希望、あるいは絶望への最初の一歩 ◆lcMqFBPaWA
「…………」
…上を見る。
見えるのは星の無い暗い夜の空。三日月がまるで人の口のように不気味に輝いている。
…上を見る。
見えるのは星の無い暗い夜の空。三日月がまるで人の口のように不気味に輝いている。
「…………」
…辺りを見る。
明かりの無い夜の町並みが、不気味な雰囲気をかもし出している。
…辺りを見る。
明かりの無い夜の町並みが、不気味な雰囲気をかもし出している。
「…………」
…グイッと、頬を抓ってみる。
(…痛い)
わかっていたけど、夢では無い。
……嬉しくもなんともないけど。
…グイッと、頬を抓ってみる。
(…痛い)
わかっていたけど、夢では無い。
……嬉しくもなんともないけど。
そうして、思い返す。
――『諸君らにはコレから互いを傷付け騙し犯し欺き――そして、殺し合って貰う』
――『言葉とは便利なものだ。涅槃のように錯綜とした状況にも適切な意味を与えてくれる。
名とは力であり、名こそが万物へとその存在を証明する。
つまりコレは人の世で言う――バトルロイヤルという催しだ』――
――『さて、バトルロイヤル――便宜的に僕達はこれを『ゲーム』と呼ばせて貰う。
基本的なルールは最後の一人になるまで殺し合う事、これはいいね?』――
――『言葉とは便利なものだ。涅槃のように錯綜とした状況にも適切な意味を与えてくれる。
名とは力であり、名こそが万物へとその存在を証明する。
つまりコレは人の世で言う――バトルロイヤルという催しだ』――
――『さて、バトルロイヤル――便宜的に僕達はこれを『ゲーム』と呼ばせて貰う。
基本的なルールは最後の一人になるまで殺し合う事、これはいいね?』――
(…どうすれば、いい?)
数分間の停止を経て、まず、初めにそんな言葉だけが心に浮かんだ。
(とりあえず)
殺しあえ、と言われたところで、素直に人を殺せる筈も無いし、そもそもそんな意思も無い。
数分間の停止を経て、まず、初めにそんな言葉だけが心に浮かんだ。
(とりあえず)
殺しあえ、と言われたところで、素直に人を殺せる筈も無いし、そもそもそんな意思も無い。
(…なら、どうすれば…)
数分間停滞して、漸く思考を次のステップに進める。
普段から考えると、呆れるほどの時間の掛り方、なのだけど、
(…頭が、満足に働かない)
状況に、付いて行けない。
考えなければいけない事は山ほどあるのに、そこまで思考が進まない。
普段から考えると、呆れるほどの時間の掛り方、なのだけど、
(…頭が、満足に働かない)
状況に、付いて行けない。
考えなければいけない事は山ほどあるのに、そこまで思考が進まない。
まるで眠りから無理やり覚まされたみたいな、あやふやな頭でのろのろと、近くにあるビル(塔)に入る。
自動ドアを潜り抜けて、真っ暗なロビーの中、ソファに腰を掛ける、掛けようとして、
「…え?」
背もたれにぶつかる何か、
その時、初めて背中に背負っている荷物の存在に気が付く。
飾り気の無い、黒い布製の、カバン…リュック? デイパック?
自動ドアを潜り抜けて、真っ暗なロビーの中、ソファに腰を掛ける、掛けようとして、
「…え?」
背もたれにぶつかる何か、
その時、初めて背中に背負っている荷物の存在に気が付く。
飾り気の無い、黒い布製の、カバン…リュック? デイパック?
――『また当然、食べ物や飲料水なども支給する。それと別に――武器もね。
各種銃器、刀、槍、鈍器、爆弾、劇物、あとは『面白い力を持った道具』などだ。
皆の愛用の道具などもコレには含まれる。気になったら探してみるといい』――
各種銃器、刀、槍、鈍器、爆弾、劇物、あとは『面白い力を持った道具』などだ。
皆の愛用の道具などもコレには含まれる。気になったら探してみるといい』――
(…つまり、これがその道具というもの…なの?)
やはり、上手く頭が働かない。
何時の間に、こんなものを持たされたのだろう?
少なくとも、今の今まで気が付けなかった。
本能的な恐れにより、思わず生唾を飲み込もうとして…、多少、不快な感覚。
(ん…)
…いつのまにか乾いていた喉が、ピタリ、と張り付いた。
(……飲み物…)
気持ち悪さから、本能的に飲み物を求めてカバンを漁り、程なく、水の入ったペットボトルを探り当てる。
未開封のソレを、迷わず開き、口に当てる。
やはり、上手く頭が働かない。
何時の間に、こんなものを持たされたのだろう?
少なくとも、今の今まで気が付けなかった。
本能的な恐れにより、思わず生唾を飲み込もうとして…、多少、不快な感覚。
(ん…)
…いつのまにか乾いていた喉が、ピタリ、と張り付いた。
(……飲み物…)
気持ち悪さから、本能的に飲み物を求めてカバンを漁り、程なく、水の入ったペットボトルを探り当てる。
未開封のソレを、迷わず開き、口に当てる。
んぐっ…
んぐっ……
んぐっ………
誰も居ない空間に、水を飲む音だけが、やけに大きく響く。
やがて、音は止まり、そこで漸く、一本丸々飲み干してしまっていた事に気が付いた。
やがて、音は止まり、そこで漸く、一本丸々飲み干してしまっていた事に気が付いた。
…
……
「……はしたない」
漸く、まともな言葉を発した気がした。
どうやら、多少落ち着いてきたみたい。
……
「……はしたない」
漸く、まともな言葉を発した気がした。
どうやら、多少落ち着いてきたみたい。
「……」
何もせずに、ランタンのぼんやりとした明かりを眺めている。
けど、今度はさっきまでの停滞とは違う。
ただ呆けていた沈黙ではなくて、思考の為の沈黙。
何もせずに、ランタンのぼんやりとした明かりを眺めている。
けど、今度はさっきまでの停滞とは違う。
ただ呆けていた沈黙ではなくて、思考の為の沈黙。
…そうして、
「……どう、しよう。
……どうする、私」
先ほどと同じ思考を、今度は言葉にして発する。
しっかりと、噛みしめるように。
無策故では無く、思考を纏める為。
「……どう、しよう。
……どうする、私」
先ほどと同じ思考を、今度は言葉にして発する。
しっかりと、噛みしめるように。
無策故では無く、思考を纏める為。
まず…今、私は殺し合いの場に居る。
これは、納得は出来ないけど、理解するしか無い。
少なくとも、四人の人間が殺されて、私自身も何処とも知れない場所に放り出されたのは事実だから。
これは、納得は出来ないけど、理解するしか無い。
少なくとも、四人の人間が殺されて、私自身も何処とも知れない場所に放り出されたのは事実だから。
何故?
どうして?
どうして?
と、考えたくなるけど、無理やり考えない事にした。
多分、考えても判らないと思うから。
だから、思わず叫びだしたい衝動を抑えて、無理やり思考を次に進める。
多分、考えても判らないと思うから。
だから、思わず叫びだしたい衝動を抑えて、無理やり思考を次に進める。
人を殺す、なんて事は考えたくもない。
想像するだけで、吐き気が込み上げて来る。
もし、仮に、実際人を殺したとしたら、想像を絶する苦しみが襲って来ると思う。
だから、人は殺さない。…殺せない。
想像するだけで、吐き気が込み上げて来る。
もし、仮に、実際人を殺したとしたら、想像を絶する苦しみが襲って来ると思う。
だから、人は殺さない。…殺せない。
(…けど、それは何の解決にもならない)
仮にガンジーのような反戦平和を唱えたとして、それで何が解決するわけでは無い。
主催者達とやらが、有り難がってこの「ゲーム」を止めてくれる? あり得ない。
…無意識に、手を首に伸ばす。伝わるのは、硬い金属の感触…首輪。
この、首輪が、爆発、して、あの時の、人達のように、なる、だけ。
「う……」
思わず、ギュウと制服の肩を握り締める。
主催者達とやらが、有り難がってこの「ゲーム」を止めてくれる? あり得ない。
…無意識に、手を首に伸ばす。伝わるのは、硬い金属の感触…首輪。
この、首輪が、爆発、して、あの時の、人達のように、なる、だけ。
「う……」
思わず、ギュウと制服の肩を握り締める。
…身体に走った震えを抑えるのに、数分掛かった。
俯いていた顔を僅かに上げる。
僅かに弛緩した身体を、握った形のままで未だ力の入らない手で抱きしめながら、思考を再開する。
そう、私たちの命は、この首輪によって主催者達に握られている。
俯いていた顔を僅かに上げる。
僅かに弛緩した身体を、握った形のままで未だ力の入らない手で抱きしめながら、思考を再開する。
そう、私たちの命は、この首輪によって主催者達に握られている。
具体的に、どんな条件で、首輪が作動させられるのかは知らないけど、多分、そんなに簡単に爆破させられはしないような気がする。
多少、ううん、多分に楽観的な思考が混じるけど、彼らの言葉によれば、あくまでこれは殺し『合い』
一方的に殺す事を楽しんでいる訳じゃない。
だから、少なくともルールに沿っている間は、『首輪による死』は回避される、筈。
多少、ううん、多分に楽観的な思考が混じるけど、彼らの言葉によれば、あくまでこれは殺し『合い』
一方的に殺す事を楽しんでいる訳じゃない。
だから、少なくともルールに沿っている間は、『首輪による死』は回避される、筈。
……少しずつだけど、思考の速度が回復していく。
説明されたルールは二つ。
『二十四時間、一人も死者が出ない事』
『六時間ごとに設定される『禁止エリア』へ侵入する事』
『二十四時間、一人も死者が出ない事』
『六時間ごとに設定される『禁止エリア』へ侵入する事』
…『禁止エリア』
支給された地図にも、64に区切られた地区が記されている。
このうちのどこかが、後五時間と少しの後に侵入禁止となる。
その事に文句を言っても始まらない。
でも、判ることもある。
支給された地図にも、64に区切られた地区が記されている。
このうちのどこかが、後五時間と少しの後に侵入禁止となる。
その事に文句を言っても始まらない。
でも、判ることもある。
「…発信機?
…受信機かも」
『禁止エリア』の条件から、どちらかは無いとおかしい。
…多分、正解は両方。
そうでないと、手動で爆破なんて出来ないと思うから。
…受信機かも」
『禁止エリア』の条件から、どちらかは無いとおかしい。
…多分、正解は両方。
そうでないと、手動で爆破なんて出来ないと思うから。
…機械の事はそれ以上は判らない。
だから、別な事を考える。
…逃避、なのかも。
だから、別な事を考える。
…逃避、なのかも。
思考を振り払う。
人を殺さないなら、これから何をするべきか。
最も簡単に思いつくのは、この「バトル・ロワイアル」という物の主催者を打倒すること。
但し、それは簡単な事じゃない。
まず、未だに信じられないけど、確かあの二人、ノゾミ、ミカゲと言う少女達は、確かにあの時、巨大な蛇に姿を変えていた。
そして、神崎という男は、ソレを事も無げに切り払った。
どちらもあり得ない事…だけど、
――『君達の中には明らかに超常的な力を持っている人間がいる。』――
あの男の言葉を信じるなら、それはやはり事実ということになる。
そうなると、この時点で唯の女子高生の私には、どうしようもない。
人を殺さないなら、これから何をするべきか。
最も簡単に思いつくのは、この「バトル・ロワイアル」という物の主催者を打倒すること。
但し、それは簡単な事じゃない。
まず、未だに信じられないけど、確かあの二人、ノゾミ、ミカゲと言う少女達は、確かにあの時、巨大な蛇に姿を変えていた。
そして、神崎という男は、ソレを事も無げに切り払った。
どちらもあり得ない事…だけど、
――『君達の中には明らかに超常的な力を持っている人間がいる。』――
あの男の言葉を信じるなら、それはやはり事実ということになる。
そうなると、この時点で唯の女子高生の私には、どうしようもない。
そして、
(……拳、銃)
木で出来た握り、鈍く光る鉄色の輝き、重厚な重みと厚み。
多分、…違う、間違いなく本物。
状況把握の為に開いたディパックの中に入っていた、多分「支給品」。
ナイフとか鋸なんかよりも簡単に、かつ確実に人を殺せる武器。
それが、無造作に配られた。
つまり、主催者からすれば、銃は警戒に値しないという事。
ますます、どうしようもない。
(……拳、銃)
木で出来た握り、鈍く光る鉄色の輝き、重厚な重みと厚み。
多分、…違う、間違いなく本物。
状況把握の為に開いたディパックの中に入っていた、多分「支給品」。
ナイフとか鋸なんかよりも簡単に、かつ確実に人を殺せる武器。
それが、無造作に配られた。
つまり、主催者からすれば、銃は警戒に値しないという事。
ますます、どうしようもない。
でも、だからといって諦めて死ぬ気は無い。
見ず知らずの、ましてや知り合いを殺して生き残る気も無い。
見ず知らずの、ましてや知り合いを殺して生き残る気も無い。
なら、どうするのか。
一応、案らしいものはある。
『超常的な力の持ち主』の力を借りる。
これも、実際にどの程度の意味があるのかはわからない。
でも、他には全く思いつきもしない。
一応、案らしいものはある。
『超常的な力の持ち主』の力を借りる。
これも、実際にどの程度の意味があるのかはわからない。
でも、他には全く思いつきもしない。
そして、この案も穴だらけ。
超常的な力といっても、具体的にどんな力なのかはわからない。
そもそも、一方的に力を貸してくれる可能性は低い。
よっぽどのお人好しなら別なのだろうけど、どんな人物なのかなんて判らない。
最悪の場合、自分から人を殺して周る人間という可能性もある。
…というか、あの時の少女達は明らかにそんな感じの人間だった。
超常的な力といっても、具体的にどんな力なのかはわからない。
そもそも、一方的に力を貸してくれる可能性は低い。
よっぽどのお人好しなら別なのだろうけど、どんな人物なのかなんて判らない。
最悪の場合、自分から人を殺して周る人間という可能性もある。
…というか、あの時の少女達は明らかにそんな感じの人間だった。
「…はぁ…」
そこで、一息ついて、
「…っ」
不快感に気が付く。
いつの間にか、また喉が渇いている。
掌に、べったりと汗が滲んでいて、握っていた肩の部分が湿っている。
(…緊張…してる)
当然の事を、改めて自覚する。
いきなり殺しあえなんて言われて、普通の人間が平気でいられる筈が無い。
「…………」
一つ、息を吐く。
再び喉がひりつく。
思考を振り払う為に、再び喉を潤そうとして、カバンに手を入れて、
そこで、一息ついて、
「…っ」
不快感に気が付く。
いつの間にか、また喉が渇いている。
掌に、べったりと汗が滲んでいて、握っていた肩の部分が湿っている。
(…緊張…してる)
当然の事を、改めて自覚する。
いきなり殺しあえなんて言われて、普通の人間が平気でいられる筈が無い。
「…………」
一つ、息を吐く。
再び喉がひりつく。
思考を振り払う為に、再び喉を潤そうとして、カバンに手を入れて、
コトッ
軽い音が、イヤでも緊張を加速させる。
飲み物を出した拍子に、掌大の金属の塊が一つ、カバンから転げ出た。
飲み物を出した拍子に、掌大の金属の塊が一つ、カバンから転げ出た。
拳銃の、弾。
付属の説明書によると、装填数は一発。
知識として知っている拳銃からすると少ない数なのだろうけど、多いと思うか少ないと思うか自由だとしたら、多いと感じてしまう。
説明書には、他にも数字の羅列が並んでいたけど、良く覚えていない。
そもそも基準がわからないのだからどうしようもない。
知識として知っている拳銃からすると少ない数なのだろうけど、多いと思うか少ないと思うか自由だとしたら、多いと感じてしまう。
説明書には、他にも数字の羅列が並んでいたけど、良く覚えていない。
そもそも基準がわからないのだからどうしようもない。
ただ、
(……入れて、おいたほうが…)
殺し合いという以上、使えるようにしておいた方がいい、筈。
それがどんな結果を生むのかは、考えるまでもない、けど。
(脅し、…ううん……護身用には、なる)
不安にある単語を噛み殺し、床に落ちた弾を拾い、目の前の机の上に置く。
説明書によると、中折れ式という構造らしい。
説明に従って銃を中ごろから折るのに数分、漸く、弾倉というのが見えた。
…ゴクリ、と唾を飲み込む。
そういえば喉が渇いていた事を思い出したけど、構わずに弾を右手に取り、震える手で、込める。
「……あれ」
失敗。
弾は銃の横をすり抜けた。
ふう、と一息ついて、再び弾を込めようとする。
「……え?」
失敗。
弾は、弾倉の周りに当たり、何故かピッタリと入ってくれない。
震える手で、何度か入れようとしても、コツリ、コツリと銃に当たるだけで、何故か全く上手くいかない。
「…………!!」
それでも、何度も繰り返す。
しかし、全く入らない。
気が付くと、震えは大きくなっている。
そして、銃を持つ左手にも震えは広がり始める。
殺し合いという以上、使えるようにしておいた方がいい、筈。
それがどんな結果を生むのかは、考えるまでもない、けど。
(脅し、…ううん……護身用には、なる)
不安にある単語を噛み殺し、床に落ちた弾を拾い、目の前の机の上に置く。
説明書によると、中折れ式という構造らしい。
説明に従って銃を中ごろから折るのに数分、漸く、弾倉というのが見えた。
…ゴクリ、と唾を飲み込む。
そういえば喉が渇いていた事を思い出したけど、構わずに弾を右手に取り、震える手で、込める。
「……あれ」
失敗。
弾は銃の横をすり抜けた。
ふう、と一息ついて、再び弾を込めようとする。
「……え?」
失敗。
弾は、弾倉の周りに当たり、何故かピッタリと入ってくれない。
震える手で、何度か入れようとしても、コツリ、コツリと銃に当たるだけで、何故か全く上手くいかない。
「…………!!」
それでも、何度も繰り返す。
しかし、全く入らない。
気が付くと、震えは大きくなっている。
そして、銃を持つ左手にも震えは広がり始める。
コツリ、
入らない。
入らない。
コツリ、コツリ、
入らない、入らない。
入らない、入らない。
コツリ、コツリ、コツリ、
入らない入らない入らない
入らない入らない入らない
何度繰り返しても、少しも上手くいかない。
「う…………」
何時からだろう、気が付いたら、震えは世界に広がっていた。
目に見える世界全てが、グニャリと歪んで見える。
鉄で出来た銃身が歪んでいる。
私の指があらぬ方向に捻じ曲がっている。
コンクリートの建物全てが波打っている。
「……っ、はぁ!!」
満足に動かない手を無理やり引き剥がす。
その瞬間、摘んでいた弾がコトリと落ちた。
右手は、完全に力が抜けてしまっている。
「はぁ…はぁ……」
世界は、元の姿を取り戻している。
満足に動かない手を無理やり引き剥がす。
その瞬間、摘んでいた弾がコトリと落ちた。
右手は、完全に力が抜けてしまっている。
「はぁ…はぁ……」
世界は、元の姿を取り戻している。
「……落ち、着こう…」
一先ず、休憩。
力の抜けた全身をソファに預ける。
「ふぅ…………」
大きく息を吐く。
一先ず、休憩。
力の抜けた全身をソファに預ける。
「ふぅ…………」
大きく息を吐く。
一息付こうとして、置いておいた飲み物、パック牛乳に手を伸ばし、封を開ける。
開かない。
「あれ…」
爪が、引っかからない。
「あれ、あれ…」
まるで、蓋を、撫でているような力しか入らない。
開かない。
「あれ…」
爪が、引っかからない。
「あれ、あれ…」
まるで、蓋を、撫でているような力しか入らない。
「…この……」
と、そこで手ごたえを感じた。
そのまま、思いっきり力を込めて、封を開き、
と、そこで手ごたえを感じた。
そのまま、思いっきり力を込めて、封を開き、
「…えっ!?」
両手で封を握っていた為、力の反動でパックが手から離れる。
自由を得たパックは、そのまま床へと落下して、
「あ……」
そして、落ちながらあふれ出た中身が、私に撒き散らされた。
両手で封を握っていた為、力の反動でパックが手から離れる。
自由を得たパックは、そのまま床へと落下して、
「あ……」
そして、落ちながらあふれ出た中身が、私に撒き散らされた。
「……何を、やって、るの…」
冷たい。
頭から、制服まで、白く塗れてしまっている。
これだと、どこかで変えの服を探さないといけない。
でも、その前に、身体を拭かないと、風邪を引いてしまうかも。
でも、その前に、牛乳なのだから、先にシャワーを浴びないと。
でも、その前に、シャワーはどこにあるのだろう。
でも、その前に、私は今何処にいるのだろう。
でも、その前に、私は、どうしてこんなところにいるのだろう。
冷たい。
頭から、制服まで、白く塗れてしまっている。
これだと、どこかで変えの服を探さないといけない。
でも、その前に、身体を拭かないと、風邪を引いてしまうかも。
でも、その前に、牛乳なのだから、先にシャワーを浴びないと。
でも、その前に、シャワーはどこにあるのだろう。
でも、その前に、私は今何処にいるのだろう。
でも、その前に、私は、どうしてこんなところにいるのだろう。
でも、その前に、何故、こんな目に会っているのだろう。
そして、そこでまた震えている事に気がつく。
(……怖、い)
銃という武器が怖い。
銃に弾を込めるという行為が怖い。
銃という非現実な存在そのものが怖い。
そしてなにより、今のこの状況がたまらなく怖い。
(……怖、い)
銃という武器が怖い。
銃に弾を込めるという行為が怖い。
銃という非現実な存在そのものが怖い。
そしてなにより、今のこの状況がたまらなく怖い。
「……怖い、よぉ。
……世界……お母さん…………伊、藤……」
……世界……お母さん…………伊、藤……」
震えが、抑えられない。
弱音が、口から零れ出る。
恐怖が、箍を外してにじみ出る。
弱音が、口から零れ出る。
恐怖が、箍を外してにじみ出る。
顔に、かかった液体が、頬を伝い、頤から制服へと垂れる。
妙に、熱かった。
それは、牛乳ではなくて…頬からあふれ出ている透明な雫…涙が…零れた。
妙に、熱かった。
それは、牛乳ではなくて…頬からあふれ出ている透明な雫…涙が…零れた。
気がつかない内に、制服の濡れは際限なく広がり始めていた。
◇
手袋を嵌めたままの左の手を、握り締める。
キツくではなく、軽く。
内に空気を握り込むくらいの軽さで。
キツくではなく、軽く。
内に空気を握り込むくらいの軽さで。
手を開く。
再び握る。
二、三度繰り返した後、
「フッ!」
呼気と共に、握った拳を真っ直ぐに突き出す。
風切り音と共に突き出された拳を、伸びきる前に引く。
そして、引かれた拳を、再び繰り出す。
その動作を更に二度繰り返し、最後に戻ってくる拳を、そのまま肩、腰の動作で後方に流しながら。
再び握る。
二、三度繰り返した後、
「フッ!」
呼気と共に、握った拳を真っ直ぐに突き出す。
風切り音と共に突き出された拳を、伸びきる前に引く。
そして、引かれた拳を、再び繰り出す。
その動作を更に二度繰り返し、最後に戻ってくる拳を、そのまま肩、腰の動作で後方に流しながら。
ブオッ
風を巻き上げながら、右の拳を突き出した。
「……ふむ」
違和感。
突き出す拳の速度が、記憶のそれよりも遅い。
心なしか、腕にかすかな疲労すら感じ取れる。
突き出す拳の速度が、記憶のそれよりも遅い。
心なしか、腕にかすかな疲労すら感じ取れる。
「…………」
姿勢を元に戻し、右の手を首筋に当てる。
滑らかな、金属の感触が伝わる。
「『制限』と『首輪』ですか…」
疑っていたわけではないのだが、先ほど『主催者』と名乗った二人の説明に、偽りはないようだ。
滑らかな、金属の感触が伝わる。
「『制限』と『首輪』ですか…」
疑っていたわけではないのだが、先ほど『主催者』と名乗った二人の説明に、偽りはないようだ。
「しかし…『バトル・ロワイアル』ですか。
…さしずめ、私たちは剣闘士といったところでしょうか」
ローマの昔のコロッセオでも気取っているのであろうか。
その昔、剣闘士という名の奴隷が、観客たちの前で互いに、あるいは肉食の獣と争わされたという。
この島というコロッセオに、参加者という奴隷が放された。
奴隷たちは、最後の一人になるまで殺しあわなければならない。
実に、シンプルなルールだ。
非常に、わかりやすい。
ただ一つ、目的がわからないという事を除いて。
…さしずめ、私たちは剣闘士といったところでしょうか」
ローマの昔のコロッセオでも気取っているのであろうか。
その昔、剣闘士という名の奴隷が、観客たちの前で互いに、あるいは肉食の獣と争わされたという。
この島というコロッセオに、参加者という奴隷が放された。
奴隷たちは、最後の一人になるまで殺しあわなければならない。
実に、シンプルなルールだ。
非常に、わかりやすい。
ただ一つ、目的がわからないという事を除いて。
殺すなら、簡単な筈だ。
この首輪を爆破する。そうすれば、あの時の少年のように、屍をさらす事になる。
いや、そもそも、いつの間にか首輪を嵌められるのなら、その時の殺したほうが遥かに早い。
つまりこれは、文字通りゲームであると考えた方が遥かにわかり易い。
ただ、その思考が理解出来ないのだが。
この首輪を爆破する。そうすれば、あの時の少年のように、屍をさらす事になる。
いや、そもそも、いつの間にか首輪を嵌められるのなら、その時の殺したほうが遥かに早い。
つまりこれは、文字通りゲームであると考えた方が遥かにわかり易い。
ただ、その思考が理解出来ないのだが。
「……さて、さしあたっては、大十字様達を探す事にしますか」
先ほど、真っ先に確認した名簿によると、『魔道師』大十字九郎と、『魔道書』アル・アジフ。
強大な力を持つ魔術結社『ブラックロッジ』に唯一対抗し得る、魔を絶つ剣『デモンベイン』を操る事の出来る存在。
覇道鋼造の意思を継ぎ、覇道瑠璃の願いを助ける、アーカムシティを守る為に、無くしてはならない存在。
この二人も、この場に居るらしい。
なら、二人との合流、そして手助けが、覇道財閥の執事としての役割だろう。
(お嬢様の名前がないのが唯一の救いでしょうか)
その、彼の主人たる覇道瑠璃はこの場には居ない。
それだけは、歓迎するべきことなのだろう。
先ほど、真っ先に確認した名簿によると、『魔道師』大十字九郎と、『魔道書』アル・アジフ。
強大な力を持つ魔術結社『ブラックロッジ』に唯一対抗し得る、魔を絶つ剣『デモンベイン』を操る事の出来る存在。
覇道鋼造の意思を継ぎ、覇道瑠璃の願いを助ける、アーカムシティを守る為に、無くしてはならない存在。
この二人も、この場に居るらしい。
なら、二人との合流、そして手助けが、覇道財閥の執事としての役割だろう。
(お嬢様の名前がないのが唯一の救いでしょうか)
その、彼の主人たる覇道瑠璃はこの場には居ない。
それだけは、歓迎するべきことなのだろう。
この内、ドクターウエストに関しては、判断に迷う。
元、『ブラックロッジ』の幹部であり、現在は一応味方の部類に属する男。
非常識なほど優秀な科学者であり、その非常識を遥かに上回るほど非常識な男。
アル・アジフが不在な間、アーカムシティを守れたのは、彼の力によるところも大きい。
…なのだが、彼は未だにその立場が明確ではない。
再び敵に回る可能性は不明なのだが、そもそも味方であっても危険な男でもある。
積極的に探すべき能力を持ちながら、本人の人間性がその行為を躊躇わせる。
(……仮に出会ったのなら、同行を申し出るくらいですか……
しかし、そもそも彼は私のことを覚えていない可能性もありそうですね)
深く、考えないことにした。
元、『ブラックロッジ』の幹部であり、現在は一応味方の部類に属する男。
非常識なほど優秀な科学者であり、その非常識を遥かに上回るほど非常識な男。
アル・アジフが不在な間、アーカムシティを守れたのは、彼の力によるところも大きい。
…なのだが、彼は未だにその立場が明確ではない。
再び敵に回る可能性は不明なのだが、そもそも味方であっても危険な男でもある。
積極的に探すべき能力を持ちながら、本人の人間性がその行為を躊躇わせる。
(……仮に出会ったのなら、同行を申し出るくらいですか……
しかし、そもそも彼は私のことを覚えていない可能性もありそうですね)
深く、考えないことにした。
だが、もう一人、ティトゥスに関しては、そうはいかない。
魔術結社『ブラックロッジ』の大幹部『アンチクロス』の一員であり、闘争のみに己を見出す獣のような男。
あの男は、確実に、なんの躊躇いもなく、他の人間を殺しつくすだろう。
知りうる限り、この島の中において、まさしくコロッセオの獣と呼ぶに相応しい唯一の男。
(いや、)
そもそも、自分とてかつては似たようなものだったのかも知れない。
あの時、旦那様に出会っていなければ、自分も戦いのみに価値を見出す存在として、或いは彼のように魔道にすら手を染めていたとも知れない。
そう、だからそれ故に、自分は獣になってはならない。
あくまで、覇道財閥の執事、ウィンフィールドとして行動しなければ。
魔術結社『ブラックロッジ』の大幹部『アンチクロス』の一員であり、闘争のみに己を見出す獣のような男。
あの男は、確実に、なんの躊躇いもなく、他の人間を殺しつくすだろう。
知りうる限り、この島の中において、まさしくコロッセオの獣と呼ぶに相応しい唯一の男。
(いや、)
そもそも、自分とてかつては似たようなものだったのかも知れない。
あの時、旦那様に出会っていなければ、自分も戦いのみに価値を見出す存在として、或いは彼のように魔道にすら手を染めていたとも知れない。
そう、だからそれ故に、自分は獣になってはならない。
あくまで、覇道財閥の執事、ウィンフィールドとして行動しなければ。
それゆえに、自制する。
彼にはかつて戦い、敗れたという借りがあるが、それは考えるべきことではない。
優先するべきは、大十字九郎とアル・アジフを探し、『守る』事だ。
それは、自分の命よりも、優先される。
言うまでも無いのだが、無論、ウィンフィールド自身とて死ぬつもりなど一切無い。
ただ、彼は順番を決めただけの事だ。
万が一の時には、大十字九郎とアル・アジフの命を優先する。
ウィンフィールドという一人の人間として、そう、方針を定める。
彼にはかつて戦い、敗れたという借りがあるが、それは考えるべきことではない。
優先するべきは、大十字九郎とアル・アジフを探し、『守る』事だ。
それは、自分の命よりも、優先される。
言うまでも無いのだが、無論、ウィンフィールド自身とて死ぬつもりなど一切無い。
ただ、彼は順番を決めただけの事だ。
万が一の時には、大十字九郎とアル・アジフの命を優先する。
ウィンフィールドという一人の人間として、そう、方針を定める。
「さて、とりあえずは」
右手の方角を向く。
少し離れた場所に、周囲よりも明らかに巨大な建造物が存在している。
「正確な現在地の把握、そしてあの上からなら、多少は周囲の状況が見えるかもしれませんね」
確信はないが、恐らくあれは地図にある『ツインタワー』なのだろう。
確証を得るために、そこに向かうことにした。
右手の方角を向く。
少し離れた場所に、周囲よりも明らかに巨大な建造物が存在している。
「正確な現在地の把握、そしてあの上からなら、多少は周囲の状況が見えるかもしれませんね」
確信はないが、恐らくあれは地図にある『ツインタワー』なのだろう。
確証を得るために、そこに向かうことにした。
◇
(……寒い)
久しぶりに形になった思考は、そんな言葉だった。
久しぶりに形になった思考は、そんな言葉だった。
気がつくと、涙は止まっていて、私はただ呆然と座っていただけだった。
自然に止まったのか、枯れたのか、考えても判らなかった。
濡れた制服が、冷たい。
自然に止まったのか、枯れたのか、考えても判らなかった。
濡れた制服が、冷たい。
「着替え…探さないと」
のろのろと、立ち上がる。
その拍子に、先ほどの弾が床に転げ落ちた。
(…そうだ…荷物、置いておけない…)
のろのろとした思考で、のろのろと弾を拾う。
のろのろと銃を手に取り、のろのろとカバンに仕舞おうとして、ふと、何の気なしに、弾を込めてみる。
「……あ……」
カチャリと、簡単に、本来あるべき場所に弾は収まった。
「…………」
…何を、やっていたのかな…
こんなにも簡単なのに、一体どれだけの時間を費やしたのか。
のろのろと、立ち上がる。
その拍子に、先ほどの弾が床に転げ落ちた。
(…そうだ…荷物、置いておけない…)
のろのろとした思考で、のろのろと弾を拾う。
のろのろと銃を手に取り、のろのろとカバンに仕舞おうとして、ふと、何の気なしに、弾を込めてみる。
「……あ……」
カチャリと、簡単に、本来あるべき場所に弾は収まった。
「…………」
…何を、やっていたのかな…
こんなにも簡単なのに、一体どれだけの時間を費やしたのか。
そうして、銃を元の形に戻す。
これで、完成。
右手で、持ってみる。
(……重い)
抱えるのなら兎も角、手を伸ばして構えると、少しの時間で腕が下がる。
左手を、右手に重ねる。
やっぱり、重い。
でも、数分間は持ち続けられるかも。
これなら、武器にはなる。
これで、完成。
右手で、持ってみる。
(……重い)
抱えるのなら兎も角、手を伸ばして構えると、少しの時間で腕が下がる。
左手を、右手に重ねる。
やっぱり、重い。
でも、数分間は持ち続けられるかも。
これなら、武器にはなる。
頭の隅のほうで、何か響いているけど、のろのろとした頭では考えられない。
(…疲れて、る)
僅か数時間の間なのに、酷く疲れた。
頭はとろとろ、体はふわふわ。
マトモに動いていない。
でも、それで良いのかも。
上手く働いていないから、上手く考えられない。
だから、逆に動ける。
何も出来ないよりは、まだいい。
(…疲れて、る)
僅か数時間の間なのに、酷く疲れた。
頭はとろとろ、体はふわふわ。
マトモに動いていない。
でも、それで良いのかも。
上手く働いていないから、上手く考えられない。
だから、逆に動ける。
何も出来ないよりは、まだいい。
(…違う)
頭の中の響きが、明確な警告に変わる。
思考を放棄しないように言ってくる。
でも、考えるだけの力が無い。
だから、のろのろと、とりあえず荷物を仕舞って建物の奥に向かおうとして。
頭の中の響きが、明確な警告に変わる。
思考を放棄しないように言ってくる。
でも、考えるだけの力が無い。
だから、のろのろと、とりあえず荷物を仕舞って建物の奥に向かおうとして。
ガーという音が耳に届いた。
(…何?)
のろのろとした意識が、のろのろと顔を音の方向に向けさせる。
視界に、黒い物が映っていた。
「……え?」
頭が、働き出す。
冷や水を浴びせられたように、それ以上の速度で、思考がはっきりする。
のろのろとした意識が、のろのろと顔を音の方向に向けさせる。
視界に、黒い物が映っていた。
「……え?」
頭が、働き出す。
冷や水を浴びせられたように、それ以上の速度で、思考がはっきりする。
「あ……」
後ずさろうとして、足がソファに引っかかる。
しまったと思う暇も無く、ソファに腰掛けてしまう。
黒い物が、こっちに動いた。
ううん、物、じゃあなくて、者、人、人間。
黒い服を着た人が、私の方に向かって来る。
後ずさろうとして、足がソファに引っかかる。
しまったと思う暇も無く、ソファに腰掛けてしまう。
黒い物が、こっちに動いた。
ううん、物、じゃあなくて、者、人、人間。
黒い服を着た人が、私の方に向かって来る。
「ひぅっ!…あ……こ、来ないで!!」
咄嗟に、握ったままだった銃を、その人に向けた。
咄嗟に、握ったままだった銃を、その人に向けた。
◇
(さて、困りましたね)
ウィンフィールドは、数十分の時間を経てツインタワーに到着した。
道中は、何も起こらなかった。
収穫といえば、少し北の方に、闇の塊として見える夜の海が、自身の位置の予想が正解だと告げた事くらいか。
そうして、塔にたどり着いたのだが…
道中は、何も起こらなかった。
収穫といえば、少し北の方に、闇の塊として見える夜の海が、自身の位置の予想が正解だと告げた事くらいか。
そうして、塔にたどり着いたのだが…
(明かり…ですか)
自然と、体が身構える。
これまでの道中で、明かりは存在していなかった。
塔の屋上で、飛行機用の警告灯が存在しているのが唯一といっていいだろう。
ならば、確実に人が居る事になる。
自然と、体が身構える。
これまでの道中で、明かりは存在していなかった。
塔の屋上で、飛行機用の警告灯が存在しているのが唯一といっていいだろう。
ならば、確実に人が居る事になる。
ゆっくりと、用心深く、塔に近付く。
植え込みに身を隠し、中を除く。
明かりはロビーから漏れている。
(……女性……いえ、まだ少女といった所ですか)
恐らくは制服だろう、を着ている少女が、ロビーのソファに腰掛けて何か行っているのが見えた。
…恐らく、だが、危険は無い。
だが、ならどうするのか。
(無視して通る訳にはいきませんし、何よりも、危険である事を伝えるべきですか)
ある意味薄情ではあるが、少女が仮にあの時泣いていたこのみという少女のような無力な存在だとして、それを助ける義務は無い。
だが、まあ、警告を行うくらいは、しても良いだろう。
植え込みに身を隠し、中を除く。
明かりはロビーから漏れている。
(……女性……いえ、まだ少女といった所ですか)
恐らくは制服だろう、を着ている少女が、ロビーのソファに腰掛けて何か行っているのが見えた。
…恐らく、だが、危険は無い。
だが、ならどうするのか。
(無視して通る訳にはいきませんし、何よりも、危険である事を伝えるべきですか)
ある意味薄情ではあるが、少女が仮にあの時泣いていたこのみという少女のような無力な存在だとして、それを助ける義務は無い。
だが、まあ、警告を行うくらいは、しても良いだろう。
そうして、入り口から塔に入り、少女に銃を向けられていると。
(どうしますか)
油断せずに身構えながら、思考する。
見た限り、少女は確実に錯乱している。
大きなリボンが可愛らしいであろう顔は、蒼白な色をしている。
涙が滲んでいる大きな瞳は、開ききって、焦点が合っていない。
銃口は小刻みに震えていて、引き金に指は掛かりっぱなしだ。
この状態は、危険だ。
いつ、弾が飛び出てもおかしくない。
全くの素人の持つ銃は、時に玄人の持つそれよりも危険ではある。
(どうしますか)
油断せずに身構えながら、思考する。
見た限り、少女は確実に錯乱している。
大きなリボンが可愛らしいであろう顔は、蒼白な色をしている。
涙が滲んでいる大きな瞳は、開ききって、焦点が合っていない。
銃口は小刻みに震えていて、引き金に指は掛かりっぱなしだ。
この状態は、危険だ。
いつ、弾が飛び出てもおかしくない。
全くの素人の持つ銃は、時に玄人の持つそれよりも危険ではある。
迷っている暇は、
(無い、ですね)
(無い、ですね)
◇
(はぁ…はぁ…)
息が苦しい。
心臓が、破裂しそう。
震えが、止まらない。
視界が、滲む。
(う…、う……)
思考が、言葉として纏まらない。
下がりそうになる腕を、必死で支える。
男は銃口を目にしてもまるで動じていない。
何か、言おうとして、
「…………ぁ」
張り付いた喉からは、うめき声しか出なかった。
息が苦しい。
心臓が、破裂しそう。
震えが、止まらない。
視界が、滲む。
(う…、う……)
思考が、言葉として纏まらない。
下がりそうになる腕を、必死で支える。
男は銃口を目にしてもまるで動じていない。
何か、言おうとして、
「…………ぁ」
張り付いた喉からは、うめき声しか出なかった。
(こ……た……)
酷くなる震えを、何とか抑えようと苦心して、
(…………ぇ?)
次の瞬間。
男の姿は消えていた。
酷くなる震えを、何とか抑えようと苦心して、
(…………ぇ?)
次の瞬間。
男の姿は消えていた。
「…………っ!!」
何故!?
咄嗟に、左側に、下げた?逸らした?視界が、偶然、男の姿を、捕らえた。
手をそちら側に向ける。
呆れるほどに、遅い動き。
それでも、何とか男の居る場所に向けて、
「え……」
手は、男を通りすぎた。
(なん…で)
重いから?勢いで?そのまま、体が流れる。
ソファの背もたれもに、肩からぶつかり、
「ぅぁ……!」
そのまま、転げ落ちそうに、ううん、転げ、落ち、た。
何故!?
咄嗟に、左側に、下げた?逸らした?視界が、偶然、男の姿を、捕らえた。
手をそちら側に向ける。
呆れるほどに、遅い動き。
それでも、何とか男の居る場所に向けて、
「え……」
手は、男を通りすぎた。
(なん…で)
重いから?勢いで?そのまま、体が流れる。
ソファの背もたれもに、肩からぶつかり、
「ぅぁ……!」
そのまま、転げ落ちそうに、ううん、転げ、落ち、た。
瞬間。
制服が引っぱられて、
重力に逆らいながら、私の体はソファを超えて、元の場所に、倒された。
首に、背中に、胸に、衝撃。
「……ぁ……」
咄嗟に声が漏れた瞬間。
制服が引っぱられて、
重力に逆らいながら、私の体はソファを超えて、元の場所に、倒された。
首に、背中に、胸に、衝撃。
「……ぁ……」
咄嗟に声が漏れた瞬間。
鼓膜を破るような音が、響いた。
◇
ウィンフィールドは、まず右に動いた。
その速度は、素人にはまず捕らえられない。
少女との距離は、およそ10メートル。
歩数にして、四歩。
まず、その一歩目を、踏み出した事になる。
その速度は、素人にはまず捕らえられない。
少女との距離は、およそ10メートル。
歩数にして、四歩。
まず、その一歩目を、踏み出した事になる。
少女に動きは無い。
続いて、二歩目を踏む。
その時、偶然から、少女はウィンフィールドの姿を捉える。
若干の焦りが、ウィンフィールドを襲う。
だが、止まる事は出来ない。
三歩目を踏む直前に、少女の銃が、ウィンフィールドの方向を向き、
そのまま、通り過ぎた。
元より、銃など握ったことも無い小柄な少女。
それが、咄嗟の事で満足に力の入らない手で、大型に属する銃を振り回せば、当然、狙いなど付かない。
続いて、二歩目を踏む。
その時、偶然から、少女はウィンフィールドの姿を捉える。
若干の焦りが、ウィンフィールドを襲う。
だが、止まる事は出来ない。
三歩目を踏む直前に、少女の銃が、ウィンフィールドの方向を向き、
そのまま、通り過ぎた。
元より、銃など握ったことも無い小柄な少女。
それが、咄嗟の事で満足に力の入らない手で、大型に属する銃を振り回せば、当然、狙いなど付かない。
だが、その後が最悪。
銃は、そのまま少女の手から離れる。
離れた銃は、当然重力に従い、落下、する。
落下するという事は、すなわち衝撃が伝わるという事。
そして、その衝撃は…、
銃は、そのまま少女の手から離れる。
離れた銃は、当然重力に従い、落下、する。
落下するという事は、すなわち衝撃が伝わるという事。
そして、その衝撃は…、
(……!!)
思考している暇は無い。
四歩目を踏みだした時点で、少女がソファから転げ落ちるのが目に映る。
勢いを殺さぬまま、咄嗟に少女の襟首を掴み、ソファの影に移動する。
少女を体の腕ごとたたき付けながら、ソファの椅子部分に倒れこみ、その瞬間。
思考している暇は無い。
四歩目を踏みだした時点で、少女がソファから転げ落ちるのが目に映る。
勢いを殺さぬまま、咄嗟に少女の襟首を掴み、ソファの影に移動する。
少女を体の腕ごとたたき付けながら、ソファの椅子部分に倒れこみ、その瞬間。
部屋全体に、銃声が響いた。
◇
轟音が、響いた。
(……あっ……!!)
その音で、身体から力が抜けた。
そして、静寂。
(……あっ……!!)
その音で、身体から力が抜けた。
そして、静寂。
とても、静か。
心臓が、うるさい。
背中が、痛い。
首が、苦しい。
濡れた服と髪と、濡れが広がりつつある下着が、気持ち悪い。
心臓が、うるさい。
背中が、痛い。
首が、苦しい。
濡れた服と髪と、濡れが広がりつつある下着が、気持ち悪い。
そして、
ドクンドクンと、心臓の音が響く。
その振動が、男の人の腕に反響して、身体に響く。
ドクンドクンと、心臓の音が響く。
その振動が、男の人の腕に反響して、身体に響く。
そう、そして、胸に触れている男の人の腕が、熱い。
今日、熱さを、初めて感じた。
今日、熱さを、初めて感じた。
やがて、男の人の腕が、私から離れる。
「失礼しました。 ですが、銃を手放す事は関心できませんね。
ご覧の様に暴発する恐れがあります」
何か、言っている。
でも、理解出来ない。
言葉が、耳を通り過ぎていく。
「失礼しました。 ですが、銃を手放す事は関心できませんね。
ご覧の様に暴発する恐れがあります」
何か、言っている。
でも、理解出来ない。
言葉が、耳を通り過ぎていく。
全身が、弛緩している。
男の人は離れたのに、動く気が起きない。
全身から、ドクンドクンと血が伝わる感触がする。
感覚が、徐々に鋭敏になってくる。
下着から、腿に僅かに伝う暖かい感触が、気持ち、わ…る……。
男の人は離れたのに、動く気が起きない。
全身から、ドクンドクンと血が伝わる感触がする。
感覚が、徐々に鋭敏になってくる。
下着から、腿に僅かに伝う暖かい感触が、気持ち、わ…る……。
「………………!!!!」
バッ!!と。
まるでバネ仕掛けの椅子のように起き上がる。
どこに、そんな元気があったのかも、気にならない。
熱い。
凄く、熱い。
頬が、物凄く赤くなっているんだと、理解した。
バッ!!と。
まるでバネ仕掛けの椅子のように起き上がる。
どこに、そんな元気があったのかも、気にならない。
熱い。
凄く、熱い。
頬が、物凄く赤くなっているんだと、理解した。
「あっ、あっ、…あうっ……」
言葉が、出ない。
目から涙が滲む。
頬は、ソレこそ火のように赤くなっていると思う。
とりあえず、両手をスカートごと腿の間に挟む。
ついでに、泣きながら、男の人を睨みつけた。
言葉が、出ない。
目から涙が滲む。
頬は、ソレこそ火のように赤くなっていると思う。
とりあえず、両手をスカートごと腿の間に挟む。
ついでに、泣きながら、男の人を睨みつけた。
…男の人の表情は、まるで変わらない。
けど、やがて、
「ああ、そういえば失礼しました。
咄嗟の事とはいえ、女性の方を押し倒してしまいましたね」
何やら、納得したように言ってきた。
けど、やがて、
「ああ、そういえば失礼しました。
咄嗟の事とはいえ、女性の方を押し倒してしまいましたね」
何やら、納得したように言ってきた。
「……ぅ……違、う」
ソレは違う。
それもそうだけど、もっと重要な事が、……ある。
『見た』の……?
頬が、更に赤く染まる。
(……聞ける訳ない)
「う……」
思わず、俯く。
「む…………」
「…………む?」
男の人が聞いてくる。
うう。
ううううう。
その、う、……む…。
「…胸…さわった」
聞くことは、諦めた。
ソレは違う。
それもそうだけど、もっと重要な事が、……ある。
『見た』の……?
頬が、更に赤く染まる。
(……聞ける訳ない)
「う……」
思わず、俯く。
「む…………」
「…………む?」
男の人が聞いてくる。
うう。
ううううう。
その、う、……む…。
「…胸…さわった」
聞くことは、諦めた。
「おや、これは失礼しました」
男の人は、また謝ってきた。
その、少しも動じていない態度が、少しイラつく。
年頃の女性の胸を触っておいて、その戸惑いのなさは何なのか。
私自身気が付かなかったとはいえ、まるで気にもしていなかったみたいに。
男の人は、また謝ってきた。
その、少しも動じていない態度が、少しイラつく。
年頃の女性の胸を触っておいて、その戸惑いのなさは何なのか。
私自身気が付かなかったとはいえ、まるで気にもしていなかったみたいに。
(……確かに、ペッタンコだけど…うう)
また少し、涙が滲む。
拭おうにも、手は退けられない。
一応止まったけど、まだ残っている気配がする。
水を一本飲んだ上に、濡れた服で冷えたから当然かもしれないけど…
また少し、涙が滲む。
拭おうにも、手は退けられない。
一応止まったけど、まだ残っている気配がする。
水を一本飲んだ上に、濡れた服で冷えたから当然かもしれないけど…
と、そこで、
「失礼」
と、男の人の左手に抱えられてしまった。
「え?……ま…」
また、顔が赤くなる。
抵抗しようにも、手は放せない。
…浮遊感で、少し力が抜けてしまった。
「失礼」
と、男の人の左手に抱えられてしまった。
「え?……ま…」
また、顔が赤くなる。
抵抗しようにも、手は放せない。
…浮遊感で、少し力が抜けてしまった。
困惑する私を他所に、男の人は何時の間に拾って来ていた銃、テーブルの上のランタン、を私のカバンに詰めて、ソレを右手に。
そして、そのまま、建物の置くに、スタスタと歩き出した。
「…待って……放し…」
私の言葉には一切構わずに、男の人はそのまま少し奥の『救護室』と書かれた部屋の扉を少し開けて、中を覗き込む。
そして、そのまま部屋に入り、電灯のスイッチを入れる。
程なく、蛍光灯の光が、まぶしく部屋を照らし出した。
そうして、私は奥にあるベットの上に、丁寧に下ろされた。
そして、そのまま、建物の置くに、スタスタと歩き出した。
「…待って……放し…」
私の言葉には一切構わずに、男の人はそのまま少し奥の『救護室』と書かれた部屋の扉を少し開けて、中を覗き込む。
そして、そのまま部屋に入り、電灯のスイッチを入れる。
程なく、蛍光灯の光が、まぶしく部屋を照らし出した。
そうして、私は奥にあるベットの上に、丁寧に下ろされた。
「失礼しました。
あのまま、あの場所に留まるのは危険と判断しましたので。
勝手ながら、足が萎えているようでしたので、搬送させて頂きました。
貴女には、大変失礼をしてしまいましたが…」
あのまま、あの場所に留まるのは危険と判断しましたので。
勝手ながら、足が萎えているようでしたので、搬送させて頂きました。
貴女には、大変失礼をしてしまいましたが…」
丁寧に、かつ滑らかに、告げてくる。
その仕草は、とても文句の言えるものじゃない。
言ってることも、間違いなく正論。
でも、
「…………」
だから、トイレに行きたいとは、言い出せない。
足には余り力が入らないし、そもそも動くと不味い気配がする。
だからって……言える筈も無い。
(……どう、しよう)
その仕草は、とても文句の言えるものじゃない。
言ってることも、間違いなく正論。
でも、
「…………」
だから、トイレに行きたいとは、言い出せない。
足には余り力が入らないし、そもそも動くと不味い気配がする。
だからって……言える筈も無い。
(……どう、しよう)
◇
…結局、恥を忍んで、入り口まで抱えて貰った。
その時、どれだけ顔が赤かったのか、考えたくもない。
男の人…ウィンフィールドさんの態度には、感謝するしかない。
……ある意味、余計に恥ずかしかった気がするけど。
そうして、私がその………間に、ウィンフィールドさんは、医務室にあった白衣と、シーツを持ってきてくれた。
「このような物しかありませんでしたが、濡れた服では風邪を召しますよ」
と、すまなさそうに、言われた。
その態度には、こちらに対する気遣いしか無い。
それは、嬉しいのだけど。
「……下着、どうしよう」
その時、どれだけ顔が赤かったのか、考えたくもない。
男の人…ウィンフィールドさんの態度には、感謝するしかない。
……ある意味、余計に恥ずかしかった気がするけど。
そうして、私がその………間に、ウィンフィールドさんは、医務室にあった白衣と、シーツを持ってきてくれた。
「このような物しかありませんでしたが、濡れた服では風邪を召しますよ」
と、すまなさそうに、言われた。
その態度には、こちらに対する気遣いしか無い。
それは、嬉しいのだけど。
「……下着、どうしよう」
◇
「世界は親友、伊藤は友達、桂さん…も知り合い」
「私は、さしあたっては大十字様と、アル・アジフ様を探すつもりです。
平行して、この首輪をなんとかする方法も探すつもりですが」
(そう考えると、ドクター・ウエストも探すべきなのでしょうね…)
「私は、さしあたっては大十字様と、アル・アジフ様を探すつもりです。
平行して、この首輪をなんとかする方法も探すつもりですが」
(そう考えると、ドクター・ウエストも探すべきなのでしょうね…)
先ほどの取り乱し方とは、ある意味対極的な冷静さで、私との会話を行っている。
恐らくは、元々賢明と詠んで良い性格なのだろう。
部屋に戻ってきた時、自分から先ほどの騒動に関する謝罪と、例を述べてきた事も、ソレを裏付けている。
恐らくは、賢明すぎた。
それゆえに、自らの置かれた境遇を、楽観的な思考の挟まる余地の無いくらいに理解出来てしまったのだろう。
恐らくは、元々賢明と詠んで良い性格なのだろう。
部屋に戻ってきた時、自分から先ほどの騒動に関する謝罪と、例を述べてきた事も、ソレを裏付けている。
恐らくは、賢明すぎた。
それゆえに、自らの置かれた境遇を、楽観的な思考の挟まる余地の無いくらいに理解出来てしまったのだろう。
だが、そうなると不可解な事実が幾つか存在する。
彼女は、アーカムシティも、覇道財閥も、ブラックロッジの存在も知らなかった。
十を数える前の子供ですら知っているような事を、聞いたこともないという。
(これは…どういうことなのだろう?)
私は、大旦那様や、アル・アジフ様のような知識は無い。
だから、上手い説明など出来ないのだが、清浦様達は、恐らく、何かが違う『場所』に居たのではないだろうか?
彼女は、アーカムシティも、覇道財閥も、ブラックロッジの存在も知らなかった。
十を数える前の子供ですら知っているような事を、聞いたこともないという。
(これは…どういうことなのだろう?)
私は、大旦那様や、アル・アジフ様のような知識は無い。
だから、上手い説明など出来ないのだが、清浦様達は、恐らく、何かが違う『場所』に居たのではないだろうか?
そして、一通り情報を交換し終えたところで、
「清浦様さえよろしければ、私と共に行動をしませんか?」
多少ではあるが、情が移っている。
そして、少なくとも、賢明ではある相手。
「清浦様さえよろしければ、私と共に行動をしませんか?」
多少ではあるが、情が移っている。
そして、少なくとも、賢明ではある相手。
「……いいの…?」
彼女が問いかけてくる。
自身の身が負担になることを、理解しているが故に。
だが、
「ええ、普段からなれた物ですので」
それを理解出来るからこそ、共に進み、守るに値する相手なのだ。
彼女が問いかけてくる。
自身の身が負担になることを、理解しているが故に。
だが、
「ええ、普段からなれた物ですので」
それを理解出来るからこそ、共に進み、守るに値する相手なのだ。
「ん……」
笑顔を浮かべる。
初めて目にしたが、似合っている。
笑顔を浮かべる。
初めて目にしたが、似合っている。
その笑みを受けながら、
「ただし」
伝えなければならない事を伝える。
「先ほど申し上げた通り、私にはやるべきことがあります。
なので、申し訳ありませんが、万が一の時には、私は清浦様を見捨てさせて頂きます」
「ただし」
伝えなければならない事を伝える。
「先ほど申し上げた通り、私にはやるべきことがあります。
なので、申し訳ありませんが、万が一の時には、私は清浦様を見捨てさせて頂きます」
冷静に、かつ冷酷に告げる。
命の優先順位。
力の無いものを守る事は、彼自身不本意な事では無いが、それでも守るべきものには順番がある。
酷な話だが、彼女の命は、それほど高い位置には無い。
その言葉は、少女には酷なものだろう。
命の優先順位。
力の無いものを守る事は、彼自身不本意な事では無いが、それでも守るべきものには順番がある。
酷な話だが、彼女の命は、それほど高い位置には無い。
その言葉は、少女には酷なものだろう。
だが、
それでも、
「…もしもの時は、私もウィンフィールドさんを、見捨てる。…だからおあいこ」
無理な笑みを浮かべながら、返してきた。
…僅かに、敬意を覚えた。
それでも、
「…もしもの時は、私もウィンフィールドさんを、見捨てる。…だからおあいこ」
無理な笑みを浮かべながら、返してきた。
…僅かに、敬意を覚えた。
◇
今日、初めて、笑った。
恐怖は、未だに消えない。
多分、気を抜くと、また身体は震えだす。
それでも、何とか、笑えた。
ウィンフィールドさんのおかげ。
恐怖は、未だに消えない。
多分、気を抜くと、また身体は震えだす。
それでも、何とか、笑えた。
ウィンフィールドさんのおかげ。
だから、
「先ほど申し上げた通り、私にはやるべきことがあります。
なので、申し訳ありませんが、万が一の時には、私は清浦様を見捨てさせて頂きます」
「先ほど申し上げた通り、私にはやるべきことがあります。
なので、申し訳ありませんが、万が一の時には、私は清浦様を見捨てさせて頂きます」
(……怖い、な)
言葉を、意思を、隠す。
想像、出来てしまう。
多分、その言葉は何時か、現実になる。
でも、
それでも、
「…もしもの時は、私もウィンフィールドさんを、見捨てる。…だからおあいこ」
無理に笑って、答えた。
彼がいなければ、私は今も震えていた。
だから、せめて、彼の負担を少しでも軽くしたかった。
言葉を、意思を、隠す。
想像、出来てしまう。
多分、その言葉は何時か、現実になる。
でも、
それでも、
「…もしもの時は、私もウィンフィールドさんを、見捨てる。…だからおあいこ」
無理に笑って、答えた。
彼がいなければ、私は今も震えていた。
だから、せめて、彼の負担を少しでも軽くしたかった。
【A-8 ツインタワー/1日目 深夜】
【清浦刹那@School Days L×H】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、トンプソンコンテンダー(弾数0/1)コンテンダーの弾49発
不明支給品×2(未確認、銃のインパクトで存在を忘れています)】
【状態:肉体疲労(小)、精神疲労(小)首と背中に多少の痛み(数時間で消えます)、髪に牛乳による濡れ、素肌の上にシーツと白衣】
【思考・行動】
基本:人は殺さない。
1:ウィンフィールドと行動する。
2:どうにかして、首輪を外す。
3:服が欲しい…出来ればシャワーも浴びたいかも…
【備考】
※制服(牛乳まみれ)と下着(濡れている)はデイパックにしまいました。
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、トンプソンコンテンダー(弾数0/1)コンテンダーの弾49発
不明支給品×2(未確認、銃のインパクトで存在を忘れています)】
【状態:肉体疲労(小)、精神疲労(小)首と背中に多少の痛み(数時間で消えます)、髪に牛乳による濡れ、素肌の上にシーツと白衣】
【思考・行動】
基本:人は殺さない。
1:ウィンフィールドと行動する。
2:どうにかして、首輪を外す。
3:服が欲しい…出来ればシャワーも浴びたいかも…
【備考】
※制服(牛乳まみれ)と下着(濡れている)はデイパックにしまいました。
【ウィンフィールド@機神咆哮デモンベイン】
【装備:なし 】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1~3(確認済み)】
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:大十字九郎と、アル・アジフの生還を最優先
1:可能な限りは刹那を守る。
2:不可能ならば切り捨てる。
3:ティトゥスを危険視
【装備:なし 】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1~3(確認済み)】
【状態】:健康
【思考・行動】
基本:大十字九郎と、アル・アジフの生還を最優先
1:可能な限りは刹那を守る。
2:不可能ならば切り捨てる。
3:ティトゥスを危険視
018:Memento Vivere | 投下順 | 020:誰が為に刀を振るう |
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