ここは、バトルロワイヤル会場の中で、ただ一つだけある神社。
そよ風が高い木の葉を揺らし、正面に鳥居がでんと構え、苔むした灯篭が並ぶ、血生臭い儀式の会場とはとても思えないほど神聖な雰囲気だ。
そよ風が高い木の葉を揺らし、正面に鳥居がでんと構え、苔むした灯篭が並ぶ、血生臭い儀式の会場とはとても思えないほど神聖な雰囲気だ。
そんな神聖な場所にとても似つかわしくない男が、スネていた。
「はあ〜〜〜〜〜〜〜〜っ。」
目玉のマークの覆面をつけ、だらしなく地べたに寝そべる男が、肥えた腹から大きなため息を出す。
男の名前は、コーガ様。
何故地の文でも様をつけなきゃいけないのかは永遠の謎である。
目玉のマークの覆面をつけ、だらしなく地べたに寝そべる男が、肥えた腹から大きなため息を出す。
男の名前は、コーガ様。
何故地の文でも様をつけなきゃいけないのかは永遠の謎である。
おおよそ様付けされるような人間とは思えないが、そんな彼でもイーガ団という組織の総長であった。
総長として、彼は多くの部下を持ちながら、部下たちにハイラル王家の関係者への嫌がらせを指示していた。
総長として、彼は多くの部下を持ちながら、部下たちにハイラル王家の関係者への嫌がらせを指示していた。
何だかんだでグータラしながらも尊敬してくれる部下に囲まれ、食っちゃ寝食っちゃ寝楽しい日々を送っていた彼の人生は、突如暗転する。
ある日自分たちが首を求めていた男、リンクが単身で自分のアジトに潜入してきた。
ある日自分たちが首を求めていた男、リンクが単身で自分のアジトに潜入してきた。
彼は任〇堂のキャラの癖して、コ〇ミの有名ゲームの主人公さながらに、蛇のように自分の昼寝場所に侵入してきた。
コーガ様は持ち前の術を使って戦うも、どの術も通用せず、挙句の果てには自分の術の使い方を間違えて死んでしまったのだ。
コーガ様は持ち前の術を使って戦うも、どの術も通用せず、挙句の果てには自分の術の使い方を間違えて死んでしまったのだ。
自業自得のような気がしなくもないコーガ様だが、いつの間にやら生き返り、殺し合いに参加させられていた。
だが、生き返ったからと言って、特にやりたいことはない。
いや、正確に言えば、生き残ってリンクへの復讐や、この会場でイーガ団の新メンバーの勧誘など、やらなければならないことはあるはずだが、彼は動いたら負けかなと思っていた。
だが、生き返ったからと言って、特にやりたいことはない。
いや、正確に言えば、生き残ってリンクへの復讐や、この会場でイーガ団の新メンバーの勧誘など、やらなければならないことはあるはずだが、彼は動いたら負けかなと思っていた。
(術に失敗して死んでしまうし、殺し合いに参加させられるし、訳の分からない首輪は付いているし、次回作には出られそうにないし、俺様の人生って、一体なんだろうな……。)
そんな彼だが、動かなくても腹は減ってきたので、支給品袋を開けた。
好物のツルギバナナが入ってくれればラッキーだが、この際何でもいい。
しかし入っていたのは、カップラーメンという、お湯を入れて三分待たねばならない代物だった。
(お湯を入れて三分間待てだと?湯を調達するのも待つのも面倒だぞ……。)
好物のツルギバナナが入ってくれればラッキーだが、この際何でもいい。
しかし入っていたのは、カップラーメンという、お湯を入れて三分待たねばならない代物だった。
(お湯を入れて三分間待てだと?湯を調達するのも待つのも面倒だぞ……。)
食事をするにもひと手間だと知り、せめて飲み物だけでもと袋の中を探る。
幸いなことに、見たことのない入れ物に入った飲み物は、飲むのに手間はかからなそうだった。
缶を開け、説明書を読む手間も惜しんでストロングゼロを飲み干す。
幸いなことに、見たことのない入れ物に入った飲み物は、飲むのに手間はかからなそうだった。
缶を開け、説明書を読む手間も惜しんでストロングゼロを飲み干す。
(ん?何だかよい気分になってきたな……。)
酒というものを飲んだことのないコーガ様は、良い気分になり千鳥足になって辺りをふらついた。
怠け者が酔っ払いになっただけなのだが、愉快そうにしているので良しということにする。
酒というものを飲んだことのないコーガ様は、良い気分になり千鳥足になって辺りをふらついた。
怠け者が酔っ払いになっただけなのだが、愉快そうにしているので良しということにする。
「お〜れはコ〜ガ〜♪おっとこ〜まえ〜。」
持ち前のステップの良さも相まって、いよいよやること成すこと奇妙になってきたが、石畳に躓いて転んでしまった。
持ち前のステップの良さも相まって、いよいよやること成すこと奇妙になってきたが、石畳に躓いて転んでしまった。
「くそ!!誰だ!!こんな所に石を置いた奴!!」
愉快な気分が冷め、地面に対して怒る。
愉快な気分が冷め、地面に対して怒る。
「あ〜〜〜〜〜。誰かこの戦い終わらせてくれねえかな〜〜〜〜〜〜。」
時間と共に酔いが冷めていき、それに反比例して頭痛が強くなり、いよいよやる気がなくなってきた。
時間と共に酔いが冷めていき、それに反比例して頭痛が強くなり、いよいよやる気がなくなってきた。
「キミ、その願い、叶えてあげようか?」
後ろを見ると、黒くて長い髪を持った、誰もが振り返るような美しい少女がほほ笑んでいた。
後ろを見ると、黒くて長い髪を持った、誰もが振り返るような美しい少女がほほ笑んでいた。
「コーガ様に向かってキミとはどういう口の利き方だ!イテテ……。」
キミ呼ばわりしてきた少女に食って掛かるも、酒による頭痛に悶える。
キミ呼ばわりしてきた少女に食って掛かるも、酒による頭痛に悶える。
「じゃあコーガ様。ここに大事なものを置けば、アンテン様が願いをかなえてくれるよ。」
少女は神社の奥にある祠を指さす。
少女は神社の奥にある祠を指さす。
「ほ、本当なんだな?この殺し合いから脱出出来て、あのいけ好かない主催者も倒して、リンクとかいう若造にも復讐出来て、イーガ団再結成できて、スマ〇ラにも出演できるんだな?」
アンテン様だかカンテン様だか知らないが、自分の力以外でこの状況から脱却できるならどうでもよかった。
アンテン様だかカンテン様だか知らないが、自分の力以外でこの状況から脱却できるならどうでもよかった。
(確かに旨い飲み物だが、願いのためなら……!!)
それまでとは全く異なるステップで、コーガ様はまだ開けてないストロングゼロを祠に収める。
一瞬、黒い何かが映り、缶は消える。しかし、何も起こらなかった。
一瞬、黒い何かが映り、缶は消える。しかし、何も起こらなかった。
「おいキサマ!!何も起こらないじゃないか!!」
「じゃあ足りなかったんだね。」
「じゃあ足りなかったんだね。」
少女はニヤリと口を大きくゆがめ、笑う。
「足りなかった……?」
コーガ様は話が分からず、オウム返しにつぶやく。
「アンテン様に願いを叶えてもらうには……
その願いと同じだけ強い想いが込められている、「大事なもの」をお供えしなきゃいけないんだ。」
コーガ様は話が分からず、オウム返しにつぶやく。
「アンテン様に願いを叶えてもらうには……
その願いと同じだけ強い想いが込められている、「大事なもの」をお供えしなきゃいけないんだ。」
「想い……!?」
「今回コーガ様の願いが叶わなかったのは、捧げたものがさほど大事じゃなかったからよ。」
「わけの分からないことを言うな!!願いをかなえられないのなら、あの飲み物を返せ!!」
ズキズキする頭を無視して、少女を怒鳴りつけた。
ズキズキする頭を無視して、少女を怒鳴りつけた。
「しょうがないなあ。でもアンテン様は、お供え物のお礼だけはしてあげるみたいだよ。」
「お!?」
気が付くと、頭痛がすっかり収まっていた。
しかも、この戦いが始まってからずっと身に纏わりついていた気だるさも消えた。
気が付くと、頭痛がすっかり収まっていた。
しかも、この戦いが始まってからずっと身に纏わりついていた気だるさも消えた。
「もし大切な物が無いなら、今回だけは他の物でもアンテン様は許してくれるみたい。」
「何だ……それは?」
「こんな場所だからね。「参加者の死体」でも良いってアンテン様は言っているよ。」
「何だ……それは?」
「こんな場所だからね。「参加者の死体」でも良いってアンテン様は言っているよ。」
その時、少女の顔は今までで一番、残忍に輝いていた。
「もちろん、願いを叶えるには、死体の「質」が重要だけど。
それはあなたにとって大切な人だったり、この戦いの中でとても強い人だったり。まあいろいろあるけどね。」
それはあなたにとって大切な人だったり、この戦いの中でとても強い人だったり。まあいろいろあるけどね。」
コーガ様は、目の前の少女が言っていることに、恐れおののく。
「この俺様に、生贄を捧げろということなのか!?」
「やりたくなければ別にいいよ。でも、あなたは誰かに願いを叶えてもらいたいって言ってたから、アンテン様の力が必要なのかなって。」
「やりたくなければ別にいいよ。でも、あなたは誰かに願いを叶えてもらいたいって言ってたから、アンテン様の力が必要なのかなって。」
瞬く間に頭痛や倦怠感が治ったことから、アンテン様とやらはただの名ばかりの神ではないことは分かった。
(仕方がない……俺様の願いのためだ!!)
少女の言葉には何も答えず、そのまま少女から背を向け、軽くなった体で、神社を後にする。
この神社は地図に書いていなかったので、道の形、月の場所から居場所を逆算して、地図にメモをしておいた。
暗い場所を好むコーガ様は、このようなことは朝飯前だ。
少女の言葉には何も答えず、そのまま少女から背を向け、軽くなった体で、神社を後にする。
この神社は地図に書いていなかったので、道の形、月の場所から居場所を逆算して、地図にメモをしておいた。
暗い場所を好むコーガ様は、このようなことは朝飯前だ。
改めて食料以外に何かないのかと支給品袋を漁る。
中から出てきたのは、子分たちの多くが愛用している首狩り刀。
これで彼らは、多くのシーカー族やハイラル王家に味方する者たちの血を吸ってきた。
中から出てきたのは、子分たちの多くが愛用している首狩り刀。
これで彼らは、多くのシーカー族やハイラル王家に味方する者たちの血を吸ってきた。
しかし、コーガ様自身は誰かのために人殺しをするという経験は全くなかった。
おまけに、人殺し自体は、部下に任せていて、自分自身が手を下すのは随分とやっていない。
これから自分がしようとしていることにわずかな恐怖を覚えながらも、願いを叶えてもらう未来を胸に、イーガ団の元総長は動き出した。
おまけに、人殺し自体は、部下に任せていて、自分自身が手を下すのは随分とやっていない。
これから自分がしようとしていることにわずかな恐怖を覚えながらも、願いを叶えてもらう未来を胸に、イーガ団の元総長は動き出した。
自分がこれから人殺しをするという考えを胸に抱いて。
【コーガ様@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
[状態]:健康 若干の恐怖
[装備]:首狩り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品(ストロングゼロ2個消費)、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める。
1:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
2:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
3:このストロングゼロという飲み物、中々旨いな……。
[備考]本編死亡後の参戦です。
[状態]:健康 若干の恐怖
[装備]:首狩り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品(ストロングゼロ2個消費)、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:基本行動方針:願いを叶えるために死体を集める。
1:アンテン様に願いを叶えてもらって、脱出したい。
2:誰かをイーガ団のメンバーに加えたい。
3:このストロングゼロという飲み物、中々旨いな……。
[備考]本編死亡後の参戦です。
【アンテン様@アンテン様の腹の中】
このバトルロワイヤルの地図にはない神社を拠点に構えており、少女の姿をして、願いを叶えてくれることを説明してくれるNPC。
その人にとっての「大事な物」を神社の祠に備えると、「大事な物」の価値に応じて願いを叶えてもらえる。
今回の場合は特別ルールで、「参加者の死体」でもOK.
ただし、「参加者の死体」でも、死者が強い人物であるか、死者がその人にとって大事な存在であるか、などにも影響する。
「ゲームからの脱出」、「首輪の解除」などを願う場合は、相当に価値のある対価が必要。
このバトルロワイヤルの地図にはない神社を拠点に構えており、少女の姿をして、願いを叶えてくれることを説明してくれるNPC。
その人にとっての「大事な物」を神社の祠に備えると、「大事な物」の価値に応じて願いを叶えてもらえる。
今回の場合は特別ルールで、「参加者の死体」でもOK.
ただし、「参加者の死体」でも、死者が強い人物であるか、死者がその人にとって大事な存在であるか、などにも影響する。
「ゲームからの脱出」、「首輪の解除」などを願う場合は、相当に価値のある対価が必要。
※いくら願いを積まれても、「死者の蘇生」は不可能です(かろうじてゾンビ状態なら可能?)。
※ルールの都合上、「外部からの参加者の導入」は不可能です。
※強い武器など、アイテムを出してもらった場合、供物を捧げた参加者が死んだ際にそのアイテムは消失します。
※ルールの都合上、「外部からの参加者の導入」は不可能です。
※強い武器など、アイテムを出してもらった場合、供物を捧げた参加者が死んだ際にそのアイテムは消失します。
【首狩り刀@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
コーガ様に支給された三日月状の小刀。主にイーガ団の下っ端が使っている。
攻撃力はそこそこだが、脆くて壊れやすい。
コーガ様に支給された三日月状の小刀。主にイーガ団の下っ端が使っている。
攻撃力はそこそこだが、脆くて壊れやすい。
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