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リセエンヌ(前編)

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リセエンヌ(前編) ◆UcWYhusQhw


「ユイコ? 傷は大丈夫?」
「ああ。元々大した事ない……それをクリス君が大騒ぎにしただけなのだが?」
「うっ……そう言われると言い返せないけど」
「まあ、冗談だ」
「冗談!?」
「ああ、傷が軽いのは本当だからな」
「もう……驚かせないでよ」

全くさっきからこんな調子だ。
ユイコは僕を背中越しからイジってばっか。
どうやら僕が思ってた以上に傷は軽いらしい。
病院にいく必要もないみたいだけどやっぱり連れて行かなくちゃならない。
僕のミスで怪我をさせたのには代わりがないのだから。

雨は変わらず強く降っていて僕とユイコの体を濡らす。
降りしきる雨はとても冷たいのに。
背中に伝わるユイコの体は温かくて。
そして心がドキドキしていて。

何故かそれがとても不思議で温かい。
とても不思議な感覚だった。

「……ユイコ。温かいね」
「……なあ!? な、何いってるんだ君は!?」

僕はつい思ったことを口にする。
何ってそのままだけど。
……あれ?
実はかなり恥ずかしい事言ったんじゃないか? 僕は。
途端に僕の顔が赤くなっていく。
どうにもさっきからこういうことが多すぎる気がする。
ペースを狂わされているのだろうか?

「ええい! さっさと行かないか! ファッキンボーイ!」
「いや、何で!?」

こういう冗談のような掛け合いもやっと慣れてきた。
それと同時に楽しく思えてくる。
今までにない経験をしたようで。

いや、していないのだ。
僕はこういう経験を。
ピオーヴァに来て約三年間。
楽しく会話するという事を。
話すのはアーシノ、トルタだけで。
僕は積極的に話しに行かないし、僕目的で話に来る人もいない。
会話する事を楽しいとは思わなかったのだ。

だからこそ今ユイコとこう話せてることが新鮮であるのだ。

それはまた随分な皮肉だ。
こんな凄惨の殺し合いが行なわれる場所で。
僕は初めてそれを知って。

まったく神様はいったい僕になにをやらせたいんだろう。

……でも、まあ。

「こういうのも……いいか」
「何がだ? クリス君?」
「別に……ただユイコは面白いなと思っただけだよ」
「な!? そういうクリス君も面白いぞ」
「え、何処が?」
「さあ、何処だろうな?……ふふ」

なんだかよく分からない。
でもそのよく分からないことが楽しい。
矛盾してるけどそれが何処かとても心地がいいのだ。

それがコミニケーションというものだろうか?
分からない、経験がないから。
でもそれでもいいかとも思う。

なら僕は僕なりにしていけばいいのだ。
ユイコもユイコなりにやってると思うし。


……さて急がなくちゃ。
ユイコの傷がどんなに浅くても心配だから。
僕が犯したミスは僕が償わなくちゃ。
ユイコを無理させちゃいけないし。

僕は歩くペースを上げようとした。

「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」

その時バットを振り般若のような顔して女が襲いかかってきた。
僕はとっさに身を翻しそれを避ける。
ユイコはその拍子に自分から僕の背中から離れた。

「あんた! まだそんな事してんのよ!」

僕はこの声を聞いた事がある。
こんなに元気はなかったけど。
藤色の長髪が翻る。
そうそれは

「キョウ!?」

最初に出会った藤林杏だった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ノウ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!! 何故なのであるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「じゃかましいいいいわああああああああああ!!! もう少し静かにしろおおおおおおお」

ああ、五月蝿い!
さっきからずっとこんな感じだ。
ウエストがなにやら鍵盤のようなものいじってさっきから唸ってばっかである。
どうやら弾けず苦悩してるらしいのだ。
苦悩しているのはわかるんだけどもうちょと声量を下げて欲しい。
これでは誰かに見つかってしまう。
とりあえず黙らす為一発ぶん殴っておく。
これでたまにまともの事を言うのだからたちが悪い。
まったくもう。

「うわあああい!? 何をするのであるかあああああ!? 凡骨リボォォォォン! 
 ハッ!? さては貴様! 巷で大流行のツンデレであるな!
『もう、その声をずっと聞いていたいんだけど、少し静かにしてよね! 馬鹿』
 つまりこういうことであるか! なら早くそういのである! 
 まったく凡骨リボンはツンデレなんだから! もう!」
「アホか! ツンデレなんて最近廃れてきたわあああ!」

あーもう構うだけで疲れてくる。
やっぱりついていくの止めようかしら。

でも止めるわけにはいけない。
朋也にあって謝ってウエストに謝ませるそのときまでは。

私のせいで朋也はああなってしまった。
でも私は謝りたい。
許してくれるなんて思ってない。
でも1パーセントでも可能性が残っているなら私は諦めるわけには行かないのだ。
この事を教えてくれたのは目の前にいる変態。
もといウエストなのだから。

ならやらなくちゃ私が。
そのために私自身を奮い起こす。

会えるかな?
いや、会わなくちゃ。
絶対会うんだ。

そう思った瞬間木々の間から人影が見えた。
もしかして朋也かな?

でもそれは朋也ではなく忌むべき存在。
深い深い緑色の目をした外人さん。

「クリス……ヴェルティン」

私が最初に出会った人。
そして私が怯える原因を作った人。
雨が降ってるなんかいって。
あのスタンガンで私を……


そう思うと再び恐怖が体を襲ってくる。
……大丈夫。
さっき励まされたから落ち着いて。
恐怖に押し潰されてはだめ。
私は心を落ち着かせクリスの方をよく見る。

……紅白の綺麗な服を纏ってる。
……なぜ巫女服?
やっぱり変態だ。
どうして女物の服を着ている?
分からないわ、変態だから?

そしてその背中には……女の人!?
全身をクリスの背中に預けているよな。
なんでクリスの背中に?

……まさか。
私は一つの結論に到った。
それはクリスに襲われたという事。
あのスタンガンで。

きっと体の自由を奪って。
きっと最悪な事をやるんだ。

……最悪、あの男! 

途端に怒りが爆発しそうになる。
そうだ。
あの男が私に近寄らなければ朋也も撃つ事なかった。
あの男が。

行き場のない怒りが全身を覆う。
あの女の人を助けなきゃ。
変態のすきにさせちゃいけない。

助けよう、私が。
そして私はクリスに向けて銃を構える。

……無理だ。
背中にいる女の人に当たるかもしれない。
それは避けなきゃ。
助けようとしてその人撃っちゃったら意味がないのだ。
もう誤射だけは嫌だ。

じゃあどうしたら?
そこで目に入ったのはウェスト。
手に持っているバット。

それだ!

「ウェストちょっと貸しなさい!」
「ちょ!? 凡骨リボン何をする!? それは我輩のだああああ!?」
「いいから! ウェストそこで待ってなさい!」

私はウェストのバットを分捕りクリスのほうに向かって走り出す。
絶対やらせるもんか!

幸いクリスは気づいてない。
今がチャンス!

このくたばれ変態!

「この! 変態がああああああああああああああああああああ!!!!!」
「!?」

私は思いっきりバットを振る。
だけどそれはクリスが感良く避けた。
この!
クリスはまだ驚いてるままだ。
女の人は離れたみたいだけど。

「あんた! まだそんな事してんのよ!」

クリスに向かって叫ぶ。
私だけじゃなくて違う人まで。
クリスはきょとんとしてそして思いついたように

「キョウ!?」

と叫ぶ。
やっと思い出したか。
そんな姿にさらに怒りが増す。

「そんな事って別に大した事じゃ……」

大した事じゃないって!?
私をスタンガンでやろうとしたことが?
ふざんけじゃないわよ!

「この! ふざけるな! 殺し合いに乗った変態が!」

私は怒りに任せてバットを振る。
縦、横とバットを凪ぐ。
クリスはそれをすれすれで避け続ける。

「あんたのせいでええ!」
「わあ!?」

私の渾身の横ぶり。
クリスそれを避けたが尻餅をついてしまった。
チャンス!
私は銃を取り出し彼に向ける。
最後にクリスに一つだけ聞く。

「あんた……なんで雨が降ってるなんて嘘ついたのよ」
「……降ってるよ? 今も土砂降りに。そっちこそなんで嘘ついてるの?」

ああ、この男はなんて嘘を。
今は空があけてきているのに。
分からない、分からない。
でももういい。
嘘つきめ。

私は銃のトリガーをひこうとする。
これで終わり。
でも

「そこまでだ。引いたら貴様ごと撃ち殺す」

背後から底冷えする声。
頭に突きつけられた銃。

突きつたのは襲われたはずの少女。
どうして?

頭の中で疑問符が広がる。
なんで?
私は彼女を助けようとしてるはずなのに。
どうして?

「どうして……?」
「何、言ってるんだ。君は? いいか私は非常に機嫌が悪い。返答次第では容赦しない」

え、え?
なんで?
どうして……。
とりあえず弁明しなきゃ。

「機嫌が悪い?」
「そうだ。非常に機嫌が悪い。折角心地のいい音楽に身を任せてたというのに殺し合いに乗った人間に邪魔された。
 そして今まで折角クリス君を弄って楽しんでたのにまたも邪魔された」
「弄ってたの!?」
「クリス君、気付かなかったのか?……それにクリス君は私の為に病院まで連れて行こうとしたのだ。大した傷でもないのに。
 クリス君は気にして……そんな馬鹿なお人よしを殺し合いに乗った変態だと……ふざけるな!……変人なのはわかっているが」
「わかってる!?」
「まあ、冗談だ。クリス君……で、貴様は何でクリス君を襲った?」

何、この人。
顔が見えないのに凄く恐怖を感じる。
間違いなく全身から怒ってる、さっきの私と一緒だ。
でも怒ってる対象が私。
何でこんな事になってるんだろう?
でも言わなきゃ。今私は死ぬ訳にはいかない。

「だってクリスが貴方を襲っている様に見えたから。スタンガンでやられたかと」
「まさか? それにクリス君はスタンガンなんて持ってないぞ。なあ?」
「うん、それは聞いた事ないし」

嘘。
持ってたよ、クリスは。
今は持ってないかもしれないけど確実に持ってたはずだもん。
持ってったんだ!

「持っていた! クリスは私を襲おうとしていた!」
「……いい加減にしろ。確かに私は殺し合い始まって直にクリス君にあったわけじゃない……君がクリス君にあってたことは信じよう……でもな。
 私はそんな最悪な人間の心を見抜けないほど馬鹿じゃない……クリス君はそんな人間じゃないことはわかってる……だから私はクリス君を信じる」
「ユイコ……」
「ま、という訳だ。勘違いかもしれない。君の……認めるのなら別に殺しやしないさ」

なによ……それ。
私だけ悪役?
そんな訳ないよ。
私は覚えてる。
あの恐怖を。
あの怯えを。
だから

「勘違いじゃない……スタンガンは持っていた!」
「……強情だな。君も」

その女―ユイコ―はため息をつき銃をさらに頭に強く押し込む。
……ああ。
もう無理なのかなあ。
信じてもらえない。
私は間違った事なんかしてないと思ったのに。

「……信じる人間はいないか……」
「なにしょぼくれおるのである! 凡骨リボーーーーーーン! 貴様らしくないのである!」

え……?
ウェスト?
どうして?

「よくも我輩を置いていって! 寂しくて死にそうだったのである! 武器も持っていって! 
 我輩は可愛い子猫であるぞ? もっと扱いをよくするのだ! 仲間なのであるからな!」
「何者だ。貴様は?」
「よくぞ、聞いてくれた! 我輩の名は次元一の科学者ドクタァーーーーーーーーーウェーーーーーーーーーストーーーーーー!」
「うむ……それでこの少女とは仲間なのかな」
「華麗にスルーされたのであ~~~~~~る!? 貴様中々やりおるである!
 まあいいのである。 兎も角その女! か~~~~なりの凡骨だが言ってることは正しいのである! 我輩が言ってるので正しいである!
 間違いないである!」

ウェスト……
いた信じてくれる人が。
変態どうしようもない人間だけど信じてくれる仲間が。
ありがとう。
私は一人じゃなかった。

「ふむ……ではどうするかな……クリス君?」

ユイコが迷ってる時クリスがこっちに向かってきた。
話の元凶が。
一番最初に私に近づいて時のように。
柔らかい笑みで。
深い深い緑色の目を持って。
そして私の顔を覗き込む。

「……えっと、キョウ……僕が知らないうちに君を不安にさせたようでごめん……でも君を襲おうしたわけじゃないんだ……それは確かだよ」

そしてクリスが必死に頭を下げた。

え……。
なんか凄い意外だった。
クリスがこんな事をするなんて私は思っていなかったのだ。
これは演技?
……違う。
こんなに必死には普通にならない。

……もしかしてクリスは本当に襲うつもりじゃなかったのかな。
あの時の事を冷静に考えよう。
私は怯えてて。
それをクリスが励まして。
雨が降ってるなんか嘘ついて。
それで私はスタンガンを見つけて襲われると思って逃げ出した。

……あれ?
私が駄目なんじゃないの。
クリスに否は……ないと思う。

うわ……私が……

「ねえ……仲直りしてくれるかな? キョウ?」

彼が差し伸べた手。
それはとても温かそうで。
でも何処か震えてて。
……彼も緊張してるんだ。
許してもらえるかと。

私は……
私はどうする?
その手を握るの?

彼なりの誠意に対してどうするの?

勿論決まってる。
私は手に持った銃を……

落とした。
そして彼の手を握る。

「クリス……こちらこそ御免なさい。私が勘違いしてたの。御免なさい」
「うん……こっちもそうだ、なら仲直りで」
「ええ……」

仲直りの握手。
私も笑う。
クリスも笑う。

これでいい。
もう疑う必要性なんかない。

「ふむ……ならいい。元々殺したくなどなかったしな」

ユイコっていった少女が私の頭から銃を下げる。
そしてこっちのほうに着て笑う。

あの底冷えのした声とは予想外の綺麗な笑顔だった。

うん、これでいいんだ。
変に殺しあう事もなく皆で仲良く出来ればそれいいから。
でもひとつだけ気になった事がある。

「ねえ……? クリス。何で雨が降ってるっていうの?」
「……いや、だから降ってるでしょ? キョウこそなんで?」

ああ……また。
これで私は怯えたというのに。
また同じ事を言ってる。
何故?
そこまで嘘をつく必要があるって言うの?

「あ……。キョウっていったな。ウェスト氏も来て欲しい。クリス君はそこで待って欲しい」
「あ、ちょ、ちょっと待って」

ユイコが私をちょっと離れたところに連れて行こうとする。
どうやらクリスに聞かれたくないようだ。
何故だろう?

疑問に思うと同時にきっとこの謎が明かされるんだろうと思った。

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