茂とチンクの二人は、中心部で放送主である南光太郎の探索を続けていた。
しかしすぐに見つかると思っていた光太郎は、なかなか見つからない。
しかしすぐに見つかると思っていた光太郎は、なかなか見つからない。
「ああもう、どこにいるんだよあいつは!」
「これほど捜しても見つからぬとは……。中心部から放送したという前提が間違っていたのか?」
「いや、そんなはずは……」
「これほど捜しても見つからぬとは……。中心部から放送したという前提が間違っていたのか?」
「いや、そんなはずは……」
実は中心部は中心部でも二人はまるで見当外れの場所を捜索していたのだが、本人たちがそれを知るよしはない。
「どうする? このまま闇雲に捜しても、埒があかないぜ……」
「たしかにな……。ん? 城、あそこを見てみろ」
「いたか!?」
「いや、南ではないのだが……」
「たしかにな……。ん? 城、あそこを見てみろ」
「いたか!?」
「いや、南ではないのだが……」
チンクが指さす先。そこには、藤色の髪に黄色いリボンを結んだ少女が地べたに腰を下ろしていた。
「あれは……柊つかさか!」
「どうする? 接触するか?」
「うーん……。正直、あの人のことはよく知らないんだよな。信用していいものどうか……」
「そうか。私も特に親しいわけではなかったからな……。まあ、おそらく身体能力はこちらの方が上だ。
あいつがプログラムに乗っていたとしても、警戒していればそうそう不覚は取らないと思うが……」
「よし、虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言うしな。いっちょ接触してみるか」
「どうする? 接触するか?」
「うーん……。正直、あの人のことはよく知らないんだよな。信用していいものどうか……」
「そうか。私も特に親しいわけではなかったからな……。まあ、おそらく身体能力はこちらの方が上だ。
あいつがプログラムに乗っていたとしても、警戒していればそうそう不覚は取らないと思うが……」
「よし、虎穴に入らずんば虎児を得ず、とも言うしな。いっちょ接触してみるか」
意を決して、茂とチンクはつかさに接近する。
「あ、城くん、チンクちゃん。こんばんはー」
二人に気づいたつかさは、その顔に力のない笑みを浮かべる。
「だいぶ疲れてるみたいだな、つかさ先輩」
「うん、まあね……。お姉ちゃんも友達も死んじゃったし、それに荷物が重くてさー」
「そうか……」
「うん、まあね……。お姉ちゃんも友達も死んじゃったし、それに荷物が重くてさー」
「そうか……」
つかさの言葉を聞いたチンクは、その表情を曇らせていた。
気丈に振る舞ってはいるが、つかさも辛いのだろう。何せ、血を分けた姉を失ったのだ。
それにある程度鍛えている自分とは違い、つかさの体力は女子高生として標準の域を出ない。
精神面だけでなく、肉体的にも参っているというのは十分に納得の出来る話だ。
気丈に振る舞ってはいるが、つかさも辛いのだろう。何せ、血を分けた姉を失ったのだ。
それにある程度鍛えている自分とは違い、つかさの体力は女子高生として標準の域を出ない。
精神面だけでなく、肉体的にも参っているというのは十分に納得の出来る話だ。
「お前も辛かったのだな、つかさ。よかったら、私と一緒に来ないか?
仲間がいる方が、気も紛れるだろう。私はまだ体力に余裕があるし、お前の分の荷物を持ってやってもいいぞ?」
「うーん……。気持ちは嬉しいけど、遠慮しておくよ。仲良くしちゃうと、あとが辛くなるから」
「おい、つかさ……」
仲間がいる方が、気も紛れるだろう。私はまだ体力に余裕があるし、お前の分の荷物を持ってやってもいいぞ?」
「うーん……。気持ちは嬉しいけど、遠慮しておくよ。仲良くしちゃうと、あとが辛くなるから」
「おい、つかさ……」
つかさの言動に、何か不穏なものを感じる茂。だが彼が具体的な行動に移る前に、つかさは自分のカバンを開けた。開けてしまった。
「それに……使えば少しは軽くなると思うから」
カバンの中から出てきたのは、銀色に輝くタンク。そして、そこから伸びるノズル。
事態が飲み込めずきょとんとした表情を浮かべているチンクに、つかさはノズルの先を向ける。
事態が飲み込めずきょとんとした表情を浮かべているチンクに、つかさはノズルの先を向ける。
「バカ野郎! 避け……!」
「消毒だ~」
「消毒だ~」
怒鳴り声で回避を促す茂だったが、すでに手遅れ。つかさが引き金を引き、ノズルから噴出された紅蓮の炎がチンクの体を包む。
火炎放射器。それが、つかさがゾフィーから奪った支給品だった。
火炎放射器。それが、つかさがゾフィーから奪った支給品だった。
「~っ!!」
高熱がもたらす苦痛を全身で感じながら、チンクはおのれの迂闊な行動を悔やんでいた。
警戒していれば大丈夫などとほざいたのは、どの口だ。
つかさの身の上にすっかり同情し、警戒を怠った結果がこの様だ。
だが、まだ終わるわけにはいかない。まだ自分には、出来ることがある。
大切な同行者である茂のためにも、やらねばならない。
チンクはポケットに入れていたスタンガンを取り出し、最後の力を込めてそれを投擲する。
警戒していれば大丈夫などとほざいたのは、どの口だ。
つかさの身の上にすっかり同情し、警戒を怠った結果がこの様だ。
だが、まだ終わるわけにはいかない。まだ自分には、出来ることがある。
大切な同行者である茂のためにも、やらねばならない。
チンクはポケットに入れていたスタンガンを取り出し、最後の力を込めてそれを投擲する。
「ランブル……デトネイター……!」
チンクが発動させるのは、自らの体に宿した異能の力。
金属を爆弾に変える力、それが彼女の「ランブルデトネイター」だ。
機械部分を爆弾に変えられたスタンガンは、つかさに向かって飛んでいく。
そして、彼女の足下で爆発を起こした。
金属を爆弾に変える力、それが彼女の「ランブルデトネイター」だ。
機械部分を爆弾に変えられたスタンガンは、つかさに向かって飛んでいく。
そして、彼女の足下で爆発を起こした。
「残念、外れたみたいだね」
「いや……当たってるみたいだぜ」
「え?」
「いや……当たってるみたいだぜ」
「え?」
チンクの最期の攻撃が外れたものと判断して呟いたつかさだが、茂は彼女の言葉を否定する。
それを不思議に思うつかさだが、その理由はすぐにわかった。
それを不思議に思うつかさだが、その理由はすぐにわかった。
「あれ、なんか熱い……って、燃えてる! 燃えてるよ!」
ワンテンポ遅れて、自分の荷物が燃えていることに気づくつかさ。
「今の爆発が火炎放射器のタンクを壊して、中の液体燃料に引火したみてえだな。
さて、どうする? 頼みの武器はお釈迦だぜ?」
「あ、あの、あの、ごめんな……」
さて、どうする? 頼みの武器はお釈迦だぜ?」
「あ、あの、あの、ごめんな……」
鬼気迫る表情で歩み寄ってくる茂に対し、目に涙をたたえながらつかさは必死に謝る。
だが、それが受け入れられるはずがない。
だが、それが受け入れられるはずがない。
「おらぁ!」
一切の容赦なく、茂はつかさの頬を殴りつける。つかさの華奢な体は宙を舞った後、アスファルトに叩きつけられた。
「ひい……い……」
鼻と口から血を流し、弱々しい悲鳴を上げながらつかさは必死で逃げようとする。
茂はそれを追うことはしなかった。代わりに、無惨に焼けこげたチンクへと近寄る。
茂はそれを追うことはしなかった。代わりに、無惨に焼けこげたチンクへと近寄る。
「すまねえな、先輩……。俺がもうちょっと早く反応していれば……」
「……!」
「……!」
チンクに話しかける茂。するとそれに反応し、死んだと思われていたチンクの唇がかすかに動く。
「まだ息が……! おい、なんだ! 何が言いたい!」
「か……って……くれ……」
「か……って……くれ……」
「勝ってくれ」。最後のメッセージを茂に託し、チンクは今度こそ息絶えた。
「ああ、わかってるさ。俺は……俺たちは勝つ! 絶対にな……」
焼けただれたチンクの手を強く握りしめ、茂は絞り出すように呟いた。
【23番 チンク 死亡】
残り18人
残り18人
【16番 城茂】
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】アサルトライフル
【能力】知力:C 体力:S 電撃耐性:S
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】アサルトライフル
【能力】知力:C 体力:S 電撃耐性:S
【29番 柊つかさ】
【学年】高3
【状態】精神不安定、顔面にダメージ(大)
【所持品】コンバットナイフ
【能力】知力:D 体力:D 爆発力:B
【学年】高3
【状態】精神不安定、顔面にダメージ(大)
【所持品】コンバットナイフ
【能力】知力:D 体力:D 爆発力:B
【23番 チンク】
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死亡