Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6
血まみれのまま教会に飛ばされたわたしはなにをするでもなく泣き崩れていた。
タカくんとタマお姉ちゃんが死んだ。
わたしの目の前で。
こんなのは悪い夢だ。
そう思い込めればどんなに幸せだろう。
でもタマお姉ちゃんに叩かれた頬の痛みがこれが現実なんだとわたしに告げる。
タマお姉ちゃん……。
思い出すのは最期の言葉。
タカくんとタマお姉ちゃんが死んだ。
わたしの目の前で。
こんなのは悪い夢だ。
そう思い込めればどんなに幸せだろう。
でもタマお姉ちゃんに叩かれた頬の痛みがこれが現実なんだとわたしに告げる。
タマお姉ちゃん……。
思い出すのは最期の言葉。
『……このみ。駄目だよ、あなたは生きなくちゃ』
無理。
『このみ、雄二――頑張って生きてね』
無理だよお姉ちゃん。
わたしひとりじゃ、生きられないよ。
タカくんや、タマお姉ちゃんが生きていたら、みんなと合流すればなんとかなる。
そんな希望もあったかもしれない。
でもタカくんもタマお姉ちゃんも、もういない。
この島にはユウくんも居るはずだけど、会えない。
わたしのせいでタマお姉ちゃんが死んでしまって。
お姉ちゃんを犠牲にして生き延びたわたしには立ち上がる気力もなくて。
タマお姉ちゃんの死を無駄にしてるわたしにはユウくんに会わせる顔が無い。
わたしひとりじゃ、生きられないよ。
タカくんや、タマお姉ちゃんが生きていたら、みんなと合流すればなんとかなる。
そんな希望もあったかもしれない。
でもタカくんもタマお姉ちゃんも、もういない。
この島にはユウくんも居るはずだけど、会えない。
わたしのせいでタマお姉ちゃんが死んでしまって。
お姉ちゃんを犠牲にして生き延びたわたしには立ち上がる気力もなくて。
タマお姉ちゃんの死を無駄にしてるわたしにはユウくんに会わせる顔が無い。
どのくらいの時間泣いていたのだろう。
わたしの居る建物のドアが乱暴に開けられる音がした。
ドアを開けたのは金髪のポニーテールの女の人。
両手には豪華な銃を持っていて、そのうち片方がゆっくりとわたしにむけられる。
ああ、わたし殺されるんだ。
首輪を爆発させられそうになった時、あんなにも怖かった死が今はもうそれほど怖くない。
それよりもタカくんやタマお姉ちゃんの居ない世界で、1人で生きることの方が怖い。
わたしの居る建物のドアが乱暴に開けられる音がした。
ドアを開けたのは金髪のポニーテールの女の人。
両手には豪華な銃を持っていて、そのうち片方がゆっくりとわたしにむけられる。
ああ、わたし殺されるんだ。
首輪を爆発させられそうになった時、あんなにも怖かった死が今はもうそれほど怖くない。
それよりもタカくんやタマお姉ちゃんの居ない世界で、1人で生きることの方が怖い。
タマお姉ちゃんにはせっかく助けた命を無駄にするなって起こられてしまうかもしれないけど。
だいじょうぶ、許してくれるよね。
タマお姉ちゃんやさしいもん。
だいじょうぶ、許してくれるよね。
タマお姉ちゃんやさしいもん。
タカくん、タマお姉ちゃん待っててね。
もうすぐそっちに行くから。
もうすぐそっちに行くから。
ちゃる。よっち。おかあさん。
ごめんなさい。わたしはこれから命を捨てます。
ごめんなさい。わたしはこれから命を捨てます。
ユウくん。
がんばってね。わたしやタカくん、タマお姉ちゃんのぶんも生きて。
がんばってね。わたしやタカくん、タマお姉ちゃんのぶんも生きて。
そうしてわたしは目をつぶった。
祈るものの居ない、寂れた教会。
血まみれの少女に向けられた銃の引き金に指がかかり。
僅かな逡巡の後、銃声が鳴り響いた。
血まみれの少女に向けられた銃の引き金に指がかかり。
僅かな逡巡の後、銃声が鳴り響いた。
銃声を聞きながら、タカくん達との思い出をふりかえる。
みんなで遊んだ幼い頃。
タマお姉ちゃんが帰ってきてくれた春休み。
タカくんと同じ学校に通えるようになったことが嬉しかった入学式。
タカくんとの幼馴染という関係から一歩踏み出したあの日
楽しかった過去を思い出して枯れたはずの涙がこぼれた。
みんなで遊んだ幼い頃。
タマお姉ちゃんが帰ってきてくれた春休み。
タカくんと同じ学校に通えるようになったことが嬉しかった入学式。
タカくんとの幼馴染という関係から一歩踏み出したあの日
楽しかった過去を思い出して枯れたはずの涙がこぼれた。
ああ。
やっぱりわたし、死にたくないな。
みんなのいない世界で生きるのはつらいけど。
みんなとの楽しかった想い出を思い出せなくなるのはもっとつらい。
やっぱりわたし、死にたくないな。
みんなのいない世界で生きるのはつらいけど。
みんなとの楽しかった想い出を思い出せなくなるのはもっとつらい。
でも、もう手遅れ。
すでに引き金は引かれてしまった。
わたしは──
すでに引き金は引かれてしまった。
わたしは──
「おい」
予想していた痛みは一切無かった。
頭を一瞬で打ち抜かれたら、痛みを感じる暇も無いのかな?
だったらタカくんもタマお姉ちゃんも痛みを感じなかったのかな?
だったら少しだけ───
頭を一瞬で打ち抜かれたら、痛みを感じる暇も無いのかな?
だったらタカくんもタマお姉ちゃんも痛みを感じなかったのかな?
だったら少しだけ───
「聞いてんのかてめぇっ!」
首元を掴まれ、いきなり揺さぶられた。
不思議に思ってゆっくりと目を開けると目の前にはわたしを殺したはずの女の人が。
女の人は舌打ちを一つすると。
不思議に思ってゆっくりと目を開けると目の前にはわたしを殺したはずの女の人が。
女の人は舌打ちを一つすると。
「聞きたいことがあるだけだ。別に殺しゃしねーよ」
と言い捨て、乱暴にわたしを放り投げた。
しりもちをついたわたしはその痛みでようやくまだ死んでいないことに気づいた。
しりもちをついたわたしはその痛みでようやくまだ死んでいないことに気づいた。
◆◆◆
「で、落ち着いたか?」
返事をしようとしたけど、さっきのショックで震えてうまく声が出せない。
しかたなく首を立てに振って意思表示をする。
しかたなく首を立てに振って意思表示をする。
「さっきも言ったが聞きたい事がある。吾妻玲二って男かアインって女を見なかったか?」
言い終わると同時に銃を突きつけられる。
たとえ銃なんて無くても、睨まれただけですべてしゃべってしまいそうになるほど鋭い眼光。
体の震えが更に大きくなるが必死に首を横に振って知らないことを伝える。
すると女の人は舌打ちをしながら、
たとえ銃なんて無くても、睨まれただけですべてしゃべってしまいそうになるほど鋭い眼光。
体の震えが更に大きくなるが必死に首を横に振って知らないことを伝える。
すると女の人は舌打ちをしながら、
「ちっ。まあてめえみたいな温い餓鬼があいつらにあって生きてるはずもねえか」
そして彼女の右手にある銃の引き金に指がかかる。
嫌だ。
さっきまで死にたがっていたわたしはもうどこにも居なかった。
幸せだったあの日々を忘れたくない。
死にたくない。
死にたくない、死にたくない。
死にたくない、死にたくない、死にたくな───
嫌だ。
さっきまで死にたがっていたわたしはもうどこにも居なかった。
幸せだったあの日々を忘れたくない。
死にたくない。
死にたくない、死にたくない。
死にたくない、死にたくない、死にたくな───
「やめだ、やめだ。下らねえ。抗うそぶりも無しかよ」
その言葉と同時に突きつけられた銃が下ろされる。
助かった───の?
助かった───の?
「お前、さっき殺されかけたやつだろ?」
───っ!?
あの光景がフラッシュバックする。
音を発する首輪。
永遠にも思えた数十秒。
そしてわたしの身代わりをかってでたお姉ちゃんのうしろすがた。
あの光景がフラッシュバックする。
音を発する首輪。
永遠にも思えた数十秒。
そしてわたしの身代わりをかってでたお姉ちゃんのうしろすがた。
「そんなやつがさっさと諦めてんじゃねえよ。胸糞わりい」
金髪女の罵倒は止まらない。
「知り合いの命を奪ったあいつらが、せっかく助けてもらった命を奪おうとするあたしが憎くねえのか?」
憎くないはずが無い。
私の大切な人たちの命を奪ったあの男達が。
大切な人に守ってもらったこの命を散らそうとする眼前の女が。
───憎くないはずが、ない。
私の大切な人たちの命を奪ったあの男達が。
大切な人に守ってもらったこの命を散らそうとする眼前の女が。
───憎くないはずが、ない。
「命捨ててまで助けた餓鬼がこの様じゃ、あの女も無駄死にだな」
金髪の女はそう言い捨てると背中を向けて去って行く。
このまま黙っていたら見逃してもらえるのかもしれない。
タマお姉ちゃんに救ってもらった命を無駄にしなくてすむのかもしれない。
なのにわたしの口は勝手に言葉を紡ぎだしていた。
このまま黙っていたら見逃してもらえるのかもしれない。
タマお姉ちゃんに救ってもらった命を無駄にしなくてすむのかもしれない。
なのにわたしの口は勝手に言葉を紡ぎだしていた。
「───憎い。憎いよ」
それは心の底から響く怨嗟の声。
「だったら殺せよ」
歩みを止め、髪をなびかせつつ振り返った女は事も無げに言い放つ。
「殺して、殺して、殺して、この島にいる奴ら、全員ぶち殺して最期ににやけ面したあの野郎共に鉛玉ぶち込んでやればいい」
そう言って女の人は獰猛な笑みを浮かべる。
でもそれは強い人の理屈。
でもそれは強い人の理屈。
「私だって───私だってタカくんやタマお姉ちゃんの仇が討ちたいよ!でも無理、私なんかにそんなこと出きるはずないよ!」
私なんかがこの殺し合いに生き残れるわけが無い。
仮に生き残ったとしても首輪がある。
タカくんとタマお姉ちゃんの命を奪った首輪が。
これがある限り、仇なんて討てるはずが無い。
そんなことは目の前の女性も分かっているはず。
仮に生き残ったとしても首輪がある。
タカくんとタマお姉ちゃんの命を奪った首輪が。
これがある限り、仇なんて討てるはずが無い。
そんなことは目の前の女性も分かっているはず。
「出来るさ。出来なきゃお前の憎しみはその程度だっただけの話だ」
なのに眼前の彼女は簡単に言ってのける。
そして手に持った銃をわたしのほうに向け───
そのまま放り投げた。
そして手に持った銃をわたしのほうに向け───
そのまま放り投げた。
「そいつはくれてやるよ。そいつと相手を殺したいって怒りがあれば───誰だって殺せるさ」
もっとも無料って訳にはいかねえがな。
そんなことを呟きながら近くに放置していた私の鞄を漁り始めた彼女を尻目に手の中にある銃を見つめる。
人の命を奪う凶器の筈なのに、その銃はとても美しかった。
でもこれは紛れも無い凶器。
銃口を向け、引き金を引くだけで人を殺す武器。
───たとえば、鞄を物色するのに熱中していて私のことを気にしていない、彼女だって殺せる。
そう思って銃を持ち上げていった瞬間、彼女の動きが止まった。
───気づかれた?
そんなことを呟きながら近くに放置していた私の鞄を漁り始めた彼女を尻目に手の中にある銃を見つめる。
人の命を奪う凶器の筈なのに、その銃はとても美しかった。
でもこれは紛れも無い凶器。
銃口を向け、引き金を引くだけで人を殺す武器。
───たとえば、鞄を物色するのに熱中していて私のことを気にしていない、彼女だって殺せる。
そう思って銃を持ち上げていった瞬間、彼女の動きが止まった。
───気づかれた?
「───へえ。確か言峰とか言ったっけ?あの野郎も中々粋な真似するじゃねえか」
どうやら違うみたい。
安心して胸を撫で下ろす。
わたしに配られた道具の中に何かいいものでもあったのかな?
安心して胸を撫で下ろす。
わたしに配られた道具の中に何かいいものでもあったのかな?
「あの二人以外の連中には大して興味も無かったが、こいつがあるなら話は別だ。いいぜ、乗ってやるよ」
心底楽しそうな笑みを漏らしながら、彼女がわたしの鞄から引き抜いたのはただの懐中時計だった。
彼女は懐中時計を首から提げ、胸の谷間に仕舞い込むと、変わりとばかりに弾丸を何発か取り出してわたしに向かって投げた。
彼女は懐中時計を首から提げ、胸の谷間に仕舞い込むと、変わりとばかりに弾丸を何発か取り出してわたしに向かって投げた。
「こいつの代価にその銃ひとつじゃ安すぎる。それもやるよ、とっときな」
そう告げると彼女はわたしに背を向けて去っていく。
わたしに注意を払っている様子は全く無い。
もう一度銃を向けてみる。
その瞬間に彼女は振り向いた。
───また?
わたしに注意を払っている様子は全く無い。
もう一度銃を向けてみる。
その瞬間に彼女は振り向いた。
───また?
「そういえばまだお前の名前を聞いてなかったな。おい餓鬼、お前の名前は?」
偶然?
「ん?」
彼女は訝しげにこっちを見つめる。
しまった!銃を構えたままだ!
しまった!銃を構えたままだ!
「ゆ、柚原このみでありますっ!」
急いで銃を下ろす。
ばれて───無いよね?
彼女は特に不審に思った様子も無く、
ばれて───無いよね?
彼女は特に不審に思った様子も無く、
「そうかい。あたしはドライ、ただのドライだ。」
そう言ってまた私に背を向ける。
もう一度ドライさんに銃を向ける勇気は私には無かった。
もう一度ドライさんに銃を向ける勇気は私には無かった。
再び歩き始めた彼女が付け加えるかのように呟く。
「これは復讐者の先輩としての忠告だが───」
ドライさんは振り向くことなく続ける。
「銃を持ったら躊躇うな。ありったけの殺意をこめて標的を撃ち殺せ」
最初みたいに銃を向けられている分けじゃない。
ただこっちに背中を向けて歩いているだけ。
怖がる理由はどこにも無い。
その筈なのに。
そう告げたときのドライさんが一番怖かった。
ただこっちに背中を向けて歩いているだけ。
怖がる理由はどこにも無い。
その筈なのに。
そう告げたときのドライさんが一番怖かった。
「三度目は期待してるぜ」
今度こそ本当にドライさんは去って行った。
やっぱり気づいてたんだ。
その姿や立ち振る舞いは映画に出てくる殺し屋さんみたいで本当に格好良かった。
やっぱり気づいてたんだ。
その姿や立ち振る舞いは映画に出てくる殺し屋さんみたいで本当に格好良かった。
そんなことを思った直後、そんなことを思えるまで元気になっている自分に驚いた。
とても一時は死のうとしていた人間とは思えない。
とても一時は死のうとしていた人間とは思えない。
もしかして───あれはあの人なりの励ましだったのかな?
彼女が本当に殺し合いに乗っているのなら、わたしを殺さない理由なんて無い。
よく考えればわたしを殺せるチャンスなんて、いくらでもあった。
彼女が本当に殺し合いに乗っているのなら、わたしを殺さない理由なんて無い。
よく考えればわたしを殺せるチャンスなんて、いくらでもあった。
TVでこんなお話を見たことがある。
大切な家族を失い、生きる気力を失った少女に、「君の家族を殺したのは僕だ」そんな悲しい嘘をつく事で少女に『復讐』という生きる目標を与えた少年のお話。
数年後、少女は少年の嘘に気づき、少年の優しさに恋をする。でも少年に酷いことをいっぱいした自分は少年の傍に居る資格は無いと思い悩む。
それでも幼いころに交わした約束をよりどころに少年の傍に居て罪滅ぼしと恩返しを続ける。
そんな切ないながらも幸せな日々の中、突然その少年に思いを寄せる別の女の子が現れて───
大切な家族を失い、生きる気力を失った少女に、「君の家族を殺したのは僕だ」そんな悲しい嘘をつく事で少女に『復讐』という生きる目標を与えた少年のお話。
数年後、少女は少年の嘘に気づき、少年の優しさに恋をする。でも少年に酷いことをいっぱいした自分は少年の傍に居る資格は無いと思い悩む。
それでも幼いころに交わした約束をよりどころに少年の傍に居て罪滅ぼしと恩返しを続ける。
そんな切ないながらも幸せな日々の中、突然その少年に思いを寄せる別の女の子が現れて───
どうなったんだっけ?
思考が横道に反れたけど、とにかく復讐という感情は生きる意志を失った少女を蘇らす魔法にもなる。
もしかしてドライさんはその事を知っていて敢えてあんな態度を?
思考が横道に反れたけど、とにかく復讐という感情は生きる意志を失った少女を蘇らす魔法にもなる。
もしかしてドライさんはその事を知っていて敢えてあんな態度を?
これはあくまでも現実で、TVみたいに優しいお話じゃない。
私の大切な人達を奪った悪魔は存在する。
でもタマお姉ちゃんの優しさで命を繋いだ。
ドライさんの優しさで生きる気力を貰った。
その優しさに気づけた私はTVのヒロインのように優しくされた人に尽くそう。
私の大切な人達を奪った悪魔は存在する。
でもタマお姉ちゃんの優しさで命を繋いだ。
ドライさんの優しさで生きる気力を貰った。
その優しさに気づけた私はTVのヒロインのように優しくされた人に尽くそう。
『……このみ。駄目だよ、あなたは生きなくちゃ』
ありがとうタマお姉ちゃん。
『このみ、雄二――頑張って生きてね』
私もユウくんも絶対に死なない。タマお姉ちゃんの分も精一杯生きるよ。
返事は出来なかったけど、泣きじゃくるしか出来なかったけど。
私もユウくんも頑張って生きる。
それは私とタマお姉ちゃんが交わした約束。
そう決めた。
タマお姉ちゃん。最期まで心配かけてごめんね。
でももう大丈夫。
私頑張るから。この約束があれば頑張れるから。
だから見守っていてね。
返事は出来なかったけど、泣きじゃくるしか出来なかったけど。
私もユウくんも頑張って生きる。
それは私とタマお姉ちゃんが交わした約束。
そう決めた。
タマお姉ちゃん。最期まで心配かけてごめんね。
でももう大丈夫。
私頑張るから。この約束があれば頑張れるから。
だから見守っていてね。
そうと決まればいつまでもこんなところに居られない。
今までの時間を取り戻すように、急いで鞄を確認する。
中を確認して驚いた。
そこにあったのは地図やコンパス、名簿、食料などの当たり障りの無いものを除けば3つ。
説明書、そして防弾チョッキ、そして時計だった。
説明書は銃の取り扱い方について簡単に書かれたもの。私が銃を扱えないことを見越してドライさんが入れて置いてくれたんだろう。
そして防弾チョッキ。
私の鞄の中で銃とつりあう価値のあるものといえば精々これ位だろう。なのにドライさんはあえて時計を選んだ。
ううん。それどころか、ここに時計があるということはそれすらも持って行ってない。多分あれは最初からドライさんの鞄に入っていた時計。
それを敢えてわたしの鞄から持って行ったように───
今までの時間を取り戻すように、急いで鞄を確認する。
中を確認して驚いた。
そこにあったのは地図やコンパス、名簿、食料などの当たり障りの無いものを除けば3つ。
説明書、そして防弾チョッキ、そして時計だった。
説明書は銃の取り扱い方について簡単に書かれたもの。私が銃を扱えないことを見越してドライさんが入れて置いてくれたんだろう。
そして防弾チョッキ。
私の鞄の中で銃とつりあう価値のあるものといえば精々これ位だろう。なのにドライさんはあえて時計を選んだ。
ううん。それどころか、ここに時計があるということはそれすらも持って行ってない。多分あれは最初からドライさんの鞄に入っていた時計。
それを敢えてわたしの鞄から持って行ったように───
ドライさん、良い人過ぎるよ。
ドライさんにもちゃんと恩返し、しなきゃ。
ドライさんにもちゃんと恩返し、しなきゃ。
この殺し合いに集められた人たちの中でわたしが知っているのは4人、タカくん、タマお姉ちゃん、ユウくん、ドライさん。
みんな良い人ばっかりだ。
みんなで力を合わせれば、殺し合いなんて起こらない。
最初あれだけ絶望していたわたしの心は、いつの間にか希望に満ち溢れていた。
みんな良い人ばっかりだ。
みんなで力を合わせれば、殺し合いなんて起こらない。
最初あれだけ絶望していたわたしの心は、いつの間にか希望に満ち溢れていた。
【B-1 教会 深夜】
【柚原このみ@To Heart2】
【装備】イタクァ(5/6)、防弾チョッキ
【所持品】支給品一式、銃の取り扱い説明書。銃弾(イタクァ用)×12
【状態】健康
【思考・行動】
基本:頑張って生きる。
1:ユウくんとの合流を目指す。
2:ドライさんにももう一度会いたい。
【装備】イタクァ(5/6)、防弾チョッキ
【所持品】支給品一式、銃の取り扱い説明書。銃弾(イタクァ用)×12
【状態】健康
【思考・行動】
基本:頑張って生きる。
1:ユウくんとの合流を目指す。
2:ドライさんにももう一度会いたい。
【備考】 制服は血で汚れています。
◆◆◆
「───らしくねえな」
このみと別れ、当ても無くうろつきながら先ほどの行為を振り返る。
……あの時の自分を殺したくなるほどむずかゆい。
最初に放った銃弾。
あれは殺すつもりの一発だった。
だが放たれた銃弾に気づいて居るはずなのに避けようともしない、あの餓鬼を見て、
───下らねえ。
そう思った瞬間に銃弾は逸れていた。
外したのではない、勝手に逸れたのだ
あの説明書に書かれていた「銃弾をある程度操作できる」という馬鹿みたいな説明はどうやら本当だったらしい。
……あの時の自分を殺したくなるほどむずかゆい。
最初に放った銃弾。
あれは殺すつもりの一発だった。
だが放たれた銃弾に気づいて居るはずなのに避けようともしない、あの餓鬼を見て、
───下らねえ。
そう思った瞬間に銃弾は逸れていた。
外したのではない、勝手に逸れたのだ
あの説明書に書かれていた「銃弾をある程度操作できる」という馬鹿みたいな説明はどうやら本当だったらしい。
「本当に───らしくねえ」
そこまではまあよしとしよう。
あたしがしたいのはあくまでも殺し合い。
こっちに反撃したり、必死で逃げようとするのならともかく、無抵抗の子供1人殺したところで面白くもなんとも無い。
あの餓鬼に銃をくれてやったのも問題無い。
「銃弾をある程度操作できる」面白い玩具ではあるが、そんな玩具に頼ってあいつらを殺しても仕方ない。
アインを、玲二を、ファントムを殺すのはあたし自身の力でやる。
幸い銃はもう一丁ある。こっちも怪しげな銃だが、変な誘導機能はついてないみたいだし問題ないだろう。
あたしがしたいのはあくまでも殺し合い。
こっちに反撃したり、必死で逃げようとするのならともかく、無抵抗の子供1人殺したところで面白くもなんとも無い。
あの餓鬼に銃をくれてやったのも問題無い。
「銃弾をある程度操作できる」面白い玩具ではあるが、そんな玩具に頼ってあいつらを殺しても仕方ない。
アインを、玲二を、ファントムを殺すのはあたし自身の力でやる。
幸い銃はもう一丁ある。こっちも怪しげな銃だが、変な誘導機能はついてないみたいだし問題ないだろう。
───だが。
だがあの態度は何だ?偉そうに説教くれやがって。どの面さげてほざいてんだよ。
だがあの態度は何だ?偉そうに説教くれやがって。どの面さげてほざいてんだよ。
思い出すだけで苛立ってくる
まあ良い。
何も悪い事ばっかりってわけでもなかった。
手のひらに収まる懐中時計を眺めて思う。
オルゴールが中に仕込まれた想い出の一品。
出来れば玲二に会う前に入手したかったこいつを一発で手に入れたのだ。
それに比べればあの程度の恥、何てこと無い。
まあ良い。
何も悪い事ばっかりってわけでもなかった。
手のひらに収まる懐中時計を眺めて思う。
オルゴールが中に仕込まれた想い出の一品。
出来れば玲二に会う前に入手したかったこいつを一発で手に入れたのだ。
それに比べればあの程度の恥、何てこと無い。
「ったく調子狂うぜ」
あの餓鬼───たしかこのみとかいったか。
あんな餓鬼が殺し合いを生き残るとも思えない。
だがあの小娘の憎しみが本物なら。
もしかしたら、もう一度あたしの前に現れるかもしれない。
その時は───
あんな餓鬼が殺し合いを生き残るとも思えない。
だがあの小娘の憎しみが本物なら。
もしかしたら、もう一度あたしの前に現れるかもしれない。
その時は───
「こいつを聞かせて殺してやるよ」
胸の懐中時計の感触を確かめつつ呟く。
その事を思えばむしろあの場はあれで良かったのかも知れない。
その事を思えばむしろあの場はあれで良かったのかも知れない。
「ま、精々頑張んな。期待してるぜ」
【B-2 深夜】
【ドライ@Phantom 】
【装備】クトゥヴァ(10/10)@デモンベイン
【所持品】支給品一式、マガジン×2、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom
【状態】健康
【思考・行動】
基本:殺し合いを楽しむ。
1:アインと玲二を見つけ出して殺す。
2:見つけた人間を片っ端から襲う。
【装備】クトゥヴァ(10/10)@デモンベイン
【所持品】支給品一式、マガジン×2、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom
【状態】健康
【思考・行動】
基本:殺し合いを楽しむ。
1:アインと玲二を見つけ出して殺す。
2:見つけた人間を片っ端から襲う。
※クトゥヴァ、イタクァは魔術師でなくとも扱えるように何らかの改造が施されています。
017:彼等の本気 | 投下順に読む | 019:希望、あるいは絶望への最初の一歩 |
時系列順に読む | ||
柚原このみ | 027:幸せになる為に | |
ドライ | 055:二人目のルースカヤ |