Controversial Participation



【 クローディア・ウルフ 】 サイレントヒル 遊園地 18時00分00秒


【 クローディア・ウルフ 】 サイレントヒル 遊園地 18時00分01秒


【 クローディア・ウルフ 】 サイレントヒル 遊園地 18時00分02秒




「これは……」

 下腹部から発せられる鋭い痛みに、クローディアは顔を青ざめる。
どこかから聞こえてきた咆哮。それに自身の神が反応しているようだ。
共感・反発、どちらかは知れないが、これは相当な負担だ。


 よろよろと遊園地を後にし、車道へ出る。
彼方に見える灯台の光が、蝋燭の灯火のように感じられた。

 それ以上に目を引いたのが、眼下に広がる赤い湖だ。
ここに住んで久しいが、こんなものは知らない。

(まさかこれすべてがアグラオフォティス……)

 一瞬絶望に打ちひしがれるが、すぐに否定する。
あれ特有の不快感はない。これだけあれば、かなりの拒絶を示すはずなのに。

 轟音そのものが去っても、残響がクローディアを苦しめる。
同胞を求める声か、地獄へ誘う叫びか。自身を蝕むその存在に、彼女は憎悪を抱く。
それによって神は胎動を始め、更なる痛みを呼ぶ。

 痛みが憎しみを生み、その憎しみが痛みを生む。
その悪循環はクローディアにとって好都合だったが、
さすがに限界はある。おぼつかない足取りはやがて停止し、膨れ上がる苦痛に耐えかねてくずおれてしまう。

「大丈夫かよ、オイ!」
 遠くから男の声と、複数の足音が近づいてくる。
サイレントヒルに迷い込んだ連中だろう。
自分に害をなす怪物に遭わなかったのは幸運だ。
いや、神のご加護というべきか。

「しっかりしろ!」
「……大丈夫です。心配していただき、ありがとうございます。
ここで会ったのも神のお導きでしょう。どうかご一緒させてください」
 とりあえずこの男に取り入ろう。親切な人間は扱いやすいものだ。
神の尊さ、楽園の素晴らしさを説けば、従順な信徒が出来上がることだろう。
 サイレンの影響ももうない。これでまた普段通りの行動が可能だ。
どのように動くべきか、復帰した理性で思考する。


「そう。じゃあここで私に撃ち殺されるのも、神のお導きって奴なのかしらね。
どうなの、可哀想なクローディア?」

 頭上から降ってきた声に、顔を上げようとしたクローディアは硬直した。
心臓が止まったような感覚さえする恐怖と驚愕。



 一発の銃声が、暗闇を駆け抜けた。






「アレはさすがにねぇんじゃねえの?」
「アレくらいビビらせないと、本当のことなんて吐かないわよ」

 リロードを終えた銃をしまい、ヘザ―は阿部から、少し離れた椅子でぐったりしているクローディアに視線を移す。

「やっぱお前を怒らせたらヤベ―な」
「何かいった?」
「いや、こっちの話」
 聞き取れなかった呟きに首を傾げつつ、ヘザーは地図を広げる。
「とりあえず、遊園地についてはあの子から情報が手に入ったし、
このまま電車で教会に向かいましょ。あなただってウサギの群れと遊びたくはないでしょう?」
「まあな」

 ヘザ―の放った銃弾はクローディアの髪の毛や理性を削り取った。
結果、彼女と阿部は貴重な情報源を容易く入手し、こちらにイニシアチブを確立させた。
教団の不在、神の再生、力の制限……これらの情報に確証はないが、クローディアにとって偽証は自身の死や楽園の頓挫を意味するため、
かなりの信憑性がある。

「でも電車があったとしても、動くのかよ。錆まみれじゃねえか」
 周囲の悲惨な状態を眺めて阿部が嘆くと、ヘザ―が頷く。先程のサイレンを境に周囲は『あの世界』へと変貌した。
現在のサイレントヒルには、そういう法則性があるのかもしれない。
「そうね。仮に動いても、“まともに”動く保証はない。
そうなったら歩くしかないけど、迂闊に地上を歩くよりはマシなはずよ」
「それもそうだな」
 自分達が出会った過程を思い出したのか、男がうんうん、と同意する。

「それでよ、あいつはどうするんだよ」
 親指でクローディアを指され、ヘザ―は唸る。
「本当なら殺したくはないの」
「よく言うぜ」
「本当よ。殺さずに済むなら、その方がいいわ。
それに、間接的にとはいえ、一回あの子殺してるのよね」

 死者蘇生。宗教にはよくある現象・行為だが、たいていは空想だ。
しかし、今回もそうであろうか。たしかに死体はなかったが、クローディア・ウルフという人間はあの時に死んだはずだ。
もし神と融合していたとしても、その神も自分は手に掛けている。結局は死ぬしかない。
 なのに、クローディアは生前そのままの姿でここにいるし、弱体化したとはいえ、『神』もその身に宿っているという。
自分や阿部を連れてきたのがその神や彼女の仕業であったのなら、すぐに始末するつもりだった。
だが、あの教団関係者は今回の件は関与していないというし、リセットされた神にそれ程の力があるとは思えない。
少なくともクローディアにしろ神にしろ、抵抗する力があるなら、さっきの銃撃に反応したはずだ(あの発砲にはそういう意味もあった)。

「今のあの子はまだ脅威じゃないわ。
それより問題なのは、このイカれた世界を作った元凶が何かってこと。
それが教団かどうかは教会を調べてから結論を出すとして、
もし別の勢力が原因だったら、ここで彼女を殺すのはマイナスになるかもしれない。
もしかしたら、あの子も協力してくれるかもしれないからね」
「敵の敵は味方ってか? そんなにうまくいくかねぇ」
 確かに阿部の言う通りだ。共通の敵を持ったとしても、団結できるとは限らない。
信用した矢先に裏切られては、死んでも死にきれない。武器は没収したが、それでも危険なのは変わりないのだ。
ここにいるかもしれない父や友人に会うためにも、自分はまだ死ぬわけにはいかない。
クローディアのことを鑑みれば、彼らも自分の記憶通りの姿でいる可能性が高いだろう。
期待と焦燥が胸中を支配しているが、表に出さないように努めている。

「あなたもそれに合わせてくれとは言わない。これは私のわがままだから。
もし私やクローディアを信じられないなら、遠慮せずに離れてくれればいいし、
殴りかかっても文句はない。さすがに抵抗はするでしょうけどね」
「わーった、わーったよ」
 ヘザ―の真剣なまなざしに阿部は「お手上げだ」とでも言うように両手を上げ、
「おめーについていくよ。文句はねえ。だけど、ヤバい時は頼むぜ」
「ええ、任せて。もしもの時は、私が決着をつける」

 ヘザ―の差し出した手に阿部はきょとんとする。やがてどういう意味か察したらしく、その手を握る。


 クローディアはといえば、そのへんで拾った栄養ドリンクをラッパ飲みしていた。



【A-4/駅/1日目夜】



【ヘザー・モリス@サイレントヒル3】
 [状態]:憤怒、この場所へ呼んだ者への殺意
 [装備]:スタンガン(電池残量5/5)
 [道具]:L字型ライト  スタンガンバッテリー×2、SIGP226(装弾数15/15予備弾21)、携帯ラジオ、地図 、ナイフ
 [思考・状況]
 基本行動方針:主催者を探しだし何が相手だろうと必ず殺す。
 1:教会へ向かう。
 2:他に人がいるなら助ける。
 3:名簿の真偽を確かめたい。



【阿部倉司@SIREN2】
 [状態]:健康
 [装備]:バール
 [道具]:懐中電灯、パイプレンチ、目覚まし時計
 [思考・状況]
 基本行動方針:戦闘はなるべく回避。
 1:ヘザーについていく。
 2:まともな武器がほしい。
 3:どうなってんだこの名簿?



【クローディア・ウルフ@サイレントヒル3】
 [状態]若干の不安と恐怖
 [装備]
 [道具]
 [思考・状況]
 基本行動方針:神を降臨させる。
 1:ヘザ―に逆らわない。しかし神が危険な場合はその限りではない。
 2:邪魔者は排除する。
 3:赤い物体(アグラオフォティス)は見つけ次第始末する。

 ※神はいったんリセットされ、初期段階になりました
 ※アグラオフォティスを所持すると、吐き気に似た不快感を覚えます
 ※力の制限は未知数(被検体が悪い)。物語の経過にしたがって変動するかもしれません


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Implication 時系列順・目次 錆びた穽
Implication 投下順・目次 Self question
 
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困惑 阿部倉司 混ぜるな危険
困惑 ヘザー・モリス 混ぜるな危険
Close Encounters of the Third Kind クローディア・ウルフ 混ぜるな危険

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最終更新:2012年06月21日 21:18