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破天荒筋肉!(後編)

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破天荒筋肉!(後編)



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時が未来へ進むと誰が決めた?
たしか過去にそう歌った歌があった。
時間こそは過去から現在へ、現在から未来へ進む不変の真理にして不滅の流れだ。
誰にも逆らうことのできない究極の真実。

しかし、時は止まるのだ。
ある一定の空間で一定の条件を満たせば、時は止まる。
現に今、四人を包んでいる空間はまさに時を止めていた。
真人も、トーニャも、杏も、ウエストも皆等しく。
そしてある程度の時間が経って、ようやく時は動き出した。
一番最初に動いたのは、やはりというべきかトーニャだった。
満面の笑顔が心なしか怖い。

「ツッコんでいいですか? ツッコんでいいですよね? むしろツッコまれるためにあんなこと言ったんですよね?
 筋肉勝負は辞退しましたよね。 なのに、いつまで私に筋肉の称号を押し付けるんですか? 
 『筋肉の妖精』ってかわいく言ったつもりなんですか? 全然嬉しくありませんよ。 むしろ殺意が漲ってきましたが?
 というか、私だけ名前のノリが違いますよね? なんですかマッスルトーニャって? しかも絶対☆をつけたでしょう?
 マッスルトーニャじゃなくてマッスル☆トーニャでしたよね? メディアミックス展開目指して絶賛宣伝中なんですか?
 って! いうか! 名乗れと言われたからには名乗らねば筋肉がすたるって、アンタはいつの時代の戦国武将ですか!?
 私がいいって言うまで隠れてろって言ったでしょうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「うがああああああああああああああああああ!!!」
「てけり・り!」

最後は笑顔から鬼の表情に変わっていた。
トーニャがキキーモラを操作して真人の体を縛って、限界まで上空に上げる。
人工的にとりつけられた人妖能力『キキーモラ』はゴールポストを持ち上げ、さらにそれを軽々と投げつけることも可能なほどの力を発揮する。
男一人の体重を持ち上げることなど、トーニャには朝飯前だ。 

「取り消しますか? 取り消しますよね? むしろ取り消さないと不幸な事故が起こりそうですよ?」
「わ、分かった。 取り消す。 取り消すから!」

思わず、空中遊泳を楽しむことになった真人が必死の形相で言う。
その言葉を確認して、トーニャはゆっくりと真人を地上に降ろした。
無事に地に足が着いた事を確認した真人は荒く息をついた後、新たな名前をトーニャに提案する。
ちなみに、今の二人にとって、杏とドクターウエストの存在など些細な問題だった。

「じゃ、じゃあミラクル☆トーニャとかマジカル☆トーニャとかはどうだ?」
「恥ずかしい二つ名もミラクルもマジカルもいりません! っていうか、マジカル☆は一体どこから出てきた!? 魔法なんて使えんわ!」
「だってよ、お前の名前、長すぎて分かりにくいじゃねぇか。 トーニャ・安藤さんちにきな、だったか? だから短く分かりやすくだな……」
「トーニャ・アントーノヴナ・二キーチナです! なんで本名で安藤さんちに来ないか?って誘わなければいけないんですか!?
 それと、分かりやすくしなくていい! トーニャだけで十分です!」

果てしなく続くかと思われるやり取り。
今、彼らは間違いなく、人生で一番無駄な時間を過ごしていた。
そしてさらに事態は混迷を極める。
この世で一番、無視される事を嫌うドクターウエストが、絶賛放置プレイな現状に異論を唱えないはずが無い。

「わ、我輩を無視して話を進めるでな~~~~~~~~い!!!」

ギターをかき鳴らして二人の注意を向けようとする。
が、壊れて弦が切れたギターは音を鳴らすことは無い。
ならば、と取り出したフォルテールも、やはり魔力を持たないウエストの手では旋律を奏でることもなかった。
真人とトーニャのやり取りが一向に終わらないのも、ウエストのプライドを傷つけた。
髪を掻き毟り、涙と鼻水を撒き散らしながら叫ぶウエストの様はやはりキチ○イである。
あっちでは筋肉談義。 こっちでは泣き叫ぶキチガ○。
救世主が現れるのはいつのことだろうか。
そして、そんな事態を収拾したのは、意外にも杏とダンセイニだった。

「いい加減にせんかアンタ達ーーーーーーーーーーーーー!」
「てけり・り!」

ダンセイニが筋肉チョッキから顔を出して真人とトーニャの間に割って入る。
そして、他人に聞かれる事を承知で、杏のコルト M1917の弾丸が火を噴いて夜明けの空に消えていった。



◇ ◇ ◇



「という訳で、残念ながら私達はあなた方の知り合いとは誰一人会っていませんね」
「こっちも会ってないわね」

頭脳労働が苦手な真人と、口を開けば余計なことまでしゃべるウエストを放っておいて、トーニャと杏をメインにして、情報交換は始まった。
まずはお互いの目的の確認。 念のため、殺し合いを肯定するかしないかを確かめ、知り合いの情報、敵意ある人物、探している人物を教えあい、武器の確認もする。
次に、歩いたことのある場所、訪れた施設があるかなどの情報を交換し、少しでも他の参加者との輪を広げるべく意見を交わす。
細かい部分への言及も決して忘れない。 重要な情報を知り、情報を制することこそ、生き延びるための第一歩なのである。
現状で確認できるだけの情報を交換し終わって、さぁこれからどうしようか、と女二人が考え始めたとき、ウエストが不意に口を開いた。

「マッスル☆トーニャよ、さっきの紐はなんであるか?」
「その名前で呼ばないで下さい」
「いいから答えるのだ。 今後の行動に影響を与える重要なことなのである」
「……ふぅ、今更隠しても仕方ありませんね。 私は人妖です。 そして、さっきの紐らしきものは私の能力です」

トーニャは息をついて、観念するように切り出した。
人妖であることを一般人に知られれば、途端に迫害の標的にされる。
人を軽々と持ち上げたあの紐――キキーモラを手品だと隠すのは無理がある。
迫害したいのは勝手だが、今は非常事態だ。
これで、人妖なんかと一緒に行動できるか! と怒り出すような底の浅い人間なら、トーニャも心置きなくこの集団から離脱するつもりであった。
しかし、トーニャの思惑とは別に、人妖と聞いて、三人が返したのはまったく予想外の対応だった。
つまり、「人妖ってなに(なんだ)(なんであるか)?」というもの。
トーニャも驚きを隠せない。 人妖のことを知らない人間など、現代の日本にいるとは思えない。
ウエストはともかく、杏も真人も日本人と答えた。
ならば、人妖――後天的全身性特殊遺伝多種変性症のことは一般常識として知ってないとおかしいのだ。
ところが、杏も真人も人妖という言葉はおろか、神沢市のことさえ知らないという。
人妖能力者の監獄都市、神沢市まで知らないとは一体どういうことか?
トーニャがさらに頭を悩ませていると、ドクターウエストがここぞとばかりに口を開いた。

「簡単なことだ、つまり我輩たちは異世界から連れてこられたのである」

ドクターウエストが、今まで自分の中で暖めていた自論を披露した。

「いくらなんでもそれは突飛すぎるのでは?」
「そんなわけ無いでしょう。 素質はあると思っていたけど、こうも馬鹿だとはね」
「異世界から連れてこられてなにか問題でもあるのか?」

それぞれの口調から放たれる否定の言葉の数々。
しかし、ウエストはめげずに自論を支える根拠を話し始めた。

「では、貴様らはアーカムシティを知っているか?」

三人とも首を振って否定。
では魔術のことは? これも否定。
大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代を迎えているアーカムシティ。
世界の中心はどこかと聞かれると、ウエストの世界の民衆は、子供から大人まで口をそろえてアーカムシティだと言うだろう。
片田舎に過ぎなかったアーカムシティを一代で大都市にまで育て上げた傑物、覇道鋼造。
強引勝つ無謀とも言える方策で数々の大成功を収めた人物。
この人物さえ知らぬのは、もはや非常識を通り越して無知の領域だった。
杏がアーカムシティを知らぬと言ったときから確証を深め、トーニャの人妖という言葉で、ウエストは自論の正しさを確信。
こうして、一気にその自論を説明したのだ。

「我輩は人妖など聞いた事の無いのである。 マッスル☆トーニャよ、人妖とは個人レベルでは隠すことであっても、世間全体では知られているのであろう?」
「ええ、人妖という言葉を知らないのは、まだ生まれたての赤ん坊か発展途上国の田舎の中の田舎くらいだと思います。 それからマッスルは止めろって言ってます」

トーニャの言葉にウエストは満足げに頷く。

「であろう。人妖などという言葉が世界の最先端を越えて、凡才どもを三周遅れにまでしている、大天才の我輩の耳に入ってこない方がおかしいのである!
 そんな存在がいたとすれば、我輩、とぉぉぉぉぉぉぉぉぉっくの昔に研究対象にしていたである。
 マッスル☆トーニャよ、時給700円で我輩のモルモットにならぬか? 今なら、ブラックロッジの臭い飯が三食もれなく付いてくるのである」
「丁重にお断りします。 それと、いい加減にマッスルやめないと、その大天才様の脳みそが何色か確かめることになりますが?」
「トーニャ、これはこういう人物だから、放っておいて」

よほどマッスル☆トーニャという呼び方が印象的だったのだろうか。
ウエストは先ほどからトーニャのことはマッスル☆トーニャとしか呼ばない。
当然、その呼び方に大いに不満のあるトーニャとしては、断固呼び方を変えてもらいたいのだが、事態が事態なのであまり強くも言えない。
今回も、杏に抑えてと窘められ、不承不承引き下がった。

「さらにさらにさら~に! このダンセイニと呼んでいる生き物、ショゴスのことであろう? 貴様らの世界にこんな不思議動物は生息しているか?」
「てけり・り♪」

ダンセイニはその通りだと言わんばかりに、ゼリーのような触手を伸ばして振る。
どことなく愛らしさがある動きだ。 
筋肉チョッキがなんとなく蛸壺のようにも見える。
ダンセイニはさらに、杏の方へ触手を伸ばしていく。

「わ、私になにか用?」
「たぶん、握手しようって言ってるんだ」
「握手? 軟体動物なのに随分と知能高いのね」

真人の横から解説を聞いて杏も感心する。
握手というなんとも人間じみたコミュニケーションに違和感を感じながらも、杏もおずおずと手を伸ばす。
最初に触った感想はともかく柔らかいの一言に尽きた。
しかもダンセイニは杏に握られた触手を上下に振り、本格的に握手する。
握手という人間のコミュニケーションをここまで心得ているあたり、杏が想像しているよりもずっと知能が高いようだ。
しばらく両手に振られた手をようやく離すと、杏の手にはダンセイニの体の一部であろうか、粘液がベットリついていた。

「うわぁ、これ後で洗わないと」
「てけり・り♪」
「へ? ってちょっと待って、待ってってば!」

どうやらダンセイニは杏のことを大層気に入ったようで、杏から離れようとしない。
さらに杏に向かって触手を伸ばし、杏に触れようとしている。
おそらく、ダンセイニなりのコミュニケーションのつもりだろう。

「てけり・り♪」
「やけに気に入られてますね」
「トーニャ、笑ってみてないで助けなさいよ!」
「おや、私にはじゃれ付く子供を撥ね付ける趣味はありませんよ」
「子供じゃないでしょ!」
「似たようなものですよ。 それではお楽しみください」
「ま、真人は!?」
「フンッフンッフンッ! 昨日できなかった回数の分も腹筋をこなさないとな。 フッフッフッ!」

真人は絶賛筋トレ中であった。
難しい話についていけないと感じたので、トーニャに許しをもらって筋トレ中なのだ。

「何で森のど真ん中で腹筋やってんのよ! ああもう、頼りたくないけど残りはウエストしかいない! ウエスト、この子を剥がしてよ!」
「つまり、我輩たちは異世界から連れてこられたのである!」
「なるほど、どうやら主催者は私達の想像もつかないような技術を持っているようですね」
「なんでトーニャと普通に元の会話に戻ってんのよ~!」
「てけり・り♪」
「では、あの二人の奥にはやはり、かなりの人物がいる可能性があると?」
「そうである。 このような武器を支給するあたり、反乱されても全く問題が無いと考えているのであろう」

真人と杏を放っておいて、トーニャとウエストの考察はさらに続く。
トーニャの持っているゲイボルクを手にとって見たウエストは、おもむろに語り始めた。
自身がアーカムシティで秘密結社ブラックロッジに所属し、破壊の限りを続けていたことを。

宿敵、大十字九郎との戦いの日々。 
ブラックロッジを束ねる大導師、マスターテリオンの恐ろしさも余すところなく語った。
ウエストが悪人であることにトーニャは驚いたものの、ここでウエストを糾弾するのは愚策と考えてそのまま流す。
聞いた限り、ウエストは自分なりの美学を持って破壊活動を行っているらしい。
そして、今回の殺し合いはそんなウエストの美学に真っ向から反するものらしい。
ならば、下手に刺激して機嫌を損ねるより、あえてウエストの自分の世界での悪行に目をつぶり、手を貸してもらうべきだ。

「私達は途方も無い存在に喧嘩を挑もうとしているのかもしれませんね」
「なにを言っておるかマッスル☆トーニャ。 危険でない戦いに意味など無いように、弱っちいボスになぞ我輩は興味ないのである。 
 ここはやりがいを感じるべきであろう! 強大な敵を、友情、努力、勝利で打ち勝ち、その先に待つのは大・団・円! 
 空から光が降り注ぎ、天使が降り立って我輩を安息の地へ誘うのである! ああ、我輩疲れたよエルザ。 
 『アーカムシティのロボ』完結! って我輩死んでいるのであるか! やはりヒーローは最後に死んで悲劇を演出しないといけないのであるか!?
 ノンノンノン、我輩はそんなお約束に反逆する! 死の運命を覆し、生の未来を勝ち取り、我輩は生きるのである! ドクターウエスト先生の次回作にご期待を!」

ウエストのノンストップクレイジーマシンガントークは無視して、必要な情報だけ取り出して吟味する。
『チェルノボグ』がかわいらしく見えるほど、今トーニャたちが挑もうとしている敵は強大らしい。
しかも、言峰と神崎のバックにはウエスト曰く、マスターテリオンクラスの人物か、あるいはマスターテリオン本人、
トーニャの知識で言えば、八咫烏クラスかそれ以上の存在が控えているらしい。
神話上の武器を軽々しく支給し、あまつさえ異能力者や神話の武器に制限まで課し、異世界への干渉能力すら持つ人物。
考えれば考えるほど絶望的な反抗だ。
当初のとおり、殺し合いに乗って優勝を目指した方がまだ効率がいいのかもしれない。
我知らず、トーニャはその言葉を口に出していた。

「ひょっとしたら、反抗するより優勝を目指した方が、生存確率は高いのかもしれませんね」
「? 優勝してどうするのだ?」
「? どうするって、元の世界に帰らせてもらえばいいのでは?」
「何を勘違いしておるのだ? 残り一人になるまでやるとは言っていたが、その最後の一人を無事に帰すとは一言も言ってなかったであるが?」
「…………………あ」
「…………………な!」
「…………………ちょっと待って!」

考察に参加してなかった二人もその会話を聞いて、一斉にウエストの元へ駆けつける。
真人は腹筋を中止して、杏はダンセイニとじゃれるのを中止した。
三人の顔はいずれもウエストに説明を求めている。
ウエストもその要求に答えて、説明を始めた。

「我輩は全て覚えているのである! あの暗い空間で起こったすべての出来事を!」

ウエストは意識を取り戻してから、あの空間での出来事をすべて記憶している。
時には身振り手振りを加えながら、言峰や神崎の言葉、態度、その他の参加者の反応まで鮮明に再現した。
目が覚めたと思ったら、暗い空間にいて、次の瞬間には言峰と神埼が現れてゲームとやらの説明。
状況が理解できないうちに出た初めての死者、そして異能を持つ双子のあっさりすぎる死。
さらに、首輪の機能を説明するために選ばれた見せしめの女の子と、それを庇って死んでいった知り合いらしき女性との死。
次の瞬間にはもう参加者はゲームの会場にいた。
訳の分からない展開の連続、日常から非日常へと足を踏み入れたことに対する違和感。
それらに脳が適応する前にもう島へと送られていた。

参加者は精々、一人になるまで殺しあうということや、禁止エリアなどの重要な情報を覚えるので精一杯だっただろう。
しかし、ドクターウエストだけは違った。 彼は間違いなく天才の一人だった。
状況を理解するので精一杯だった有象無象の参加者の中で、あの時、状況を素早く理解し、状況に対処していた男がドクターウエストその人だ。
主催者の言葉を一字一句違わずに覚え、いつでも記憶のタンスから引き出せるようにしておいたのである。
魔術を使えないながらも、魔術結社ブラックロッジに勧誘されたのは決して伊達ではない。

「じゃ、じゃあ残り一人になったら、その一人はどうなるのよ?」
「おそらく、帰れる可能性のほうが低いであろうな」
「だから、どうなるのかって聞いてるのよ?」
「生贄。 現状、考えうる限りではこれが最も可能性が高い」

不安げな様子で聞き返す杏に、ウエストは考えていた答えを示した。
古今東西、呪術や宗教的な儀式において定番の手法だ。
だが、生贄という単語に納得がいかなかったのか、杏は聞き返す。

「生贄? 生贄なら適当に一人選べばいいじゃないの? なんでわざわざ殺し合いをさせるのよ」
「蟲毒を知っているか、凡骨リボン?」
「何よそれ? 知らない」

自らは魔術を行使できないが、自分の作ったものに魔術を使わせる事は可能なドクターウエストは、東洋の魔術、呪術体系も大体は理解している。
ウエストが蟲毒の説明を軽く杏にしてやると、杏はさらに絶望的な顔をした。
もしも、ウエストの推測が正しいのなら、今の杏たちは蟲以下の価値しか求められてないのだ。

「でも、それならどうして私のような一般人が選ばれたのよ。 強い人がいい生贄になるなら、私なんか到底及びじゃないと思うんだけど」
「そこから先は私が説明しましょう」

杏の新たな疑問に今度はトーニャが語り手となって答える。
元々、この説明は杏が聞いてこなくてもするつもりだったので、一石二鳥とも言える。

「生贄に関しては、肉体的な強さはもちろんですが、精神的な強さの方が重要ではないのでしょうか? 違いますか、ウエスト?」
「いや、間違いない」
「あぁん! 俺の筋肉は役立たずと言いたいのか?」
「ちょっと黙っててくださいグッピー。 肉体的な強さのみで生贄が決定されるなら、強い人だけを呼び、殺し合わせればいいです」
「イエーーース! 極端な話、天下一武○会でも開けばいいのである!」

トーニャの言いたいことはこうだ。
肉体的に強い人と、精神的に強い人は必ずしもイコールでは結ばれない。
だから、今回は生贄選抜のために、一般人も異能力者も等しく参加させられたのだろう。
しかし、そのまま戦わせても、異能力者が一般人を蹂躙する光景しか思い浮かばない。
そこで、主催者は異能力者に制限を課した。
つまり、主催者は一般人にこう言っているのだ。
死力を尽くし、支給品を有効活用し、役に立つものはすべて利用して、仲間の死を乗り越えて、異能力者、超人を打ち破れ、と。
逆に異能力者、超人にはこう言っているのだ。
幾多の屍を乗り越えて、一般人の小ざかしい策を純粋な力で押しつぶし、我が元まで駆け上がって来い、と。
そして、最後まで残った精神的な強さを持つ一般人、または異能力者や超人を生贄に、何かしらの儀式をたくらんでいるのだ。
その儀式とやらの正体は今はまだ一切不明。
そもそも、この殺し合いが蟲毒という仮説が崩れれば、この推測もまるで意味がなくなってしまう。

「聞けば聞くほどやべぇな。 早いところ鈴と理樹を探しにいこうぜ」
「ええ、それでは私達はこれで失礼します。 貴方たちの御武運を祈ります」
「てけり・り」

ウエストと杏と同盟を組んだ事を確認して、真人とトーニャとダンセイニは立ち上がる。
真人たちは主に仲間集めを担当。 ウエストたちは主に首輪の解除を目指して行動するつもりだ。
強大な主催者に立ち向かうには、一人でも多くの戦力が必要。
そして、この参加者を抑える最大の枷である首輪さえ外せれば、必然と主催への反抗作戦に参加してくれる人も増えるはずだ。
どちらも、同じくらい重要な任務である。
夜明けは近い。 今日上がってくる太陽が人生最後に見る太陽となるかは分からない。
ただ一つ言えることは、全身全霊を掛けて、絶望に立ち向かえば、明日も太陽を見られる可能性が高くなるということである。

「トーニャ、これあげる」

背中を見せて歩き出したトーニャに、杏がなにかを差し出す。
それは中にドロリとした真紅の液体が入ったアンプルが1本。
アンプルには智天使薬――ケルプ、と書いてある。
説明書もついてるようでトーニャは杏からもらって読んでみた。

『智天使薬は第参種人妖追跡機関、ドミニオンの戦闘隊員が使用する薬。
 神沢市などで出回っている粗悪品と違い、はるかに濃度が高い。
 人妖がこのアンプルを使用すると、一時的に人妖能力を高めることができる。
 しかし、その代償として、使用して一定時間が経つと、激しい疲労に見舞われる』

「人妖でないと効果ないみたいだし、あげるわ」
「ケルプドラッグとは違うんですか……まぁ、あのドミニオンが使ってるみたいだから信頼はできると思いましょう。 ありがたくいただきます」
「ちゃんと生きてまた会おうね」
「ええ、生きてまた会いましょう」
「てけり・り……」
「うん、ダンセイニも会おうね」

手渡されたアンプルをデイパックにいれ、今度こそトーニャと真人は歩く始める。
杏と別れることが寂しいのか、ダンセイニはどこか寂しそうだった。
ここから四人は二人ずつで行動。 待ち合わせはどこかなど決めておきはしない。
禁止エリアに指定された場合や、集合場所に留まることにこだわって、命を落とすことになれば冗談ではすまないからだ。
だから、今はこれで十分。 いつ再会するとも分からない同盟。 そんな不確かな約束のみで作られた繋がり。
けれども、きっと、4人はいつかまた出会う。 再会したときの人数は果たして今よりも多いのか少ないのか、それとも現状維持なのか、今は誰にも分からない。




【D-3 北東部 森 早朝】

井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】】
【所持品:なし】
【状態:走り回ったことによる疲労小、胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲】
【思考・行動】
基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
0:ボス狸と行動。筋肉担当。
1:理樹や鈴らリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。
2:主催への反抗のために仲間を集める。 どこに行くかはまだ不明
3:ティトゥス岡崎朋也、クリス、ドライを警戒
4:また筋肉の世話になっちまったぜ

【備考】
※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。
※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。
※杏、ドクターウエストと情報交換をしました

【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
どうやら杏のことを気に入ったようです

【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと -幻妖異聞録-】
【装備:【ゲイボルク@Fate/stay night[Realta Nua]】
【所持品:支給品一式、不明支給品0~2、スペツナズナイフの刃、智天使薬(濃)@あやかしびと -幻妖異聞録-】
【状態:健康、走り回ったことによる疲労小】
【思考・行動】
基本方針:打倒主催
0:たまご風味のグッピーと行動。頭脳担当。
1:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
2:主催者への反抗のための仲間を集める。どこに行くかはまだ不明
3:ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒。アイン、ツヴァイも念のため警戒
【備考】
※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。
 先端の金属錘は鉛製です。
※真人を襲った相手についてはまったく知りません。
※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウエストと情報交換をしたことで確信を深めました
※杏、ドクターウエストと情報交換をしました

藤林杏@CLANNAD】
【装備】:コルト M1917(6/6)
【所持品】:支給品一式、予備弾28、ランダム支給品0~1(確認済み)
【状態】:右手首に重度の捻挫(ある程度治療済み)掌と膝にひどい擦過傷(応急処置済み)
【思考・行動】
基本:朋也に謝る、ウェストに謝罪させる
1:朋也を探す(多分自分が来た方向=西?)
2:可能ならウェストの手助けをする。
3:首輪解除を目的に行動。どこに行くかは不明

【備考】
※捻挫はウラジミールのTシャツ@あやかしびと -幻妖異聞録-によりある程度的確に処置されています。
 ただ三角巾のような形で固定されているので、右腕はそのままでは使えません。
※空元気交じりですが、冷静さを取り戻しました。
※クリス・ティトゥス、ドライを警戒。朋也については複雑な心境
※ウェストとお互いの世界や知り合いについて情報交換しました。
 突っ込み連打の甲斐もあり、魔術やロボについても一応納得しました。
※トーニャと真人と情報交換しました

ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:秋夫のバット@CLANNAD、フォルテール(リセ)
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は次元一ィィィィーーーーッ!!!!
1:設備・器具の入手
2:首輪のサンプルが欲しい
3:首輪の解除
4:フォルテールをあらゆる手を使って弾いてみせる
5:とりあえずは杏についていく

【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ティトゥス、岡崎朋也、クリス、ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。

063:破天荒筋肉!(前編) 投下順 064:ときめきシンパシー
時系列順 064:ときめきシンパシー
アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ 000:[[]]
井ノ原真人 000:[[]]
ドクター・ウエスト 070:リセエンヌ(前編)
藤林杏 070:リセエンヌ(前編)


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