大東亜軍所属中型船舶・七十一型船、通称「ナイスボート」。
このプログラムの実行本部は、この船内に設置されていた。
このプログラムの実行本部は、この船内に設置されていた。
「東方不敗様、あと三十分で第一回の死亡者発表になります」
「うむ、そうか」
「うむ、そうか」
本部内で熱い茶を飲んでいた東方不敗は、部下からの言葉に大きくうなずいた。
「死亡者の数はどうなっておる?」
「このままいけば、17人ですね」
「40人中17人か。なかなかいいペースではないか。このペースなら、一日かからずに終わるかもしれんな」
「このままいけば、17人ですね」
「40人中17人か。なかなかいいペースではないか。このペースなら、一日かからずに終わるかもしれんな」
これまでの死者の数を聞き、東方不敗はその顔に笑みを浮かべる。
だが、彼の上機嫌はそう長くは続かなかった。
だが、彼の上機嫌はそう長くは続かなかった。
「た、大変です!」
血相を変えて、また別の兵士が本部に飛び込んでくる。
「騒々しいぞ! 何があった!」
「参加者の一人が、この船に乗り込んで……ぐあっ!」
「参加者の一人が、この船に乗り込んで……ぐあっ!」
最後まで用件を伝えることができずに、その兵士は吹き飛ぶ。その背後からは、精悍な顔つきの青年が姿を現した。
「船が本拠地とは考えたもんだ。確かにこれなら会場の近くで待機できるし、参加者が乗り込んでくる危険性も低い。
まあ、もっと俺はこうして乗り込んできているがね」
「貴様はたしか……8番の風見志郎!」
「そのとおり!」
まあ、もっと俺はこうして乗り込んできているがね」
「貴様はたしか……8番の風見志郎!」
「そのとおり!」
東方不敗の言葉を、風見はよく通る声で肯定した。
「貴様、どうやってここに……!」
「教える必要はないさ」
「教える必要はないさ」
不敵な笑みを浮かべながら、風見は東方不敗に歩み寄る。
「とりあえずここにいる連中を全員倒せば、今回のプログラムは中止にできるだろう。覚悟してもらおうか」
「ククク、大きな口を叩きおるわ。出来るものならやってみるがいい。倒してみよ、この軍勢をな!」
「ククク、大きな口を叩きおるわ。出来るものならやってみるがいい。倒してみよ、この軍勢をな!」
東方不敗の号令と同時に、その場にいた兵士たちが銃を構える。
だがその銃から弾丸が放たれる前に、彼らの手を何かが切り裂いた。
だがその銃から弾丸が放たれる前に、彼らの手を何かが切り裂いた。
「うあああ!!」
複数の悲鳴が、決して広くない部屋の中に響き渡る。
「何だ! 何が起きておる!」
「おいおい、これを支給したのはあんた達だろ? この『トランプ型の刃物』をな」
「おいおい、これを支給したのはあんた達だろ? この『トランプ型の刃物』をな」
手元にあるカードを見せつけながら、風見は再び笑う。
「確かにそんな物も支給品に入っておったな。だがここまで使いこなすとは……やりおるやりおる」
東方不敗の顔にも、好戦的な笑みが浮かぶ。
「わしがやろう。貴様らは下がって怪我の手当をしておれ」
堂々とした足取りで、東方不敗は風見との間合いを詰めていく。
「親玉が直々にお出ましとはありがたい。手間が省けるぜ」
「ほざけ若造。貴様ごときがわしに勝てると思っておるのか!」
「ほざけ若造。貴様ごときがわしに勝てると思っておるのか!」
東方不敗が、強く床を蹴って一気に前進する。その勢いを活かし、彼は突きを繰り出す。
それを防御した風見だが、完璧に防御したにもかかわらず彼の体が吹き飛んだ。
それを防御した風見だが、完璧に防御したにもかかわらず彼の体が吹き飛んだ。
「!!」
初めて、風見の顔に動揺の色が浮かぶ。
「どうしたどうしたぁ!!」
さらに連撃を叩き込む東方不敗。風見はクリーンヒットを避けるのが精一杯で、反撃の糸口がつかめない。
「この程度の実力でわしを倒そうとは、笑止の極み! 出直してくるがいいわ!」
容赦なく続く東方不敗の攻撃の前に、ついに風見の防御が崩れる。
それを見逃す東方不敗ではない。手刀を作り、風見の首輪の下へ突き立てる。
その狙いははずれることなく、文字通り刀と化した手刀が風見の頸動脈を破壊した。
血しぶきが上がり、東方不敗の顔を赤く染める。その表情は、実に険しいものだった。
それを見逃す東方不敗ではない。手刀を作り、風見の首輪の下へ突き立てる。
その狙いははずれることなく、文字通り刀と化した手刀が風見の頸動脈を破壊した。
血しぶきが上がり、東方不敗の顔を赤く染める。その表情は、実に険しいものだった。
「こやつ……やりおったわ……」
東方不敗の攻撃は、確かに風見に致命傷を与えていた。だがそれと同時に、風見の蹴りが東方不敗の脇腹に叩き込まれていたのだ。
「貴様……。まともにやっては勝ち目がないと判断して、わざと防御を崩しおったな?
そしてわしが止めを刺しに来るのに合わせて、カウンターを……」
そしてわしが止めを刺しに来るのに合わせて、カウンターを……」
東方不敗の言葉に、風見はニヤリと笑う。そして彼の体は、そのまま崩れ落ちた。
「貴様があと10年修行を積んでおれば、あるいはわしを脅かす存在になっていたかもしれぬな……。
プログラムに逆らいさえしなければ、優秀な兵士になれたものを……」
プログラムに逆らいさえしなければ、優秀な兵士になれたものを……」
名残惜しそうな表情を見せつつ、東方不敗は風見から離れる。
「被害状況をすぐに確認しろ! 人手が足りない場所があったら他から回せ!
死亡者の発表は遅れないようにしろ!」
死亡者の発表は遅れないようにしろ!」
戦闘直後という状況にもかかわらず、てきぱきと指示を飛ばす東方不敗。
そこに、一人の兵士がおずおずと近づく。
そこに、一人の兵士がおずおずと近づく。
「あの……申し上げにくいのですが……」
「なんだ? 言ってみろ」
「先程風見の投げたトランプが、よりによって首輪爆破装置に当たっておりまして……。
復旧にはしばらく時間がかかります」
「何だと?」
「なんだ? 言ってみろ」
「先程風見の投げたトランプが、よりによって首輪爆破装置に当たっておりまして……。
復旧にはしばらく時間がかかります」
「何だと?」
その報告に、流石の東方不敗も動揺を見せる。
「やってくれたな……!」
東方不敗は、すでに物言わぬ風見に視線を向ける。
風見の口元には、未だ笑みが浮かんでいた。
風見の口元には、未だ笑みが浮かんでいた。
【08番 風見志郎 死亡】
残り22人
残り22人
【08番 風見志郎】
Former
初登場!
Next
死亡
【東方不敗】
Former
初登場!