求めなさい、そうすれば与えられる◆lcMqFBPaWA
朧げに赤く染まった東の空が、徐々にその赤みを増してゆく。
やがて、その赤さが、人には直視出来ぬ程の『眩しさ』へと徐々に姿を変えてゆき、
そして、東の空より、大いなる光の塊が姿を現す。
やがて、その赤さが、人には直視出来ぬ程の『眩しさ』へと徐々に姿を変えてゆき、
そして、東の空より、大いなる光の塊が姿を現す。
夜明け
それは古代より希望の象徴とされる。
新たな一日が始まる。
それは言い方を変えれば、また新しい日を迎えられたという事である。
故に、人はその光景に新たな活力と、希望を見出すものである。
新たな一日が始まる。
それは言い方を変えれば、また新しい日を迎えられたという事である。
故に、人はその光景に新たな活力と、希望を見出すものである。
…だが、それはこの場においては、
殺人遊戯の舞台となった島においては、おおよそ当てはまらない事柄である。
少なくとも、今、たった一人で彷徨う少女には、まるで関わりの無い出来事である。
殺人遊戯の舞台となった島においては、おおよそ当てはまらない事柄である。
少なくとも、今、たった一人で彷徨う少女には、まるで関わりの無い出来事である。
(ユウくん…)
頭の両側から、お下げをになって流れている黒い髪。
活発さと、可愛らしさを前面に出した制服。
大きな瞳と整った、可愛らしいと称されるべき顔。
活発さと、可愛らしさを前面に出した制服。
大きな瞳と整った、可愛らしいと称されるべき顔。
(何処…?)
だが、その髪には、あちらこちらに乱れが生じている。
身を飾る制服は、その面積の多くを染める赤い雫…血によって、おぞましさと無残さを想起させられる。
そして、なによりもその大きな瞳には、おおよそ正の感情と呼べそうなものが、含まれていなかった。
身を飾る制服は、その面積の多くを染める赤い雫…血によって、おぞましさと無残さを想起させられる。
そして、なによりもその大きな瞳には、おおよそ正の感情と呼べそうなものが、含まれていなかった。
(助けて……)
歩く。
少女は、ただ、歩く。
夢遊病者のように頼りない足取りであり、事実幾度となくふら付きながら、それでも歩く。
その瞳が示す通り、少女の心にあるのは、恐怖、困惑といった不の感情のみ。
少女は、ただ、歩く。
夢遊病者のように頼りない足取りであり、事実幾度となくふら付きながら、それでも歩く。
その瞳が示す通り、少女の心にあるのは、恐怖、困惑といった不の感情のみ。
(助けてよぉ……)
それゆえに、ただ、歩く。
全てが、怖いから。
何もかもが、怖いから。
死にたく、ないから。
全てが、怖いから。
何もかもが、怖いから。
死にたく、ないから。
何処と言う目的もなく、
明確な指標も無い、
そもそも、今自身のある場所すら定かでない。
そして、それらの事実すら、少女の心には無い。
明確な指標も無い、
そもそも、今自身のある場所すら定かでない。
そして、それらの事実すら、少女の心には無い。
恐怖に全てを支配された少女。
名を、“柚原このみ”といった。
名を、“柚原このみ”といった。
◇
そうして、この場にある別の少女にとっても、夜明けは何ら意味の無いものであった。
彼女にとっては、既に目的は一つしかない。
故に、夜明けは唯の事象としか捕らえられなかったのである。
彼女にとっては、既に目的は一つしかない。
故に、夜明けは唯の事象としか捕らえられなかったのである。
彼女が、北へ向かったのは、特に意味があっての行動ではない。
一先ずの実験を終え、適当な方向へと向かっただけの事だ。
実験場所から離れた方向が、たまたま北であった、それだけ。
一先ずの実験を終え、適当な方向へと向かっただけの事だ。
実験場所から離れた方向が、たまたま北であった、それだけ。
ただ、一つ理由らしきものを挙げるなら、
先ほどの場を離れる少し前、東の方向から、
「…きている…います…」
という声が聞こえたから。
具体的な内容までは不明。
ただそれだけに不気味、なのでそちらには向かわなかった。
先ほどの場を離れる少し前、東の方向から、
「…きている…います…」
という声が聞こえたから。
具体的な内容までは不明。
ただそれだけに不気味、なのでそちらには向かわなかった。
(…何処?)
彼女には、明確な目標が存在している。
とは言っても、何処に向かえばその目的が果せるのかは定かではないが。
それでも、一見した限り、彼女の足取りには大きな乱れは見受けられない。
とは言っても、何処に向かえばその目的が果せるのかは定かではないが。
それでも、一見した限り、彼女の足取りには大きな乱れは見受けられない。
(……と、何処?)
肩まで伸びた茶色がかった髪にはさしたる乱れも無く。
その身を包む衣服は、僅かな汚れしか見えない。
ただ唯一、その表情。
その大きな瞳から見受けられる表情は、何か得体の知れない感情が見え隠れしているようでもあった。
その身を包む衣服は、僅かな汚れしか見えない。
ただ唯一、その表情。
その大きな瞳から見受けられる表情は、何か得体の知れない感情が見え隠れしているようでもあった。
(……誠、何処?)
名を、西園寺世界といった。
◇
歩く、
歩く、
歩き続ける。
ただ、ひたすらに、ひたむきに、歩き続ける。
そうして、歩き続けた少女達は、ほぼ同時に、同じ建物を目にすることになる。
歩く、
歩き続ける。
ただ、ひたすらに、ひたむきに、歩き続ける。
そうして、歩き続けた少女達は、ほぼ同時に、同じ建物を目にすることになる。
片方は、差し込む日差しにの反射によって漸くその存在を認識し、
片方は、差し込む日差しによって見渡せるようになった遠景に、その大きさを捕らえる。
片方は、差し込む日差しによって見渡せるようになった遠景に、その大きさを捕らえる。
◇
「教……会?」
このみの目に映った建物は広義では教会ではあるのだが、事実としてはそれは教会でない。
すくなくとも、この島の中においては、教会とは称されず、一般的な呼称に従い、モスクと記されている建物だ。。
モスクというと、一般的には、丸い、たまねぎのような形状の屋根の建物が連想されるだろう。
厳密に言えば、他にも様々な違いがあるのだが、少なくとも神に祈ると言う同じ意義を持つ建物であり、それゆえか、どちらも宗教色の強い、華美、かつ荘厳な造りとなっている。
つまり、逆に言えば、
目に見える違いというのは、その屋根の形状といったくらいでしかない。。
そして、このモスクは大きな球状の屋根を持つものでは無く、平らな屋根の上に、突き出した塔の上部が球形となっている形式であった。
すくなくとも、この島の中においては、教会とは称されず、一般的な呼称に従い、モスクと記されている建物だ。。
モスクというと、一般的には、丸い、たまねぎのような形状の屋根の建物が連想されるだろう。
厳密に言えば、他にも様々な違いがあるのだが、少なくとも神に祈ると言う同じ意義を持つ建物であり、それゆえか、どちらも宗教色の強い、華美、かつ荘厳な造りとなっている。
つまり、逆に言えば、
目に見える違いというのは、その屋根の形状といったくらいでしかない。。
そして、このモスクは大きな球状の屋根を持つものでは無く、平らな屋根の上に、突き出した塔の上部が球形となっている形式であった。
そして、そもそも宗教に特に関心のないこのみにとっては、教会も、モスクも大差のないものだ。
重要なのは、このみがそれを「教会」であると認識しているということ。
それだけのことだ。
兎にも角にも、このみは、『教会へと辿りついてしまったのだ』
重要なのは、このみがそれを「教会」であると認識しているということ。
それだけのことだ。
兎にも角にも、このみは、『教会へと辿りついてしまったのだ』
「う……」
このみは、身を震わせ、両の手で自らの身体を抱きしめる。
『証拠となる首輪を三つ持って、十八時間後に教会まで来る事。それから、私が脅してるって事実を誰にも話さない事。
その二つが、私が貴女に与える課題よ。大丈夫、課題さえクリアすればちゃんと解毒してあげるから』
このみは、身を震わせ、両の手で自らの身体を抱きしめる。
『証拠となる首輪を三つ持って、十八時間後に教会まで来る事。それから、私が脅してるって事実を誰にも話さない事。
その二つが、私が貴女に与える課題よ。大丈夫、課題さえクリアすればちゃんと解毒してあげるから』
恐怖に震えていた為、
逆に言えばそれ故に逃避出来ていた事実が、再びこのみを襲う。
そう、彼女の命は、後24時間という期限を設けられてしまっているのだ。
逆に言えばそれ故に逃避出来ていた事実が、再びこのみを襲う。
そう、彼女の命は、後24時間という期限を設けられてしまっているのだ。
「うう……っ」
肩を抱いていた手が、自然と首に伸ばされる。
彼女の手が、そこにある滑らかな感触を捕らえる。
硬い、金属の表面。
肩を抱いていた手が、自然と首に伸ばされる。
彼女の手が、そこにある滑らかな感触を捕らえる。
硬い、金属の表面。
そうして、しばらく震えていた彼女ではあるが、しばらくして、再び歩みを始める。
その目的は、目の前にある『教会』
彼女からすればイヤでも恐怖を励起させられる場所ではあるのだが、それでも、『誰か』がいるかもしれない。
いや、言い直そう。
彼女の探し人、『向坂雄二』が居るかもしれない。
故に、彼女は一歩、また一歩と、亀のような歩みでありながら、その建物へと向かった。
その目的は、目の前にある『教会』
彼女からすればイヤでも恐怖を励起させられる場所ではあるのだが、それでも、『誰か』がいるかもしれない。
いや、言い直そう。
彼女の探し人、『向坂雄二』が居るかもしれない。
故に、彼女は一歩、また一歩と、亀のような歩みでありながら、その建物へと向かった。
――結論から言えば、『教会』には人は存在しなかった。
おっかなびっくりと、猫のように丸く、身を縮こませながら何とか『教会』に侵入し、
蟻の歩みで一つ一つ、部屋を見渡し、そうして、誰も居ない事を確認し、
今はただの置物のように、礼拝堂の片隅にしゃがみこんでいる。
蟻の歩みで一つ一つ、部屋を見渡し、そうして、誰も居ない事を確認し、
今はただの置物のように、礼拝堂の片隅にしゃがみこんでいる。
「ユウくん…どこに居るの?」
いつの間にか乾いた喉を、飲み物で潤し、
恐怖と、僅かばかりの安堵を滲ませた声で、弱弱しく求める相手の名を呼ぶ。
そうして、飲み物を出す時に見つけたあるものを見て、また、身を震わせる。
恐怖と、僅かばかりの安堵を滲ませた声で、弱弱しく求める相手の名を呼ぶ。
そうして、飲み物を出す時に見つけたあるものを見て、また、身を震わせる。
それは、平べったい円形の金属と、その両脇から革のベルトが伸びているという形状。
円形の金属の表面はガラスで出来ており、その内側には、真ん中から伸びた針が二本、ほぼ直線を形造っていた。
恐らく、知らないものなど居ないその機械の名は、時計といった。
無論、このみには時計が恐ろしいなどという性癖は無い。
彼女が恐れているのは、
円形の金属の表面はガラスで出来ており、その内側には、真ん中から伸びた針が二本、ほぼ直線を形造っていた。
恐らく、知らないものなど居ないその機械の名は、時計といった。
無論、このみには時計が恐ろしいなどという性癖は無い。
彼女が恐れているのは、
(後…十四時間と、少し?)
彼女の命のリミットが、正確に数えられ始めた時間は、このみは覚えていない。
ただ、おぼろげな記憶から、その位だと推測しただけだ。
ただ、おぼろげな記憶から、その位だと推測しただけだ。
十四時間。
言葉にすると、たったの六文字。
だが、その六文字が、このみにとっては何よりも恐ろしかった。
既に、四時間。
あの、恐怖の始まった時間から、コレだけの時が流れてしまったのだ。
この数字が、あと5回重なったとき、
(私…は……)
その先は、口には出来なかった。
だが、その六文字が、このみにとっては何よりも恐ろしかった。
既に、四時間。
あの、恐怖の始まった時間から、コレだけの時が流れてしまったのだ。
この数字が、あと5回重なったとき、
(私…は……)
その先は、口には出来なかった。
そして、それから逃れるには、
首に嵌っている『ソレ』
『ソレ』を三個集めて、四時間が後三回と半分繰り返されるまでに、教会にいかないといけない。
でも、そんなこと
(無理…だよ…)
無言で、首を振る。
出来るはずなんて、無い。
そう、少女は少女の全てで理解していた。
首に嵌っている『ソレ』
『ソレ』を三個集めて、四時間が後三回と半分繰り返されるまでに、教会にいかないといけない。
でも、そんなこと
(無理…だよ…)
無言で、首を振る。
出来るはずなんて、無い。
そう、少女は少女の全てで理解していた。
だが、それは、
(イヤ…イヤァ……)
(イヤ…イヤァ……)
…怖い、
いやだ、やだ死にたく無いしにたくないなふぁしにたくない
たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて。
しにたくないしにたくないしにたくないしにたkぅない。
ゆうくんゆうくんゆうくんゆうくん
いやだ、やだ死にたく無いしにたくないなふぁしにたくない
たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて。
しにたくないしにたくないしにたくないしにたkぅない。
ゆうくんゆうくんゆうくんゆうくん
…でも、のんびりうずくまっていれば、わたしもお姉ちゃんやたかくんみたいいになる
死にたくない、死ぬのは怖い、死にのはいや、誰か助けて、誰か、誰かなんて駄目、誰かは怖い、だれかは駄目。
誰かじゃやだ。
ユウ君しか居ない。
ただそれはなんのかいけつにもならない。
でもそれだけ、会いたい。
誰かじゃやだ。
ユウ君しか居ない。
ただそれはなんのかいけつにもならない。
でもそれだけ、会いたい。
「神様」
頼るものがないとき、人は神に祈る。
それは、少女だろうと、老人だろうと、男であろうと、女であろうと変わることがない。
親しい人の死。
無理やり放り込まれた殺し合い。
善人だと思った相手の、垣間見えた本性。
それは、少女だろうと、老人だろうと、男であろうと、女であろうと変わることがない。
親しい人の死。
無理やり放り込まれた殺し合い。
善人だと思った相手の、垣間見えた本性。
そのすべてが、彼女から力を奪う。
祈りへと、逃避させる。
その逃避は、終わることが無い。
逃避なのだから、終わる筈も無い。
祈りへと、逃避させる。
その逃避は、終わることが無い。
逃避なのだから、終わる筈も無い。
終わるとするなら、それは、
“ギィィィィィィ”
扉の、軋む、音。
少女以外の、別の要因が存在した場合のみである。
少女以外の、別の要因が存在した場合のみである。
◇
最初、世界は彼女の事は無視する予定だった。
顔には、見覚えがある。
確か、”このみ”
顔には、見覚えがある。
確か、”このみ”
最初に死んだ人達の知り合い。
なのだが、彼女は明らかに役に立ちそうにない。
なのだが、彼女は明らかに役に立ちそうにない。
或いは、この場所で数時間ずっと蹲っていたのかも知れない。
だから、放置することにした。
するはずだった。
だが、間違えて、立ってしまった扉の音が、その選択肢を許さなかった。
だから、放置することにした。
するはずだった。
だが、間違えて、立ってしまった扉の音が、その選択肢を許さなかった。
「……う…誰……!?」
このみが振り向き、その視界に世界の姿を捉える。
その顔に浮かんでいるのは、明らかな怯え。
それを見て、世界の頭には僅かな安堵が浮かぶ。
少なくとも、危険な相手では無い。
身の危険が無いのなら、僅かな話をするのは良い。
彼女は、そう、判断した。
その顔に浮かんでいるのは、明らかな怯え。
それを見て、世界の頭には僅かな安堵が浮かぶ。
少なくとも、危険な相手では無い。
身の危険が無いのなら、僅かな話をするのは良い。
彼女は、そう、判断した。
「私は…私、……清浦刹那」
再び、偽名。
本名を名乗ってしまっても、恐らくは問題の無い相手ではあったが、用心のために偽る事にした。
何らかの事情があって、このみの口から危険と伝えられるかもしれないからだ。
本名を名乗ってしまっても、恐らくは問題の無い相手ではあったが、用心のために偽る事にした。
何らかの事情があって、このみの口から危険と伝えられるかもしれないからだ。
「…一人?」
最低限、必要なことだけを問う。
このみとの長期間の会話は、おそらくは得にはならない。
場合によっては、足手まといが一人増えてしまうかもしれない。
複数の集団に居るのなら兎も角、自分一人で一緒に居ることに、何の意味も無い。
このみとの長期間の会話は、おそらくは得にはならない。
場合によっては、足手まといが一人増えてしまうかもしれない。
複数の集団に居るのなら兎も角、自分一人で一緒に居ることに、何の意味も無い。
「探している、相手がいる。
名前は伊藤、誠」
名前は伊藤、誠」
世界の聞きたい事はそれだけ。
他の事情には興味は無い。
興味を、持たない。
あるのは、ただ自身と誠の身の安全のみであるのだから。
そして、実は、世界はこの質問には期待していなかった。
世界は深くは考えない性格ではあるが、それでも多少の計算くらいはする。
このみは、三人目に出会った相手だ。
このみ自身が何人とであったのかは知らないけど、それでもそんなに差は無いはず。
なら、合計でも出会った相手の数は十人に満たない。
六十人以上の人間がいるなら、平均的に考えてもおおよそ半分の、更に三分の一でしかない。
だから、
他の事情には興味は無い。
興味を、持たない。
あるのは、ただ自身と誠の身の安全のみであるのだから。
そして、実は、世界はこの質問には期待していなかった。
世界は深くは考えない性格ではあるが、それでも多少の計算くらいはする。
このみは、三人目に出会った相手だ。
このみ自身が何人とであったのかは知らないけど、それでもそんなに差は無いはず。
なら、合計でも出会った相手の数は十人に満たない。
六十人以上の人間がいるなら、平均的に考えてもおおよそ半分の、更に三分の一でしかない。
だから、
「ま……こと、くん?」
その、このみの反応は、世界には全くの予想外だった。
◇
「ま……ことくん?」
衝撃。
その名前には、彼女は確かに聞き覚えがあった。
衝撃。
その名前には、彼女は確かに聞き覚えがあった。
先ほど出会ったばかりの相手。
忘れる事の出来ない相手。
忘れたくても、忘れられない相手。。
正確には、その傍に居る相手が、だが。
忘れる事の出来ない相手。
忘れたくても、忘れられない相手。。
正確には、その傍に居る相手が、だが。
「ご、ごめんなさい…知り…ません」
故に、彼女は嘘を付いた。
恐怖故に、
今、ここで教えれば、それは、確実に彼女―刹那の口からあの人―ファルへと伝わるだろう。
そうすれば、その所為で、命の期限が変わるかもしれない。
『アレ』の数が、変わるかもしれない。
それが、怖い。
最悪の場合、自分も再び彼女の元に行かないと行けないのかもしれない。
そんなことは
(イヤ)
もう、会いたくなんて無い。
ただ、一人だけ信頼できる相手。
その相手に、出会わなければならない。
恐怖故に、
今、ここで教えれば、それは、確実に彼女―刹那の口からあの人―ファルへと伝わるだろう。
そうすれば、その所為で、命の期限が変わるかもしれない。
『アレ』の数が、変わるかもしれない。
それが、怖い。
最悪の場合、自分も再び彼女の元に行かないと行けないのかもしれない。
そんなことは
(イヤ)
もう、会いたくなんて無い。
ただ、一人だけ信頼できる相手。
その相手に、出会わなければならない。
だが、それは、
「嘘」
という世界の一言によって、斬って捨てられた。
「嘘」
という世界の一言によって、斬って捨てられた。
「教えて、誠は何処に居るの!?」
知っているのだ。
彼女は、明らかに知っている。
伊藤誠の、居場所を。
世界の探し人が、何処にいるのか。
(誠…)
知りたいと、
逢いたいと、
彼女は、おそらくはこの島に来てから最も純粋な気持ちで、
それ故に、この島に来てから最も激しい気持ちで、行動を起こした。
彼女は、明らかに知っている。
伊藤誠の、居場所を。
世界の探し人が、何処にいるのか。
(誠…)
知りたいと、
逢いたいと、
彼女は、おそらくはこの島に来てから最も純粋な気持ちで、
それ故に、この島に来てから最も激しい気持ちで、行動を起こした。
「だ、駄目です!!」
(会っては駄目)
誠に会う、という事は、
「あ、会いに行くなんて駄目です」
すなわち彼女に会うということだ。
それは、自身のみから発せられる恐怖と、ファルへの恐怖によるものだ。
この、同じようでいて異なる二つの感情が、このみに拒絶の意思を抱かせる。
(会っては駄目)
誠に会う、という事は、
「あ、会いに行くなんて駄目です」
すなわち彼女に会うということだ。
それは、自身のみから発せられる恐怖と、ファルへの恐怖によるものだ。
この、同じようでいて異なる二つの感情が、このみに拒絶の意思を抱かせる。
「何で!?」
無論、世界も引きはしない。
詰め寄る。
怯えるこのみに構わず、制服を掴み上げる。
もはや、演技も何もあったものでは無い。
或いは、かつての抑圧されていた感情が、今発散の機会を得たのかもしれない。
詰め寄る。
怯えるこのみに構わず、制服を掴み上げる。
もはや、演技も何もあったものでは無い。
或いは、かつての抑圧されていた感情が、今発散の機会を得たのかもしれない。
「私は、誠の彼女なんだよ!!
ううん、もう、彼女なんかじゃ無い!!
およめさん…そう、お嫁さんなんだよ!!
その私がなんで誠に会っちゃ駄目なの!?」
ううん、もう、彼女なんかじゃ無い!!
およめさん…そう、お嫁さんなんだよ!!
その私がなんで誠に会っちゃ駄目なの!?」
徐々に力のこもる両手が、グィグィとこのみの喉部を圧迫する。
その力は、徐々に大きな物となる。
このみの意思が揺さぶられる。
その力は、徐々に大きな物となる。
このみの意思が揺さぶられる。
世界には、好みの状況など、知ったことではない。
容易く喋れそうな状態では無いにも関わらず、更に力を込める。
容易く喋れそうな状態では無いにも関わらず、更に力を込める。
このみの意識が、朦朧としだす。
喉が、空気を欲しがる。
腕が、苦しみから逃れようともがく。
身体が、暴れ、
そして、
その、
一撃は、
喉が、空気を欲しがる。
腕が、苦しみから逃れようともがく。
身体が、暴れ、
そして、
その、
一撃は、
トンッと
軽い音だった。
その衝撃は、大したものでは無い。
このみの脆弱な力から放たれたそれはせいぜい、僅かに世界の身体を押した程度だ。
だが、
その衝撃は、大したものでは無い。
このみの脆弱な力から放たれたそれはせいぜい、僅かに世界の身体を押した程度だ。
だが、
「え…?」
驚きの声は、このみのもの
世界は、いとも容易く、あっさりと、ただあっさりと、このみから手を離した。
その顔には、無。
ただ、何も無い感情が浮かんでいた。
世界は、いとも容易く、あっさりと、ただあっさりと、このみから手を離した。
その顔には、無。
ただ、何も無い感情が浮かんでいた。
ケホケホと咳き込みながら、このみは世界から離れる。
恐れと困惑、その両方の感情から。
恐れと困惑、その両方の感情から。
「あ、あの…?」
困惑は、大きい。
僅かに抵抗した、それだけ。
それだけなのに、何故、世界は容易く手を放したのだろう。
ただ、僅かに、お腹に触れただけだというのに。
僅かに抵抗した、それだけ。
それだけなのに、何故、世界は容易く手を放したのだろう。
ただ、僅かに、お腹に触れただけだというのに。
と、そこで、
再び、世界が、前進し、
しようとして、転んだ。
いつの間にか、このみの手から離れていたデイバック。
それに、躓いた形になる。
再び、世界が、前進し、
しようとして、転んだ。
いつの間にか、このみの手から離れていたデイバック。
それに、躓いた形になる。
そうして、倒れた世界だが、その表情は変わらない。
その目には、相変わらずの感情が宿り続けている。
その目には、相変わらずの感情が宿り続けている。
「…教えて」
何故、世界は、あれだけの憎しみ?を目に宿しているのか。
このみには、世界の目に宿っているものが何のか理解はできない。
ただ、感じた。
言葉にできないけど、あれは、良くない感情であると。
何故、世界は、あれだけの憎しみ?を目に宿しているのか。
このみには、世界の目に宿っているものが何のか理解はできない。
ただ、感じた。
言葉にできないけど、あれは、良くない感情であると。
ファルの時とは違う。
あのときの彼女から発せられたのが、極限の「冷たさ」とするなら、今の彼女は極限の「熱さ」
『停』に対して、『動』の感情と言って良い。
それらは決定的に異なるものである。
が、いずれにせよ、そんなことはたいした問題では無いのだが。
重要なのはこのみがその感情を敏感に感じ取った、それだけの事でしかない。
あのときの彼女から発せられたのが、極限の「冷たさ」とするなら、今の彼女は極限の「熱さ」
『停』に対して、『動』の感情と言って良い。
それらは決定的に異なるものである。
が、いずれにせよ、そんなことはたいした問題では無いのだが。
重要なのはこのみがその感情を敏感に感じ取った、それだけの事でしかない。
「教えてよ。
誠は、何処?」
誠は、何処?」
「私は、誠に会う権利がある。
誠は、私に会う義務がある!
だから、教えて!!」
誠は、私に会う義務がある!
だから、教えて!!」
初せられるのは、恐ろしいまでの『動』の感情。
だが、その熱気故に、
だが、その熱気故に、
「駄目……なんです!!」
このみもまた、熱を発した。
本来、感情とは、熱を発するものである。
ファルのような冷たさの前には、何の対処もできなかったこのみではあるが、
いまの世界の発する熱を受けて、このみの中の感情も、熱を持ち始めた。
それは、恐怖、であち、恐れであり、おびえであり、そして、小さな小さな「怒り」であった。
もっとも、この場合細かい言葉に意味などない。
熱というのは、動力である。
さきほどまで、恐怖に震えることしか出来なかったこのみではあるが、
その熱を得た事によって、ようやく、起動しだしたのである。
本来、感情とは、熱を発するものである。
ファルのような冷たさの前には、何の対処もできなかったこのみではあるが、
いまの世界の発する熱を受けて、このみの中の感情も、熱を持ち始めた。
それは、恐怖、であち、恐れであり、おびえであり、そして、小さな小さな「怒り」であった。
もっとも、この場合細かい言葉に意味などない。
熱というのは、動力である。
さきほどまで、恐怖に震えることしか出来なかったこのみではあるが、
その熱を得た事によって、ようやく、起動しだしたのである。
そうして、その熱は、
「…そう」
世界にも伝わった。
熱が、更に大きな熱を呼んだのだ
ただ、言うなれば子供同士の喧嘩がヒートアップしたのと同じ次元の事柄でしかない。
「…そう」
世界にも伝わった。
熱が、更に大きな熱を呼んだのだ
ただ、言うなれば子供同士の喧嘩がヒートアップしたのと同じ次元の事柄でしかない。
しかし、この場においては、それは喧嘩ではすまない。
世界からすれば、譲ることのでき無い事柄だ。
本来、西園寺世界は短絡的な部類に属する性格だ。
多少、奥手であり、引っ込み思案な部類はあるが、こと目的へと直結するのであれば、その行動を惜しむことはない。
それが、後にどのような結果をもたらすのかまでは、考えないのではあるが。
その彼女を、今押しとどめているのは、偏に、「腹の中の子の存在だ」
妊娠初期において、激しい運動を行うということは、流産につながると言う。
世界も、無論その事実を産婦人科にて注意されていた。
それゆえに、彼女は動かない、動けない。
本来、西園寺世界は短絡的な部類に属する性格だ。
多少、奥手であり、引っ込み思案な部類はあるが、こと目的へと直結するのであれば、その行動を惜しむことはない。
それが、後にどのような結果をもたらすのかまでは、考えないのではあるが。
その彼女を、今押しとどめているのは、偏に、「腹の中の子の存在だ」
妊娠初期において、激しい運動を行うということは、流産につながると言う。
世界も、無論その事実を産婦人科にて注意されていた。
それゆえに、彼女は動かない、動けない。
だが、一方のこのみからすれば、実は大した事ではない。
そもそも、教えてしまっても特に支障のない事実ではある。
だが、このみを押しとどめるのは、ファルの期限を損ねてしまうのではないかという『自身の恐怖』と、
そして、もうひとつ、「世界への気遣い」という『ファルへの恐怖』だ。
そもそも、教えてしまっても特に支障のない事実ではある。
だが、このみを押しとどめるのは、ファルの期限を損ねてしまうのではないかという『自身の恐怖』と、
そして、もうひとつ、「世界への気遣い」という『ファルへの恐怖』だ。
世界が誠に合うとい事は、それすなわちファルと出会うということだ。
そうなった場合、世界の身に、何か不幸な出来事が起こってしまうかもしれない。
そのふたつが、このみを押しとどめる。
二人の、奇妙に一致した行動が、この場の硬直を生んでいた。
そうなった場合、世界の身に、何か不幸な出来事が起こってしまうかもしれない。
そのふたつが、このみを押しとどめる。
二人の、奇妙に一致した行動が、この場の硬直を生んでいた。
だが、この場において、一つ、明確に異なる事象が存在する。
それは「憎悪、もっというなら、殺意の有無だ」
このみには無論そういった感情は存在しない。
(いきなり首をつかまれた理不尽に対する怒りはあったが)
それに対して、世界には明確な憎しみが存在していた。
それは「憎悪、もっというなら、殺意の有無だ」
このみには無論そういった感情は存在しない。
(いきなり首をつかまれた理不尽に対する怒りはあったが)
それに対して、世界には明確な憎しみが存在していた。
偶然とはいえ、このみは世界の腹を殴ったのである。
そもそもの原因が自分にある事は、世界の頭には無い。
あるのはただ、怒りだけ。
自分と誠の間のかけがえの無い繋がりに、攻撃を加えた。
これは許しがたい行動である。
そもそもの原因が自分にある事は、世界の頭には無い。
あるのはただ、怒りだけ。
自分と誠の間のかけがえの無い繋がりに、攻撃を加えた。
これは許しがたい行動である。
母という存在の本能と、なにより、誠との繋がりが奪われるかもしれないという恐れ。
この二つが、明確な怒りとなって世界を満たしていた。
この二つが、明確な怒りとなって世界を満たしていた。
さて、一般的に、子を持つ親が子に危険が迫ったときに撮る行動派一つ。
攻撃である。
妊娠中であるとはいえ、それは変わらない。
世界には武器が無かった。
攻撃である。
妊娠中であるとはいえ、それは変わらない。
世界には武器が無かった。
お互いに素手同士という状況が、世界を押しとどめていたのだ。
だが、
「…あっ」
このみの声が、漏れる。
一つ、均衡を崩しうるだけのものがあった。
先ほどのもつれあいさいに、地面に置きっぱなしであったがゆえに、世界が足をとられる原因となったもの。
だが、
「…あっ」
このみの声が、漏れる。
一つ、均衡を崩しうるだけのものがあった。
先ほどのもつれあいさいに、地面に置きっぱなしであったがゆえに、世界が足をとられる原因となったもの。
“このみのデイパック”
このみが、その口を閉じていなかったのは、偶然だ。
ただ、考え事をしていた間に、世界が訪れた、それだけの事。
だが、その所為で、『ソレ』は零れ出ていた。
ただ、考え事をしていた間に、世界が訪れた、それだけの事。
だが、その所為で、『ソレ』は零れ出ていた。
『包丁』
この島のゲームにおいては、あきれるほど弱い武器でしかない。
そもそも、世界の手には、すでに遥かに強力な武器が存在してはいる。
このみも、ドライより、強力な武器をもらっていた。
だが、この場においてはそれらはどちらも、意味が無い。
片方は使用できず、片方は奪われている。
そもそも、世界の手には、すでに遥かに強力な武器が存在してはいる。
このみも、ドライより、強力な武器をもらっていた。
だが、この場においてはそれらはどちらも、意味が無い。
片方は使用できず、片方は奪われている。
故に、事は単なる非力な女子高生同士の争い。
で、あるが故に、この「包丁」は、場の均衡を崩すのに十分過ぎる武器であった。
で、あるが故に、この「包丁」は、場の均衡を崩すのに十分過ぎる武器であった。
◇
両手に握る。
ただ、それだけ。
構えも何も無い。
ただ、腰だめに両手で持った放置用があるだけ。
だが、それで十分。
刃物というもの自体が、非常に恐れを抱かせるものである。
ただ、それだけ。
構えも何も無い。
ただ、腰だめに両手で持った放置用があるだけ。
だが、それで十分。
刃物というもの自体が、非常に恐れを抱かせるものである。
ソレによって、場の空気は急速的に一つの方向へ向かう。
片方は、明確な優位と、それによって衰えぬ、むしろ温度を増した怒り。
片方は、さらに増した恐れとによって、凍りついた恐怖。
片方は、明確な優位と、それによって衰えぬ、むしろ温度を増した怒り。
片方は、さらに増した恐れとによって、凍りついた恐怖。
二人は、ジリジリと、移動する。
「さあ…教えて!!
誠は……誠は何処!?」
「う…あ…」
誠は……誠は何処!?」
「う…あ…」
このみをあらたな恐怖が襲う。
熱さを持った感情は、その保たれる期間においては冷たさに劣る。
だが、その分一瞬の大きさにおいては冷たさの比では無い。
「む、向こうのほうです!!」
このみの中にある恐怖は、世界への恐怖によって、上書きされていた。
そして、その恐怖が、このみの口を開かせた。
だが、
熱さを持った感情は、その保たれる期間においては冷たさに劣る。
だが、その分一瞬の大きさにおいては冷たさの比では無い。
「む、向こうのほうです!!」
このみの中にある恐怖は、世界への恐怖によって、上書きされていた。
そして、その恐怖が、このみの口を開かせた。
だが、
「向こうってどっち!?」
その言葉は、世界を満足させうるものでは無かった。
「む、向こうは向こうです!」
「だから、何処!?」
「だから、何処!?」
“ジリッ”と世界がにじみよる。
「ひうっ」と、このみがわずかに下がる。
「ひうっ」と、このみがわずかに下がる。
「こ、細かい場所はわかりません!!」
恐怖ゆえに、がむしゃらに逃げてきたこのみには、自分がいま何処にいるのか、どこからどのようにしてここまで来たのかがわからない。
ただ、ドライ、誠、ファルとどこかの町の中で出会った。それだけだ。
故に、このみにはそもそも答えようがないのだ。
ただ、ドライ、誠、ファルとどこかの町の中で出会った。それだけだ。
故に、このみにはそもそも答えようがないのだ。
だが、
「…そう、言わないつもりなの!?」
そのような事情は、世界にはなんらかかわりの無いことだ。
彼女にあるのは、ただ盲目的に、誠に会いたいと言うだけのもの。
それ故に、彼女の目には、このみはとぼけているようにしか映らない。
彼女にあるのは、ただ盲目的に、誠に会いたいと言うだけのもの。
それ故に、彼女の目には、このみはとぼけているようにしか映らない。
だから、さらに一歩が進まれる。
このみが下がる。
世界が進む。
このみが下がる。
世界がすすむ。
下がる
進む
下がる
すすむ。
世界が進む。
このみが下がる。
世界がすすむ。
下がる
進む
下がる
すすむ。
言葉尻だけを捕らえると、その距離は変化が無いように見える。
だが、その距離は徐々に縮まっていく。
まっすぐ進むものと、のろのろと下がるものの差だ。
だが、その距離は徐々に縮まっていく。
まっすぐ進むものと、のろのろと下がるものの差だ。
その、危うい均衡
何かの拍子に、壊れてしまう均衡が、
何かの拍子に、壊れてしまう均衡が、
「え?」
崩れた。
唐突に、片方の少女が転んだことによって。
唐突に、片方の少女が転んだことによって。
…それは、単なる偶然。
二人ともが、たまたま忘れられていた『あるもの』に、片方の少女が足をぶつけただけ。
いや、ぶつけた、という表現すら荒々しい。
ただ、『ソレ』が、片方の少女の踵に触れただけの事。
たった、それだけの小さな小さな変化だった。
だが、その、僅かな変化は、元より不安定な体勢であった少女の、バランスを崩すだけの変化であり、
その、崩れたバランスが、片方の少女―このみの、運命を決めた。
二人ともが、たまたま忘れられていた『あるもの』に、片方の少女が足をぶつけただけ。
いや、ぶつけた、という表現すら荒々しい。
ただ、『ソレ』が、片方の少女の踵に触れただけの事。
たった、それだけの小さな小さな変化だった。
だが、その、僅かな変化は、元より不安定な体勢であった少女の、バランスを崩すだけの変化であり、
その、崩れたバランスが、片方の少女―このみの、運命を決めた。
追うものと、追われるもの。
そのどちらであろうと、片方が転んだとすれば、わざわざ起き上がるのを待ったりはしない。
ましてや、
「……!!
捕まえた!!」
「え……、あっ!!」
追う方の立場からすれば、いとも容易く捕らえることの出来る瞬間を、逃す筈が無い。
そのどちらであろうと、片方が転んだとすれば、わざわざ起き上がるのを待ったりはしない。
ましてや、
「……!!
捕まえた!!」
「え……、あっ!!」
追う方の立場からすれば、いとも容易く捕らえることの出来る瞬間を、逃す筈が無い。
世界が、このみの腹に馬乗りになる。
下腹の上に尻を乗せ容赦なく体重を掛ける。
そして、
「ひっ………ぅ」
このみの顔の上に、包丁を突きつける。
優位を悟っているのか、はたまた相手の拘束を万全にする為か、包丁を支えるのは右手のみ。
左手は、ご丁寧にこのみの片方のお下げを握った上で、このみの右肩を押さえている。
下腹の上に尻を乗せ容赦なく体重を掛ける。
そして、
「ひっ………ぅ」
このみの顔の上に、包丁を突きつける。
優位を悟っているのか、はたまた相手の拘束を万全にする為か、包丁を支えるのは右手のみ。
左手は、ご丁寧にこのみの片方のお下げを握った上で、このみの右肩を押さえている。
「…さぁ!!
もうとぼけさせない!
誠は……誠は何処!?」
もうとぼけさせない!
誠は……誠は何処!?」
「あ…、あ……」
このみは何とか包丁の切っ先から逃れようともがくが、女性一人の体重を跳ね除けられる筈が無い。
それどころか、重みによる圧迫感で痛みと苦しさすら襲って来る。
それでも少しでも離れようと懸命に首を動かすが、動くたびに世界に握られたお下げの痛みで、やがて停止を余儀なくされる。
このみは何とか包丁の切っ先から逃れようともがくが、女性一人の体重を跳ね除けられる筈が無い。
それどころか、重みによる圧迫感で痛みと苦しさすら襲って来る。
それでも少しでも離れようと懸命に首を動かすが、動くたびに世界に握られたお下げの痛みで、やがて停止を余儀なくされる。
「う……で、ですから……」
判らない、と続けられなかった。
“ガキリッ”という硬質な音と共に、包丁の切っ先がこのみの顔の左横に突き立った為である。
それは、このみの頬にもわずかに赤い線を走らせ、少女の可愛らしい顔に、似合わぬ化粧を施す。
『その場しのぎの言い訳なんて要らない』
言葉よりも明確に、かつ雄弁に刃物は語った。
判らない、と続けられなかった。
“ガキリッ”という硬質な音と共に、包丁の切っ先がこのみの顔の左横に突き立った為である。
それは、このみの頬にもわずかに赤い線を走らせ、少女の可愛らしい顔に、似合わぬ化粧を施す。
『その場しのぎの言い訳なんて要らない』
言葉よりも明確に、かつ雄弁に刃物は語った。
“カチカチ”と、音が響きだす。
“ヒュウヒュウ”と、不自然な風の音が生まれる。
その二つは、共に、赤い綺麗な入り口を持つ小さな空洞から響いてくる。
押さえ切れない震えと、最早声にすらならない悲鳴が、このみの口から漏れ出ている音。
少女の瞳孔が、大きく見開かれる。
その端から、僅かな雫があふれ出す。
だが、それは川にはならない。
恐怖に見開かれているが故、あふれ出す事すら不可能なのだ。
“ヒュウヒュウ”と、不自然な風の音が生まれる。
その二つは、共に、赤い綺麗な入り口を持つ小さな空洞から響いてくる。
押さえ切れない震えと、最早声にすらならない悲鳴が、このみの口から漏れ出ている音。
少女の瞳孔が、大きく見開かれる。
その端から、僅かな雫があふれ出す。
だが、それは川にはならない。
恐怖に見開かれているが故、あふれ出す事すら不可能なのだ。
その手の性癖を持つ男ならば、欲望の余りに乱暴しそうな程に怯えたこのみの姿を見ても、世界には何の感慨も沸かない。
あるのはただ、いらつきのみ。
それ故に、再び包丁を持ち上げ、
「言わないなら…次は……」
と、そこで、世界の目に映ったのは、自らの左手に収まっていたもの、
「このお下げの片っぽを切り落とすよ!」
それを用いて、更にこのみを追い詰める。
世界には、このみに対して加減する理由など無い。
むしろ、腹の子に危害を加えたのだから、無造作に包丁を振り落としても良いとさえ考えている。
ソレをしないのは、このみが誠の居場所を知っているから。 それだけの理由。
逆に言えば、それを聞き出すためならば、何でも行うつもりである。
あるのはただ、いらつきのみ。
それ故に、再び包丁を持ち上げ、
「言わないなら…次は……」
と、そこで、世界の目に映ったのは、自らの左手に収まっていたもの、
「このお下げの片っぽを切り落とすよ!」
それを用いて、更にこのみを追い詰める。
世界には、このみに対して加減する理由など無い。
むしろ、腹の子に危害を加えたのだから、無造作に包丁を振り落としても良いとさえ考えている。
ソレをしないのは、このみが誠の居場所を知っているから。 それだけの理由。
逆に言えば、それを聞き出すためならば、何でも行うつもりである。
その、世界の意思は、このみにも伝わっている。
細かい事情までは判らずとも、誠の居場所を喋らない限り、世界は諦めないと理解出来ていた。
「だからっ……本当に判らないんです!!」
だが、それでもこのみには他に答える言葉など無い。
そもそも、答えられないのだから。
細かい事情までは判らずとも、誠の居場所を喋らない限り、世界は諦めないと理解出来ていた。
「だからっ……本当に判らないんです!!」
だが、それでもこのみには他に答える言葉など無い。
そもそも、答えられないのだから。
「……そう…」
その言葉を、最早世界は最後まで聞きもしない。
ただ、左手に掴んでいたお下げを力任せに引っ張り、
「痛ッ!…」
このみの悲鳴に構わず、根元のリボン近くに包丁を当てる。
そうして、ギチギチと、力任せに切断しようとする。
「やっ! あ、やめて下さい!!
本当に!痛! 本当に!判らないんです!!」
その、このみの悲鳴、哀願を聞いて……
「そんなことが聞きたいんじゃない!」
聞き流す。
そんな物には何の意味も無い。
世界の求めている答えには程遠いのだから。
なので、更に力を込める。
このみも必死に抵抗するが、不自然な姿勢かつ、萎えた腕の力では世界を止めるに至らない。
その言葉を、最早世界は最後まで聞きもしない。
ただ、左手に掴んでいたお下げを力任せに引っ張り、
「痛ッ!…」
このみの悲鳴に構わず、根元のリボン近くに包丁を当てる。
そうして、ギチギチと、力任せに切断しようとする。
「やっ! あ、やめて下さい!!
本当に!痛! 本当に!判らないんです!!」
その、このみの悲鳴、哀願を聞いて……
「そんなことが聞きたいんじゃない!」
聞き流す。
そんな物には何の意味も無い。
世界の求めている答えには程遠いのだから。
なので、更に力を込める。
このみも必死に抵抗するが、不自然な姿勢かつ、萎えた腕の力では世界を止めるに至らない。
…余談ではあるが、世界は料理が上手くない。なので、包丁の使い方も良く知らない。
包丁に限らず、刃物とはただ力任せに当てるだけでは大して切れはしない。(はさみは別だが)
知らない人はスーパーなどで生肉辺りを買って試してみるといいが、包丁を当てても表面に刃筋が付くだけで、一向に切れはしないのだ。
野菜程度の厚さと硬さがあるなら、包丁でも充分だが、柔らかく、厚みのあるものは、力任せでは簡単には切れないのだ。
刃物で物を切るには、『刃を引く』、或いは『刃筋を立てる』といった動作が必要になる。
包丁に限らず、刃物とはただ力任せに当てるだけでは大して切れはしない。(はさみは別だが)
知らない人はスーパーなどで生肉辺りを買って試してみるといいが、包丁を当てても表面に刃筋が付くだけで、一向に切れはしないのだ。
野菜程度の厚さと硬さがあるなら、包丁でも充分だが、柔らかく、厚みのあるものは、力任せでは簡単には切れないのだ。
刃物で物を切るには、『刃を引く』、或いは『刃筋を立てる』といった動作が必要になる。
さて、つまり、逆に言えば、世界はただひたすらこのみの髪を力任せに握り、グイグイと包丁を押し合てているだけだ。
無論、それでも刃物と髪の毛である以上はある程度は数本の髪が切れるが、元よりボリュームのあるこのみのお下げを切断するには至らない。
だが、それはつまり、力任せに髪が引かれ続けられるという事。
握られた髪はクシャクシャとなり、何本かは抜ける、それは、『肉体的な苦痛』と言う面においては、綺麗に髪を切断されるよりも遥かに勝る。
そうして、この島において初めて与えられる『直接的な暴力』は、このみのありとあらゆる感情を切り裂いてゆく。
そう、いままでこのみを支配していた『ファルへの恐怖』すらも、消えうせる程に。
そして、力任せ故に軌道のズレた包丁が、お下げを纏めるリボンに当たり、切り裂かれた時、
無論、それでも刃物と髪の毛である以上はある程度は数本の髪が切れるが、元よりボリュームのあるこのみのお下げを切断するには至らない。
だが、それはつまり、力任せに髪が引かれ続けられるという事。
握られた髪はクシャクシャとなり、何本かは抜ける、それは、『肉体的な苦痛』と言う面においては、綺麗に髪を切断されるよりも遥かに勝る。
そうして、この島において初めて与えられる『直接的な暴力』は、このみのありとあらゆる感情を切り裂いてゆく。
そう、いままでこのみを支配していた『ファルへの恐怖』すらも、消えうせる程に。
そして、力任せ故に軌道のズレた包丁が、お下げを纏めるリボンに当たり、切り裂かれた時、
「誠さんはファ、ファルさんと一緒にいます!!
わ、私はファルさんに脅されて逃げたから、場所は何処かの町の中としか本当に判らないんです!
本当です! 本当にそれしか判らないです! であります!!」
このみの精神は、遂に臨界を迎えた。
喋れる範囲の事も、喋ってはならない事も、なんの区別もなくただ叫んだ。
わ、私はファルさんに脅されて逃げたから、場所は何処かの町の中としか本当に判らないんです!
本当です! 本当にそれしか判らないです! であります!!」
このみの精神は、遂に臨界を迎えた。
喋れる範囲の事も、喋ってはならない事も、なんの区別もなくただ叫んだ。
一気に叫んだ為か、ハァハァと息を乱し、感情の糸が切れたゆえ、その目からは涙が糸のように流れる。
だが、無論そんなこのみの状態などに世界は関心は無い。
あるのはただ、
「…脅された…どういう事?
誰なの、その人?」
このみの発言で得た、新たな誠の情報についてのみ。
脅されたとはどういう事か?
それはつまり誠の身に、何か危険が迫っているのか?
「……う…そ、それは」
このみは一しきり喋った事で、漸く『ファルへの恐怖』を思い出す。
だが、既に遅い。
最早、してはいけないミスを犯してしまったのだ。
その事を理解できるが故に、このみは再び口を紡ごうとするが、
「……」
「カ、カレーに、毒を入れられたんです!!」
だが、無論そんなこのみの状態などに世界は関心は無い。
あるのはただ、
「…脅された…どういう事?
誰なの、その人?」
このみの発言で得た、新たな誠の情報についてのみ。
脅されたとはどういう事か?
それはつまり誠の身に、何か危険が迫っているのか?
「……う…そ、それは」
このみは一しきり喋った事で、漸く『ファルへの恐怖』を思い出す。
だが、既に遅い。
最早、してはいけないミスを犯してしまったのだ。
その事を理解できるが故に、このみは再び口を紡ごうとするが、
「……」
「カ、カレーに、毒を入れられたんです!!」
再び無言で包丁を構える世界を目にして、口は自然と開いてしまう。
最初は優しそうな人であった事。
カレーには遅効性の毒が入れられていた事。
ドライに貰った銃を奪われた事。
一日の間に首輪を三個集めなければならない事。
自分が“向坂雄二”を求めて当てもなく彷徨った事。
ファルの外見的特徴とついでにこのみ自身の情報に至るまでの全てを、世界に喋った。
最初は優しそうな人であった事。
カレーには遅効性の毒が入れられていた事。
ドライに貰った銃を奪われた事。
一日の間に首輪を三個集めなければならない事。
自分が“向坂雄二”を求めて当てもなく彷徨った事。
ファルの外見的特徴とついでにこのみ自身の情報に至るまでの全てを、世界に喋った。
「…うっ…ひっく……」
このみは唯一自由になる左腕を顔に当てても泣きじゃくっている。
喋ったことで再現された恐怖。
喋ってしまった事で訪れる新たな恐怖。
未だに頭部に残る痛み。
それらが、ただ涙を流させる。
だが、
「そう…じゃあ柚原さんは、誠をそんな人の所に置き去りにしたんだ」
“ブンッ”と、
「…え」
このみは唯一自由になる左腕を顔に当てても泣きじゃくっている。
喋ったことで再現された恐怖。
喋ってしまった事で訪れる新たな恐怖。
未だに頭部に残る痛み。
それらが、ただ涙を流させる。
だが、
「そう…じゃあ柚原さんは、誠をそんな人の所に置き去りにしたんだ」
“ブンッ”と、
「…え」
無造作に、“このみの左肩に包丁を突き刺した”
「っあ!
あああああああああああっ!!」
このみの肩を、まず熱さが襲う。
鎖骨に阻まれ、肩の上部を軽く切り裂かれただけとはいえ、その純粋な『痛み』は、このみの脳髄を真っ白に焼く。
傷口から、僅かとはいえ赤い小川が湧き出す。
喉が、自然と絶叫を迸らせる。
「うるさい!!」
だが、それも世界には雑音としか聞こえない。
「誠を!そんな女のところに放っておいて!
自分だけ逃げておいて!!」
世界の頭には、このみの境遇についてなどはカケラも無い。
あるのは、愛しい誠を『そんな女』の所に置き去りにしたという事に対する怒りのみ。
だから、“もう一度包丁を振り落ろした”
再び悲鳴と、
「やぁ!めて!!
痛い!! 赦して!下さい!!」
哀願。
今度の刃は少しそれて、このみの二の腕の外側を浅く切り裂いた。
そこからも湧き水が生まれる。
滂沱と涙が零れ、必死で暴れる首の動作で撒き散らされる。
傷を負った左腕が、辺り構わず振り回される。
だが、それが、一つの偶然を生じさせる。
あああああああああああっ!!」
このみの肩を、まず熱さが襲う。
鎖骨に阻まれ、肩の上部を軽く切り裂かれただけとはいえ、その純粋な『痛み』は、このみの脳髄を真っ白に焼く。
傷口から、僅かとはいえ赤い小川が湧き出す。
喉が、自然と絶叫を迸らせる。
「うるさい!!」
だが、それも世界には雑音としか聞こえない。
「誠を!そんな女のところに放っておいて!
自分だけ逃げておいて!!」
世界の頭には、このみの境遇についてなどはカケラも無い。
あるのは、愛しい誠を『そんな女』の所に置き去りにしたという事に対する怒りのみ。
だから、“もう一度包丁を振り落ろした”
再び悲鳴と、
「やぁ!めて!!
痛い!! 赦して!下さい!!」
哀願。
今度の刃は少しそれて、このみの二の腕の外側を浅く切り裂いた。
そこからも湧き水が生まれる。
滂沱と涙が零れ、必死で暴れる首の動作で撒き散らされる。
傷を負った左腕が、辺り構わず振り回される。
だが、それが、一つの偶然を生じさせる。
“孤拳”という拳の類型が存在する。
手首を少々内側に曲げ、手首の外側の付け根、丸い部分での打撃の事を言う。
肉が薄く、硬い骨が直接ぶつかる上に、普通の拳と違って間接が少ない為、衝撃が直に伝わりやすいという利点がある。
それは、普通の女子高生が扱うのであれば、拳骨で殴るよりも遥かに威力がある。
手首を少々内側に曲げ、手首の外側の付け根、丸い部分での打撃の事を言う。
肉が薄く、硬い骨が直接ぶつかる上に、普通の拳と違って間接が少ない為、衝撃が直に伝わりやすいという利点がある。
それは、普通の女子高生が扱うのであれば、拳骨で殴るよりも遥かに威力がある。
その丁度“孤拳”の位置である手首の付け根が、“包丁を握る世界の指”に、全力で叩きつけられた。
「っ痛!」
その威力は、世界の手の軌道を外側にずらし、そして、
“カラァァァン”と
世界の手から包丁を弾き飛ばした。
「なっ!!」
距離は、10メートル程。
慌てて、世界は包丁を取りに向かう。
だが、これは失策。
圧倒的に優位な姿勢に居たのだから、その姿勢を崩すべきでは無かったのだ。
「っ痛!」
その威力は、世界の手の軌道を外側にずらし、そして、
“カラァァァン”と
世界の手から包丁を弾き飛ばした。
「なっ!!」
距離は、10メートル程。
慌てて、世界は包丁を取りに向かう。
だが、これは失策。
圧倒的に優位な姿勢に居たのだから、その姿勢を崩すべきでは無かったのだ。
何処にそんな力があったのか、世界が包丁を拾ったその時には、
「はっ!はっ…………っ!!」
このみは、右手で左手を押さえながら、それでも走って逃げ出していた。
慌てて、世界は追いかけようとするが、
「……!!」
それは、出来ない。
今の世界には、激しい運動は厳禁なのだから。
その、迷いの所為もあり、
“ギィィィィィィ”という鈍い音と共にモスクの扉が開き、
このみは、死地を抜け出すことに成功した。
「はっ!はっ…………っ!!」
このみは、右手で左手を押さえながら、それでも走って逃げ出していた。
慌てて、世界は追いかけようとするが、
「……!!」
それは、出来ない。
今の世界には、激しい運動は厳禁なのだから。
その、迷いの所為もあり、
“ギィィィィィィ”という鈍い音と共にモスクの扉が開き、
このみは、死地を抜け出すことに成功した。
◇
(間違えた)
走って逃げられては、追いつく方法は無い。
誠を置き去りにした子を逃がしてしまったどころか、顔も覚えられてしまった。
…私の『集団に加わる』という方針から考えると、とても拙い。
どうにかして、あの子を殺さないと…。
走って逃げられては、追いつく方法は無い。
誠を置き去りにした子を逃がしてしまったどころか、顔も覚えられてしまった。
…私の『集団に加わる』という方針から考えると、とても拙い。
どうにかして、あの子を殺さないと…。
と、そこで世界はモスク内を見渡す。
そこには、二つのデイパック。
一つは世界ので、もう一つはこのみのだ。
怪我を負った上に、デイパックも無い相手ではあるが、それでも、誰かが殺してくれる事を期待するのは都合が良すぎる。
恐らく、その前に(偽名とはいえ)世界の情報が広まる可能性が高い。
そこには、二つのデイパック。
一つは世界ので、もう一つはこのみのだ。
怪我を負った上に、デイパックも無い相手ではあるが、それでも、誰かが殺してくれる事を期待するのは都合が良すぎる。
恐らく、その前に(偽名とはいえ)世界の情報が広まる可能性が高い。
(なんとか、しないと)
二つのデイパックを背負い、モスクを後にする。
どちらの方向に向かったかも不明だが、それでも、追わなければならない。
このみを、殺す為に。
二つのデイパックを背負い、モスクを後にする。
どちらの方向に向かったかも不明だが、それでも、追わなければならない。
このみを、殺す為に。
【B-3 モスクの前/早朝、放送直前】
【西園寺世界@School Days】
【装備】:包丁 時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式、このみのデイパック
【状態】:健康、妊娠中
【思考・行動】
基本:保身を第一に考える。元の場所に帰還して子供を産む。
0:このみを追う。
1:大集団に加わって安全を確保する。知人と一緒に帰還できない様なら、優勝する為機を見てまとめて爆破する。
2:誠や言葉、刹那を探す。
3:積極的な殺人はしない。しかし、後々障害になりそうなら知人でも周囲にばれない様に排除。
4:服を着替えて、『清浦刹那』と同一人物であると思われないようにする。
5:様々な理由によりこのみは殺す。
6:ファルについて考える。
【備考】
※参戦時期は「『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※桜と鈴は死亡したと思っています。ただし、生存の可能性も考慮しています。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
※このみから、このみの知り合い(雄二、ドライ)とファルについて聞きました。
【西園寺世界@School Days】
【装備】:包丁 時限信管@現実×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.9kg)@現実
【所持品】:支給品一式、このみのデイパック
【状態】:健康、妊娠中
【思考・行動】
基本:保身を第一に考える。元の場所に帰還して子供を産む。
0:このみを追う。
1:大集団に加わって安全を確保する。知人と一緒に帰還できない様なら、優勝する為機を見てまとめて爆破する。
2:誠や言葉、刹那を探す。
3:積極的な殺人はしない。しかし、後々障害になりそうなら知人でも周囲にばれない様に排除。
4:服を着替えて、『清浦刹那』と同一人物であると思われないようにする。
5:様々な理由によりこのみは殺す。
6:ファルについて考える。
【備考】
※参戦時期は「『二人の恋人』ED直後です。従って、桂言葉への感情や関係は良好です。
※下着や靴の中などにC4を仕込んでいます。デイパック内部にC4は存在しません。
※時限信管はポケットに入っています。デイパック内部に時限信管は存在しません。
※桜と鈴は死亡したと思っています。ただし、生存の可能性も考慮しています。
※衛宮士郎、リトルバスターズ!勢の身体的特徴や性格を把握しました。
※このみから、このみの知り合い(雄二、ドライ)とファルについて聞きました。
【時限信管@現実】
C4やTNT、ガソリンといった爆発物を一定時間後に起爆させる為の装置。軽量かつ小型なのでポケットにも入ります。
たとえ火の中水の中草の中(中略)あの子のスカートの中でさえも、カレーの中でも作動する信頼性の高さも魅力。
起動後の爆発までの猶予は一律で三分。カップ麺が出来るまで。
接触信管とは違って、戦闘中に使っていられるほどの余裕はまずないだろう。
C4やTNT、ガソリンといった爆発物を一定時間後に起爆させる為の装置。軽量かつ小型なのでポケットにも入ります。
たとえ火の中水の中草の中(中略)あの子のスカートの中でさえも、カレーの中でも作動する信頼性の高さも魅力。
起動後の爆発までの猶予は一律で三分。カップ麺が出来るまで。
接触信管とは違って、戦闘中に使っていられるほどの余裕はまずないだろう。
【BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C-4@現実】
米軍御用達のプラスチック爆薬C4のM5A1ブロック。2.5ポンド、即ちおよそ1.13kg入り。
どんな形状にも変形できる使い勝手の良さと、信管による起爆以外ではまず爆発しない信頼性を持ち合わせる。
逆に言えば、信管がなければ火をつけても普通に燃えるだけなので燃料程度にしか使えない。
破壊力はTNT換算で1.3~1.4倍程度とこちらも優秀。
ちなみにTNTを使用したM26破片手榴弾の装薬量は156gな為、およそ100g強でC4は手榴弾と同程度の爆発力を持つということである。
ただし、破片による殺傷を考慮していない為、上述の量では破壊力そのものは及ばない。
米軍御用達のプラスチック爆薬C4のM5A1ブロック。2.5ポンド、即ちおよそ1.13kg入り。
どんな形状にも変形できる使い勝手の良さと、信管による起爆以外ではまず爆発しない信頼性を持ち合わせる。
逆に言えば、信管がなければ火をつけても普通に燃えるだけなので燃料程度にしか使えない。
破壊力はTNT換算で1.3~1.4倍程度とこちらも優秀。
ちなみにTNTを使用したM26破片手榴弾の装薬量は156gな為、およそ100g強でC4は手榴弾と同程度の爆発力を持つということである。
ただし、破片による殺傷を考慮していない為、上述の量では破壊力そのものは及ばない。
◇
(もう、やだよう……)
何で、こんなに酷い目に会わないといけないのだろう。
(私が何をしたの?)
何で、酷い目にばかり会うのだろう。
(お願い、助けてよ…)
何で、こんなに酷い目に会わないといけないのだろう。
(私が何をしたの?)
何で、酷い目にばかり会うのだろう。
(お願い、助けてよ…)
(ユウくん……)
そうして、まもなく、
このみはその名前を聞く事になる。
このみはその名前を聞く事になる。
【B-3 モスクの周辺/早朝、放送直前】
【柚原このみ@To Heart2】
【装備:防弾チョッキ】
【所持品:無し】
【状態:左肩上部と二の腕に軽い切り傷(出血中そのうち止まります)、
右のお下げのリボンが無い上に不ぞろいに切り裂かれている、混乱、恐怖、人間不信】
【思考・行動】
0:もう、やだよぅ……
1:助けてユウ君
2:刹那(世界)さんから逃げる。
3:ファルの命令通りに動くかどうかは不明
4:ドライさんにもう一度会いたい。
【備考】
※制服は血で汚れています。
※世界の名を“清浦刹那”と認識しています。
※ファルから解毒剤を貰わなければ、二十四時間後に遅効性の毒で死ぬと思い込んでいます(実際には毒など飲まされていません)
※ファルがこのみに命令した内容は以下の通りです
1.三人以上の参加者の殺害(証拠となる首輪も手に入れる事)
2.ファルに脅されたという事を誰にも漏らさない
3.十八時間後に教会へ来る事
【柚原このみ@To Heart2】
【装備:防弾チョッキ】
【所持品:無し】
【状態:左肩上部と二の腕に軽い切り傷(出血中そのうち止まります)、
右のお下げのリボンが無い上に不ぞろいに切り裂かれている、混乱、恐怖、人間不信】
【思考・行動】
0:もう、やだよぅ……
1:助けてユウ君
2:刹那(世界)さんから逃げる。
3:ファルの命令通りに動くかどうかは不明
4:ドライさんにもう一度会いたい。
【備考】
※制服は血で汚れています。
※世界の名を“清浦刹那”と認識しています。
※ファルから解毒剤を貰わなければ、二十四時間後に遅効性の毒で死ぬと思い込んでいます(実際には毒など飲まされていません)
※ファルがこのみに命令した内容は以下の通りです
1.三人以上の参加者の殺害(証拠となる首輪も手に入れる事)
2.ファルに脅されたという事を誰にも漏らさない
3.十八時間後に教会へ来る事
045:まこまこクエスト~狸と筋肉とスライムと呪われし血脈 | 投下順 | 047:GO MY WAY!! |
072:望郷 | 時系列順 | 060:見上げた虚空に堕ちていく |
008:Spicy Drop Marble Jenka | 西園寺世界 | 080:血も涙もないセカイ |
027:幸せになる為に | 柚原このみ | 080:血も涙もないセカイ |