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「……ぐっ、……」
一体どのくらい気絶していただろうか。
はっきりとしない意識のまま、イクスを助けなければというはっきりとした目的のままに身体を起こす。
状況把握のために辺りを見渡せば、そこには大剣を背負っていた男の遺体に縋り泣く少年の姿があった。
マルティナの姿が見当たらない理由は分からないが、あの大剣の男を殺したのは彼女だろう。
「あの、男……よくもやってくれたわね」
あの大剣の男は強かった。瀕死の身であれなのだからもし万全な状態だったら、と考えるだけでおぞましい。
そしてその脅威も消失した今、あの無力な少年を人質として利用するのは簡単な事だった。
ザックスという頼れる人間が死んだ今、彼は自分達に従うしかないだろう。少なくともミリーナはそう確信しながら、美津雄達の元へ近寄った。
「──来るなぁッ!!」
「っ……!?」
予想だにしない怒号と向けられる銃口がミリーナの足を止める。
何故──あの少年は春香と同じくなんの力もないはずだ。それなのにどうして立ち向かおうとするのか。
あの少年だって勝ち目がないと分かっているはずだ。現に、がたがたと震える銃口がそれを物語っている。
「それ以上──"俺達"に近寄るんじゃねぇッ!!」
ああ、そうか。
ミリーナは美津雄への認識を改める。この少年はもはや人質として利用は出来ないだろう。どう脅したところできっと自分には従わない。
「……悪いわね。一瞬で終わらせるわ」
ならばもう、殺すしかない。
美津雄に利用価値の無くなった今、彼はただの殺すべき参加者に過ぎないのだから。
春香を殺したものと同じ花霞を放つ予備動作を見せる。銃声と共に放たれたエネルギー弾がミリーナの遥か横を過ぎ、彼女の術を止めるには至らなかった。
イレギュラーが入るまでは。
「────マルティナ?」
今まさに術を放たんとするミリーナの腕を、ボロボロになったマルティナが掴んでいた。
一体いつの間に、そんな疑問よりも先に何故止めるのかという怒りにも近い感情が浮かぶ。
マルティナは静かに首を横に振り、ぽつりと紡ぐ。
「退きましょう、分が悪いわ」
「な……」
マルティナの言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
本気で言っているのか。そう問い詰めたくなるも美津雄を見つめるマルティナの横顔は真剣そのもので、どこか威圧的に感じる。
まるで自分が意見するのを拒むかのような雰囲気を前に、ミリーナは苦い顔で一つだけ訊ねる。
「貴方の覚悟はそんなものなの?」
マルティナは言葉を返さない。
そのまま続く静寂こそが回答なのだと判断したミリーナは呆れたように踵を返す。ここで無理に美津雄を殺し、マルティナと敵対するのは避けたいと考えたからだ。
そしてミリーナに新たにマルティナをいつか切り捨てるべきだという考えが浮上したのは言うまでもない。マルティナだってそれを覚悟の上で撤退を選んだのだ。
結果をいえば、マルティナはザックスに勝った。けれどそれはマルティナ本人の意志を無視した結果の話だ。
もしあの一撃を槍の防御で軽減出来ていなければ自分は死んでいただろう。ゆえにマルティナからすればあの勝利は仮初のものだと言える。
ならば、美津雄を見逃したのは敗北したからなのか?
勝者に対して敗者が逆らう事は許されない、そんな弱肉強食の思念の為なのか?
いいや、違う。
重ねてしまったのだ。死も顧みずに美津雄を護り抜いたザックスの姿を。
赤ん坊のイレブンを己に託し、魔物の囮となる道を選んだエレノア王妃と。
今のマルティナにはどうしてもそれを────夢追い人の遺しものを殺す事が出来なかった。
「…………」
「な、んだよ……早くどっか行けよ!!」
美津雄の姿を一瞥し、既に離れたミリーナを追ってマルティナがその場を去る。
これまでだ。
灰色の心でいるのはこれで最後だ。
次は完全な黒となり、誰であろうとも容赦なく殺す。
────決意、あらたに。
【ザックス・フェア@FINAL FANTASY Ⅶ 死亡確認】
【残り49名】
【D-2/市街地(西側)/一日目 朝】
【ミリーナ・ヴァイス@テイルズ オブ ザ レイズ】
[状態]:首筋に痣
[装備]:魔鏡「決意、あらたに」@テイルズ オブ ザ レイズ、プロテクトメット@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品×2、不明支給品0~2、首輪探知機(一時間使用不可)@ゲームロワ
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
1.マルティナと共に他の参加者を探し、殺す
2.春香の友人や、その他の非戦闘員の中から一人、人質を確保する。
3.イレブン以外のマルティナの仲間を、マルティナに殺させる
4.マルティナを切り捨てることも視野に入れる。
※参戦時期は第2部冒頭、一人でイクスを救おうとしていた最中です。
※魔鏡技以外の技は、ルミナスサークル以外は使用可能です。
※春香以外のアイマス勢は、名前のみ把握しています。
【マルティナ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、左脇腹、腹部に打撲
[装備]:折れた光鱗の槍@ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
[道具]:基本支給品、キメラの翼@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
ランダム支給品(1~0個)
[思考・状況]
基本行動方針:イレブンと合流するまでミリーナと協力し、他の参加者を排除する。
1.心を黒に染める。
2.カミュや他の仲間も殺す。
※イレブンが過ぎ去りし時を求めて過去に戻り、取り残された世界からの参戦です。イレブンと別れて数ヶ月経過しています。
【
支給品紹介】
【首輪探知機@ゲームロワ】
天海春香の支給品。
大きなストップウォッチのような見た目をしており、半径500m以内にある首輪を表示する。
一度使用すれば一時間のクールタイムが必要。
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「はぁ……っ! はぁ……!」
あいつらが居なくなったあと、オレは安心してへたりこんだ。
殺されるかと思った。あの時は必死だったから勝手に体が動いたけど、今になって恐怖がやってくる。
死ぬのが怖いんじゃない。
ザックスが遺してくれた言葉を叶えられないまま終わるのがたまらなく怖かった。
オレは、あいつの生きた証だから。
オレが死んだらザックスの最期を語れる人間が居なくなってしまうんだ。
そんなのは────絶対にダメだ。
オレが生きて、夢を見つけて、ザックスを安心させなきゃいけない。
きっとそれが、今オレのやるべき事なんだ。
「ザックス、オレ……夢を探すよ。お前に負けないくらい、大きな夢をさ」
だから────もう少しだけ泣かせてくれ。
【D-2/市街地(西側)/一日目 朝】
【久保美津雄@ペルソナ4】
[状態]:疲労(大)、悲しみ、決意、雪歩がいなくなったことへの罪の意識
[装備]:ウェイブショック@クロノ・トリガー
[道具]:基本支給品(水少量消費)、ランダム支給品(治療道具の類ではない、1~2個)、調合書セット@MONSTER HUNTER X
[思考・状況]
基本行動方針: 夢を探す。
1.ザックス……。
※本編逮捕直後からの参戦です。
※ペルソナは所持していませんが、発現する可能性はあります。
※四条貴音の名前を如月千早だと思っています。
【全体備考】
※ザックスの支給品は遺体の傍に放置されています。
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「──さっきの音の方向は……こっちか?」
市街地を駆ける一陣の風。
厳つい顔に眼帯を携えたいかにもな風貌。もし初対面の人間が彼と出会えば第一印象で殺し合いに乗っていると思ってしまうのは仕方がないことだろう。
現に男も数時間前まではその方針でいたのだが、今彼が足を動かしている理由は別にある。
(今度は泣いとるな……急いだ方が良さそうやな)
Nの城を抜けた真島は特に理由もなく南の方角を目指した。
その途中、建造物が壊れるような激しい音を耳にし明確な目的地を指定した。そうして走っている内に、その方向から僅かに叫喚じみた少年の声を聞く。
「ええい、誰だか知らんが待っとれや!! この真島吾朗が助けたるわ!!」
時間はそう残されていない。
今までの遅れを取り戻すためにも、真島はそう高らかに宣言し美津雄がいる市街地へと急いだ。
【D-2/一日目 朝】
【真島吾朗@龍が如く 極】
[状態]:頭部出血(止血済み)、疲労(中)、焦燥
[装備]:ほしふるうでわ@ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームをぶっ壊す。
1.音の方向へと向かう。
2.遥を探し出し保護する。
3.桐生を探す(死体でも)。
4.錦山はどうしよか……。
5.雪歩が気がかり。
※参戦時期は吉田バッティングセンターでの対決以前です。
※運営が盗聴していることに気付きました。
最終更新:2023年04月28日 05:17