冒険者になりたかった。
この世の全ての魔導を修め、竜殺しを成し遂げ、国中に名を馳せる、そんな冒険者に。
途方もない道程であることなど百も承知だった。けれど、自分の才覚なら成し遂げられるはずだと信じていた。
魔術学園を首席で卒業し、教師からは自分は大成すると太鼓判を押された自分ならきっと。
少し考えればわかる事だ。
魔術学園を優秀な成績で卒業した程度で英雄になれるのなら、この世は毎年英雄が現れているだろう。
だけど、いいやだからこそ。
自分は特別な存在なのだと、無邪気に信じていた。
この世の全ての魔導を修め、竜殺しを成し遂げ、国中に名を馳せる、そんな冒険者に。
途方もない道程であることなど百も承知だった。けれど、自分の才覚なら成し遂げられるはずだと信じていた。
魔術学園を首席で卒業し、教師からは自分は大成すると太鼓判を押された自分ならきっと。
少し考えればわかる事だ。
魔術学園を優秀な成績で卒業した程度で英雄になれるのなら、この世は毎年英雄が現れているだろう。
だけど、いいやだからこそ。
自分は特別な存在なのだと、無邪気に信じていた。
私にとって初めての冒険、ゴブリン退治を迎えるまでは。
そこで無邪気な幻想に浸っていたすべてのツケを支払わされることとなった。
ゴブリンに腹を抉られ、糞尿で作られた猛毒を臓腑にかき回された時。
私は全ての勘違いを悟ったのだ。
四方世界の神にとって、私は愛すべき駒などではなく、
使い捨てても惜しくない、あれふれた駒の一つでしかなかったことに。
自惚れた勘違いに気づいた時には全てが手遅れで。
ゴブリンに腹を抉られ、糞尿で作られた猛毒を臓腑にかき回された時。
私は全ての勘違いを悟ったのだ。
四方世界の神にとって、私は愛すべき駒などではなく、
使い捨てても惜しくない、あれふれた駒の一つでしかなかったことに。
自惚れた勘違いに気づいた時には全てが手遅れで。
猛毒で意識も朧げになっているというのに、嫌になる程鮮明ににじり寄ってくるゴブリンの姿を視界に焼き付けながら私は意識を失った。
それが私の、殺し合いに連れてこられる前の最期の記憶。
それが私の、殺し合いに連れてこられる前の最期の記憶。
そして、この殺し合いに連れてこられて初めて出会ったのもまたゴブリンだった。
きっと、此処でも自分は哀れな犠牲者でしかないのだろう。
刺された傷が治っているのも、体中に巡っていた毒が癒えているのも、
もう一度蹂躙されるためでしかない。諦観と共に、私はそう考えた。
きっと、此処でも自分は哀れな犠牲者でしかないのだろう。
刺された傷が治っているのも、体中に巡っていた毒が癒えているのも、
もう一度蹂躙されるためでしかない。諦観と共に、私はそう考えた。
「GOBGOOOBBUUUUU」
ニタニタと、見慣れない街の陰から姿を現して近づいてくるゴブリン達。
その下種な笑みをみれば嫌でも自身の末路を悟らざるを得ない。でも、もう終わる事だ。
私はゴブリン達に折られた、かつて誇りであった杖を握り、首筋に当てる。
蹂躙されるしかないなら、先に死んでやろう。
きっと自身に見ていた頃の私なら蔑んでいただろう選択。
きっと、既に私の心は壊れているのだろう。
その、はずなのに。
その下種な笑みをみれば嫌でも自身の末路を悟らざるを得ない。でも、もう終わる事だ。
私はゴブリン達に折られた、かつて誇りであった杖を握り、首筋に当てる。
蹂躙されるしかないなら、先に死んでやろう。
きっと自身に見ていた頃の私なら蔑んでいただろう選択。
きっと、既に私の心は壊れているのだろう。
その、はずなのに。
「……いきたいよ」
間近に近づいてくるゴブリン達を前に本音が漏れてしまった。
牙も杖もおれている。それなのに、終わりたくはなかった。
だって、自分はまだ何も。
何も成し遂げてはいないのだから。
牙も杖もおれている。それなのに、終わりたくはなかった。
だって、自分はまだ何も。
何も成し遂げてはいないのだから。
ゆらりと立ち上がって、下卑た表情が鮮明に見える程の距離に来たゴブリン達を見据える。
これは確実な自殺だ。惨死に向かう旅路だ。
そんな事は分かっている。でも、
ぎゅうと、折れた杖を握りしめる。ゴブリンに刺された腹から溶岩の様に熱い感情が噴出する。
これは確実な自殺だ。惨死に向かう旅路だ。
そんな事は分かっている。でも、
ぎゅうと、折れた杖を握りしめる。ゴブリンに刺された腹から溶岩の様に熱い感情が噴出する。
「――――あ、あああああああッ!!」
噴き上がってきた来た熱のままに、私はゴブリンに突進する。
先頭のゴブリンは怯えていた筈の孕み袋が突如息を吹き返したことに困惑し、つんのめる。
虫けらだと侮っていた相手が突如龍に化けたら自分もきっと同じような反応をするだろう。
そんな事を考えんながらも思考はクリアだった。
冷静に冷徹に、私はゴブリンの頭蓋に尖ったほこりの残滓をたたきつけた。
先頭のゴブリンは怯えていた筈の孕み袋が突如息を吹き返したことに困惑し、つんのめる。
虫けらだと侮っていた相手が突如龍に化けたら自分もきっと同じような反応をするだろう。
そんな事を考えんながらも思考はクリアだった。
冷静に冷徹に、私はゴブリンの頭蓋に尖ったほこりの残滓をたたきつけた。
断末魔の響きを上げるゴブリンを蹴り上げ、後続のゴブリン達にぶつける。
その時に、うまくバランスが取れず尻もちをつく。
一匹仕留めた。ここまではあの時と同じ。そして、私の限界。
その時に、うまくバランスが取れず尻もちをつく。
一匹仕留めた。ここまではあの時と同じ。そして、私の限界。
ゴブリン一匹と等価とは安い命だ。
私は自嘲しながら、これから待ち受ける惨劇から逃れる様に瞼を閉じた。
どこかでサイコロが振るわれる音を聞いたのは、その直後の事だった。
私は自嘲しながら、これから待ち受ける惨劇から逃れる様に瞼を閉じた。
どこかでサイコロが振るわれる音を聞いたのは、その直後の事だった。
「伏せて!!」
建物の上から、少年の声が響く。
鈴の音の様な響きだったが、勇ましく少年であることは直感的に分かった。
直後、私に飛びかかろうとしていたゴブリン三匹が一射のうちに射抜かれた。
鈴の音の様な響きだったが、勇ましく少年であることは直感的に分かった。
直後、私に飛びかかろうとしていたゴブリン三匹が一射のうちに射抜かれた。
「GOOOOOBBBBBB!!!!」
状況を理解するまでに五匹。理解した後に七匹。次々とゴブリン達が弓矢の餌食になっていく。
状況を理解したゴブリン達も弓矢を放ったり、石を投げるがまるで当たらない。
あっという間に数を減らし、壊乱状態に陥った。
最後に頭目と思しきホブゴブリンの頭蓋が、ゆみやですらない、砲撃で吹き飛ぶ。
僅か二十秒足らずで、私にとっての絶望の象徴であるゴブリン達は残らず躯を晒していた。
いともあっさりと、圧倒的に、決着はついた。
状況を理解したゴブリン達も弓矢を放ったり、石を投げるがまるで当たらない。
あっという間に数を減らし、壊乱状態に陥った。
最後に頭目と思しきホブゴブリンの頭蓋が、ゆみやですらない、砲撃で吹き飛ぶ。
僅か二十秒足らずで、私にとっての絶望の象徴であるゴブリン達は残らず躯を晒していた。
いともあっさりと、圧倒的に、決着はついた。
「怪我は…ないみたいですね。よかった…」
未だ尻もちをつく私の前に、弓兵の少年がふわりと降り立つ。
頭上に小さな羊を乗せて、同じく羊の角を頭部に生やした少年。
少女の様に小さく愛らしい外見からは、先程の卓抜した弓の腕は想像できない。
彼は私の身体に怪我がないのを確認すると、ほっと胸をなでおろし、そして尋ねてきた。
頭上に小さな羊を乗せて、同じく羊の角を頭部に生やした少年。
少女の様に小さく愛らしい外見からは、先程の卓抜した弓の腕は想像できない。
彼は私の身体に怪我がないのを確認すると、ほっと胸をなでおろし、そして尋ねてきた。
「召喚に応じ参上しました!弓兵(アーチャー)です!
問いましょう――貴方が僕のマスターですか?」
「……は?」
「えっ」
問いましょう――貴方が僕のマスターですか?」
「……は?」
「えっ」
頭の回転には自信のある方だったが、その時の少年の問いの意図は分からなかった。
自分は当然、目の前の少年の主人になった覚えなどない。
そもそも、まだ駆け出し冒険者である身が間違いなく銀等級以上の弓の腕を持つ彼を従えられるはずもない。
決まずい沈黙が流れる。
助け舟は、意外な事に彼の頭の上からやってきた。
自分は当然、目の前の少年の主人になった覚えなどない。
そもそも、まだ駆け出し冒険者である身が間違いなく銀等級以上の弓の腕を持つ彼を従えられるはずもない。
決まずい沈黙が流れる。
助け舟は、意外な事に彼の頭の上からやってきた。
「あー…パリスちゃん?その子、魔術師ではあるけど君のマスターじゃないね。令呪ないし」
「えぇッ!?じゃ、じゃあ僕のマスターは…」
「うん、はぐれサーヴァントじゃないかな。今のパリスちゃんは」
「そんな~」
「えぇッ!?じゃ、じゃあ僕のマスターは…」
「うん、はぐれサーヴァントじゃないかな。今のパリスちゃんは」
「そんな~」
言葉尻に「今は単独行動で持ってるけど、そのうち消えるね」と流ちょうに付け加える羊。
その言葉にアーチャーは頭を抱えて私の前に座り込む。
話を聞くと、アーチャーはサーヴァントと呼ばれる、使い魔の一種であるらしい。
そして、このままでは現界のための魔力が足りず、消えてしまうのだとか。
その言葉にアーチャーは頭を抱えて私の前に座り込む。
話を聞くと、アーチャーはサーヴァントと呼ばれる、使い魔の一種であるらしい。
そして、このままでは現界のための魔力が足りず、消えてしまうのだとか。
「…‥まぁ、その子と契約すればいいんじゃない?
ダメなら他の子を探すしかないけど」
「そ。そうか!!流石アポロン様!!」
ダメなら他の子を探すしかないけど」
「そ。そうか!!流石アポロン様!!」
羊の言葉に抱えていた頭を上げて、つぶらな瞳で見つめてくるアーチャー。
その後、勢いよく頭を垂れて、
その後、勢いよく頭を垂れて、
「あの…もしよければ僕のマスターになってくださいませんか?」
そう懇願してきた。
私にとっては願ってもない話ではある。
彼が私のサーヴァントとして戦ってくれるなら、私が生き残れる望みは上がるだろう。
彼が私のサーヴァントとして戦ってくれるなら、私が生き残れる望みは上がるだろう。
けれど、いいのだろうか…
ゴブリンにも勝てない私が、彼を従えても、いいのだろうか…?
そんな私の思考を読み取ったかのように、アーチャーはとことこと私が倒したゴブリンの亡骸へと近づき。
刺さったままの杖を引き抜くと、服が汚れるのも構わずごしごしと吹いて。
ゴブリンにも勝てない私が、彼を従えても、いいのだろうか…?
そんな私の思考を読み取ったかのように、アーチャーはとことこと私が倒したゴブリンの亡骸へと近づき。
刺さったままの杖を引き抜くと、服が汚れるのも構わずごしごしと吹いて。
「いいんですよ…僕だって、ヘクトール兄さんに比べれば全然未熟なサーヴァントですから」
だから、一緒に強くなりましょう。
そう言って、彼は私の杖を差し出してきた。
そう言って、彼は私の杖を差し出してきた。
「……」
私は無言のままに杖を差し出す彼の手を握って、そし手改めて問い直した。
「アーチャー…私は、生きたい。生きて、冒険者になりたい。
でも殺し合いには乗りたくない…私が今、生きているのは貴方のお陰だから。
貴方を殺してまで生き残りたいと思わない。私は貴方や、他の人達と生きて帰りたい。
そのために…お願い、力を貸して」
「はい!勿論です。マスター!!」
でも殺し合いには乗りたくない…私が今、生きているのは貴方のお陰だから。
貴方を殺してまで生き残りたいと思わない。私は貴方や、他の人達と生きて帰りたい。
そのために…お願い、力を貸して」
「はい!勿論です。マスター!!」
アーチャーが花が咲くように笑うのと同時に、私の手の甲が熱を帯びる。
サーヴァントとはどんな存在か聞いた時に説明された令呪と呼ばれる魔術。
その紋様が刻まれるのを見た瞬間、何か胸の奥からこみあげてくるものがあった。
諦めなくていいのだと、生きていていいのだと言われた気がして。
サーヴァントとはどんな存在か聞いた時に説明された令呪と呼ばれる魔術。
その紋様が刻まれるのを見た瞬間、何か胸の奥からこみあげてくるものがあった。
諦めなくていいのだと、生きていていいのだと言われた気がして。
―――もう、自分でいいのかとは尋ねない。を従えるのに相応しい自分になる。そう、決めた。
■
――少し聞いてもいいかい?パリスちゃん。
なんですか?アポロン様。
私はさっき確かにあぁ提案したけど、彼女がこの、聖杯戦争ですらない殺し合いに乗ってる可能性はちゃんと考えたの?
……あっ
―――あーもー!やっぱり可愛いなぁパリスちゃんは!!
うぅ…でも、考えてたとしても、僕はやっぱり、マスターと契約してたと思うんです。
ほう、その心は?
―――彼女、生きたいって泣いてましたから…ここで涙を拭って上げないとトロイア戦争の原因まで間違いになる様な、そんな気がしたんです。
あの戦いは皆が僕が間違ってたと言っていますし、実際そうだったのかもしれません。
でも…あの時ヘレネ―を助けたいと思った気持ちまで、間違いにしたくなかったんです。
何より、やっぱり女性には笑っていてほしいと思ったんです。
あの戦いは皆が僕が間違ってたと言っていますし、実際そうだったのかもしれません。
でも…あの時ヘレネ―を助けたいと思った気持ちまで、間違いにしたくなかったんです。
何より、やっぱり女性には笑っていてほしいと思ったんです。
―――そう、やっぱりパリスちゃんは推せるねぇ。
【女魔法使い@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:令呪三画
[道具]:基本支給品、ランダム支給品
[思考・状況]:基本行動方針:アーチャーに相応しいマスターになる。
1:殺し合いから脱出する。
[備考]
パリスと契約しました。
[状態]:令呪三画
[道具]:基本支給品、ランダム支給品
[思考・状況]:基本行動方針:アーチャーに相応しいマスターになる。
1:殺し合いから脱出する。
[備考]
パリスと契約しました。
【パリス@Fate/Grand Order】
[状態]:女魔法使いと契約
[装備]:アポロン様
[道具]:基本支給品、ランダム支給品
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いからマスターを脱出させる。
1:マスターを守る。
[備考]
女魔法使いと契約しました。
[状態]:女魔法使いと契約
[装備]:アポロン様
[道具]:基本支給品、ランダム支給品
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いからマスターを脱出させる。
1:マスターを守る。
[備考]
女魔法使いと契約しました。
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