少女は、お腹がすいていた。
とぼとぼと、独りぼっちで夜道を歩く。
マザーも友達も皆此処には居なくって、どうすればいいのか分からなかった。
とぼとぼと、独りぼっちで夜道を歩く。
マザーも友達も皆此処には居なくって、どうすればいいのか分からなかった。
「おれ、どうすればいいの?教えてよ、マザー…」
小山のような体躯の少女――シャーロット・リンリンが、ぽつりと一番の理解者を呼ぶ。
だけど、その呟きは闇に吸い込まれるばかりで決して返ってはこない。
気づけば、瞳の端には涙が浮かんでいた。
だけど、その呟きは闇に吸い込まれるばかりで決して返ってはこない。
気づけば、瞳の端には涙が浮かんでいた。
与えられた鞄をひっくり返してみても、出てきたのは乾燥麺とお酒だけで、あっという間に平らげてしまい。
甘いお菓子が欲しかった。孤独を癒してくれる甘い甘いお菓子が。
丁度その時だった。
くん、とリンリンの嗅覚があの愛してやまないセムラの匂いをかぎ取ったのは。
甘いお菓子が欲しかった。孤独を癒してくれる甘い甘いお菓子が。
丁度その時だった。
くん、とリンリンの嗅覚があの愛してやまないセムラの匂いをかぎ取ったのは。
瞬時に、くんくんと匂いの元を辿って駆けだす。
その途中で足元に緑色の小鬼が沸き出てきたが、気にせず吹っ飛ばす。
「GOBUUUUU!!」「GBUOOOOO!!」
次々と断末魔の響きを奏でながら、ゴブリン達が轢死していくがリンリンの眼中にはない。
息を切らすほどの全速力で駆け抜け、匂いの元で止まる。
その途中で足元に緑色の小鬼が沸き出てきたが、気にせず吹っ飛ばす。
「GOBUUUUU!!」「GBUOOOOO!!」
次々と断末魔の響きを奏でながら、ゴブリン達が轢死していくがリンリンの眼中にはない。
息を切らすほどの全速力で駆け抜け、匂いの元で止まる。
「セ〜ム〜ラ〜!!!」
辿り着いたのは、古びた映画館。
天井も入り口も高く作られているそこは、人間離れした体躯のリンリンでも何とか入る事ができた。通路を所々破壊しながらを突き進み、スクリーンのある一際大きな部屋へと出る。
天井も入り口も高く作られているそこは、人間離れした体躯のリンリンでも何とか入る事ができた。通路を所々破壊しながらを突き進み、スクリーンのある一際大きな部屋へと出る。
スクリーンに映し出されている映像には眼もくれず、匂いの元を探す。
すると、匂いの元は直ぐに見つかった。
求めてやまなかった大量のセムラと―――その一つを手に取ってスクリーンをニヤニヤと眺める一人の青年。
すると、匂いの元は直ぐに見つかった。
求めてやまなかった大量のセムラと―――その一つを手に取ってスクリーンをニヤニヤと眺める一人の青年。
「…やぁ、いらっしゃい。君も此処に来て一緒に見ようよ。
お菓子が欲しいなら、分けてあげるからさ」
「ほんと!!」
お菓子が欲しいなら、分けてあげるからさ」
「ほんと!!」
無邪気に青年の元へと駆けるとどっかと一帯の座席を破壊して、そこに積み上げられたセムラにむしゃぶりつく。
バクバクムシャムシャガツガツ。
足りない物を埋める様に、一心不乱で食い散らす。
バクバクムシャムシャガツガツ。
足りない物を埋める様に、一心不乱で食い散らす。
「マナーは、守ろうか」
その喰いっぷりに流石に辟易したのか、ぽん、と青年の手がリンリンの身体に触れる。
リンリンは構わず食い続ける。
何も、起こりはしない。
リンリンは構わず食い続ける。
何も、起こりはしない。
「…マジか?」
落ち着いた声色ながら、確かに驚嘆を含ませて青年が声を上げる。
壊れると思ったものが、予想を遥かに超えて頑丈だった。その手の声だった。
その声を受け、ようやく人心地着いたリンリンが、隣に座る青年の方へと向き直る。
黒いローブに白い髪、そして何故か顔に横一文字のツギハギの走った奇妙な青年だった。
リンリンは面食らった様子の青年に、花の咲いたような笑顔を向けて、感謝の言葉を述べる。
壊れると思ったものが、予想を遥かに超えて頑丈だった。その手の声だった。
その声を受け、ようやく人心地着いたリンリンが、隣に座る青年の方へと向き直る。
黒いローブに白い髪、そして何故か顔に横一文字のツギハギの走った奇妙な青年だった。
リンリンは面食らった様子の青年に、花の咲いたような笑顔を向けて、感謝の言葉を述べる。
「げっぷ…セムラ、ありがとう!お兄さん!それと、マザー知らない?」
「…いや、生憎。俺は此処に連れてこられてからずっと支給された『アレ』を見てたからね。
他の人間に会うのも、君が初めてさ」
「…いや、生憎。俺は此処に連れてこられてからずっと支給された『アレ』を見てたからね。
他の人間に会うのも、君が初めてさ」
そう言って青年はすっとスクリーンを指さす。
リンリンもその指に誘導されるように、スクリーンへと視線を向ける。
そして、見てしまった。
リンリンもその指に誘導されるように、スクリーンへと視線を向ける。
そして、見てしまった。
自分と同じ程の年齢の、子供が母親の目の前で殺される姿を。
明日殺されると分かっていて玩具にされる鬼の姿を。
それを笑顔で、鼻歌交じりで眺めている人間の姿を。
三人の裸の人間が同じ人間を強姦しながら奪った拳銃で射殺する姿を。
拘束された子供の前で、ゆっくりと足から捻り潰される妖獣の親子を。
生きたまま錆びた鋏を背に入れられ、腸を引きずりだされる人魚を。
そうして何分生きながらえるか賭けをする肥え太った人間たちの醜悪な笑みを。
明日殺されると分かっていて玩具にされる鬼の姿を。
それを笑顔で、鼻歌交じりで眺めている人間の姿を。
三人の裸の人間が同じ人間を強姦しながら奪った拳銃で射殺する姿を。
拘束された子供の前で、ゆっくりと足から捻り潰される妖獣の親子を。
生きたまま錆びた鋏を背に入れられ、腸を引きずりだされる人魚を。
そうして何分生きながらえるか賭けをする肥え太った人間たちの醜悪な笑みを。
それは地獄だった。それは悪夢だった。映っている中に人間は、一人もいなかった。
「あぁ、ああぁあああぁあああああ」
リンリンの喉から無意識のうちに声が漏れる。
もし、数十年後の、酸いも甘いも知り尽くした稀代の悪女にして女傑の彼女ならば、
この映像すら、笑い飛ばして「あと三倍はもってこい」と宣ったかもしれない。
けれど、この時のリンリンはまだ子供だった。
マザーという唯一の寄る辺さえ喪った、真っ白なキャンパスだった。
そこに、凝縮され切った悪意というドス黒い絵の具がぶちまけられたのだ。
もし、数十年後の、酸いも甘いも知り尽くした稀代の悪女にして女傑の彼女ならば、
この映像すら、笑い飛ばして「あと三倍はもってこい」と宣ったかもしれない。
けれど、この時のリンリンはまだ子供だった。
マザーという唯一の寄る辺さえ喪った、真っ白なキャンパスだった。
そこに、凝縮され切った悪意というドス黒い絵の具がぶちまけられたのだ。
映画館の半分が爆散したのは、その一秒後の事だった。
▼
「いやぁ、大した子供だった。魂のカタチは人だったけど…本当に人間なのかね?アレ
魂の輪郭も、無意識のうちに掴んでたみたいだし…」
魂の輪郭も、無意識のうちに掴んでたみたいだし…」
映画館から優に一キロ近く吹き飛ばされてもツギハギの青年――真人はけろりと笑っていた。
折れた鼻をつまんでぼたぼたと流れる鼻血を止めると、大きく伸びをする。
特級呪霊に位置する自分の魂のカタチを自在に歪める能力・無為転変を使っても無事だった少女。
これから成長すれば間違いなく両面宿儺や五條悟に並ぶ強さになるだろう。
中々に刺激的で、インスピレーションが刺激される存在だった。
折れた鼻をつまんでぼたぼたと流れる鼻血を止めると、大きく伸びをする。
特級呪霊に位置する自分の魂のカタチを自在に歪める能力・無為転変を使っても無事だった少女。
これから成長すれば間違いなく両面宿儺や五條悟に並ぶ強さになるだろう。
中々に刺激的で、インスピレーションが刺激される存在だった。
「あれを相手にするなら領域展開は必須かな。
ま、映画鑑賞もここまでにして、取り敢えず何人か殺しに行こうか」
ま、映画鑑賞もここまでにして、取り敢えず何人か殺しに行こうか」
人が人を恐れ憎み生まれた災厄。
そんな彼にとって、殺し合いなど自分の最も得意とする舞台だ。
だから、早々に、期待通りに踊って見せようと決めていた。
元々企てていた計画は思わぬ所で横道に逸れてしまったが、やるべきことは変わらない。
軸がブレようと。
一貫性がなかろうと。
偽りなく、欲求の赴くままに行動する、それこそが呪いなのだから。
そんな彼にとって、殺し合いなど自分の最も得意とする舞台だ。
だから、早々に、期待通りに踊って見せようと決めていた。
元々企てていた計画は思わぬ所で横道に逸れてしまったが、やるべきことは変わらない。
軸がブレようと。
一貫性がなかろうと。
偽りなく、欲求の赴くままに行動する、それこそが呪いなのだから。
「狡猾に行きたいところだね。呪いらしく、人間らしくさ」
我殺る、故に我呪い。
◆
未だ映像の流れるスクリーンに背を向けて風通しの良くなった映画館を飛び出す。
リンリンは幼くて、無知ゆえに友達を傷つけてしまいそうになることも多々あったけど。
それでも喧嘩している熊と狼がいれば仲直りしてほしいと願える程度の良識は持っていた。
そんなリンリンにとってあの映像は途轍もなく醜悪で、不快で、腹立たしかった。
苦いお菓子と引き比べてなお、不快だった。
リンリンは幼くて、無知ゆえに友達を傷つけてしまいそうになることも多々あったけど。
それでも喧嘩している熊と狼がいれば仲直りしてほしいと願える程度の良識は持っていた。
そんなリンリンにとってあの映像は途轍もなく醜悪で、不快で、腹立たしかった。
苦いお菓子と引き比べてなお、不快だった。
「人間は、殺さないと…マザーの夢のために」
あんな人間たちがいてはマザーの夢は成就しない。
差別もなく、争いもなく、住民全てが同じ目線で、家族として食卓を囲める国。
そんな平等な国を作る事こそ、マザーの、そして今はリンリンの夢だった。
差別もなく、争いもなく、住民全てが同じ目線で、家族として食卓を囲める国。
そんな平等な国を作る事こそ、マザーの、そして今はリンリンの夢だった。
(あれ?でもマザー達も人間で、どうやって見分ければいいんだろう?)
その事に気づき、うんうんと唸って考えるリンリン。
そうしてしばらく悩みぬいた後、ある一つの(彼女にとっては)冴えた方法を思いつく。
即ち、
そうしてしばらく悩みぬいた後、ある一つの(彼女にとっては)冴えた方法を思いつく。
即ち、
「――そうだ!甘いお菓子をおれにくれて、おれのいう事を聞くのがマザーみたいないい人間!
それ以外はみんな悪い人間なんだ!!!」
それ以外はみんな悪い人間なんだ!!!」
LIFEorTERAT
何のことはない、本来彼女が辿る筈だった道で至った考えに、この彼女もまた行きついたと言うだけだった。
デイパックから取り出した武器――彼女の手には玩具の様な短剣を取り出し握ると笑顔で歩き出す。
その笑みは、彼女がつい先ほど嫌悪した『人間たち』の笑顔にとても良く似ていた。
何のことはない、本来彼女が辿る筈だった道で至った考えに、この彼女もまた行きついたと言うだけだった。
デイパックから取り出した武器――彼女の手には玩具の様な短剣を取り出し握ると笑顔で歩き出す。
その笑みは、彼女がつい先ほど嫌悪した『人間たち』の笑顔にとても良く似ていた。
【真人@呪術廻戦】
[状態]健康 漲る殺意
[装備]無し
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
[備考]原作16話より参戦です
[状態]健康 漲る殺意
[装備]無し
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:呪霊として殺し合いに参加する。
1:皆殺し、その過程で領域展開を取得したい。
[備考]原作16話より参戦です
【シャーロット・リンリン@ONE PIECE】
[状態]:腹八分目
[装備]:天逆鉾@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
1:人間は殺しつくす。
2:お菓子が欲しい。
[備考]参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
[状態]:腹八分目
[装備]:天逆鉾@呪術廻戦
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本行動方針:人間は殺す。マザーの夢を叶える。
1:人間は殺しつくす。
2:お菓子が欲しい。
[備考]参戦時期は六歳の誕生日直後、シュトロイゼンに出会う直前より参戦です。
※半壊した映画館ではまだ黒の章@ 幽☆遊☆白書が上映されています。
【黒の章@幽☆遊☆白書】
真人に支給。今まで人間が行ってきた最も残酷で非道なものが何万時間も記録されている。
数分でも視聴すれば人間に対する考えが逆転してしまう。
即効性はあるが作中の描写を見るに強制力及び持続力については疑問が残る。
真人に支給。今まで人間が行ってきた最も残酷で非道なものが何万時間も記録されている。
数分でも視聴すれば人間に対する考えが逆転してしまう。
即効性はあるが作中の描写を見るに強制力及び持続力については疑問が残る。
【大量のセムラ@ONE PIECE】
真人に支給。断食前にリンリンに与えられたものと同一の物。
真人に支給。断食前にリンリンに与えられたものと同一の物。
【天逆鉾@呪術廻戦】
発動中の術式を強制解除させる短剣。
本ロワでは呪術だけではなく他の異能力についても解除が可能。
ただし、相手に異能力がなければただのナイフである。
発動中の術式を強制解除させる短剣。
本ロワでは呪術だけではなく他の異能力についても解除が可能。
ただし、相手に異能力がなければただのナイフである。
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