森林地帯。そこに参加者がいる。上下ジャージという装いの、目付きの悪い青年が唖然とした様子で佇んでいた。
「バトル・ロワイアル……いやいや、俺も大抵の事は驚かない自信あるけど、これは流石にビックリだわ」
殺し合いの場においても、菜月昴は平静さを保っていた。
異世界に召喚されてから、文字通り死ぬような目に何度もあってきた経験は伊達ではない。
異世界に召喚されてから、文字通り死ぬような目に何度もあってきた経験は伊達ではない。
「俺は確か、エミリアたんと聖域に向かって……糞、思い出せねぇ」
拉致された記憶の前後は無い。その事に焦る気持ちを押さえつつ、スバルは情報整理を予て、支給品の確認を行おうとした。
ーーパキッ
その時、背後から草木を踏みしめる音が鳴る。
「ーっ誰だッ!」
「安心してほしい。わたしは殺し合いには乗っていない」
ーーーー
「いやぁ~、最初に出会ったのがプッチさんみたいに話の通じる人で、ホント良かったですよ!」
「わたしも同じ意見だよ」
エンリコ・プッチと名乗った神父は、スバルに敵意がない事を示すと、情報交換を持ちかけてきた。
宗教家と聞くと悪い意味であの怠惰を思い出すが、彼方とは比べ物にならないほど理性的で落ち着いた物腰に、スバルの警戒も自然とほどけていく。
宗教家と聞くと悪い意味であの怠惰を思い出すが、彼方とは比べ物にならないほど理性的で落ち着いた物腰に、スバルの警戒も自然とほどけていく。
(こういう人を本当の宗教家って言うんだろうなぁ。ペテ公よりも全然マシだ。うん、偏見は良くないな)
話を聞いてみると、プッチ神父はアメリカのグリーン・ドルフィン刑務所から、この催しに拉致されたらしい。
アメリカ!久しく聞いていなかった国名に興奮を押さえきれない。
しかし、それは同時に、この催しの主催者が異世界と現実を行き来できる手段を持つ事を示していた。
アメリカ!久しく聞いていなかった国名に興奮を押さえきれない。
しかし、それは同時に、この催しの主催者が異世界と現実を行き来できる手段を持つ事を示していた。
(おいおい…… ただでさえヤベー魔女に目をつけられてるってのに、ここからさらに役満とか不幸ってレベルじゃねーぞ)
得体の知れない主催者に戦慄するスバルを他所に、プッチは真剣な眼差しで彼に問いかける。
「スバル…… わたしはこの催しを『試練』だと捉えている。『試練』は必ず克服されるべきものだ。しかし、現状ではあまりに手が足りない。……若い君には酷だが、協力してほしい」
嘘偽りのないプッチの言葉に、スバルは『覚悟』を決めた。差し出された右手をがっちりと掴み、握手を交わす。
「……わかった。俺もこの悪趣味なゲームに乗るなんてまっぴらだ。一緒にこの殺し合いをぶっ壊そうぜ!」
「あぁ、ありがとう。しかし、その前に少し確かめたい事があるんだ」
「ホワイトスネイク」、プッチがその名を一言告げると、背後に奇妙な人型が出現した。
塩基配列の描かれた包帯状のラインが全身に走っており、顔の上半分と肩、腰の辺りは紫色の装飾品のようなもので覆われたデザインの人型は、感情の読めない眼差しでスバルを観察していた。
あまりにも不気味な存在に、スバルの鼓動が跳ね上がった。
塩基配列の描かれた包帯状のラインが全身に走っており、顔の上半分と肩、腰の辺りは紫色の装飾品のようなもので覆われたデザインの人型は、感情の読めない眼差しでスバルを観察していた。
あまりにも不気味な存在に、スバルの鼓動が跳ね上がった。
「うわぁ! ちょ、プッチさん、何なんですかそれ!」
「なるほど……スタンドは見えているか」
「スタンド? それが、あー、その現代アートっぽい物体の名前なんですかね?」
「ああ、これはわたしの精神が具現化した存在……、側に立つものという意味でスタンドと呼ばれている」
プッチの説明に納得したのか、スバルは落ち着きを取り戻した。
「へぇー…『スタンド・バイ・ミー』って訳?」
「その通り…… しかし不思議だ。スタンドは普通、スタンドを持たない相手には視認できない」
「スバル、何か心当たりはないか? 身の回りで不思議な現象が起こったりとか、何か変なものを見たとか……」
スバルは悩んだ。心当たりは確かにある。不思議な現象認定を余裕でぶっちぎる異世界召喚もそうだが、例えばペテルギウスの見えざる手も、最初は全く見えなかったが、後に視認できるようになっていた。
あの狂人が使っていた権能とやらも、一種のスタンドなのかもしれない。
あの狂人が使っていた権能とやらも、一種のスタンドなのかもしれない。
「最近『見えざる手』って似たような能力を使う奴とあったことがある。最初は文字通り見えなかったけど、あれも後から見えるようになったな。あとは……まぁ、色々と心当たりはあります」
スバルはまだプッチに異世界の事は告げていない。信憑性の問題もあるが、『死に戻り』のペナルティが、この場でどこまで影響を及ぼすか把握できていないからだ。
どこか不自然なスバルの言葉を聞いたプッチは、何やら暫し思案した後、意を決したように口を開いた。
どこか不自然なスバルの言葉を聞いたプッチは、何やら暫し思案した後、意を決したように口を開いた。
「そうか……わかった。ではスバル、少し『確認』させてもらうが、良いかな?」
「確認? 何をーー」
スバルの意識は途切れた。
ーーーー
物言わぬスバルの頭部から、ホワイトスネイクの手がDISCを引き抜く。
(何? DISCが一枚……馬鹿な。スバルはスタンド使いでは無いのか?)
プッチがなぜこのような暴挙に出たのかと言うと、一重に『信頼』のためである。
本人は否定しているが、スバルが悪意をもって能力を隠しているスタンド使いの可能性も充分にある。
仮にスバルにそういった他意が無く、無自覚のスタンド使いであったとしても、土壇場で暴走でもされたら厄介だ。
そう判断したプッチは、ひとまずホワイトスネイクでスバルをDISC化することを決心したのだった。
しかし、予想に反して、出てきたのは記憶DISCだけ。
どうやらスバルがスタンド使いという訳ではなく、この催しの主催者が何かしらの細工でもしたのだろう。
本人は否定しているが、スバルが悪意をもって能力を隠しているスタンド使いの可能性も充分にある。
仮にスバルにそういった他意が無く、無自覚のスタンド使いであったとしても、土壇場で暴走でもされたら厄介だ。
そう判断したプッチは、ひとまずホワイトスネイクでスバルをDISC化することを決心したのだった。
しかし、予想に反して、出てきたのは記憶DISCだけ。
どうやらスバルがスタンド使いという訳ではなく、この催しの主催者が何かしらの細工でもしたのだろう。
「彼には悪いことをしたな……」
多少の後ろめたさを感じたが、まぁ必要な行程だったと受け流すプッチ。
この場で何よりも重要なのは『信頼』であり、初対面の人間同士がこの危険な状況で真っ当な手段で培うには、時間も何もかも足りない。
ある意味、記憶を覗くのは最短の手段なのだ。
誤解の一つは解けたが、記憶DISCを戻そうとした手が止まる。
この場で何よりも重要なのは『信頼』であり、初対面の人間同士がこの危険な状況で真っ当な手段で培うには、時間も何もかも足りない。
ある意味、記憶を覗くのは最短の手段なのだ。
誤解の一つは解けたが、記憶DISCを戻そうとした手が止まる。
(一般人のようだが、一応保険として見ておくか)
先ほど問いかけたときのスバルの反応は、明らかに何かを隠していた。
暫く行動を共にするなら、彼の記憶は把握しておいた方がいい。
そう判断したプッチは、スバルの記憶DISCを読み始めるのだった。
暫く行動を共にするなら、彼の記憶は把握しておいた方がいい。
そう判断したプッチは、スバルの記憶DISCを読み始めるのだった。
ーーーー
数分後、菜月昴は意識を覚醒させた。
同時に、自分の記憶が飛んでいることを自覚した。
同時に、自分の記憶が飛んでいることを自覚した。
「おいプッチさん…… 俺に、何した?」
警戒するスバル。しかし、プッチは答えない。スタンドとやらも出さず、呆然とその場に佇んでいる。
「お、おいプッチさん。どうしたんだよ。何かあったのか?」
敵意は感じないが、あまりに異様な雰囲気に、さしものスバルも心配そうに声をかける。すると、漸く件の神父は反応を返した。
「素晴らしいッ!!」
プッチはスバルの肩を掴むと、感激したように呟いた。突然の称賛に当然ながらスバルは困惑する。
「スバル…… 君こそ、わたしの目指す『天国』そのものだッ!」
エンリコ・プッチは、完成された芸術品を眺めるような、そんな恍惚とした眼差しでスバルをうっとりと見つめている。
これまで向けられた経験のある物とは、根本的に質の異なる感情に、スバルの背筋に本能的な悪寒が走った。
慌てて振り払うと、スバルは距離をとる。正直今のプッチは、かなり気持ち悪かった。
これまで向けられた経験のある物とは、根本的に質の異なる感情に、スバルの背筋に本能的な悪寒が走った。
慌てて振り払うと、スバルは距離をとる。正直今のプッチは、かなり気持ち悪かった。
「……は? あ、あはは、プッチさん。俺はノーマル! そっちの気はないんだよね!」
「ああ、すまない。わたしとした事が、興奮のあまり誤解させてしまったかな。そういう意味ではないよ」
スバルのあからさまな反応を微笑ましいと言わんばかりに苦笑しつつ、プッチは説明を行った。
「まだ説明していなかったが…… スタンドというのは例外なく特殊能力を備えている。当然、わたしの『ホワイトスネイク』もちょっとした能力があってね」
続けて発せられたプッチの言葉に、ナツキ・スバルは凍りついた。
「君の記憶を、少し覗かせてもらった」
スバルは、死に戻りを他人に打ち明ける事ができない。
話そうとすると、『嫉妬の魔女』に物理的に心臓を握られる。それでも無理矢理に伝えると、知った相手が死ぬ。
その法則は、当に経験済みだった。その筈なのに、何故?
脳内を駆け巡る動揺した思考にスバルが捕らわれる中、プッチはただスバルを称賛し続ける。
話そうとすると、『嫉妬の魔女』に物理的に心臓を握られる。それでも無理矢理に伝えると、知った相手が死ぬ。
その法則は、当に経験済みだった。その筈なのに、何故?
脳内を駆け巡る動揺した思考にスバルが捕らわれる中、プッチはただスバルを称賛し続ける。
「スバル…… いや本当に、しつこいようだが、君は素晴らしい存在だよ。
残酷な未来を知りながら、君は『覚悟』することで幾度も運命を乗り越えた。その姿勢も、生き方も、何もかも正しく私の目指す『天国』そのものなんだ」
残酷な未来を知りながら、君は『覚悟』することで幾度も運命を乗り越えた。その姿勢も、生き方も、何もかも正しく私の目指す『天国』そのものなんだ」
「……『天国』だって?」
「ああ、宗教的な意味ではない。『天国』とは、精神の行き着く果ての事だよ」
プッチは、己の目指す『天国』の概念をスバルに語りだした。
ーーー
「……アンタ。それ本気で言ってるのか?」
全てを聞き終えた時、スバルはプッチの正気を疑っていた。
語られた『天国』の概念は、あまりにもスバルの理解を斜め上に越えていた。
プッチにとっての『天国』とは、人類が生まれてから滅ぶまでのあらゆる出来事を体験・記憶しており、運命が決まっていて、何が起こるか予知できるようになる世界であるとのたまった。
あまりにも独善的で、趣味の悪いディストピアそのものな天国の概念を、プッチは、人類が先に起こることへの「覚悟」が出来る幸福な世界だと信じて疑っていないようだった。
なるほど、確かにそんな思想の持ち主が『死に戻り』を知ったのなら、プッチの態度も理解できる。
納得と理解は別物なのだが。
語られた『天国』の概念は、あまりにもスバルの理解を斜め上に越えていた。
プッチにとっての『天国』とは、人類が生まれてから滅ぶまでのあらゆる出来事を体験・記憶しており、運命が決まっていて、何が起こるか予知できるようになる世界であるとのたまった。
あまりにも独善的で、趣味の悪いディストピアそのものな天国の概念を、プッチは、人類が先に起こることへの「覚悟」が出来る幸福な世界だと信じて疑っていないようだった。
なるほど、確かにそんな思想の持ち主が『死に戻り』を知ったのなら、プッチの態度も理解できる。
納得と理解は別物なのだが。
「急に理解が得られるとは思っていない。しかし、『覚悟』こそ幸福であると、君は誰よりも、ある意味わたしよりも身を持って理解している筈だッ!」
好意的でないスバルの反応に、心底理解できないといった顔をするプッチ。
どうやら、彼はスバルが賛同してくれるものと信じているようだ。
どうやら、彼はスバルが賛同してくれるものと信じているようだ。
「改めて問おう。ナツキ・スバル。……わたしに協力してほしい」
ナツキ・スバルの出す答えはーー
【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:スバルと行動を共にする。
2:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
ホワイトスネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
[状態]:健康、ナツキ・スバルへの尊敬と興奮(大)
[装備]:スタンド『ホワイト・スネイク』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:天国への到達を目指す。殺し合いには乗らないが、必要とあれば手段は選ばない。
1:スバルと行動を共にする。
2:スバル…君はまさに『天国』そのものだッ!
[備考]
ホワイトスネイクにより、スバルの『死に戻り』の記憶を一部把握しました。
参戦時期は承太郎の記憶DISCを得た後の時間軸。
【ナツキ・スバル@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:
1:エミリアたんは無事だろうか……
2:『天国』…だって?
[備考]
エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
参戦時期は聖域に向かう前後。
『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。
[状態]:健康、エンリコ・プッチへの不信感・不快感(大)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:
1:エミリアたんは無事だろうか……
2:『天国』…だって?
[備考]
エンリコ・プッチの『天国』の解釈を本人からの説明で理解しました。
参戦時期は聖域に向かう前後。
『死に戻り』のペナルティには制限が課せられているようです。
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