[装備]:『微笑む爆弾』
[道具]:なし
[所持金]:数千円(貯金もカツカツ)
[思考・状況]
基本方針:トップアイドルになる
0:……やるしかない、んだもんね。
1:魅了するしかない。ファウストも、ロミオも、ノクトも、この世界の全員も。
[備考]
聖杯戦争が二回目であることを知りました。
ノクトの持ち込んだ『蝗害の現地リポート』『半グレ抗争の現地リポート』のどちらを選ぶかは、後続の書き手にお任せします。
ノクトの見立てでは、例のオーディション大暴れ動画の時に比べてだいぶ能力の向上が見られるようです。
【プリテンダー(ゲオルク・ファウスト/メフィストフェレス)】
[状態]:健康
[装備]:名刺
[道具]:眼鏡
[所持金]:莫大。運営資金は潤沢
[思考・状況]
基本方針:煌星満天をトップアイドルにする
0:小僧が――悪魔に上等かましたんだ、覚悟はあるんだろうな?
1:輪堂天梨と同盟を結びつつ、満天の"ラスボス"のままで居させたい。
2:ノクトとの協力関係を利用する。とりあえずノクトの持ってきた仕事で手早く煌星満天の知名度を稼ぐ。
3:時間が無い。満天のプロデュース計画を早めなければならない。
4:天梨に纏わり付いている"まがい物"の気配は……面倒だな。
[備考]
ロミオと契約を結んでいます。
ノクト・サムスタンプと協力体制を結び、ロミオを借り受けました。
聖杯戦争が二回目であることを知りました。
輪堂天梨との対談の日時や場所を決めて既に彼女に連絡しています。
具体的な日時や場所は後続の書き手にお任せします。
【バーサーカー(ロミオ )】
[状態]:健康、恋、ごきげん
[装備]:無銘・レイピア
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:ジュリエット! 嗚呼、ジュリエット!!
0:覚悟を決めた顔も……凛々しい~~~~!!(かわいいね! トゥデイズロミオポイント加算だ)
1:ジュリエット!! また会えたねジュリエット!! もう離しはしないよジュリエット!!!
2:キミの夢は僕の夢さジュリエット!! 僕はキミの騎士となってキミを影から守ろうじゃないか!!!
3:ノクト、やっぱり君はいい奴だ!!ジュリエットと一緒にいられるようにしてくれるなんて!!
[備考]
現在、煌星満天を『ジュリエット』として認識しています。
ファウストと契約を結んでいます。
【台東区→移動中/一日目・夕方】
【ノクト・サムスタンプ】
[状態]:健康、恋
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:莫大。少なくとも生活に困ることはない
[思考・状況]
基本方針:聖杯を取り、祓葉を我が物とする
0:満天達に仕事に関する指示を行う。俺は高ぇぞ、悪人面め。
1:当面はサーヴァントなしの状態で、危険を避けつつ暗躍する。
2:ロミオは煌星満天とそのキャスターに預ける。
3:とりあえず突撃レポート、行ってみようか?
4:当面の課題として蛇杖堂寂句をうまく利用しつつ、その背中を撃つ手段を模索する。
5:煌星満天の能力の成長に期待。うまく行けば蛇杖堂寂句や神寂祓葉を出し抜ける可能性がある。
6:満天の悪魔化の詳細が分からない以上、急成長を促すのは危険と判断。まっとうなやり方でサポートするのが今は一番利口、か。
[備考]
東京中に使い魔を放っている他、一般人を契約魔術と暗示で無意識の協力者として独自の情報ネットワークを形成しています。
東京中のテレビ局のトップ陣を支配下に置いています。主に報道関係を支配しつつあります。
煌星満天&ファウストの主従と協力体制を築き、ロミオを貸し出しました。
前回の聖杯戦争で従えていたアサシンは、『継代のハサン』でした。
今回ミロクの所で召喚された継代のハサンには、前回の記憶は残っていないようです。
前の話(時系列順)
次の話(時系列順)
最終更新:2024年10月24日 01:19