ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

降り止まない雨などここにはないから(後編)

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降り止まない雨などここにはないから(後編)◆wYjszMXgAo


「……で、会ったときにも一応念を入れることにしよう。
 合言葉を決めておくか。
 ……もしかしたら、変装に長けていたり、他人に化けるような奴。
 それに、人を操るような能力や支給品を持った連中もいるかもしれない」
「まさか、それは考えすぎじゃないの?」

ああ、そうは思うがな。
……やはり、念を入れておくに越したことはないさ。
『あの世界』では俺も猫や人を操ることができた。
ここでそんな事が起こりえないということはないはずだ。
トルタに言っても理解はされないだろうけどな。

「言ったぜ。慎重を期すに越したことはないんだ。
 第一この状況がありえないはずなんだぞ。
 どんな事態を想定しても損はしない、断言する」
「…………そう、ね」
「合言葉はこうだ。
 『お互いの元来た場所での知り合い全員の名前』
 俺はクリス達を。お前は理樹達の名前を言ってくれ」

俺たちがともに行動していることを知り、つけ込もうとしても完全に交友関係を把握するのは難しいだろう。
それが本人の交友関係でないなら尚更だ。
単に操られるだけならそんな事を知りえない。
記憶まで読み取られるなら話は別だが、そんなのにはさすがに対処しようがないので考えても意味はない。

「ええ、分かったわ」

いい返事だ。
……一番いいのは、こんな合言葉を使う事態が訪れないことなんだがな。
とにかく備えておくに越したことはない。


「……じゃあ、緊急時の対策も考えた所でこれからの具体的な行動に移ろう。
 この辺りの施設から現在位置は把握してるよな?」

喫茶店の中からそちらの方を向く。
中世風の町並みに似合わないレールは間違いなく線路だ。
これは非常に重要なポイントだろう。
線路が通れる程度に整地されている道なら、各所への交通の便もいいはずだ。
ここを押さえれば、他の参加者との交流もしやすくなる。

「駅、よね。
 どうやら終点みたいだったから、周りの地形から判断するにF-2かな、私たちがいるのは。
 ……そう言えば、さっき駅に向かわなかったのはやっぱり安全確保のため?」
「そうだ。
 ……列車を使うのは危ない。目立つし、何よりも逃げ場がないからな。
 車両ごと爆破されたらまずやられる。
 内部での銃撃戦なんか起こったらどうしようもない。
 そんな危険な橋は渡れないさ」

離れた区間を高速移動できるのは確かに魅力ではあるが……。
やはり、それを差し引いてもリスクが高すぎる。
列車で移動するというのは禁止エリアから即座に離脱する場合でもない限り避けるべきだろう。
だが、しかし。

「……でも、逆に人が集まる証拠なんじゃないの?
 使わない手はないと思うわ」

分かっている。交流を考えれば、列車に乗ろうと集まってくる人間を無視するのは勿体ない。
そこで俺のアイデアを用いるという訳だ。

「そう、それでなんだが……、さっき言った緊急時の集合方法は覚えてるよな?」
「線路沿いに歩いて駅で引き返すのよね?
 ……あ、そうか」
「ああ。緊急時だけでなく、これからの行動も基本的に電車の線路沿いに歩く。
 線路が通っているという事は、それだけ地面が整備されてるってことだ。
 逃げ道も作りやすい」

また、駅に向かおうとする参加者と接触も出来るだろう。
実際に駅に着いた場合は、ホームで列車を待つ参加者と情報交換だけしてその場を離れればいい。
基本的に徒歩の方が色々できるしな。

「……終点についた場合は?
 その後の行動はどうするの?」
「引き返す。終点となる2つの駅の間をひたすら行ったり来たりするんだ。
 ……地形を完全に把握する。
 地の利ほど便利なものはない。
 列車の沿線全てを俺達のテリトリーにするって事だな」

地形というのは上手く利用すればこの上ない防壁になってくれる。
熟知しておけば、襲撃者を撒くことも難しくはない。
ただ、こうして行動範囲を限定した場合に問題となる事項は確かにある。

「電車の通っていない地域にいる人たちとの交流はどうするの?
 もしかしたら、……そのどこかにクリスや理樹くん達がいるかもしれない」

――――それ以外の場所に誰がいて、何をしているかは把握できないということだ。
しかし、これは実の所大した問題じゃない。

「おいおい、相手が人間って事を忘れてるだろ。
 あいつらだって動く。
 その過程で他の連中と交流するはずだ。
 だから、その中の誰かが列車の沿線まで移動するかもしれない」

つまり、ここでも情報を武器にするわけだ。
はぐれた仲間を探す際において、一番間抜けなのは互いに動き続けることで行き違うことだろう。
こちらの行動範囲をあらかじめ限定しておくことで、向こうがあらぬ所へいってしまうことも防げる。

「無目的にあちこち回るよりも、こちらが電車の沿線にいるという情報を信頼できる奴に伝言すればいいんだよ。
 合流できる可能性も高まるしな。
 ……どっか一所に篭城でもしていない限りはだけどな」
「……その場合はある程度まで生き延びてくれる可能性は高いよね。
 それを考慮すると、私としては探しに行きたい所だけど……」

……気持ちは分かる。
ただ、向こうもおそらくこちらを探して動くだろう。
こっちが理樹や鈴、クリスたちがいるという情報を聞いてそこに向かったとき、
奴らが俺たちがいるという場所に向かった後だったりしたらそれこそお笑いだ。

「……何にせよ、不用意にうろついて行き違いになるよりは確実性が高いと思うぜ?
 こっちの行動範囲を限定しておいて、あっちにその情報が伝わるのを期待しよう」
「そう、ね。
 ……理に適ってはいるけど。とりあえず、私もそれで構わないわ」


……ふう。
さて、前準備の最後の大仕事だ。
……これをトルタに納得してもらわないと、いざという時にまずいことになる。
俺たちの方針を、根本から揺るがしかねない。

「よし、じゃあ、あと俺からの提案は一つだ」
「最後に回したって事はかなり重要な事項かしら?
 ……大体予想はつくけど」

「……何?」

「大方、この殺し合いからの脱出や、首輪についても真剣に考えるってあたりかな?」

――――驚いた。
いや、それに思い当たってもおかしくないか。
……情報は武器だ。
それは人間に関してだけじゃない。
このゲームそのものに関する情報も、充分交渉に使えるのは間違いないことなんだから。

「……ああ、その通りだ。
 もちろん俺たちの行動方針に代わりはない。
 だけど、それに箔付けをしておくにこしたことはないからな。
 こちらがそういったことに関して有用な情報や考察を持っていれば、
 主催連中に対抗しようとする奴らとの交渉材料にはなるはずだ」

「うん、それは私も考えてた。
 そういうのを考えるポーズだけでも信頼させる効果はあるだろうけど、
 実際にその手の情報を持っているなら十分カードとして使えるよね」

そこまで分かっているなら話は早いな。
とりあえず、それに加えて俺が考えうる一つの可能性についても触れておきたいが……。
迂闊に話せることじゃない。

……なら、こうすべきだな。

俺はメモに一つの言葉を殴り書く。

『何らかの手段で俺たちは監視されている可能性が高い。
 盗聴を警戒して、俺が懸念していることを筆談で伝えたい』

書きながらトルタの顔を窺ってみれば、真面目な顔つきで頷いてくれている。
監視の可能性は彼女に説明しなくても分かるだろう。
カメラらしきものは見当たらないが、首輪に盗聴器が仕込まれている可能性は充分ある。
もしかしたらどこかからカメラで監視されている可能性もあるが、監視対策には盗聴に備えるくらいしか現状は出来ないだろう。

「ああ。使える手段は妥協せずに全て使っていこう。
 たとえそれが理樹や鈴、クリスを優勝させるという目的とは反対の方向の考えだとしても、
 それを考える事が無駄というわけじゃない。
 敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
 俺達が騙す相手の思考についても熟知する必要がある」

言いながら、俺はどんどん懸念を紙に書き連ねていく。

『俺の最大の懸念は、主催連中が約束を守らない可能性だ。
 理樹や鈴、クリス。一人だけ生き残ったとして、連中がそいつを生きて返す保証がない。
 そうなった場合、俺たちが邪魔な連中を排除しても結局は意味がないだろう』

目を見開き、驚きながらもトルタは声色だけは平常を保ったままで口頭での会話に返答する。
……たいしたもんだ。

「……そして、もし運がよければ。
 本当に運がよければの話だけど、クリスと私、皆で脱出出来る可能性も……?」

『もちろん危険な連中を排除する方針は変えるつもりはない。
 同士討ちを狙うのも変わらずだ。
 少なくとも、優勝させた場合にあいつらを生きて返せる可能性がまだあるのは事実だからな』

トルタの言葉に頷きながら、俺はどんどんとメモに言葉を連ねていく。
……そう。
そもそも、この殺し合いについては分からないことが多すぎる。
主催連中に関しても疑ってかかって然るべきだ。
少なくとも何十人もが殺し合わされ、武器を持たされている。
反抗を抑えるために何らかの手段で監視されているのはほぼ確実だろう。

『とにかく、今は分からないことが多すぎる。
 俺が首輪や脱出について真剣に考えるのも、確実に理樹たちを生きて返せる保証が欲しいからだ。
 場合によっては、どんなに望みが薄くても主催連中を倒すことを目的に据える必要があるだろう。
 優勝させても結局は殺される、なんて展開にさせないためにもな』

「ま、それは希望的観測だな。
 俺達のスタンスはあくまで同士討ちさせるのを狙うことだ。
 それを忘れちゃいけないぞ」

トルタは『主催連中の言動の信憑性』に疑いを持ってくれたようだ。
両拳を握って、何度も頷いてくれている。
……そう、それでいい。
今はとにかく考えて考えて考えよう。
非力な俺たちにできる事はそれくらいしかない。

『とりあえず考察したいのは、主催連中の目的だな。
 それさえ分かれば交渉の余地があるかもしれない。道中それについて考察していこう。
 何より、だ。
 お前の言った通り、皆で脱出できるならそれが一番だよ。
 心の底からそう思う』

それだけを書いて、ペンに蓋をする。
これで俺の作戦の下準備はおしまいだ。
ありとあらゆる手段を使って、確実に理樹達の安全を確保する。
これが、俺の選択だ。


トルタを見れば、目をつぶって何かを考えている。
わずか数秒。
それだけの間だが、やけに長く感じた時間の思考を持って、トルタは返事をしてくれた。

「うん、分かってる。
 ……私は、全てクリスの為に行動する。それを忘れた訳じゃないよ」

俺の作戦に同意する、その決断を。

そして、トルタは俺の方に手を差し出してくる。

これは2回目の握手。
つまり、俺のけったいな作戦を聞いてもなお、俺の仲間として行動してくれるというその証拠だ。
手と手を取り、ゆっくりと振る。
……小さい手だと、そう思った。


「……ああ、それでいい。それじゃ俺の話はおしまいだ。
 トルタ、お前は何かあるか?」

ここまでずっと俺が喋りっぱなしだったが、トルタにもトルタで考えていたことがあるだろう。
案を聞いて、もし使えるものがあるなら有効活用したいところだ。

「……うん。ずっと考えてたんだけど、恭介の言葉で踏ん切りがついたわ。
 確かに使える手段なら使った方がいいわよね」
「お? 何だ、俺に出来ることなら俺はやるぜ。
 その覚悟はとうに出来てる。
 ……あの事故の後からずっと、な」

うん、と軽く頷くトルタ。
その口から出てくる案を、俺はどんなものが出てくるかと色々考えながら聞いていたのだが――――、


「……恭介。私と、恋人ということになってくれない?」

「……は?」

その答えは、一瞬頭の中のどの案とも結びついてはくれなかった。


◇ ◇ ◇

「……後々、有力な集団に合流する可能性を考えると、やっぱり二人きりになっても怪しまれない口実が欲しいと思うの。
 恋人に無理があるなら、そうね、……私が恭介に好意を抱いていて、恭介もそれに気付いている、……あたりの設定でどうかな」

私が考えていたのは、後々集団に合流した時に怪しまれずに恭介と会話できる手段についてだった。
例えば、理樹や鈴という恭介の探し人や、――――クリスと合流した際。
彼らよりも親しそうに私と恭介が会話をしていたら、不自然に思われないかと考えたのだ。
彼らに私たちが殺し合いを肯定していることを知られる訳にはいかない。
かといって、協力者である恭介との議論の機会を失う訳にもいかないと思う。
そうでなくとも集団の中で何度も二人で話していたら目を付けられないだろうか。

だとしたら、そういう行動をしても不自然に見えない関係だと周りに思わせる必要がある。

「あ、ああ、そういう意味か……。
 そうだよな、驚いたぜ。
 ……トルタがそれでいいって言うなら、確かに有効な手段ではあるな……」

恭介の言葉に、ちくりと胸が痛む。
クリスの顔を思い浮かべてしまった。
……馬鹿よね。クリスは姉さんと共にいるべきなのに。
それでも、私は彼のために何かをしたいと思う。

恭介の言葉の通り、彼の為ならば自分のできる手段全てを行使すべきだ。
……だから、この提案を……恭介との関係を偽装することに躊躇いはない。
元々、私は嘘つきだ。
……たとえ。
たとえ、クリスに私が恭介に好意を抱いていると思われようと。
彼のために、何でもすると決めたんだから。

無理に笑顔を作って、恭介に笑いかける。
何にせよ、彼が承諾してくれないことにはこの案は却下だ。

「やっぱり問題ある?
 あ、もしかして彼女さんがいるから良心が咎めるとか?」
「いや、別にそんな事はないんだが。
 ……話がズレそうだな。
 まあ、端的に言えば、理由もなくそんな事をしたらかえって知り合いに不審に思われないかって辺りなんだが……」

――――そういえば。
恭介は、自分の事を語ろうとしない。
彼に迷惑がかかるかもと思ったけど、そう言えば私は彼の仲間についての情報を聞いただけだ。
彼がどう思うのか、判断しようがない。
不思議と私が共感できる恭介。
……彼も同じく、大切な誰かに全て尽くそうとしているみたいだけど。
何故そうするのか、その理由が少しだけ気になった。

「この会場に来て、謎の襲撃者に襲われていた所を助けてもらった、……なんてどうかな。
 いわゆるつり橋効果っていうベタな理由だけど確かめようはないし、充分ありえる事態でもあるわ」

……まあ、答えてくれるかどうかも分からないから別に聞かない。
代わりに、不審に思われないための適当な理由を丁稚あげておくことにする。
そもそも、彼とはいずれ敵対するかもしれないのだ。
入れ込む必要なんて、きっと、ない。

「……OK、それでいこう。
 だけど本当にいいのか?
 お前の感情に反するなら別にそこまでする必要も……」

「あら、心配してくれるの?」

……ただ、私が分かることがある。
それは、本来の彼がきっといい人だってことと、

「ばっ……違う! 下手にボロを出して怪しまれる訳にはいかないと思っただけだ!」

……存外、子供っぽいということだ。

「安心して。
 ……自分を殺して、嘘をつくのには自信があるわ。
 大丈夫、演技し通してみせるわよ」

そう、だから私は少しは気が楽になれる。
……少なくとも、この人は敵ではないのだから。
今は、まだ。



「……そうか。
 分かった。じゃあ頼んだぞ、トルタ」
「うん、任せてちょうだい。
 ……あ、それで今ひとつ思いついたんだけど」

何でもない思いつき。
だけど、もしかしたら有効かもしれないので一応提案しておくことにしよう。

「今度は何だ? ……あまり突飛なのは避けてくれよ」

「……馬鹿ね、私だって今の提案は度胸が必要だったんだから、そんな突飛とか言わないでよ」

……全く。
私も、何も思わないというわけではないんだから。
何にせよそれは置いておこう。
今度の提案も、相手を騙すという点においては同じなのだ。

「今度のは、襲撃されたって理由を作るなら怪我をしたふりをしたらどうかって事。
 信憑性も増すし、いざという時の不意打ちに使えると思うわ」

騙まし討ちにはもってこいだと思うのだけど、どうだろうか?
手を尽くすに越したことはないのだし。

「……いい案だな。だけど、却下させてくれ」

……え?
どういうこと……?

「どうして? 使える手段は使うといったのは貴方じゃない」

彼ならそういう手も使いそうだと思ったんだけど。
何となく苛立ちが湧いてくる。
そんな必要はないはずなのに。

……私、冷静に。
何か問題があるなら別におかしくはないんだから。

「いいか? 恋人のふりをするのとは訳が違うぞ。
 そういう『関係』みたいな確かめようのないものとは違って、怪我ってものは実際確かめられるものだ。
 ……もし『実は怪我をしていない』なんて事実が知られたら、俺達への信頼は瓦解する。
 少なくとも、疑心を植えつけてしまうだろうな」
「あ……」

……それは、確かに。
――――慎重さに欠けていた。それを実感する。

「確かに有効ではあるんだが、リスクが高すぎる。
 情報を武器にする俺たちにとって、最も重視すべきなのが他者からの信頼だ。
 策に溺れる可能性よりも、慎重を期すスタンスを重視したい」

確かに策に溺れる結果になるかもしれない。
彼の言うとおり、あくまで私たちが細い綱の上にいる事を戒めなければいけないだろう。

「……ごめん、軽率だったかな」
「いや、そんな事はないさ。
 少なくとも、俺の話について来て、尚且つ案を出してくれるトルタは優秀なパートナーだよ。
 俺一人じゃ思いつかない作戦だっていっぱいある。
 頼りにしてるぜ」

……言われた言葉が何となく気恥ずかしい。
それを誤魔化すように、とにかく別の話題に摩り替える。

「お世辞を言っても何もでないよ。
 ……私も最後にもう一つ」

……恭介と同じく、最後の情報はもしかしたら重要かもしれないことについて。
今度は、支給されたものを見ていて気付いた一つの違和感について彼に話そう。
何か得られるものがあるかもしれない。

「……とっておきの情報か」

「ええ。……ねえ、恭介。
 この地図にある施設だけど、なんでわざわざそんなのが書かれてるんだと思う?」

――――私が気になったのは、地図に幾つも書かれた施設の存在だった。
何故これらの施設だけが地図に記載されているのか。
……それは、多分何らかの意味があるのではないかと思ったのだ。

「え? ……移動の目印に、じゃないのか?」
「それも確かにそうだと思う。
 だけど、それにしても不自然だと思うの。
 例えば廃屋なんて他にも幾つでもありそうなものなのに、
 この廃屋だけ地図に書かれているのは不自然よ」

他にもいくつか不自然な点がある。
これだけの広さの会場なのに、学校や病院が一箇所しか記載されていないのもおかしい。
と、いうことは、つまり。

「――――言われてみればそうだな。
 ……そうか、そういうことか」

「……うん。
 確実ではないけど、こういった地図上の施設に何か隠されている可能性は充分あると思う。
 それが何かは分からないけど、殺し合いを促進するようなものがあってもおかしくないわ。
 上手く使えば有利に事を進められるはずよ」

もちろん、あくまで可能性。
確実にあるというわけではないし、トラップの可能性もある。
……でも、少なくともそれらの施設に人が集まってくる可能性を考えれば――――、

「行ってみる価値はある、か。
 ……他の参加者と交流できる可能性もあるしな。
 とりあえず俺たちの行動範囲を考えると……、
 電車の沿線近くにある施設を探索してみるのがいいだろうな」
「そういうこと。
 ……他に何かある? 恭介」 

いや、と首を横に振って恭介はゆっくりと立ち上がる。
私が最後といった以上、とりあえず実際に動く前に考えられる事は考えつくしたということだろう。
異論はない、後は行動あるのみだ。
恭介が気合を入れるようにガッツポーズをする。

「じゃあ、ここからは俺たちは『殺し合いに乗っていない』人間だ。
 行くぞ、トルタ。必ずこのゲームから脱出してみせるんだ!」

わざとらしく、『脱出』を目指す人間になりきってみせる恭介。
苦笑しながらもそれに頷こうとして――――、不意に思い出す。

「あ、ちょっと待って」
「っとと、……どうした? トルタ」

……なんというポカ。
私も恭介も気付かないというのは、お互いどれだけ考えに没頭していたのかという点で笑えてくる。

「話し込んでてすっかり忘れてたけど、お互いの支給品の確認をしましょう?
 というより、こんな肝心なことを済ませていない現状の方が驚きだけど……」
「…………あ、そういえばそうだな。
 いや、そんな当たり前なことはとっくにやってたような気になっててな、はは」

頭をかく恭介に、私も何となく頬が緩むのを抑えられなかった。
この人でも抜けている所があるんだということを知って、少し安心したのかもしれない。
やっぱり、この人も人間なんだと。

「ふふ、とりあえず早めに済ませないかな?
 何か使えるものがあるならそれに越したことはないし」

……で。
お互いの支給品の確認した後、何故かこんな事態になっています。

「いぃーやっほーぅ! ゴーアヘッド! 行け行けぇ!」
「……恭介、まるで子供みたい」


さっきから私たちの上空を飛び回る物体。
恭介の手にあるのは、黒い四角い箱。

私に支給されたそれは、恭介が言うに『ラジコンヘリ』というものらしい。
……のだが、恭介はそれを見た途端目を輝かせて子供のように飛ばしまくって遊び始めた。
こんなことやっている暇はないだろうにと思うけど、あんな楽しそうな姿を見ると怒るに怒れない。

彼曰く、自分の持っていた『デジタルカメラ』と組み合わせれば、偵察にとても有効らしい。
確かに空から相手を確認できるのは便利そうだけど……。
練習とは言ってるけど、それでもやっぱり、どう見てもアレは遊んでいるとしか思えない。

軽く溜息をついて恭介の下に歩み寄ろうとしたその時、こちらを振り向くといきなり彼は言い放った。

「トルタ、やらないか」

「ぶっ」
「どうした、ラジコンだぞ?」

「え、あ……、そう、よね。うん」

い、いきなり何を言い出すかと思ったら。
……確かに状況からすればそれしかないけど、もう少し言い様があるでしょうに。
そんな文句を言おうと思ったけど、彼の表情がとても楽しそうに見えたので――――、
私は何も言えなくなってしまった。

「ああ、すげぇ面白いぞ? それに後で使うかもしれないしな」
「……そうね、偵察に使うなら慣れておいたほうが良さそうだし」

本当に子供のような笑顔。
生返事をしながらそれを見て、思う。

……彼は、楽しそうにしているのが良く似合う。
恭介からプロポという機械を渡してもらいつつ、私もいつの間にか、言っていた。
笑いながら。

「……うん、楽しそうだと思うわ、恭介」



【F-2/駅前広場/1日目/黎明】
【2人の共通方針】

0:電車の沿線を行動範囲に、線路近郊の施設を探索。
1:他の対主催のメンバーと接触。
2:そこから情報を得る。
3:自分に危害が出ないように、相手のプロファイリングを元に他の対主催の悪評、もしくは真実を伝える。
4:十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。もし理樹、クリスがいるメンバーなら合流。その後隠れながら邪魔な対主催メンバーを排除。
5:もし中々合流できない場合、もっとも安全だと思われるチームに合流。(戦力の面で、信頼関係も含め)
6:序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。終盤は対主催の中心になりなるべくマーダー排除。のち疲労した対主催から狙う。
7:最悪クリス、理樹、鈴がどちらかが死亡した場合は片方のサポートに徹する。両方死亡した場合は互いに優勝を狙う。二人になった場合一騎打ち。
8:ただし完璧に脱出ができる状況になったらそのまま対主催に変更。
9:また、主催の動向や信憑性次第でも対主催に変更。
10:列車の沿線を行動範囲にしていることを信頼できる人間に託し、理樹、鈴、クリスに伝えてもらう。
11:脱出や首輪、主催者の目的についても真剣に考察する。


棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】:SIG SAUER P226(15/15)@現実、ラジコンヘリ@現実
【所持品】:支給品一式、SIG SAUER P226の予備弾45@現実、デジタルカメラ@リトルバスターズ!
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し理樹、鈴を優勝させる。ただし慎重に慎重を期す。
0:ワルキューレの騎行を流したい気分だぜ!
1:電車の沿線を徒歩で進み、他の参加者と交流する。近郊の施設を探索する。
2:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪についてトルタと考察する。
3:トルタの過去に興味。
4:『トルタの好意に気付いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
5:できる限りトルタを見捨てない。
6:道中の地形を把握する。
【備考】:
※トルタを信頼し、共感を抱いてます。
※トルタとの間に符丁をいくつか作りました。
 『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
 (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
 『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
※トルタとはぐれた場合の合言葉は『トルタの知り合い全員の名前』です。
※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
 故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。


【トルティニタ=フィーネ@シンフォニック=レイン】
【装備】:Sturm Ruger GP100(6/6)@現実
【所持品】:支給品一式、Sturm Ruger GP100の予備弾36@現実、不明支給品×1(本人、恭介が確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し、クリスを優勝させる。ただし慎重に慎重を期す。
0:……まあ、悪くはないかな?
1:電車の沿線を徒歩で進み、他の参加者と交流する。近郊の施設を探索する。
2:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪について恭介と考察する。
3:恭介の過去に興味。
4:『恭介に好意を抱いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
5:できる限り恭介を見捨てない。
6:道中の地形を把握する。
【備考】:
※恭介を信頼し、共感してます。
※恭介との間に符丁をいくつか作りました。
 『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
 (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
 『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
※恭介とはぐれた場合の合言葉は『恭介の知り合い全員の名前』です。
※登場時期はアルルートのアルが復活した頃です。


【デジタルカメラ@リトルバスターズ!】
多機能なデジタルカメラ。SDメモリーカードはメイン+サブの二枚。
静止画を撮影できる他、動画も撮影可能。
附属のSDメモリーカードの容量の関係で、連続撮影可能時間は1回当たりおよそ30分。
デジタルカメラだけでは動画分割機能はないため、一度動画を撮影した後は
その動画データを全て消去しないと新たな撮影は出来ない。
PCを利用すれば動画を別媒体に保存可能。
また、本体のメモリに何らかの画像データがいくつか保存されている。

【ラジコンヘリ@現実】
プロポとラジコンヘリのセット。
初心者にも簡単に操縦できるマニュアルつき。
ちなみに機種名はUH-1。
かの地獄の黙示録に登場した機体である。


038:降り止まない雨などここにはないから(前編) 投下順 039:死を超えた鬼と少女
時系列順
棗恭介 057:First Battle(前編)
トルティニタ=フィーネ

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