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怪異なる永劫の内に

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怪異なる永劫の内に ◆I9IoWegESk


 清浦刹那は天高く戦場を俯瞰する。彼女が纏うのは学生服でも、シチュワーデスの制服でもなく、紺色のローブ。そして、頭にチャームポイントのリボンはなく、ゴムで髪を軽く束ねている。
もはや彼女に肉体はない。あるのは世界を想う強い意思だけ。

――世界は楽しいことが大好きで、私の手を色々引っ張ってくれた。でも、世界はおっちょこちょいだから、私が色々フォローしてた。
世界は人懐っこくて、私にたくさんの友達を紹介してくれた。世界が誰かと喧嘩したら、私が上手く仲直りさせた。
世界は私を虐めから守ってくれて、私は引き篭もった世界を慰めてた。
私達はお互いに足りない部分を補って生きてきた…半身。

「あはは、凄いよ私! 指が生えた!」

 それゆえ、刹那は頭を抱えて苦悩する。親友が異形と成り果て、少女の遺体を食い散らしているのだから。
――これは一体、どう考えれば良いんだろう。いっそ、見なかったことにしたい。アレは世界ではない別の何かと割り切ってしまいたい。

 その時、世界は何かの気配を感じたのか、慌てて周囲を見回した。
「せつ、な…なの? どこ、どこにいるの?」

 だが、世界が見つけたのは、採石場から飛んできた一羽の烏だけ。それでも、世界は不安げな表情を崩さずに呟いた。
「刹那、私が刹那の名前を使ったのを怒ってるかな?
 …違う、刹那を裏切ってない。私はただ、誠の赤ちゃんを守りたかっただけ。
 そうよ、私のお腹には赤ちゃんがいるもの、ちょっとくらい嘘ついたって良いじゃない」

 刹那はそれを見て、力なく息を吐くしかなかった。おそらく、世界は刹那の名を騙り、悪事を行ったのだろう。
――悲しいけどあれが世界。とても弱い子。
私は世界と昔からの付き合い。だから、世界の気持ちが手に取るように分かってしまう。
今の世界は自分しか見てない、それしか見る余裕がない。自分に嘘をついて、自分の世界に閉じこもっている。
…大丈夫、私が殺されたのは世界のせいじゃない。それだけは安心していいから。

 世界は気分を落ち着かせるため、腹に手を当てようとしてはっとする。
「あっ、私の赤ちゃんは今、桂さんのお腹の中にいるんだっけ?
 桂さん、ちゃんと面倒見てくれてるかなあ。もし、先に死んじゃったりしたら、桂さんのお腹から…あはは」

 刹那はその先を想像してしまい、強い吐き気に襲われた。
――桂さん、ごめん。でも、世界をおかしくしたのは、私の責任、そして罪。
私は何が何でも世界を見つけて、彼女の弱い心を守る必要があった。
ううん、この島に来る前に、もっと世界の心を鍛える必要があった。

                  V V V

しゅぱん

 世界は人差し指で烏を刺し貫くと、軽やかな足取りで北へ北へと歩き出した。
「まあ、考えすぎよね。刹那はぜったい死んでないし、桂さんもたぶん大丈夫。
 そんなことより、柚原さんに仕返しに行かないと。あいつ、私に酷いことしたんだから!」

――世界は自分の心を守りきれない時、理不尽に憎しみを爆発させる。それだけは絶対に止めたかった。世界、絶対に守るって約束、守れなくてごめん、本当にごめん…。

 刹那はこの島の出来事に思いをはせる。絶望的な状況でも、決して諦めなかった勇敢な人たち。
そして、伊藤誠、入学式の日に勇気をくれたクラスメイト…そして、彼女の片思いだった人。

 刹那は世界の進路に降り立った。
――みんな、私に勇気を貸して。今の世界には私が必要。

               ~その時、世界は止まる~

今の刹那は霊体ですらない。だから、悪鬼に侵食された世界でも彼女を視認できない。
だが、世界は足を止め、そしてゆっくりとした歩調で、刹那のいる場所に近づく。

――私の声が届くか分からない。ううん、聞こえて何も変わらないかもしれない。その方がずっと怖い。それでも、世界に言わなきゃいけない、放送が始まる前に。

刹那は真摯な眼差しで、世界に向けて口を開いた。

                  V V V

               ~そして、世界は動き出す~

世界は下あごに手を当てて、少し考え込んだ。
「うーん、今のはなんだっんだろう。……まっ、いいか」

 結論を言うと、刹那の思いは世界に届かなかった。
世界の所持品『妖蛆の秘密』には怨霊呪弾と呼ばれる奥義が存在する。これは術者に殺され、未練ある霊を力として、相手にぶつける攻撃術である。
今の世界に怨霊呪弾を扱えるかは別にして、この島の魔導書には大なり小なり改造が施されている。
これはクトゥグアやイタクァが普通の人間に扱えることからして、明らかだろう。

そして、『妖蛆の秘密』はその副作用により、刹那の後悔の念を啜り取ってしまったのだ。
それが世界にとって、また刹那にとって幸せだったのかはまだ分からない。

 刹那は世界の良心である。これは彼女の目付け役、という意味だけではない。
世界は誰かに赦して貰えると感じた時しか罪悪感を覚えない。覚える強さがない。
そして、刹那は彼女の罪を受け止められる、数少ない人物であった。

もうすぐ放送が始まる。自己愛の塊、西園寺世界は良心の死をどう受け止めるのだろうか……



【C-3北部/森/1日目/昼(放送直前)】

【西園寺世界@School Days】
【装備】:89式小銃(11/30)
【所持品】:支給品一式×2、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.75kg)@現実、
      時限信管@現実×3、交換マガジン(30x2)、妖蛆の秘密、贄の血入りの小瓶×1
【状態】:妊娠中(流産の可能性アリ)、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、
     悪鬼侵食率40%
【思考・行動】
基本:桂言葉から赤ちゃんを取り戻す。元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。
0:今のはなんだったんだろう?
1:柚原このみを殺すために北へ向かう。
2:言葉が追ってくるなら『桂言葉の中を確かめる』、そして『桂言葉の中身を取り戻す』。
3:新鮮な内臓が食べたい。

【備考】
 ※妖蛆の秘密は改造されており、殺した相手の霊を本に閉じ込める力があります。そして、これを蓄えるほど怨霊呪弾の威力が増します。
そのほかのルールは他の書き手にお任せします。




140:調教 投下順 142:生きて、生きて、どんな時でも
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116:Maggot Gospel 西園寺世界 145:人と鬼のカルネヴァーレ (前編)

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