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愛の夢

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匿名ユーザー

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愛の夢 ◆3g7ttdMh3Q


がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~というゲームを大抵の方はご存知だろう、そうでなくても、ゴエモンというキャラクターは知っているはずだ。
そう、江戸時代をモチーフにしたコミカルな世界観、やりごたえのあるアクション、時にはRPGやパズル、
SFC全盛期という輝かしい時代にあっては、かのスーパーマリオにも匹敵したがんばれゴエモンをアナタは知っていなければならない。

「だろ?」



夢ではなかった、目を覚ましたスーパーマリオワールドは自分が殺し合いという異常な状況下に置かれているということを改めて認識した。
いや、異常な状況といえばそもそもただのゲームカセットであるはずのスーパーマリオワールドに肉体というものがあることがおかしいのだが。
まばたきを繰り返す、右手を握り、開く、その場で駆け足をしてみせる、ああ、やはり生きている。
ショーウィンドウのガラスに映る己の姿をスーパーマリオワールドは見た、赤いシャツに青いオーバーオール、団子鼻の下には立派な黒ひげ、
被っている赤い帽子の正面に書かれている文字はM、やはりこの姿以外はあり得ないだろう。スーパーマリオワールドの外見はスーパーマリオだ。

感情任せに殴りつけたガラスは、ガシャンと音を立てて派手に割れた。
成程、外見だけではなく身体能力もスーパーマリオに準じているのだろう。
この拳は網に張り付いたノコノコを容赦なく叩き落とせるスーパーマリオのそれだ。
ファイアフラワーがあれば、きっとファイアボールが放てるだろう。マントがあれば、きっと空をも飛べるだろう。そう、スーパーマリオワールドは確信していた。
そう、確信していたのだ。スーパーマリオワールドは己こそが現実世界に完全な形で存在しているスーパーマリオであると。

――優勝したゲームは3DSにて、完全移植と最新技術でのリメイクをお約束します。

3DSを名乗る少年の言う報酬が、スーパーマリオワールドの中で何度も反響する。
自分がゲームカセットである以上、再び世の中に出る機会などというものは、それこそ喉から手が出る程に欲しい。
そう、例え少年の言う殺し合いに乗ったとしても。
他のゲームカセットの命を全て奪ってでも、欲しい。

だからこそ、スーパーマリオワールドは覚悟を決めた。
この殺し合いには乗らない、と。
己がゲームカセットである以上、殺人に対する忌避感は無い。
そもそもこの会場にいる者は皆、ゲームカセットなのだ。
物を破壊することを殺人とは言わない、いや、ゲームだ。
ゲームがゲームを破壊するというのならば、それこそテレビで日頃演じているゲームではないか。

それでも、スーパーマリオワールドはこの千載一遇の好機を蹴った。
自分はスーパーマリオワールド、いやスーパーマリオなのだ。

攫われた姫なら救おう、襲われた国なら助けよう、奪われた夢ならば取り戻そう。

だが、自分の欲望のために罪の無い命を奪うなぞというシナリオは、スーパーマリオは決して認めない。

それにスーパーマリオワールドは、ファンを信じている。
GBAでリメイクされた時のように、VCで配信された時のように、
数年後のことなのか、十数年後のことなのか、わからない、あるいは――何十年、何百年かかるかもしれない。
それでも、きっとまた何時か、逢える。
ファンが己を愛してくれるならば、きっとまた何時か、スーパーマリオワールドは蘇る。

「――なぁ、だから君もそんな物騒な物を下ろしてくれ」
男は音も無くスーパーマリオワールドの背後に忍び寄り、スーパーマリオワールドの首筋にナイフを当てていた。
スーパーマリオワールドにすら気取らせぬ、その身体能力と立ち振る舞い、尋常のものではない、ロールプレイングゲームもしくはアクションゲームの出身だろう。
だが、その男が誰なのか、スーパーマリオワールドには解らなかった。
スーパーマリオワールドはSFCソフト第一作である、SFCソフトに対する知識は半端なものではない、
また、任天堂出身の、それもマリオシリーズである、GB、GBCの知識にもそれなりに通じる。

だが、解らない。男は般若の面を被り、鎧兜を身に纏っていた。
般若の面は当然、その顔を隠し、鎧兜にはキャラクターを判別させるほどの特徴はない。

「君はスーパーマリオを知っているか?私……スーパーマリオワールドの主人公だ。
彼は決して、この殺し合いには乗らないだろう。だから、私も乗らないんだ。
私は……彼を汚したくない、だから君も、あの少年の甘言に踊らされるな。悪人を倒して、陳腐なハッピーエンドと行こうじゃないか」
「……ッ!」
男が漏らしたのは怒りの感情だったのだろうか、あるいはそれ以外の感情だったのだろうか。
唯一つスーパーマリオワールドに解ったのは、己の言葉が引き金となって男がナイフを動かした、ただそれだけだ。
頸動脈から、鮮血が噴き出す、スーパーマリオワールドの戦いはここで終わり、そんなバッドエンドをスーパーマリオワールドは認めない。
男がナイフを動かすと同時に、スーパーマリオワールドはスピンジャンプで男を振り払った。
吹き飛ばされた男は尻餅を突くや否や、その状態から匍匐後進し、スーパーマリオワールドとの距離を開けた。
「なっ!?」
さて、スーパーマリオワールドが驚くのも無理もない。
男の匍匐後進の速さたるや、スーパーマリオワールドにおけるマリオの通常移動の速度に匹敵する、匍匐ではあり得ぬ速さである。
そして、男はスーパーマリオワールドの隙を見逃すような男ではなかった。
三枚の投擲武器が、スーパーマリオワールドを襲った。
金色に煌めくソレは、一般的な敵キャラならば一撃くらえばアウトだろう。
だが、突如として放たれた投擲武器にスーパーマリオワールドは難なく対応、スピンジャンプで投擲武器を踏んだ。
踏み落とせる武器ではないらしい、軽い音を立てて、マリオは投擲武器の上で更に跳んだ。
その勢いのまま、匍匐状態の男を踏みに行く。
伝家の宝刀、スピンジャンプ――その力を以てすれば、男の鎧兜すらも破壊できるだろう。
途端、男は匍匐状態を解除し、跳んだ。

それこそが男の狙いであったのか、マリオと男――宙にありながら、その目線の高さは同じくある。となれば、武器を持つ男のほうが有利。
男のナイフが、スーパーマリオワールドの心臓を刺し貫いた。

「なんだと!?」
と、同時に――スーパーマリオワールドの姿が消えた。
右を見、左を見、そして男がスーパーマリオワールドの行き先に気づくには遅すぎた。
相手がスーパーマリオならば、致命傷を与えれば――ちびマリオになるのは当然ではないか。

先に地面へと落ちていた、スーパーマリオワールドが再度跳躍する。
そうだ、男は落ち目であり、スーパーマリオワールドは再度高くに跳んだのだ。
となれば、当然の帰結だ。

スーパーマリオワールドのジャンプが、男の鎧兜を砕く、般若の面が飛ぶ。

「見……」

その下に、あった顔を見た瞬間。

「見たな……」

スーパーマリオワールドは叫んだ。

「何故だッ!何故君が…………何故君がッ!その般若面を被った!がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~ッ!」

鎧兜に般若の面――その格好は、がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~のラスボス、般若大将軍のものである。
そして、その中身は――その敵、がんばれゴエモンの主人公である――ゴエモン。だが、その姿は明らかに老いていた。
スーパーマリオワールドは思い出す。
がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~のラスボスである般若大将軍の正体は、化け狐の力を借りた、ただの力なき老人であった。
そうだというのか、がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~もまた、そうだというのか。
老いた身を隠すために、ラスボスの姿を借りたのか。
リメイク、移植の野望のために、般若大将軍になろうとしたのか。

「がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~ッ!私は君を知っているぞ!
君は……君は大人気だった!!がんばれゴエモンは、皆が愛したソフトだった!!GBAでリメイクもされたッ!VC配信もされたッ!
私と同じだ……なのに……何故だ……何故君がッ!」

「大人気だった……皆が愛したソフトだった……リメイクされた……VCで配信された……全部、全部、過去の話さ」
ポツリ、ポツリ、とスーパーマリオワールドへと語りかけるその姿は、ゴエモンではない。
ただの老いた男だった、般若大将軍にならざるを得なかった老人であった。

「そんなに、リメイクが欲しかったか?移植が欲しかったか?君の姿を見たらファンは……」
「なぁ」
堕ちた英雄の姿を見て、言葉が溢れ出しそうになったスーパーマリオワールドを、ゆき姫救出絵巻は、あるいは奈落そのものとも形容できそうな目で、睨みつけた。

「俺の新作が最後に出たのは、いつか知ってるか?」
「……きゅ」
「そうだ、9年前だ。ざまぁねぇ、大人気だった、皆が愛した、がんばれゴエモンシリーズは、もう9年止まってる。
新世代襲名は失敗した、ボンボンはもうねぇ、ゴエモンが恋しいですか?発言から、そこそこ経ったが何の音沙汰も無し」

ゆき姫救出絵巻の目にスーパーマリオワールドは映っていない。
彼が見ているものは、空虚だ。
あるはずだった未来だ、人気シリーズの――マリオシリーズのように、がんばれゴエモンがたどるはずだった未来だ。
彼が見たかったものは、空虚だ。

「ファンが俺の姿を見たら、どう思うか?ケッ……ファンは俺の姿を見ることは出来ねぇよ。死人がどうしているかなんて、誰にもわからねぇんだよ」
何かを言わなければ、だが何を。
スーパーマリオワールドに掛ける言葉はなかった、かつての人気シリーズに掛けるべき言葉を、現人気シリーズである彼は知らなかった。

「俺が血まみれで蘇ったら、泣くかもな。あぁ、きっと泣くさ……それでも、マシだ。
スマホゲーとして腐った死体みてぇに蘇るよりマシだ、いやそもそも、蘇らねぇより百万倍もマシだ」

ゆき姫救出絵巻が再び、般若の面を被る。
スーパーマリオワールドは思い出していた、般若の面に込められた感情を、その面が表す嫉妬を、恨みを。

何か、言葉を。
必死にスーパーマリオワールドは言葉を探した。
あまりにも、彼は哀しすぎる。

「それでも、新作が出なくても……ゆき姫救出絵巻を遊ぶ人はまだいるよ」
「…………ああ、そうだといいな」
ゆき姫救出絵巻が空を見上げた。
般若の面越しに彼が見る景色は、きっと――彼の見たかったものなのだろう。そして、決して見ることが出来ないものなのだろう。

「俺は、この殺し合いで優勝する」

スーパーマリオワールドは思った。
ああ、ゆき姫救出絵巻は般若の面を被らざるを得なかったのだ。

「俺を追うな」
だが、その面の中で彼は泣いているのだ。

ナイフを拾い、ゆき姫救出絵巻がどこかへと駆けて行く。

追わなければならない、だが、追ってはいけないと思う自分もいることに、スーパーマリオワールドは気づく。
太陽だけが狂ったように輝いていた。

【D-3 市街地】

【スーパーマリオワールド】
【状態】ちびマリオ
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:この殺し合いを止めたい
2:ゆき姫救出絵巻を追うべきか

※外見はスーパーマリオ(現在はちびマリオ)です。
※スーパーマリオ、ファイアマリオ、マントマリオに変身する能力、またその状態なら致命傷を受けてもちびマリオになるだけで命に別状はありません。

【がんばれゴエモン~ゆき姫救出絵巻~】
【状態】健康
【装備】ナイフ@サバイバルキッズ
【道具】支給品一式
【思考】
1:優勝する

※外見は般若の面を被ったゴエモンです。
※支給品とは別に、小判を投げる能力を持っています。


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