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人で無くなったもの

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人であったもの/人で無くなったもの ◆S71MbhUMlM


「い、…たい?」

イタイ

「痛い、痛い!」

イタイイタイ

確かに治った筈の指が無い。

塞がりかけていた筈の傷口が痛い。

全身が、痛くて痛くてしょうがない。

何故?

どうして?

さっきまで何とも無かったのに?

怖い

ダメ

殺される

これ以上ここにいてはいけない。

ここにいたら殺される

誠も、私も、

逃げなきゃ!

逃げなきゃ!

ああでも全身が痛くて動けない。

あの男は近寄ってくる。

助けて助けて

誰か助けて。

刹那、桂さん、誠

助けて、助けてよ。

腰が抜けて立てないよ。

骨が何本も折れて動けないよ。

治ってよ、何で治らないの?

いやだ、死にたくないよ。

折角、誠と一つになれたのに。

絶対、生きて帰って誠の、刹那や桂さんの分まで幸せになるって決めたのに。

何で、何でこんな所で死なないといけないの?

私は、ただ幸せになりたいだけなのに。

必死で、何かを探そうとして、デイパックからそれが転げ出る。

ああ、あの本だ。

刹那が、私の事を助けてくれるっていっていた本だ。

そして、今その本には刹那の姿が見えた。

刹那だけじゃなくて、誠の姿も見える。

ああ、そうか。

……助けて、くれるんだね。

私を、あの殺人鬼から救ってくれるって、そう言っているんだ。

うん、私、やるよ。


衝撃。
先ほどの聖剣の一撃が光なら、これは正しく闇と呼んでも良いだろう。
いや、闇という表現も、正しくは無い。
『呪恨弾』
それは、妖蛆の秘密に捕らわれた魂の恨みを放つもの。
そこに捕らわれたものたちの慟哭、嘆き、恨み、悲しみなどを糧として放たれる一撃。
世界の目に映ったのは、そこに捕らわれた誠たちの姿。
彼らが、どのような感情を抱いていたのか、それは知りうることは出来ない。
知ったところで、何の意味も無い。
だが、彼女の目には、それは正しく救いに見えたのだ。
そして、救いの手は、その通りに発動した。
命の危機に瀕した哀れな少女の手に、救いは確かに訪れたのだ。



「やっ…た?」

判らない、でも男の人に、確かに当たった。
だから、きっと大丈夫。
うん、そうだよね、誠が力を貸してくれてるのだから、大丈夫だよね。
うん、だから、さっさとあの子を食べ……!?

             痛い?
何?
         殴られた?
痛い?
      治らない?
痛い?
   誰が?
痛い?
決まっている。

男が、そこにいる。
右の拳が、握られて、片方の肩から、赤い何か漏れている。
あれは…なに?
凄く、怖い。
なんだかわからいけど、
美味しそうだけど、
凄く、怖い。
何か、とてつもなく恐ろしい何か。
殺される。
ここにいたら、殺される。
逃げ、ないと。


ふらふらと、世界は立ち上がり、そして歩き出す。
誰一人、ソレを追おうとはしない。
何故なら、

彼女が立ち去って直に、葛木自身がその場に倒れたのだから。



……揺れる。
何かに、引きずられるように、動いていく。
体温は既に冷え切っている。
「……高槻か…」
「く、葛木先生!?」
「起きたか相棒!?」
胸の下に、小さな頭が映る。
茶がかった髪の毛を両側でお下げにしている少女と、その手に嵌っている人形。
少女の顔には疲労の色が濃く、息は乱れ、額に汗が光っている。
この姿勢から考えるに、彼女は自分をここまで背負ってきたのだろう。
その小さい身体で、遥かに大きな葛木の体を。

ふと、彼女の格好が先ほどまでと異なっていることに気付く。
上着が無い。
「ほ、本当は、包帯か何かあればよいのですがー…」
今にも泣き出しそうな彼女の声。
どうやら、自分の腕に包帯のように巻かれているようだ。
「……そうか」
失われた、自分の左腕。
あの時の一撃の威力を考えるなら、むしろ僥倖と考えるべきだろう。
「とにかく……もう少しです!
 もう少し、このままもう少し待ってもらえれば、病院に着きます!」
ああ、彼女はずっと、自分の事を担いでここまで来たのだろう。
そうして、このまま病院まで行こうとしている。

……だが、それは無理だろう。
彼女の力では、自分を連れて病院に行くのは遠すぎる。
この傷では、それまでは持つまい。
そして…なによりも……

「もう、いい。 私の事は放っておけ」

この場に居ては、彼女達の身も危ないのだから。
もう、あまり、時間が無い。

「だ、ダメです!
 そんなこと、出来ません!」
「おうよ!
 やよいの根性を甘く見るなよ!四時までに相棒を連れてこのエリアを出るなんざ楽勝よ!」
「……そうか」
既に、判っていたのか。
そして、もう既に理解できているのだろう。
自分達も、このままでは死ぬと。
このペースでは、間に合わない、と。
だが、……逆に言えば、今ならまだ間に合う。
「どの道、私はもう助からん。 命を無駄にするな」
「な、何を言ってやがる!」
「そうですよ! そんな事言ってはダメです!」
「自分の命だ、自分が一番理解している」
私の事など気にせず、二人で行けば良い。
それで、二人は助かるのだから。

「無駄なことはするな……助かる命を捨てる気か。
 どの道、私を助ける意味などないのだから」

余計な事を、する必要は無い。
私は、とうに役目を終えた道具に過ぎない。
今まで、ただ生きていたに過ぎない。
役目を終えながらも、惰性で存在しつづけていた道具が、壊れた。
ただ、それだけのことなのだから。

「…………」
「…………」

力の抜けたやよいの背から、体が滑り落ちる。
さあ、行け。
既に、覚悟くらいは出来ていたのだろう。
道具が、その役目を終えただけなのだから。




……言葉は、無い。
この場にいる全員が、既に理解している。
このまま、葛木と共にいては、全員が助からないと。
葛木の言葉は正しい。
この場に、葛木を置いていくのが、最上の答え。

「……って、何ですか」

……だが、それでも。

「……高、槻?」
「無駄って、何ですか!?」
 葛木先生の命が無駄だ何て、そんな筈、ある筈無いじゃないですか!!」

そのような理屈などに、何の意味があるのだろう。
……そもそも、葛木の言葉は、一つの前提が間違っている。
間違いが起きたのは5年前、あるいは25年前か。
道具であった筈の存在が、自らの意思で道を違えたことか。
あるいは、そもそも道具として生まれた事自体が間違いなのか。

「無駄なんかじゃないです! 先生はずっと私を助けてくれました!
 無駄なことなんて少しもありません! だから、今度は私が先生を助けるんです!」

無駄ではないと。
葛木の命は決して無駄なのではないと、そう、言った。
嗚咽まじりに、叫びながら、やよいは、確かに告げた。
そう、無駄などではない。

「やよいの言うとおりだぜ相棒!
 簡単に諦めてるんじゃねえ! そんなんじゃ相棒失格だぜ!」

葛木自身が、自分を道具であると認識していていても、他者はそうは思わない。
何よりも、彼がこの島いにあった僅かな時間は、決して無駄ではなかった。
彼らは、葛木の生が無駄では無いと、そう告げていた。

「そうです!
 それに、帰るって言ったじゃないですか!
 奥さんが居るって! そこに帰るんだって!
 そう…………言ったじゃないですか……」

そう、……無駄では無い。
この島での半日の時間も。
彼が人として生きた5年間も。
無駄などでは無かった。
ただ、彼がその事実に気付かなかっただけなのだ。
気付かない、フリをしていたのだ。

「だから……行くんです。
 絶対に、……助けるんです」

気付いては、いけなかった。
あの時、あの五年前……彼は……嬉しかったのだ。
一つの機構の為に作られた道具。
20の歳月を賭して作られた道具。
その、成果を発揮出来ると。
自身の、20年の歳月にはどのような意味があったのかと。

そして、彼は知る。 意味など、無いと。
偶然から、目的は容易く達せられた。
20の歳月などに、意味は無く、身に着けた業など、必要すらなかった。
真の意味で壊れたのは、その時だろう。
目的を達した以上、速やかに破棄すべき己を、彼は保ち続けた。
その事を、極力考えないようにしながらも、彼はあり続けた。

(そう…か)

やよいの嗚咽は続く。
すでに声など出ず、唯涙を流しているだけであったが、それでもその場に居続けた。
葛木の片方しかない手を、握り続けていた。
既に葛木のことを背負う体力など無いにも関わらず、何が何でも助けると。

「……プッチャン…よ」
恐らくは初めて、彼はその男の名を呼んだ。
人ではないが、自分よりも余程人らしい彼。
共に居た、仲間の名を。
「高槻を、宜しく頼む。 お前に…お前になら、頼める」
「……相、棒」

既に、プッチャンには理解出来ている。
どうにかして、やよいを説得しなければならないと。
葛木の事を見捨てなければならないと。
「そんな事、言うんじゃねえよ!」
だが、理解できているだけ。
納得など、少しも出来ていない。
「それと、すまない、これを、あの人に渡して欲しい」
「自分で渡しやがれ!」
出来る筈も無い。
これで終わりなど、納得してやるものか。
ああ、だが、

「すまない、だが、頼んだぞ……『相棒』」

今になって、その言葉を言うのか。
一方的に呼んでいただけなのに、
偶然であっただけの関係なのに、
そもそも、力の無い人形に過ぎないプッチャンを、

「…………バカヤロウ」

そう、呼んでくれるのか。
……誰が、拒めようか。
一方的な間柄ではない。
互いに、認め合った者が、初めて、そう呼んでくれた相棒が、そう望んでいるのだ。
どうして、……それを無駄になど、出来ようか。

「……高槻」
「いや…です」
もう、二度と会えないのだ。
目の前の男性とは、これが永遠の別れとなる。
「すまない、私が同行できるのは、ここまでのようだ」
「いやです!」
誰が、納得なんて出来るのか。
死ぬのは、無論怖い。
でも、それ以上に、親しい人との別れのほうが、怖い。
「絶対に……イヤ、なんです……」
理屈ではない。
感情のままに、告げた。
「高槻…」
「う……?」

パアンと、小さく、それでいて甲高い音。

何が起きたのかは、やよいには理解出来なかった。
ただ、自身の手に、小さな衝撃のみがあった。
「すまないな、もう、これぐらいしか、してはやれない」
手を、鳴らせば、元気が出る。
かつて、やよいが告げた事。
何度か、してくれた、事。
今までで、最も弱い、力で、
その手に、今、どれだけの想いが込められているのだろうか。
「葛木、先生……」
それで、全てが理解できた。
本当に、もう、終わりなのだと。
もう、葛木はやよいとは共には居られないと。

再び、泣き崩れそうになるやよい。
だが、泣く訳にはいかない。
元気を貰ったのだから。
元気が出るのだと言ったのだから、元気を出さなければいけない。
「葛木……先生」
何か、言わなければならない。
最後だから、
元気を貰ったから、
助けて貰ったから、
そんな理由では無い。
高槻やよいとして、葛木宗一郎に、言わなければならない。
それなのに、震える口からは、言葉など出ない。
再び、泣き出してしまいそうになる。

「……いいから、もう行きなさい。 ……君は、こんなところに居てはいけない」
判っていると、口にせずとも良いと。

葛木は、最後に確かにそう言っていた。


「今は…泣くんじゃねえ」
「泣いて……ないです」
泣くことは、何時でも出来る。
だが、今は許されない。
泣くのは、後だ。
「後で、幾らでも泣いていいから、今は泣くな」
「泣いて…ないです……」
だが、どうして止めることができようか。
結局、最後まで彼に頼ってしまったのだから。
人に元気を齎すアイドルの筈なのに、元気を貰っただけなのだから。

「……ああ、すまねえ、……泣いてねえな」
「そうです、泣いて…ないんです……」
雨が降っているだけだ。
泣いてなどいない。
泣く訳にはいかない。
歩みを止める訳には、いかない。

気付けば、どれだけの時間。
どれだけの距離を歩いたのだろう。
太陽が、少しずつ傾いていくなか、
遠く、遠雷のような音が、響いた。

「……っ、葛木せんせーーーい!!」




あと、どれだけの時間が残っているのか判らない。
そもそも、それまで自分の命が残っているのかさえ定かでは無いが…もはや、考えても仕方の無い事柄だ。

……結局、自分は何だったのだろうか?
道具として生まれ、道具になりきれなかった自分。
道具としても、人としても不出来であったもの。

……ああ、だが、

元より、自分は人を殺す為の道具
それだけのモノでしか無かった筈なのに……
だが、こんな自分でも、『人を救う事が出来たのだ』
ならば、少なくとも自分は…『人を殺す為だけの道具』では無かったのだ。

……そう、自分はずっと、悔いていたのだ。

ただ、道具であった、道具で…あり続けた。
自らの、意思で。
人として生きる事を望まず、ただ、あり続けていた。
何も考えずに、一人の人間の命を奪った。

……その事を、後悔していたのだ。

だから、道具であろうとした?
否、その方が、楽だったからだ。
道具であると、人ではなく使われるものとして存在していた方が、楽であったから。
人になってしまうことが、怖かったから。
だから、道具であり続けた。

ああ、だが、これは、自らの意思だと。

人としての、己の、望み。

ただ、己を頼る相手を、相棒と呼んでくれた相手を、

……助けたかった。

……助ける事が、出来た。

ならば、この生にも、意味はあったのだろう。

心残りはある。
二人は、これから無事でいられるだろうか?

そして、
あの女性は…どう思うのだろうか?
道具が壊れたとだけ思うのか、
便利な道具が壊れたと嘆いてくれるのか、
あるいは、自分という人間の事を悼んでくれるのか、
今となっては、最早知る術も無いが……

ああ、だが……、

願わくば…彼女が、彼女達が、……あるべき場所に、帰りつかん事を……


“ピーーーーーー”


【葛木宗一郎@Fate/staynight[RealtaNua]死亡】


【A-2 南西部/1日目 午後】
【高槻やよい@THEIDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)
【所持品】:支給品一式、弾丸全種セット(100発入り、37mmスタンダード弾のみ95発)、
 何らかの書物一冊(詳細不明)、ナコト写本@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ10/64、
 エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(4/5)@現実
【状態】:深い悲しみ、罪悪感、上着無し
【思考・行動】
 0:泣いて、ないです。
 1:葛木、先生…………
 2:真を探して合流する。
【備考】
 ※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
 ※直枝理樹の知り合いについて情報を得ました。
 ※死者蘇生と平行世界について知りました。
 ※教会の地下を発見。とある古書店に訪れました。
 ※とある古書店での情報を覚えました。

【プッチャン@極上生徒会】
【装備】:ルールブレイカー@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:深い悲しみ
【思考・行動】
 0:相棒……
 1:りのと会いたい。

【エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン@現実】
全長780mm。総重量4,235g。
イギリスのワロップ・インダストリー開発のリボルビング・グレネード・ランチャー。
特大サイズのリボルバーのような、シリンダー型の大型弾倉を備えている。
撃発・発射はダブルアクション式だが、かなりトリガープルが重いので、指を二本かけて引けるようにトリガーの形が工夫されている。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



イタイ

イタイ

イタイ

体が、痛い。

心が、痛い。

何時の間にか、また傷は少しずつ塞がり始めている。

でも、いつまでも痛いまま。

体の痛みは少しずつ消えていくのに、心の痛みが消えない。

私の『誠/赤ちゃん』は、どうなってしまったのだろう。

傷口は、少しずつ塞がっているけど、怖くて見ることが出来ない。

あんなに、酷いことをされて、どうなってしまったのだろう?

怖い、

怖い、

この子が死んでしまったと考えるだけで、怖い。

誠とのつながりが消えてしまった事が怖い。

どうすればいいのか、わからない。

刹那も、誠も、あれから何も答えてくれない。

あの男の人はあれから追ってきてはいないみたいだけど、それでも怖い。

だから、逃げて逃げて逃げ続けて、どこだか判らない場所まで来て、ようやく、そこで足を止めた。

あれ…

覚えのある匂いがする。

何処かで嗅いだことのある匂い。

とても、美味しそうな匂い。

この匂いには、覚えがある。

「間桐…さん?」

そう、覚えている。
私が、最初に出会った人。
その体は無残にも晒されている。
血の気を失い、既に乾いた血がこびり付いた顔は、それでも綺麗な顔をしていた。
私が、彼女を殺した。
その事自体は、変わる事の無い事実。
でも、未だに、この場所に、居続けていた。

「……間桐、さん」

それは、何故?

「私に…生きろって、……そう言ってくれるの?」

彼女は何も答えない。
でも、何よりも雄弁に主張している。
ここに居たのは、その為なんだって。
私を、生かす為にここに居たんだって。

「あり、がとう」

少しだけ、元気が出た。

彼女の体は、コレまで食べた中では、一番元気が出た。
あ、勿論一番美味しいのは誠なんだけど、何ていうのかな、栄養抜群?
凄く、体中に力がみなぎってくる感じ。
何か少し変わった味がするけど、とても力がわいて来た。
そして、彼女の服にこびり付いていた、カレーも舐めてみた。
あの時は、結局食べることが出来なかったけど、間桐さんのカレーは凄く美味しい。
今まで食べた中で一番。
学校で作ったカレーよりも、
お母さんのよりも、
もしかしたら、誠の作るのよりも。

何度か味わった気がする、この鉄っぽい隠し味が、たまらなく美味しい。
少しずつ、元気は出てきた、でも、まだ怖いまま。
これから、どうしよう?


――その、時、

…トクン…

「え…?」

今の、音は、

……ドクンッ!

この、音は、

「動い…た?」

ドクン…ドクン!

「動いた…動いた…よ!」

間違い無い。
僅かな、だが確かな反応。
自分はここに居ると、確かに存在していると。
生の証。

「私と誠の赤ちゃん、動いてるよ!!」

嬉しい。

凄く嬉しい。

でも、どうして?

私の赤ちゃんは、桂さんの中にいる筈なのに…?

……ああ、そうか。

「桂さん、……本当に死んじゃったんだ」

そうなんだね。

もう、守れないから、

だから、この子を私に返してきたんだ。

私に、生きろって、桂さんも言ってくれてるんだ。

「……うん、私、生きるよ。
 生きて帰って、絶対に幸せになる」

……そういえば、誠が言うには、元の世界には違う誠達がいるんだよね。
誠も、桂さんも、刹那も、
元の世界には居るんだ。
って事は知り合いじゃないだけで、もしかしてもとの世界には間桐さんもいるのかな?
そうか、そうなのかもしれない。
帰ったら、その時は会いに行ってみよう。
何処にいるのか手がかりもないけど、絶対、探し出す。
うん、そうしたら、きっと私たち友達になれる。
そうして、カレーを、カレーだけじゃないいろんなものを、ご馳走してもらおう。
そうだ、誠のお嫁さんになるなら、手料理だって覚えないといけないよね。
誠はとても料理が上手だけど、それでもやっぱり、お嫁さんとしては手料理を作ってあげたいし。
うん、そうだ、間桐さんに習おう。

だから、帰ろう。
帰って、皆と幸せになろう。

でも…その為にはまず生きて帰らないと。

そのためには、
                            ■ね

うん、そう、殺す、しかない。

      ■ね
             ■ね

皆殺しだよ、もう誠も刹那も桂さんも居ないんだから。

 ■ね     ■ね            ■ね
                ■ね

■ね                       ■ね

このみさんとか、あの男の人とか怖い人は沢山居るけど、それでも頑張らないと。
そうでないと、折角元気をくれた間桐さんに申し訳ないから。

■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね
■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね
■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね


この子も、生きたいって、生きろって、言ってくれている。
うん、私…生きるよ。
絶対に、生きて帰って、そうして、幸せなろう。
この子と、刹那と、桂さんと、間桐さんと、……誠と
幸せに、なろう。


歓喜に浸り、母は歩む。
その先に、己が望む未来があると信じて。
傾き、長くなった彼女の影は、
彼女の歓喜を表すかのように、ゆらゆらと揺れていた。




……彼は、思考する。
未だに脳幹細胞は未分化な故に存在していないが、それでも思考する。
無い筈の脳で、
無い筈の頭で、
無い筈の意思で。

元よりソコにあったのは、未だ魂の宿らぬ器でしか無い。
そして、恐らくは宿らぬままにその生を終える事になった筈のモノ。
傷つき、浸食され、生まれ出でる前に消え行く存在。

……だが、

もし、ここに、『宿る器の無い存在』があったとしたらどうか?
そして、その存在は本能のままに宿るべきものを求めていた。
ただ純粋に、生まれ出でたいと願っていた。
そして、その存在には、傷ついた肉体であっても生まれ出でる程度の力はあった。
『それ』がこの世に現れたのは60年前。
何の力も持たぬ存在でありながら、その名を与えられたが故に呼び出されたモノ。
そうあれかしと望まれ、その願いの結晶たる存在。
願望機の中に宿り…ようやく世界に羽化しようとした理想。
一度は生まれ出でる寸前に器を破壊され、此度は宿主たる存在を失った為に…それは求め続けていた。
宿るべき、『器』を。
魔力という面では先の宿主とは比べるべくも無いが、確かな肉の器。

……それは人類世界が望み続けていた、願望。

西に傾きだした日によって、長くなった影は、確かに不自然な動きを取った。

……60億の願いの結晶。

ゾワリと、『世界』の影が僅かに蠢いた。

……人類という種族全ての悪性。

それは歓喜の舞。

遂に願いが叶うと、この世に生まれ出でる事ができると。

ここに、願いは現実となる。
二つの『世界』の望みは、ともに叶う。

世界に望まれた存在は、確かに世界より生まれ出でる。

…その願いの名は、


 ア ン リ ・ マ ユ
『この世、全ての悪』



【D-3 キャンプ場/1日目 夕方】
西園寺世界@SchoolDays】
【装備】:防刃チョッキ、エクスカリバー@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:支給品一式×4、BLOCKDEMOLITIONM5A1COMPOSITIONC4(残り約0.60kg)@現実、
 37mmスタンダード弾×5発、時限信管@現実×2、妖蛆の秘密、スペツナズナイフの柄、ICレコーダー、
 きんぴかパーカー@Fate/staynight[RealtaNua]、ゲーム用メダル400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、
 贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと-幻妖異聞録-、手榴弾1つ、
 このみのリボン、89式小銃(28/30)、
【状態】:歓喜、疲労(小)『この世、全ての悪』受胎、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、
     妖蛆の秘密と契約解除により、右手人差し指消失、顔面と首に痣、喉、眉間、後頭部他に打撲(再契約に伴い再生中)
     腹部に損傷(再生中、多少時間が掛かります)悪鬼侵食率60%、
【思考・行動】
基本:元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。
0:よかった……。
1:誠、刹那、桂さん、間桐さん、……ありがとう。
2:新鮮な内臓をもっと食べたい
3:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)を見つけたら今度こそ喰い殺す
4:スーツの男性(葛木宗一郎)に多少の恐怖。(性格上、少しづつ和らいでいきます)
【備考】
 ※誠とは今までにあった事ではなく、元の世界の事しか話してません。平行世界の事を信じました。
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。
 ※ゲーム用メダルには【HiMEの痣】と同じ刻印が刻まれています。カジノの景品とHiMEの能力に何らかの関係がある可能性があります。
 B-2中心部に回収出来なかったゲーム用メダル@現実が100枚落ちています。
 ※妖蛆の秘密は改造されており、殺した相手の霊を本に閉じ込める力があります。そして、これを蓄えるほど怨霊呪弾の威力が増します。
 そのほかのルールは他の書き手にお任せします。
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しました。


164:人として生まれ 投下順 165:日ハ沈ム、駒ハ踊ル
時系列順 165:日ハ沈ム、駒ハ踊ル
葛木宗一郎
高槻やよい 172:i
西園寺世界 176:instant servant
??? 209:第四回放送―Reason To be ―

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