「大丈夫ですか、朝比奈さん。少し休憩しましょうか?」
「いえ……。この程度ならまだ大丈夫です」
「いえ……。この程度ならまだ大丈夫です」
舗装されていない小さな道を、二人の少女が縦に並んで歩いていた。
前を歩く少女は高良みゆき、後ろを歩く少女は朝比奈みくるという。
前を歩く少女は高良みゆき、後ろを歩く少女は朝比奈みくるという。
「そうですか。ですが、くれぐれも無理はなさらないでくださいね?
体力を使い切ってしまっては、いざというときに危険ですから」
「は、はいー」
体力を使い切ってしまっては、いざというときに危険ですから」
「は、はいー」
みゆきの言葉に、みくるは素直にうなずく。
「それにしても、高良さんはすごいですね。こんな非常事態でも、落ち着いていられるなんて……。
私なんて、気が動転してただ泣いていただけだったのに……」
「いえ、そんなことはありませんよ……。私だって、怖くて不安で今にも泣き出しそうです。
表面上は、それを何とか押さえ込んでいるだけですよ」
「そうなんですか? でも、表面上だけでも落ち着いていられるのなら十分すごいと思いますよ」
私なんて、気が動転してただ泣いていただけだったのに……」
「いえ、そんなことはありませんよ……。私だって、怖くて不安で今にも泣き出しそうです。
表面上は、それを何とか押さえ込んでいるだけですよ」
「そうなんですか? でも、表面上だけでも落ち着いていられるのなら十分すごいと思いますよ」
言葉のキャッチボールを交わしながら、二人は歩き続ける。だが、突然みゆきの足が停止した。
「どうかしましたか、高良さん?」
「ヘモグロビンの……血の臭いがします」
「ヘモグロビンの……血の臭いがします」
みくるからの問いに、みゆきはかすかに震える声で答える。
「ふええええ!? それって、この近くで血が流れるようなことがあったってことですかぁ?
どどど、どうしましょう!?」
「落ち着いてください、朝比奈さん。この近くで何かがあったのはたしかでしょう。
ですが、明確な判断を下すのには材料が足りません」
どどど、どうしましょう!?」
「落ち着いてください、朝比奈さん。この近くで何かがあったのはたしかでしょう。
ですが、明確な判断を下すのには材料が足りません」
取り乱すみくるに対し、冷静に告げるみゆき。彼女は周囲への警戒を強めつつ、慎重に少しずつ歩を進めていく。
やがてみゆきたちは、血の臭いの発生源を発見する。それは肩から血を流し、地べたに横たわるクラスメイトであった。
やがてみゆきたちは、血の臭いの発生源を発見する。それは肩から血を流し、地べたに横たわるクラスメイトであった。
「こなたさん!」
ただならぬ状況の親友を発見し、みゆきは思わず我を忘れて駆け寄る。
こなたの体を抱き起こすと、まずみゆきは彼女の手首に自分の指を当てた。
こなたの体を抱き起こすと、まずみゆきは彼女の手首に自分の指を当てた。
「よかった、脈はある……。こなたさん、しっかりしてください! こなたさん!」
「ん……」
「ん……」
みゆきの必死の呼びかけが功を奏したのか、こなたはゆっくりと目を覚ます。
「みゆき……さん……?」
「よかった、気が付かれたんですね」
「よかった、気が付かれたんですね」
優しい声で、みゆきがこなたに語りかける。
「その怪我、いったい何があったのですか?」
「これは……」
「これは……」
みゆきの問いかけに答えようとしたこなたの脳裏に、先程の光景がフラッシュバックする。
そう、それは自分に銃を向ける親友の姿。
そう、それは自分に銃を向ける親友の姿。
かがみは、自分を傷つけようとした。じゃあ、もしかしてみゆきさんも……?
「うわああああああ!!」
こなたが、突然絶叫を挙げる。予想外の展開に、みゆきもみくるも慌てふためく。
「どうしたんですか、こなたさん!」
「来ないで! 来ないでーっ!!」
「来ないで! 来ないでーっ!!」
恐怖に引きつった表情で、こなたは手にしたままだったカッターナイフを振り回す。
刃がみゆきの柔肌を切り裂き、血を吹き出させる。それでもなお、こなたは止まらない。
刃がみゆきの柔肌を切り裂き、血を吹き出させる。それでもなお、こなたは止まらない。
「あああああ!!」
雄叫びと共に、こなたはカッターナイフをみゆきの腹に突き立てた。
「高良さぁぁぁぁぁん!!」
みくるの絶叫が、周囲に響く。それとほぼ同時に、みゆきの口から血が吐き出される。
みゆきの血を浴びたこなたは、それが一種のショック療法になったのか少しずつ正気を取り戻していた。
みゆきの血を浴びたこなたは、それが一種のショック療法になったのか少しずつ正気を取り戻していた。
「み……みゆき……さん……。私、私、なんでこんな……」
自分が罪を犯してしまったことを理解し、こなたは新たな負の感情に飲み込まれていく。
だが、みゆきはそんなこなたを優しく抱きしめた。
だが、みゆきはそんなこなたを優しく抱きしめた。
「大丈夫です……」
「みゆきさん……?」
「あなたが気に病む必要はないんです……。怖かったんですよね? 不安だったんですよね?
悪いのはあなたじゃありません……。こんなひどいプログラムを実行する政府です……。
でもこなたさん……他の人を傷つけるのは……私で最後にしてくださいね……?」
「みゆきさん……?」
「あなたが気に病む必要はないんです……。怖かったんですよね? 不安だったんですよね?
悪いのはあなたじゃありません……。こんなひどいプログラムを実行する政府です……。
でもこなたさん……他の人を傷つけるのは……私で最後にしてくださいね……?」
みゆきの言葉に、こなたは止めどなく涙を流しながらうなずく。
「あ……れ……? 何だか、急に眠くなってきました……。寝ている場合ではないのに……。
すいません……。少しだけ、少しだけ眠らせて……」
すいません……。少しだけ、少しだけ眠らせて……」
消え入りそうな声で呟くと、みゆきはゆっくりと目を閉じる。そして、二度と目覚めることはなかった。
「みゆきさん……。ごめんね……。本当にごめんね……」
なおも涙を溢れさせながら、こなたはみゆきの亡骸をそっと地面に横たえさせる。
本来ならもっと丁重に弔ってあげたいところだが、あいにくそれには道具も体力も足りない。
本来ならもっと丁重に弔ってあげたいところだが、あいにくそれには道具も体力も足りない。
「みくるちゃん……」
「は、はい!」
「は、はい!」
ふいに名前を呼ばれ、みくるは思わず大きな声で返事をする。
「私はみゆきさんを殺した罪を償いたい……。そのために、このプログラムを何とか中止させてみせる。
できればみくるちゃんにも協力してもらいたいけど、私は人殺しだから……。
信用できないなら、それでいい。このまま別れ……」
「いえ……。私は、泉さんを信じます!」
できればみくるちゃんにも協力してもらいたいけど、私は人殺しだから……。
信用できないなら、それでいい。このまま別れ……」
「いえ……。私は、泉さんを信じます!」
こなたに最後まで言わせることなく、みくるはきっぱりとそう宣言した。
「きっと高良さんも、それを望んでいるでしょうから。だから私は、あなたと一緒に行きます」
「ありがとう、みくるちゃん」
「ありがとう、みくるちゃん」
こなたの瞳から、また涙がこぼれ落ちる。もっとも、今度のそれは嬉し涙だったが。
「さあ、行こう! みゆきさんの死に報いるために!」
そう宣言するこなたの表情に、もはや暗い影はなく。その顔には、強い決意が浮かび上がっていた。
【20番 高良みゆき 死亡】
残り26人
残り26人
【5番 朝比奈みくる】
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】三味線糸
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】三味線糸
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【6番 泉こなた】
【学年】高3
【状態】右肩負傷、覚醒
【所持品】カッターナイフ、みゆきの支給品
【能力】知力:C 体力:B オタク:S
【学年】高3
【状態】右肩負傷、覚醒
【所持品】カッターナイフ、みゆきの支給品
【能力】知力:C 体力:B オタク:S
【20番 高良みゆき 死亡】
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【5番 朝比奈みくる】
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