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調教

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調教 ◆AHO/leKv9s


「あ、そういえば忘れてた」

スラム街を移動していく途中、このみはふと何かを思い出したように立ち止まる。
そして、自分の後ろをついてくる男――フカヒレこと鮫氷新一――の方へ振り返った。

「な、何でありましょうかこのみさん!いやこのみ様!!」

いきなり振り向かれたフカヒレは、思わず持っていたディパックと装備を取り落としそうになりながらも本当の名を言ったとき同様、直立不動の姿勢をとる。
その顔は恐怖で引きつっているがこれは彼女に対する恐怖ゆえに仕方が無いことだろう。

「気になったんです。フカヒレさんがこのみと出会うまで何をしてたのかなって。教えてくれますよね?」

柚原このみが、自分と出会うまでのフカヒレはどこで何をしていたかを問うたことに大きな理由はない。
ただ、仲間――というより手駒ないし従者というべきか――になったのならそれぐらいは聞いておこうと思ったからだ。

もしこれが、ファルシータ・フォーセットの様に他人を利用することへ抵抗を感じない人間ならば、
そこから相手へと付け入る切っ掛けの一つも発見できるだろうが、このみにそういった発想はなかった。

「えっ、は、はい俺いや、私フカヒレめは……」

だが問いかけられたフカヒレ本人は、このみの思惑に関わらず返答に詰まった。

別に自分のここにいたる経緯が人に誇れるものじゃないとは思っていない。
確かに子狐とのにらみ合いで敗北したり、保護者であった古河秋生を見捨てて逃げたという情けない部分はあるが、
それ以外は「古河渚」を名乗る少女を“倒した”という出来事や菊地真が危険人物であるのを見抜いたという人に誇れる「実績」がある。
伊藤誠の名を口に出したのも彼が真と行動を共にする危険人物だからであって、悪意を持ってやったわけではない。

返答に窮した理由を挙げるならそれは一言であらわすなら「直感」に基づくものだった。
このみへの恐怖に圧されていて、答えねばならないと思っていても彼の持つ動物的な本能が「話せば致命的に不味いこととなる」彼に告げたからだ。

「続きを話して、でないと」

そのフカヒレの態度は、このみを動かすには十分だった。
彼女の歩みが、二メートル程離れていたフカヒレとの距離を一瞬で詰める。

そして――













「この耳、切り落としちゃうから」

次の瞬間、フカヒレの左耳その付け根へ包丁を当てていた。
耳の一つぐらい今の彼女の膂力を以って刃を引けば、すぐに切り落とせる。
それこそ水濡れの障子紙を手で引き裂くより容易に。





「ひっ……ヒィッ!……い、言います!言わせていただきます!」

それで十分だった。
先ほどまで本能が発していた警告はどこへやら、自分が更に痛い目に遭うことへの恐怖からフカヒレはあっさりと陥落した。

そこから後のフカヒレは、垂れ流しに自分が会場に放り出されてから今に到るまでの全てを口にしていく。

子狐に睨まれて逃げた先で古河秋生と出会い、暫らく行動を共にしたことに始まって、放送でレオの死を知って取り乱したところで
吾妻玲二ともツヴァイとも名乗る男に襲われて秋生を見捨ててスラム街へと逃げてきたこと。
さらにその先で出会った「古河渚」を名乗る少女を倒したことも、煙の上がった方向に移動した先で伊藤誠と菊地真の二人に出会った際に
真が人殺しであると言ったら二人にボコボコにされたというその全てを。

それだけにとどまらずスバルや乙女、館長に椰子の事と他の知り合いのことまで口にしていた。


話が終わると同時に、このみはフカヒレの左耳から包丁を放す。
同時に、安堵したのか腰が抜けたのかフカヒレもその場にへたり込んだ。


暫しの、そして不気味な沈黙の後このみは口を開いた。

「そっか、フカヒレさんは仲間を見捨てて逃げた卑怯者なんだ」

とても「仲間」に言うとは思えない冷徹な呟き。
それらがフカヒレの心に突き刺さる。

「だ、だって……仕方がなかったんだ……じゃない、仕方がなかったんであります……」

へたり込んだままのフカヒレの姿は気にも留めず、このみは話の内容を思い出す。

レオというフカヒレの知り合いが死んだことについては、自分もタカくんやタマお姉ちゃんやユウくんが死んでいるから何を今更としか思わない。
「古河渚」と名乗る少女を倒したという点も同じだ。ただ、フカヒレが人を殺したということを再確認しただけ。
誠が危険人物というのはファルのやったことそのものを知らなかったし、自分のことを心配してくれたことからフカヒレのウソか勘違いだろう。
玲二という名前はドライが口にしたのと同じ名だ。もしかしたらその人はドライの事を殺そうとしているのかもしれないが、はっきりしない。

だが「古河秋生という仲間を見捨てて一人逃げた」という一点は、既に悪鬼へと取り込まれつつあるこのみの心にまた一つ黒いシミを作った。

そして僅かな沈黙のあと、ヨロヨロと立ち上がるフカヒレに向けて小さく呟く。











「――――――おしおき」と













「へ、今なん…………ブグッ!!」

口から漏れたのは、カエルが潰されるときのような呻き声。

直後フカヒレの体は、横に飛び近くの壁に叩きつけられる。
吹っ飛ばされた当人にすればいきなり視界が激しく動いたかと思えば体が硬いものに叩きつけられたというところだろう。

「ぐっ……げぇ……な……ぁんで……?」

すさまじい激痛に気を失いそうになりながらフカヒレはもがき、そしてこのみに理由を聞こうとする。
気絶しなかったのは、このみによるその一撃が本気で繰り出されたものではなかったからだろう。
そうでなければ気を失うどころか死んでいたのは確実だったはずだ。

このみは、倒れこんだままのフカヒレに近づき髪の毛をむんずと掴みながら強引に自分の方へと顔を向けさせる。

「聞こえなかった?これはフカヒレさんへのオシオキ」
「おし……おき……?ひぃ…………」

一方、フカヒレは言葉の意味を理解するより先に恐怖し、叫びとは言えぬ小声を漏らす。
輝きを失いながらも凶暴さと冷徹さと残虐さに彩られたこのみの瞳を見た瞬間、自分が殺されるのではないかと感じたからだ。

そのまま気を失いそうになった時、口の中に何かを突っ込まれ無理矢理に意識が覚醒させられる。
眼鏡が壊れ、視覚が急な状況の変化についていけなくとも、硬い金属質のそれがこのみの持つ拳銃、イクタァであると認識するまでそう時間はかからなかった。

「だって、せっかく仲間になったのに逃げられたらこのみまた不安になっちゃうから。だから一度逃げたフカヒレさんにはオシオキするんです」
「ふ……ふぐぁが……」

ゴリゴリと銃を口へとねじ込まれるフカヒレは、そのまま首を縦に振りこのみへ肯定してみせる。






さて、ここで柚原このみによるフカヒレへの「オシオキ」と称した苛烈な暴力について述べておこう。
それはフカヒレに見捨てられた最初の犠牲者、古河秋生に対する同情と言ったものより、フカヒレ自身がとった行動そのものに対する彼女なりの回答と言える。

たとえ自分を見捨てて逃げたわけではないといえど、自分と会う前に一度そういった行動――仲間を見捨てての敵前逃亡――を
取っていたなら再び同じことをする可能性が十分あることを今のこのみですら理解していた。

もし悪鬼化する前のこのみならば、逃亡という行動に軽蔑はすれど暴力にまで到ることはなかっただろう。

だが、今はそうではない。
現在の柚原このみにすれば、フカヒレのとった行動は最初に出会ったときにとった行動と同様に彼の人間としての汚らしさを再度印象付けていく。

更に、それをただ聞いただけに留めていたならば、いずれはどこかで自分を放り出して逃亡するのではという疑心がある。
ならば、二度と同じ行動を出来ぬように、やればどうなるかというのを身をもって教え込んでやればいい。



つまるところそれは言葉による糾弾ではなく「オシオキ」という名の実力行使――言い方を変えれば「調教」――に到るということだ。




(あ、ああ……ダメだ……もう、どうにもならねぇぇぇぇぇぇ……)

一方、このみの思惑など知らぬフカヒレ。彼は現在の状況になすすべもなくガタガタとみっともなく震えていた。
今の彼を一言で表すなら「木端微塵」というところだろう。

(なんで、こんなことになっちまうんだよぉ……か、勘弁してくれぇぇぇ!)

ワケが解らなかった。
仲間になってからは多少は安心できる、そう思っていた。
だが、歩き出して五分と経たぬうちに自分が何をしていたのか話せと言われ、多少脅されはしたが話すことは全部話した。

そしたらいきなり吹っ飛ばされ壁に激突し、痛みが治まるより先に今度は口に銃を突っ込まれ「これはオシオキだ」との一言。
恐怖のあまりに自分の口の中へ血の味が染みていくのも、舌に触れる銃とは違う異物感の正体が、へし折れた奥歯であると気付くこともできなかった。
ただただ首肯するのが精一杯だった……。

しかしそんなフカヒレでも理解できたことがあった。

このみへの恐怖ゆえに仲間となった彼だったが、プライドが消滅しようと恥も外聞もなく彼女に従おうと、それでも心のどこかではスバルや乙女、館長に会えれば助けてもらえる、
あるいは身体能力の差はあれど、隙を見て逃げることが出来るのではないかと思っていた。

でも、甘かった。
結果はこのザマだ。
逃げるどころか、自分の過去の行動がこのみの不興を買ったのかいきなりオシオキと称して急所に膝蹴りをされた時のごとく壁に叩きつけられハエの様に無様に潰された。

つまりは「逃げられない。そのチャンスがあるかと思ったら甘すぎた」ということだ。
仮にこの先、知り合いと出会い助けを求めようとしても、その前に自分は殺されてしまうということも。

逃げられない以上はこの先もこのみに従うしかない。という絶望感がフカヒレの心を支配しているのは言うまでもない。

これが一つ目に理解したことである。

更にもう一つ。
今後、このみの許し無しには何一つ行動できないだろうということも理解させられた。いや、してしまった。

殺されたくない一心で仲間になり、これで殺されずに済む、死なずに済むという安心感がどこかにあったが、その淡い期待もあっさり崩された。
多分、自分は殺されはしないだろうとわかっていても、今後このみの不興を買えば同じ目にあわされるのは確実だったから。
その回数が積み重なれば最終的にどうなるかは考えなくてもわかりきっていることだ。

最初に出会ってからたかだか十数分、仲間となり歩き始めて五分程の間にフカヒレの心はへし折られ、とどめとばかりに粉砕されてしまった。

こんな状況なら狂ってしまってもおかしくなかったが、さしものフカヒレもそれについては必死で耐えた。
もし、狂ってしまえば。そうなったら恐怖から解放され幾らかは楽になれるだろう。
この異常な状況を忘却することで楽に死ねるかもしれない。

が、発狂すれば目の前にいる少女は自分を役立たずと断じて殺すのは間違いなかった。
そうなったら最後自分は肉を食われ、血を啜られ、臓物を引きずり出され、骨はそれこそ髄までしゃぶりつくされるだろう。

そもそも死にたくない一心で仲間になることを誓ったのにここで殺されては本末転倒だ。

結果、「もっと生きたい」「死にたくない」という徹底的な、生への執着心がフカヒレから「発狂する」という選択肢を除外させていた。
現在彼が置かれている状況は別としても、生き抜く上で狂うことに抗ったのは間違っていない。


それにしても……、彼はわかっていない。

恐怖からこのみの仲間となり、そして逃げようとすればその前に殺されると理解したまではいい。
しかしその逆。何かあれば、このみがフカヒレをさっさと見捨てて逃亡する可能性が十分あることに気付いてない。

そのことに気付かないほうが今のフカヒレにとっては幸せなのかもしれない。



【C-2 中心部/一日目 昼・放送直前】

【柚原このみ@To Heart2】
【装備】:包丁、イタクァ(5/6)@機神咆哮デモンベイン、防弾チョッキ@現実
【所持品】:支給品一式、銃弾(イタクァ用)×12、銃の取り扱い説明書、鎮痛剤(白い粉が瓶に入っている)
【状態】:悪鬼侵食率30%、リボン喪失、右のおさげ部分が不ぞろいに切り裂かれている、倫理崩壊
【思考・行動】
基本行動方針:何を犠牲にしても生き残り、貴明と環の仇を討つ。
0:柚原このみのまま、絶対に生き残り、主催者に復讐を遂げる。
1:ファルと世界に"復讐"をする。
2:気に障った人間は排除する。攻撃してくる相手は殺す。
3:フカヒレは今は仲間として適当に利用する。歯向かったり、逃げようとしたり、いらなくなったら殺す。
4:最悪、一日目終了時の教会でファルを殺す。
【備考】
※制服は土埃と血で汚れています。
※世界の名を“清浦刹那”と認識しています。
※ファルの解毒剤の嘘を看破しました。見つけ出して殺害するつもりです。
※第一回放送内容は、向坂雄二の名前が呼ばれたこと以外ほとんど覚えていません。
※悪鬼に侵食されつつあります。侵食されればされるほど、身体能力と五感が高くなっていきます。
※制限有りの再生能力があります。大怪我であるほど治療に時間を必要とします。
 また、大怪我の治療をしたり、精神を揺さぶられると悪鬼侵食率が低下する時があります。
※フカヒレのここまでの経緯と知り合いや出会った人物について把握済み。


【鮫氷新一@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:エクスカリバーMk2 マルチショット・ライオットガン(5/5)@現実、
     ビームライフル(残量70%)@リトルバスターズ!
【所持品】:支給品一式×2、きんぴかパーカー@Fate/stay night[Realta Nua]、スペツナズナイフの柄 、
      シアン化カリウム入りカプセル、ICレコーダー
      ゲーム用メダル 400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、37mmスタンダード弾x10発
【状態】:このみへの恐怖心、疲労(極めて大)、全身打撲、顔面に怪我、鼻骨折、奥歯一本折れ、
     口内出血、右手小指捻挫、肩に炎症、内蔵にダメージ(大)、眼鏡なし
【思考】
基本方針:死にたくない。
1:このみが恐ろしいので、機嫌を損ねたり、逆らわないようについていく。命令には絶対従う。
2:もう、逃げられない……。
3:知り合いを探す。
4:清浦刹那、ツヴァイ、ドライ、アイン、菊地真、伊藤誠を警戒
【備考】
※特殊能力「おっぱいスカウター」に制限が掛けられています?
 しかし、フカヒレが根性を出せば見えないものなどありません。
※渚砂の苗字を聞いていないので、遺跡で出会った少女が古河渚であると勘違いしています。
 また、先程あった少女は殺し合いに乗り、古川渚を名乗る偽者だと思っています。
※混乱していたので渚砂の外見を良く覚えていません。
※カプセル(シアン化カリウム入りカプセル)はフカヒレのポケットの中に入っています。
※誠から娼館での戦闘についてのみ聞きました。
※ICレコーダーの内容から、真を殺人鬼だと認識しています。
※ゲーム用メダルには【HiMEの痣】と同じ刻印が刻まれています。カジノの景品とHiMEの能力に何らかの関係がある可能性があります。
 B-2中心部に回収出来なかったゲーム用メダル@現実が100枚落ちています。
※逃げようとすれば殺されると確信しました。


【エクスカリバーMk2 マルチショット・ライオットガン@現実】
全長780mm。総重量4,235g。
イギリスのワロップ・インダストリー開発のリボルビング・グレネード・ランチャー。
特大サイズのリボルバーのような、シリンダー型の大型弾倉を備えている。
撃発・発射はダブルアクション式だが、かなりトリガープルが重いので、指を二本かけて引けるようにトリガーの形が工夫されている。



139:ストロベリーミサイル 投下順 141:怪異なる永劫の内に
137:例えば孤独なら傷つくのは、一人ぼっちの自分だけだと 時系列順 141:怪異なる永劫の内に
126:鬼哭街(後編) 柚原このみ 145:人と鬼のカルネヴァーレ (前編)
126:鬼哭街(後編) 鮫氷新一 145:人と鬼のカルネヴァーレ (前編)

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