Reach Out To The Truth(4) ◆dGUiIvN2Nw
◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
【殺し合い会場 D-4】
二手に別れる。その主軸が漆黒とレミリアである以上、二人がメンバーを選ぶのが常套手段ともいえる。
が、レミリアも漆黒も、それはしなかった。あくまで成り行きに任せ、自分達は口を挟まずにいた。
漆黒自身はそうすべきだと思ったわけではない。レミリアが何も言わずに黙っているから、自分もそれに合わせているだけだ。
彼女が静観している以上、こちらがみっともない真似をすることはできない。
(……仕方ないか)
漆黒は咲夜の騎士である。全員を守り抜くと誓いはしたが、やはり咲夜はこの中でも一番大切な存在だ。
しかし、咲夜はレミリアの従者だ。自分が何も言わなければ、咲夜はレミリアのチームに入るだろう。自分の剣の届かぬ場所に行ってしまうだろう。
仕方ないとわかってはいても、やはりそれは辛いものがあった。
「お嬢様。申し訳ありませんが、私は漆黒のチームに入ります」
そう考えていた漆黒だったからこそ、その言葉には心の底から驚いた。
「ああ、そうか。まぁ、死ぬなよ」
レミリアもそのことに対し、まったく引き止める素振りがないことにまた驚いた。
まるでそうなることを予期していたように、まったく動じている様子がなかった。
「……何をそんなに驚いてるのよ」
「あ、いや。……てっきり、レミリアと共に行くのかと思って」
咲夜はそれを聞き、盛大にため息をついた。
「そうしたいのは山々だけど、あなたを仲間に引き入れたのは私だからね。下手なことされても困るし、まぁ監視くらいしとかないと」
監視。そのままの意味でとれば、自分のことをまったく信用していないともとれる単語だ。
しかし、その意味がそれだけじゃないことくらいは、付き合いの浅い漆黒でも理解できた。
「それに、おそらくお嬢様は瀬多と組むでしょうから。それじゃあ一番面倒を見なきゃいけない奴を見れないでしょ?」
「面倒?」
どっちにしようかと迷っている千枝の襟首を咲夜はむんずと掴んだ。
「いたた! ちょっと咲夜!! 何すんのよ!!」
「あんたはこっち」
「勝手に決めんな!」
「周りをうろちょろされるのも迷惑だけど、自分の目で見てないと逆に不安になるから」
「私は子犬か!」
じたばたと暴れる千枝を無視して、咲夜は瀬多と向き合った。
「というわけで、いい? 瀬多」
「ああ。俺もこれが一番ベストな分け方だと思う」
瀬多の了承を得て、編成は決まった。
瀬多、レミリア、アドレーヌチームと、咲夜、漆黒、千枝チーム。
戦力、知力、お互いの信頼度。
それらを総合的に見ても、最適なチーム編成であることは間違いない。
が、レミリアも漆黒も、それはしなかった。あくまで成り行きに任せ、自分達は口を挟まずにいた。
漆黒自身はそうすべきだと思ったわけではない。レミリアが何も言わずに黙っているから、自分もそれに合わせているだけだ。
彼女が静観している以上、こちらがみっともない真似をすることはできない。
(……仕方ないか)
漆黒は咲夜の騎士である。全員を守り抜くと誓いはしたが、やはり咲夜はこの中でも一番大切な存在だ。
しかし、咲夜はレミリアの従者だ。自分が何も言わなければ、咲夜はレミリアのチームに入るだろう。自分の剣の届かぬ場所に行ってしまうだろう。
仕方ないとわかってはいても、やはりそれは辛いものがあった。
「お嬢様。申し訳ありませんが、私は漆黒のチームに入ります」
そう考えていた漆黒だったからこそ、その言葉には心の底から驚いた。
「ああ、そうか。まぁ、死ぬなよ」
レミリアもそのことに対し、まったく引き止める素振りがないことにまた驚いた。
まるでそうなることを予期していたように、まったく動じている様子がなかった。
「……何をそんなに驚いてるのよ」
「あ、いや。……てっきり、レミリアと共に行くのかと思って」
咲夜はそれを聞き、盛大にため息をついた。
「そうしたいのは山々だけど、あなたを仲間に引き入れたのは私だからね。下手なことされても困るし、まぁ監視くらいしとかないと」
監視。そのままの意味でとれば、自分のことをまったく信用していないともとれる単語だ。
しかし、その意味がそれだけじゃないことくらいは、付き合いの浅い漆黒でも理解できた。
「それに、おそらくお嬢様は瀬多と組むでしょうから。それじゃあ一番面倒を見なきゃいけない奴を見れないでしょ?」
「面倒?」
どっちにしようかと迷っている千枝の襟首を咲夜はむんずと掴んだ。
「いたた! ちょっと咲夜!! 何すんのよ!!」
「あんたはこっち」
「勝手に決めんな!」
「周りをうろちょろされるのも迷惑だけど、自分の目で見てないと逆に不安になるから」
「私は子犬か!」
じたばたと暴れる千枝を無視して、咲夜は瀬多と向き合った。
「というわけで、いい? 瀬多」
「ああ。俺もこれが一番ベストな分け方だと思う」
瀬多の了承を得て、編成は決まった。
瀬多、レミリア、アドレーヌチームと、咲夜、漆黒、千枝チーム。
戦力、知力、お互いの信頼度。
それらを総合的に見ても、最適なチーム編成であることは間違いない。
「俺達の目的は仲間との早期合流。及び八意永琳が残したipadとクリスタルの回収だ。残りのクリスタルが隠されている施設は、閑古島村、豪華客船マッハ、テトラ研究所。
咲夜達は村を経由。俺達は豪華客船を経由して、クリスタルを回収する。そして最終的には発電所で合流する。それで問題ないな?」
全員が頷く。誰も反論する者はない。
これが、ここから脱出するベストの方法だと誰もが信じている。
「漆黒、千枝。二人とも、咲夜の言う事をちゃんと聞くように」
「……は? なによそれ」
瀬多の意図を汲みかねて、思わず咲夜が聞き返した。
「そっちのリーダーは咲夜だ」
「はあ!? 嫌よ私! 漆黒がやればいいでしょ」
「漆黒は最前線で戦うことになる。戦闘では漆黒の指示に従うのもアリだが、最終的な判断は他の人間がした方がいい」
瀬多の言葉に、漆黒も同意見だとばかりに頷いた。
指揮も漆黒頼り。戦闘も漆黒頼りとなれば、万が一漆黒が倒れた時の混乱が大きくなる。こと殺し合いにおいて、個の重要性はできるだけ分散した方がいい。そう考えての判断だった。
それにこの編成なら、咲夜が一番二人のことを理解している。リーダーという役回り上、仲間の人間性を理解しているかいないかというのは非常に重要なことなのだ。
それに、咲夜の冷静さと判断力はリーダーとなっても申し分ないもの。
このチームのリーダーに、咲夜以上の適任は他にいないのである。
「それなら千……わかったわよ。やればいいんでしょ」
「おいこら。なんで言いかけて止めた」
喧嘩に発展しそうな二人を置いて、瀬多は全員に声をかける。
「そういうわけだ。放送が終わり次第行動を開始する。各自それまでに色々と準備しておいてくれ」
咲夜達は村を経由。俺達は豪華客船を経由して、クリスタルを回収する。そして最終的には発電所で合流する。それで問題ないな?」
全員が頷く。誰も反論する者はない。
これが、ここから脱出するベストの方法だと誰もが信じている。
「漆黒、千枝。二人とも、咲夜の言う事をちゃんと聞くように」
「……は? なによそれ」
瀬多の意図を汲みかねて、思わず咲夜が聞き返した。
「そっちのリーダーは咲夜だ」
「はあ!? 嫌よ私! 漆黒がやればいいでしょ」
「漆黒は最前線で戦うことになる。戦闘では漆黒の指示に従うのもアリだが、最終的な判断は他の人間がした方がいい」
瀬多の言葉に、漆黒も同意見だとばかりに頷いた。
指揮も漆黒頼り。戦闘も漆黒頼りとなれば、万が一漆黒が倒れた時の混乱が大きくなる。こと殺し合いにおいて、個の重要性はできるだけ分散した方がいい。そう考えての判断だった。
それにこの編成なら、咲夜が一番二人のことを理解している。リーダーという役回り上、仲間の人間性を理解しているかいないかというのは非常に重要なことなのだ。
それに、咲夜の冷静さと判断力はリーダーとなっても申し分ないもの。
このチームのリーダーに、咲夜以上の適任は他にいないのである。
「それなら千……わかったわよ。やればいいんでしょ」
「おいこら。なんで言いかけて止めた」
喧嘩に発展しそうな二人を置いて、瀬多は全員に声をかける。
「そういうわけだ。放送が終わり次第行動を開始する。各自それまでに色々と準備しておいてくれ」
◇◇◇
【??? 廊下】
【??? 廊下】
ビッグボスは走った。息切れも気にせず、一人の女性を求めて走った。
「永琳!! どこだ! どこにいる!!」
誰に気付かれてもいい。とにかく下手な事をする前に彼女を見つける必要があった。
思い出すのは、ザ・ボスを撃ったあの時。死ななくてもいい人間を殺した、あの時。
自分の息子、ソリッド・スネークならザ・ボスを殺さずに済む方法を見つけていた気がすると、ビッグボスは思っていた。しかし、そのスネークも死んだ。
……いや違う。世界の礎となったのだ。他の参加者も同じ。その魂は転生し、新たな世界で生き続ける。そうボスは信じている。だからこそ、こんな腐った計画に手を貸している。
かといって、自分がしていることを正当化するつもりもない。自分は極悪人だ。その認識を変えるつもりはない。
(だがそれでも。死ななくていい人間が死ぬのは、もう御免だ!)
廊下の角を曲がった時、ようやく永琳の姿を見つけた。
しかしその時には既に、彼女は一つの決意を済ませていた。そしてそれは、手に持った弓を見れば誰もがわかるものだった。
咄嗟にビッグボスは銃を構えた。
「永琳!! 馬鹿な真似は止めろ!!」
永琳は、こちらを見ようともしない。
「今お前がやろうとしていることは無意味だ!! 全て仕組まれたことだった!! だからそれを収めろ!!」
数秒の沈黙の末、永琳は口を開いた。
「世界は、いつだって不条理ね。何もかも思い通りにいかない。それでも私達は幸せだった。……それを、奴らが壊したのよ」
そこにあるのは確かな憎悪。しかし、その憎悪は永琳のものではない。イザナミによって植え付けられた偽物の憎悪。
「ああそうだ。世界はいつだって不条理だ。俺達は、いつもそれに振り回されて生きてる。それは変えることができない」
「ええそうよ。変えることができないの。なのにあなた達は、そんな当たり前のことすら壊そうとしてる。それを壊すために、私達が犠牲になってる。……もううんざりだわ。何もかも、もううんざり」
矢を手に取り、弦を引く。
狙っているのはビッグボスではない。その矢はゼロの部屋、その扉を狙い澄ましている。
円卓の神達に召集命令が下ったのだ。すぐにこの部屋からゼロが出て来る。
ボスはセイフティを外し、改めて永琳に照準をつける。
「この銃は女神の加護を受けている。たとえアンタでも、当たり所によっては死ぬかもしれない。弓から手を離せ。今ならまだ間に合う……!」
永琳は、その言葉を聞いてせせら笑った。
「間に合う? 一体何に間に合うって言うの? 既にサイは投げられた。私達の破滅というサイが。私にできるのは、それをどうにか最小にすることだけ。
情報を吟味するためなのかは知らないけれど、私にはそれをするだけの時間をもらった。だから、その時間にできることをする。それだけよ」
「永琳!! どこだ! どこにいる!!」
誰に気付かれてもいい。とにかく下手な事をする前に彼女を見つける必要があった。
思い出すのは、ザ・ボスを撃ったあの時。死ななくてもいい人間を殺した、あの時。
自分の息子、ソリッド・スネークならザ・ボスを殺さずに済む方法を見つけていた気がすると、ビッグボスは思っていた。しかし、そのスネークも死んだ。
……いや違う。世界の礎となったのだ。他の参加者も同じ。その魂は転生し、新たな世界で生き続ける。そうボスは信じている。だからこそ、こんな腐った計画に手を貸している。
かといって、自分がしていることを正当化するつもりもない。自分は極悪人だ。その認識を変えるつもりはない。
(だがそれでも。死ななくていい人間が死ぬのは、もう御免だ!)
廊下の角を曲がった時、ようやく永琳の姿を見つけた。
しかしその時には既に、彼女は一つの決意を済ませていた。そしてそれは、手に持った弓を見れば誰もがわかるものだった。
咄嗟にビッグボスは銃を構えた。
「永琳!! 馬鹿な真似は止めろ!!」
永琳は、こちらを見ようともしない。
「今お前がやろうとしていることは無意味だ!! 全て仕組まれたことだった!! だからそれを収めろ!!」
数秒の沈黙の末、永琳は口を開いた。
「世界は、いつだって不条理ね。何もかも思い通りにいかない。それでも私達は幸せだった。……それを、奴らが壊したのよ」
そこにあるのは確かな憎悪。しかし、その憎悪は永琳のものではない。イザナミによって植え付けられた偽物の憎悪。
「ああそうだ。世界はいつだって不条理だ。俺達は、いつもそれに振り回されて生きてる。それは変えることができない」
「ええそうよ。変えることができないの。なのにあなた達は、そんな当たり前のことすら壊そうとしてる。それを壊すために、私達が犠牲になってる。……もううんざりだわ。何もかも、もううんざり」
矢を手に取り、弦を引く。
狙っているのはビッグボスではない。その矢はゼロの部屋、その扉を狙い澄ましている。
円卓の神達に召集命令が下ったのだ。すぐにこの部屋からゼロが出て来る。
ボスはセイフティを外し、改めて永琳に照準をつける。
「この銃は女神の加護を受けている。たとえアンタでも、当たり所によっては死ぬかもしれない。弓から手を離せ。今ならまだ間に合う……!」
永琳は、その言葉を聞いてせせら笑った。
「間に合う? 一体何に間に合うって言うの? 既にサイは投げられた。私達の破滅というサイが。私にできるのは、それをどうにか最小にすることだけ。
情報を吟味するためなのかは知らないけれど、私にはそれをするだけの時間をもらった。だから、その時間にできることをする。それだけよ」
────ボスは二人もいらない。蛇は一人でいい────
生涯決して消えることのない言葉が、ボスの脳裏に蘇る。それを振り切るかのように、ボスは叫んだ。
「止めろ!! 俺は……お前を撃ちたくない」
「だったら撃たなければいい。そんな覚悟で撃鉄を引かないでちょうだい。……私は違う。私は死ぬ覚悟で……全てを捨てる覚悟で、この一撃を放つ」
ガチャリ
そんな音と共に、扉が開き、ゼロの姿が現れた。
瞬間、永琳の右手がその弦から離れた。
「止めろ!! 俺は……お前を撃ちたくない」
「だったら撃たなければいい。そんな覚悟で撃鉄を引かないでちょうだい。……私は違う。私は死ぬ覚悟で……全てを捨てる覚悟で、この一撃を放つ」
ガチャリ
そんな音と共に、扉が開き、ゼロの姿が現れた。
瞬間、永琳の右手がその弦から離れた。
ダアン!!
一発の銃声が鳴り響く。
少ししてから、ドサリと音をたてて永琳は倒れ込んだ。
慌ててボスは駆け寄った。ちらりとゼロを一瞥する。彼に怪我はない。
だが永琳は? 神の奇跡が授けられた銃だ。いくら不老不死の身体とはいえ、どれほどのダメージを与えるのかボスにはわからない。
「どうして……、死なせてくれないの……」
永琳は生きていた。
右肩を撃ち抜かれ、痛々しいほどに血を流してはいたものの、どうにか意識はあるようだ。
「喋るな! 今傷口を塞ぐ」
「死なせて。……私を死なせて。お願いだから……」
ボスの腕を掴みながら、永琳は涙さえ滲ませて懇願した。
「……死なせない。これ以上、世界のための犠牲者は必要ない」
啜り泣く声を無視して、治療を再開する。
だがしかし、それはすぐに中止となった。
「イザナミ……」
いつの間にか、そこにはイザナミがいた。
何も言わず、ただじっと倒れ伏している永琳を見つめていた。
文句を言ってやろうと口を開くが、結局何も言えなかった。
当然だ。セフェランに言われたことを忘れたわけではない。
マルクの記憶をセフェランが読んだことをイザナミは知らないのだ。それは情報戦において、ようやくイザナミより優位に立てたということである。その優位を壊すことがどういうことか、分からないボスではない。
「……何でこんな勝手なことしたんだよ」
その言葉に、カッと頭に血が昇る。
思わずイザナミに食ってかかろうとする。が、いつの間にか永琳を抱きかかえていたイザナミに、ビッグボスは何もできなかった。
「今回のことは、完全に俺の監督不行き届きだ。悪かったね、二人とも」
その白々しい態度に、ボスは歯ぎしりした。
「……ジョン。私を……助けてくれたのか?」
「俺をその名で呼ぶな!!」
思わず怒鳴る。
その時には既に、イザナミの姿はなかった。
結局自分がしたことは何だ? 彼女に対して何をしてやれた?
そんな負の想いに捉われる。自分の意思が選んだ結果は、永琳を苦しめるだけに終わった。
ビッグボスはよろめきながらも、ゼロに背を向けたままその場から去ろうと足を動かした。
「……ありがとう」
その言葉に、一瞬だけ足を止める。が、すぐにビッグボスはその場を後にした。
少ししてから、ドサリと音をたてて永琳は倒れ込んだ。
慌ててボスは駆け寄った。ちらりとゼロを一瞥する。彼に怪我はない。
だが永琳は? 神の奇跡が授けられた銃だ。いくら不老不死の身体とはいえ、どれほどのダメージを与えるのかボスにはわからない。
「どうして……、死なせてくれないの……」
永琳は生きていた。
右肩を撃ち抜かれ、痛々しいほどに血を流してはいたものの、どうにか意識はあるようだ。
「喋るな! 今傷口を塞ぐ」
「死なせて。……私を死なせて。お願いだから……」
ボスの腕を掴みながら、永琳は涙さえ滲ませて懇願した。
「……死なせない。これ以上、世界のための犠牲者は必要ない」
啜り泣く声を無視して、治療を再開する。
だがしかし、それはすぐに中止となった。
「イザナミ……」
いつの間にか、そこにはイザナミがいた。
何も言わず、ただじっと倒れ伏している永琳を見つめていた。
文句を言ってやろうと口を開くが、結局何も言えなかった。
当然だ。セフェランに言われたことを忘れたわけではない。
マルクの記憶をセフェランが読んだことをイザナミは知らないのだ。それは情報戦において、ようやくイザナミより優位に立てたということである。その優位を壊すことがどういうことか、分からないボスではない。
「……何でこんな勝手なことしたんだよ」
その言葉に、カッと頭に血が昇る。
思わずイザナミに食ってかかろうとする。が、いつの間にか永琳を抱きかかえていたイザナミに、ビッグボスは何もできなかった。
「今回のことは、完全に俺の監督不行き届きだ。悪かったね、二人とも」
その白々しい態度に、ボスは歯ぎしりした。
「……ジョン。私を……助けてくれたのか?」
「俺をその名で呼ぶな!!」
思わず怒鳴る。
その時には既に、イザナミの姿はなかった。
結局自分がしたことは何だ? 彼女に対して何をしてやれた?
そんな負の想いに捉われる。自分の意思が選んだ結果は、永琳を苦しめるだけに終わった。
ビッグボスはよろめきながらも、ゼロに背を向けたままその場から去ろうと足を動かした。
「……ありがとう」
その言葉に、一瞬だけ足を止める。が、すぐにビッグボスはその場を後にした。
◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
【殺し合い会場 D-4】
「ちょっといい?」
瀬多が道具を整理していると、ふいに咲夜が呼びかけた。
「どうかしたか?」
「あなたとは、まだちゃんと話をしてなかったと思ってね」
隣に腰掛ける。
その姿は和服ではなくメイド服だ。ずっとバックに入れていたものがようやく乾いてきたらしい。
千枝にはコスプレ女と馬鹿にされていたが。
「千枝とは仲が良いのか?」
「どこをどう見たらそう思えるのか聞きたいくらいだわ」
この短時間で何度殺してやろうと思ったか、と、若干洒落にならないことを口にする。
「雰囲気、かな。千枝も、咲夜には本音でものが言えるみたいだ。彼女にしては珍しく、他人に甘えてる」
「想像しただけで寒気がするわね」
「……千枝は正義感が強い。そのせいで時々突っ走ってしまうこともある。だが、咲夜が見ていてくれるなら安心だ」
咲夜はため息をついた。
「ほんっと。何であんなお荷物を引き入れてしまったのかしら。今でも謎だわ」
心底迷惑そうな顔をする咲夜に、瀬多は思わず苦笑する。
「千枝はあれで、戦闘になったら驚くほど頼りになるぞ。勢いに乗っていたら、『どーん!』の一言で強敵を一撃の元に吹き飛ばすんだ。初めて見た時は唖然としたよ。皆で必死にダメージを蓄積していたのが嘘のような光景だった」
咲夜の脳裏に、千枝が蹴り一つで敵を星にしている様が浮かんだ。
「……それはまた。なんともシュールな光景ね」
「扱い次第では、かなり化ける逸材だと思う」
そう言って瀬多は笑う。
つられて、咲夜も微笑んだ。
「初めて見た」
「何が?」
「笑顔だよ。そうやってもっと笑ってた方が魅力的だと思う」
「あなたってスケコマシね」
間髪いれずにそう言われた。
「い、いや。俺は本当のことを言っただけで……」
「元の世界ではそうやって六股とかかけてたんだろうなぁ。ああ、まるで見えるようだわ。言い訳は断り切れなかったから。クズの常套句ね。女の敵だわ」
「待て待て! 事実として話を進めるな! 俺は一言も肯定してないぞ!!」
そんなやりとりで一頻り瀬多を弄り倒してから、咲夜は本題を切り出した。
瀬多が道具を整理していると、ふいに咲夜が呼びかけた。
「どうかしたか?」
「あなたとは、まだちゃんと話をしてなかったと思ってね」
隣に腰掛ける。
その姿は和服ではなくメイド服だ。ずっとバックに入れていたものがようやく乾いてきたらしい。
千枝にはコスプレ女と馬鹿にされていたが。
「千枝とは仲が良いのか?」
「どこをどう見たらそう思えるのか聞きたいくらいだわ」
この短時間で何度殺してやろうと思ったか、と、若干洒落にならないことを口にする。
「雰囲気、かな。千枝も、咲夜には本音でものが言えるみたいだ。彼女にしては珍しく、他人に甘えてる」
「想像しただけで寒気がするわね」
「……千枝は正義感が強い。そのせいで時々突っ走ってしまうこともある。だが、咲夜が見ていてくれるなら安心だ」
咲夜はため息をついた。
「ほんっと。何であんなお荷物を引き入れてしまったのかしら。今でも謎だわ」
心底迷惑そうな顔をする咲夜に、瀬多は思わず苦笑する。
「千枝はあれで、戦闘になったら驚くほど頼りになるぞ。勢いに乗っていたら、『どーん!』の一言で強敵を一撃の元に吹き飛ばすんだ。初めて見た時は唖然としたよ。皆で必死にダメージを蓄積していたのが嘘のような光景だった」
咲夜の脳裏に、千枝が蹴り一つで敵を星にしている様が浮かんだ。
「……それはまた。なんともシュールな光景ね」
「扱い次第では、かなり化ける逸材だと思う」
そう言って瀬多は笑う。
つられて、咲夜も微笑んだ。
「初めて見た」
「何が?」
「笑顔だよ。そうやってもっと笑ってた方が魅力的だと思う」
「あなたってスケコマシね」
間髪いれずにそう言われた。
「い、いや。俺は本当のことを言っただけで……」
「元の世界ではそうやって六股とかかけてたんだろうなぁ。ああ、まるで見えるようだわ。言い訳は断り切れなかったから。クズの常套句ね。女の敵だわ」
「待て待て! 事実として話を進めるな! 俺は一言も肯定してないぞ!!」
そんなやりとりで一頻り瀬多を弄り倒してから、咲夜は本題を切り出した。
「お嬢様をお願いね。大丈夫だとは思うけど、時々想像を絶するようなことをし始めるから」
「どんなことをするのか、少し気になるな」
「うーん。言葉で表すとするなら……カリスマブレイク、かな」
「……カリスマブレイク?」
「肉体は精神を表すっていうでしょ? 要はそれよ。時々、肉体に精神が異様に反応しちゃうのよねぇ」
怪獣ごっこをしたがったりとか、と咲夜は呟く。
一瞬だけその様子を想像する。
……瀬多は聞かなかったことにした。
「まあでも、あなたの前じゃカッコつけたいみたいだから、そんな変な真似はしないと思うけど」
「何でも知ってるんだな。レミリアのこと」
「なんだかんだで付き合いも長いしね」
自分の知らないレミリアを、咲夜は知っている。
ふいに、それが知りたくなった。
「もう少し、レミリアの話を聞かせてもらっていいか?」
「もちろん」
薄く微笑んで、咲夜は言った。
「どんなことをするのか、少し気になるな」
「うーん。言葉で表すとするなら……カリスマブレイク、かな」
「……カリスマブレイク?」
「肉体は精神を表すっていうでしょ? 要はそれよ。時々、肉体に精神が異様に反応しちゃうのよねぇ」
怪獣ごっこをしたがったりとか、と咲夜は呟く。
一瞬だけその様子を想像する。
……瀬多は聞かなかったことにした。
「まあでも、あなたの前じゃカッコつけたいみたいだから、そんな変な真似はしないと思うけど」
「何でも知ってるんだな。レミリアのこと」
「なんだかんだで付き合いも長いしね」
自分の知らないレミリアを、咲夜は知っている。
ふいに、それが知りたくなった。
「もう少し、レミリアの話を聞かせてもらっていいか?」
「もちろん」
薄く微笑んで、咲夜は言った。
「あの……」
遠慮がちに、千枝はレミリアに声をかけた。
「ん? ああ、瀬多の女か」
「ち、違う違う! ただの友達!!」
「ああ。噂のセフレってやつか」
「だから違うっつーのに!」
千枝はため息をついた。
「まったく。瀬多君が随分ご執心だったからどんな人かと思えば」
「ご執心? それは瀬多が言ってたのか?」
「これでもまあまあ付き合い長いからさ。瀬多君の様子を見ればわかるよ」
「ほ、ほー。そうかそうか。ま、まぁ下僕なら主をそう思うのは当然だが」
照れ隠しにもなってないぞ。というツッコミはさすがに無粋なような気がして止めておいた。
「……あのさ。その瀬多君のことなんだけど」
「瀬多がどうかしたか?」
「うん。瀬多君を、お願いね。ここに来て色々あったみたいだし。瀬多君って、弱音とか吐かないからさ。仲間に頼るってことを知らないわけじゃないんだけど、ちょっと心配で」
自分が言うなって感じだけどね、と言って千枝が苦笑する。
「またそれか」
「え?」
「本当に人間は背負いたがりだな。アドレーヌも瀬多も、お前も」
「…………」
「自分の目から離れる人間も背負うつもりか? 分をわきまえろ」
面倒くさそうに、レミリアはそう言った。
「……さっきの訂正。瀬多君、やっぱ見る目あるわ」
千枝は、レミリアの隣に座り込んだ。
「私は、雪子の死を背負うって決めたんだ。それを背負うからには、もう誰も死なせないって、そう決めた」
レミリアは何も言わなかった。
「これは覚悟だ。力も、何もない私だけど、自分にできることを精一杯やるための覚悟なんだ。私は瀬多君を死なせたくない。他の皆だって死なせたくない。その気持ちは、ずっと大切にしないといけないって。そう思うんだ。
たとえどんだけ荷が重くてもさ、頑張って抱えてたら、案外運べるもんかもしれないじゃん?」
死んだ人にできるのは、生きている自分を見せることだけ。立派に、その人の分まで生きている。そう胸を張って言ってみせることだけ。
そのためなら、千枝は何だって背負う覚悟だった。仲間全員の命。自分の命。それら全てを背負って、抱えて、それでも前に進む覚悟だった。
その覚悟がある限り、雪子の死は無駄じゃない。雪子と築いた絆は、雪子が死んでもずっと生き続ける。そう千枝は思っていた。
「……瀬多はまだまだ半人前だ。言われなくとも、ちゃんと見ててやるさ」
「そっか。あんがと。……なんだかんだで、あんたって優しいんだね」
「おいおい。私は悪魔だぞ。その言葉から一番遠く離れたところにいるのがこの私だ」
「わーそうなんだー。すごいすごい」
誰が聞いてもわかるくらいに棒読みだった。
「む。お前信じてないな? よし。なら私の悪魔伝を聞かせてやろうじゃないか」
そう言って、荒唐無稽ともいえるような嘘とも本当とも言えない話をレミリアは語り出した。
遠慮がちに、千枝はレミリアに声をかけた。
「ん? ああ、瀬多の女か」
「ち、違う違う! ただの友達!!」
「ああ。噂のセフレってやつか」
「だから違うっつーのに!」
千枝はため息をついた。
「まったく。瀬多君が随分ご執心だったからどんな人かと思えば」
「ご執心? それは瀬多が言ってたのか?」
「これでもまあまあ付き合い長いからさ。瀬多君の様子を見ればわかるよ」
「ほ、ほー。そうかそうか。ま、まぁ下僕なら主をそう思うのは当然だが」
照れ隠しにもなってないぞ。というツッコミはさすがに無粋なような気がして止めておいた。
「……あのさ。その瀬多君のことなんだけど」
「瀬多がどうかしたか?」
「うん。瀬多君を、お願いね。ここに来て色々あったみたいだし。瀬多君って、弱音とか吐かないからさ。仲間に頼るってことを知らないわけじゃないんだけど、ちょっと心配で」
自分が言うなって感じだけどね、と言って千枝が苦笑する。
「またそれか」
「え?」
「本当に人間は背負いたがりだな。アドレーヌも瀬多も、お前も」
「…………」
「自分の目から離れる人間も背負うつもりか? 分をわきまえろ」
面倒くさそうに、レミリアはそう言った。
「……さっきの訂正。瀬多君、やっぱ見る目あるわ」
千枝は、レミリアの隣に座り込んだ。
「私は、雪子の死を背負うって決めたんだ。それを背負うからには、もう誰も死なせないって、そう決めた」
レミリアは何も言わなかった。
「これは覚悟だ。力も、何もない私だけど、自分にできることを精一杯やるための覚悟なんだ。私は瀬多君を死なせたくない。他の皆だって死なせたくない。その気持ちは、ずっと大切にしないといけないって。そう思うんだ。
たとえどんだけ荷が重くてもさ、頑張って抱えてたら、案外運べるもんかもしれないじゃん?」
死んだ人にできるのは、生きている自分を見せることだけ。立派に、その人の分まで生きている。そう胸を張って言ってみせることだけ。
そのためなら、千枝は何だって背負う覚悟だった。仲間全員の命。自分の命。それら全てを背負って、抱えて、それでも前に進む覚悟だった。
その覚悟がある限り、雪子の死は無駄じゃない。雪子と築いた絆は、雪子が死んでもずっと生き続ける。そう千枝は思っていた。
「……瀬多はまだまだ半人前だ。言われなくとも、ちゃんと見ててやるさ」
「そっか。あんがと。……なんだかんだで、あんたって優しいんだね」
「おいおい。私は悪魔だぞ。その言葉から一番遠く離れたところにいるのがこの私だ」
「わーそうなんだー。すごいすごい」
誰が聞いてもわかるくらいに棒読みだった。
「む。お前信じてないな? よし。なら私の悪魔伝を聞かせてやろうじゃないか」
そう言って、荒唐無稽ともいえるような嘘とも本当とも言えない話をレミリアは語り出した。
漆黒は、愛剣を手に持ち軽く振るう。
痛みはかなり引いたようだ。さすがに同じ技を繰り出すことは無理だが、それでも通常通りに剣を扱うことはできそうである。
試しに素振りをしていると、視界の隅にトコトコと歩いて来る者が見えた。アドレーヌだ。
「腕はもう大丈夫なんですか?」
それに気付いて素振りを止めた漆黒に、アドレーヌは話しかけた。
「そうだな。完璧とまでは言わないが、普通に剣を振るう分には支障はなさそうだ」
スキルによる回復も相まって、漆黒の治癒能力は高い。アシュナードほどではないが、それでも常人を遥かに超えるものがある。
「私に何か用か?」
「あ、はい。……えっと」
言いにくそうに、アドレーヌは言い淀む。
「私は、今まで自分と主君のためにしか剣を振るってこなかった。しかし、今は違う。私は、ここにいる仲間のために、全力で自分の力を使うつもりだ。全員を守り切る心積もりだ。無論、君も」
アドレーヌは自分の仲間だと、漆黒は強く言い切った。それを聞いて、少しだけ微笑む。
「……それじゃあ。もう一人、お願いしてもいいですか?」
アドレーヌはそう言うと、自分のバックから上海人形を取り出した。
「シャンハイ!」
元気よく、上海人形は声をあげる。
「これは?」
「上海人形です。瀬多さんがサカキさん対策に、って」
サカキと出会ったならば、極力戦いは避けるようにと言われてある。しかし、それにはこちらの有用性を証明しなくてはならない。神楽に関する考察は、瀬多にしかできないものだ。
だからこちらのグループには、それに変わる切り札が必要だと考えたのだろう。
「上海は、サカキさんの悪行を知っています。直接現場を見たこの子がいれば、何かと便利じゃないかと瀬多さんが」
まさかサカキの周りの人間が、全員霊夢のように妄信状態であるとは思えない。たとえ手駒がいるとしても、それはきっと騙されてのことだろう。
サカキは上海人形が生きている事を知らない。なら、上海人形に対する対策は何も取っていないはずなのだ。
純真無垢で、参加者ですらない人形が懸命に話しかければ、騙されている人がいても思い直してくれるかもしれない。
「しかし、いいのか? それは君と離ればなれになるということだろう?」
漆黒の言葉に、上海人形は心配そうにアドレーヌを見つめた。
「……はい。いいんです」
アドレーヌは、上海人形に向き合った。
「ごめんね。勝手に決めちゃって。でも、私も少し、一人で考えてみたいんだ。強いってどういうことなのか。幽香さんが言っていた強さって、何なのか」
上海人形がアドレーヌを自分と同じだと感じていたように、アドレーヌも上海人形に対しそう感じていた。
だからアドレーヌにとって、自分と同じである上海人形の慰めは誰よりも励ましになった。しかしだからこそ、それを手放さなければならないとアドレーヌは思った。それを手放してこそ、強さの意味がわかる。そんな気がしたのだ。
上海人形は少しだけ迷った素振りを見せたが、すぐに
「シャンハイ!!」
と威勢よく返事をした。
「次に会う時は、二人とも強くなって会おう。力はなくても、誰にも負けない強さを持った人になろう」
こくこくと強く頷く上海人形を見て、アドレーヌは微笑んだ。
「じゃあ漆黒さん。どうかこの子を、よろしくお願いします」
「心得た。この剣に賭けて、上海人形は私が守ろう」
強い決意と共に、漆黒は上海人形を受け取った。
痛みはかなり引いたようだ。さすがに同じ技を繰り出すことは無理だが、それでも通常通りに剣を扱うことはできそうである。
試しに素振りをしていると、視界の隅にトコトコと歩いて来る者が見えた。アドレーヌだ。
「腕はもう大丈夫なんですか?」
それに気付いて素振りを止めた漆黒に、アドレーヌは話しかけた。
「そうだな。完璧とまでは言わないが、普通に剣を振るう分には支障はなさそうだ」
スキルによる回復も相まって、漆黒の治癒能力は高い。アシュナードほどではないが、それでも常人を遥かに超えるものがある。
「私に何か用か?」
「あ、はい。……えっと」
言いにくそうに、アドレーヌは言い淀む。
「私は、今まで自分と主君のためにしか剣を振るってこなかった。しかし、今は違う。私は、ここにいる仲間のために、全力で自分の力を使うつもりだ。全員を守り切る心積もりだ。無論、君も」
アドレーヌは自分の仲間だと、漆黒は強く言い切った。それを聞いて、少しだけ微笑む。
「……それじゃあ。もう一人、お願いしてもいいですか?」
アドレーヌはそう言うと、自分のバックから上海人形を取り出した。
「シャンハイ!」
元気よく、上海人形は声をあげる。
「これは?」
「上海人形です。瀬多さんがサカキさん対策に、って」
サカキと出会ったならば、極力戦いは避けるようにと言われてある。しかし、それにはこちらの有用性を証明しなくてはならない。神楽に関する考察は、瀬多にしかできないものだ。
だからこちらのグループには、それに変わる切り札が必要だと考えたのだろう。
「上海は、サカキさんの悪行を知っています。直接現場を見たこの子がいれば、何かと便利じゃないかと瀬多さんが」
まさかサカキの周りの人間が、全員霊夢のように妄信状態であるとは思えない。たとえ手駒がいるとしても、それはきっと騙されてのことだろう。
サカキは上海人形が生きている事を知らない。なら、上海人形に対する対策は何も取っていないはずなのだ。
純真無垢で、参加者ですらない人形が懸命に話しかければ、騙されている人がいても思い直してくれるかもしれない。
「しかし、いいのか? それは君と離ればなれになるということだろう?」
漆黒の言葉に、上海人形は心配そうにアドレーヌを見つめた。
「……はい。いいんです」
アドレーヌは、上海人形に向き合った。
「ごめんね。勝手に決めちゃって。でも、私も少し、一人で考えてみたいんだ。強いってどういうことなのか。幽香さんが言っていた強さって、何なのか」
上海人形がアドレーヌを自分と同じだと感じていたように、アドレーヌも上海人形に対しそう感じていた。
だからアドレーヌにとって、自分と同じである上海人形の慰めは誰よりも励ましになった。しかしだからこそ、それを手放さなければならないとアドレーヌは思った。それを手放してこそ、強さの意味がわかる。そんな気がしたのだ。
上海人形は少しだけ迷った素振りを見せたが、すぐに
「シャンハイ!!」
と威勢よく返事をした。
「次に会う時は、二人とも強くなって会おう。力はなくても、誰にも負けない強さを持った人になろう」
こくこくと強く頷く上海人形を見て、アドレーヌは微笑んだ。
「じゃあ漆黒さん。どうかこの子を、よろしくお願いします」
「心得た。この剣に賭けて、上海人形は私が守ろう」
強い決意と共に、漆黒は上海人形を受け取った。
◇◇◇
【??? 監視部屋】
【??? 監視部屋】
「どうなりましたか?」
監視部屋へと戻ったボスに、開口一番セフェランはそう聞いた。
「……お前が行動を起こす必要もなかった。あいつは……自滅した」
ボスは、事のあらましをセフェランに説明した。
「……そうですか。彼女らしからぬ短絡的な行動ですが、そこまで追い詰められていたということでしょうね」
「女神は何と?」
沈んだ声は隠せない。しかしそれでも、ボスは聞いた。
「許せないと。何らかの罰を与えねばならないと仰っていました」
「だが彼女は、イザナミを出し抜く上で重要な────」
「女神はそんなことに頓着しません。会場に無断で介入した。このことにだけ重きを置く。そういう方です」
思わず、ボスは壁に拳を叩きつけた。
「もっと柔軟な発想はできないのか! あの女神は!!」
「それは無理でしょう。そもそも、誰かが自分を出し抜くなどと考える方ではありません」
「これだから神という奴は……」
そうやってボスが愚痴っていると、突然マルクが飛び込んできた。
「ボス!! 大変なのサ!! えーりんが……。えーりんが!!」
今までにないくらいに焦燥し切っている。
だが、ボスにできることは何もなかった。
「お願いなのサ。ボスの力で助けてあげて欲しいのサ! えーりんは何も悪くない。えーりんは、ただお姫様と一緒に、平和に暮らしたかっただけなのサ! お願いボス!!」
自分に懇願してきた永琳とマルクの姿が重なって見えた。
が、それを無理やり振り払う。
「……俺の権限じゃ、無理だ」
奇しくも、あの時の永琳に対して言ったものと同じ言葉を、マルクに伝えた。
「あのゼロって人にお願いしたらいいのサ!! ボスの言う事なら聞くだろうってえーりんが言ってたのサ!!」
ゼロ。円卓の神の一人であり、女神と同等の権限を持つ者。
確かに、今の永琳をどうにかできるのはゼロくらいだ。しかし
「マルク。……もう無理なんだ」
ゼロの目的は世界創世だ。殺し合いを完遂させることが目的だ。それを妨害しようとした永琳を、彼が助ける理由はない。
マルクが泣いている。セフェランも、何ともない振りをしているが、本心では苦虫を噛んでいる。そしてボスも……
「この悲劇は、誰も望んじゃいないものだったはずだ」
そう。一人以外は。
イザナミ。あの飄々とした神。力を制限され、ここから移動することもままならない、格下の神。しかしだからこそ、誰よりも恐ろしく、誰よりも考えを読むのが難しい。
監視部屋へと戻ったボスに、開口一番セフェランはそう聞いた。
「……お前が行動を起こす必要もなかった。あいつは……自滅した」
ボスは、事のあらましをセフェランに説明した。
「……そうですか。彼女らしからぬ短絡的な行動ですが、そこまで追い詰められていたということでしょうね」
「女神は何と?」
沈んだ声は隠せない。しかしそれでも、ボスは聞いた。
「許せないと。何らかの罰を与えねばならないと仰っていました」
「だが彼女は、イザナミを出し抜く上で重要な────」
「女神はそんなことに頓着しません。会場に無断で介入した。このことにだけ重きを置く。そういう方です」
思わず、ボスは壁に拳を叩きつけた。
「もっと柔軟な発想はできないのか! あの女神は!!」
「それは無理でしょう。そもそも、誰かが自分を出し抜くなどと考える方ではありません」
「これだから神という奴は……」
そうやってボスが愚痴っていると、突然マルクが飛び込んできた。
「ボス!! 大変なのサ!! えーりんが……。えーりんが!!」
今までにないくらいに焦燥し切っている。
だが、ボスにできることは何もなかった。
「お願いなのサ。ボスの力で助けてあげて欲しいのサ! えーりんは何も悪くない。えーりんは、ただお姫様と一緒に、平和に暮らしたかっただけなのサ! お願いボス!!」
自分に懇願してきた永琳とマルクの姿が重なって見えた。
が、それを無理やり振り払う。
「……俺の権限じゃ、無理だ」
奇しくも、あの時の永琳に対して言ったものと同じ言葉を、マルクに伝えた。
「あのゼロって人にお願いしたらいいのサ!! ボスの言う事なら聞くだろうってえーりんが言ってたのサ!!」
ゼロ。円卓の神の一人であり、女神と同等の権限を持つ者。
確かに、今の永琳をどうにかできるのはゼロくらいだ。しかし
「マルク。……もう無理なんだ」
ゼロの目的は世界創世だ。殺し合いを完遂させることが目的だ。それを妨害しようとした永琳を、彼が助ける理由はない。
マルクが泣いている。セフェランも、何ともない振りをしているが、本心では苦虫を噛んでいる。そしてボスも……
「この悲劇は、誰も望んじゃいないものだったはずだ」
そう。一人以外は。
イザナミ。あの飄々とした神。力を制限され、ここから移動することもままならない、格下の神。しかしだからこそ、誰よりも恐ろしく、誰よりも考えを読むのが難しい。
「……セフェラン。俺のことを女神には?」
「言うわけがありません。あなたは私が唯一信頼する人間ですから。先程のお礼は……そうですね。ツチノコ三本で手を打ちましょう」
ボスは苦笑し、「それは少し高過ぎる」と呟いた。
今はセフェランの気遣いに、素直に感謝したい。泣きじゃくるマルクの頭を撫でてやりながら、ボスはそう思った。
「イザナミの目的は未だわからないまま。ですが私達は、どうにかして彼の先手を取らないといけません。……いえ。“彼女の”、でしたね」
セフェランの言おうとしていることを分かりかねて、思わずボスはセフェランを見つめた。
「私達の目的は殺し合いの完遂。ならば、参加者には殺し合ってもらえばいい。役割も何も関係なく、ただ殺し合ってもらえば」
「殺し合いに介入するってのか? だがそれは、円卓にとってはご法度だろ」
「許可をもらえばいいのです。どうせ不測の事態は起きてしまっている。それに対応するのは至極当然の行動です。イザナミが担わせた役割も全て関係なく、参加者は殺し合う。それで私達の願いは叶います」
早速、セフェランは準備をし始めた。それにボスは反論するつもりはない。する気にもなれない。
ボスの頭にあるのは、今自分達がしていることは本当に正しいことなのか、ということだけだった。
(ザ・ボス。あんたの願う世界っていうのは……こんなものだったのか?)
それは、誰も答えてはくれない生涯の命題。何かを犠牲にして何かを得る。それが間違っているのかいないのか。それは誰にもわからないことなのだ。
「言うわけがありません。あなたは私が唯一信頼する人間ですから。先程のお礼は……そうですね。ツチノコ三本で手を打ちましょう」
ボスは苦笑し、「それは少し高過ぎる」と呟いた。
今はセフェランの気遣いに、素直に感謝したい。泣きじゃくるマルクの頭を撫でてやりながら、ボスはそう思った。
「イザナミの目的は未だわからないまま。ですが私達は、どうにかして彼の先手を取らないといけません。……いえ。“彼女の”、でしたね」
セフェランの言おうとしていることを分かりかねて、思わずボスはセフェランを見つめた。
「私達の目的は殺し合いの完遂。ならば、参加者には殺し合ってもらえばいい。役割も何も関係なく、ただ殺し合ってもらえば」
「殺し合いに介入するってのか? だがそれは、円卓にとってはご法度だろ」
「許可をもらえばいいのです。どうせ不測の事態は起きてしまっている。それに対応するのは至極当然の行動です。イザナミが担わせた役割も全て関係なく、参加者は殺し合う。それで私達の願いは叶います」
早速、セフェランは準備をし始めた。それにボスは反論するつもりはない。する気にもなれない。
ボスの頭にあるのは、今自分達がしていることは本当に正しいことなのか、ということだけだった。
(ザ・ボス。あんたの願う世界っていうのは……こんなものだったのか?)
それは、誰も答えてはくれない生涯の命題。何かを犠牲にして何かを得る。それが間違っているのかいないのか。それは誰にもわからないことなのだ。
◇◇◇
【殺し合い会場 D-4】
【殺し合い会場 D-4】
「アドレーヌ。そこにいたのか」
瀬多の声に、幽香とカービィの墓の前で座っていたアドレーヌはこちらを振り向いた。
「どうかしました?」
「いや。支給品の分配が終わったから、その報告をと思って。とりあえずこれはアドレーヌが持っていてくれ」
そう言って、瀬多はモンスターボールをアドレーヌに手渡した。ピカチュウの入っている、貴重な戦力だ。
「……いいんですか? また私、とんでもないことをしちゃうかも」
「アドレーヌ!」
思わず瀬多は叫んだ。
「あれは事故だ。君は精一杯やった。結果だけを見ちゃ駄目だ」
アドレーヌは、小さく頷いた。
ボールを軽く投げる。
音をたてて、中からピカチュウが現れた。
「ごめんね。私のせいで、お友達を……」
どこか沈痛な面持ちなピカチュウ。しかし、ぴょんとアドレーヌの肩に飛び乗り、頬を擦り寄せた。
「ピカ!!」
何と言っているのかはわからない。だが、とても力強い声だった。
「きっと、アドレーヌを慰めたいんじゃないか?」
アドレーヌはピカチュウを見つめた。
微笑んでみせるピカチュウのその姿に、自分にはない強さを見た。
「人の命を背負うっていうのは、自分を責めることじゃない。これは重みじゃないんだ」
「重みじゃ……ない?」
「ああ。人は弱いから、何かを背負わなければ生きていけない。そうアドレーヌは言ったけど、俺は少し違うと思う。本当に強い奴は、何かを背負っている奴なんだ」
瀬多は、ぽんとアドレーヌの頭に手を乗せた。
「ここから先の答えは、自分で見つけないとな」
「自分で……」
「そうだ。人によって信じるものが違うように、強さの意味も人によって違う。俺に教えてあげられるのは、俺の思う強さだ。アドレーヌの思うものじゃない。それは、自分で見つけないと意味がない」
「そう……ですね。うん。私が見つけないといけませんよね」
何かを決心したように、アドレーヌは強く頷いた。
「あの、瀬多さん。メダリオンなんですけど、私が持っていてもいいですか? たぶん、あれに触れても大丈夫なのは私だけでしょうし」
強さの意味。それはまだアドレーヌにはわからない。
だが、それでも今できることをしよう。きっとそれが、強さを知る道なのだと信じて。
「ああ。俺も無論そのつもりだ。誰にも触れられないように保管しておいてくれ」
「はい。じゃああの、渡してくれませんか?」
「? アドレーヌが持っているんじゃないのか?」
「私が持ってたんですけど、なくなってるみたいでしたので。瀬多さんが持ちだしたのかなって思ってたんですけど」
瀬多は、どうにも嫌な予感がした。
「……よく確認したか? 本当に入っていなかった?」
「は、はい」
ただならぬ気配に、アドレーヌも若干緊張しながら答えた。
瀬多の声に、幽香とカービィの墓の前で座っていたアドレーヌはこちらを振り向いた。
「どうかしました?」
「いや。支給品の分配が終わったから、その報告をと思って。とりあえずこれはアドレーヌが持っていてくれ」
そう言って、瀬多はモンスターボールをアドレーヌに手渡した。ピカチュウの入っている、貴重な戦力だ。
「……いいんですか? また私、とんでもないことをしちゃうかも」
「アドレーヌ!」
思わず瀬多は叫んだ。
「あれは事故だ。君は精一杯やった。結果だけを見ちゃ駄目だ」
アドレーヌは、小さく頷いた。
ボールを軽く投げる。
音をたてて、中からピカチュウが現れた。
「ごめんね。私のせいで、お友達を……」
どこか沈痛な面持ちなピカチュウ。しかし、ぴょんとアドレーヌの肩に飛び乗り、頬を擦り寄せた。
「ピカ!!」
何と言っているのかはわからない。だが、とても力強い声だった。
「きっと、アドレーヌを慰めたいんじゃないか?」
アドレーヌはピカチュウを見つめた。
微笑んでみせるピカチュウのその姿に、自分にはない強さを見た。
「人の命を背負うっていうのは、自分を責めることじゃない。これは重みじゃないんだ」
「重みじゃ……ない?」
「ああ。人は弱いから、何かを背負わなければ生きていけない。そうアドレーヌは言ったけど、俺は少し違うと思う。本当に強い奴は、何かを背負っている奴なんだ」
瀬多は、ぽんとアドレーヌの頭に手を乗せた。
「ここから先の答えは、自分で見つけないとな」
「自分で……」
「そうだ。人によって信じるものが違うように、強さの意味も人によって違う。俺に教えてあげられるのは、俺の思う強さだ。アドレーヌの思うものじゃない。それは、自分で見つけないと意味がない」
「そう……ですね。うん。私が見つけないといけませんよね」
何かを決心したように、アドレーヌは強く頷いた。
「あの、瀬多さん。メダリオンなんですけど、私が持っていてもいいですか? たぶん、あれに触れても大丈夫なのは私だけでしょうし」
強さの意味。それはまだアドレーヌにはわからない。
だが、それでも今できることをしよう。きっとそれが、強さを知る道なのだと信じて。
「ああ。俺も無論そのつもりだ。誰にも触れられないように保管しておいてくれ」
「はい。じゃああの、渡してくれませんか?」
「? アドレーヌが持っているんじゃないのか?」
「私が持ってたんですけど、なくなってるみたいでしたので。瀬多さんが持ちだしたのかなって思ってたんですけど」
瀬多は、どうにも嫌な予感がした。
「……よく確認したか? 本当に入っていなかった?」
「は、はい」
ただならぬ気配に、アドレーヌも若干緊張しながら答えた。
瀬多は全員を呼び出し、メダリオンの所在を知る者がいないか尋ねたが、全員が首を振った。
「おいどういうことだ? 誰かが隠してるとかじゃないだろうな。もうああいうのは御免だぞ」
毒物事件のことを言っているのだろう。
瀬多は、アドレーヌを見つめて聞いた。
「俺達が眠っている間、取り乱したりはしなかったか? 自分を必要以上に責めたりとか、そういうことは?」
「た、たぶん……なかったと思いますけど」
だとしたら、この事態は何だ? 何故メダリオンが見つからない。
あの騒動の中なら誰でもメダリオンを回収することはできただろうが、そんなことを誰が……。
「……おいおい。まさか、そんなことは……」
「何か心当たりがあるの?」
永琳は言っていた。イザナミはメダリオンのことを容認していたと。それはつまり、メダリオンが脱出に関する重要アイテムだと知っていたことになる。
イザナミは毒物事件を引き起こし、メダリオンによって幽香を暴走させた。永琳の言うところの試練として。
だが、それがイザナミにとって、未だ試練となり得ていなかったとしたら。
「……くそ。それしか考えられないか」
「ちょっと瀬多君。わかるように説明してよ」
「メダリオンを持ち去られたんだ。おそらく、イザナミの息のかかった者に」
「……本当か?」
にわかには信じられない話だ。殺し合いの参加者の中に、まさか主催者と通じている人間いるなんて。
「それしか考えられない。……まずいことになった。会場内にイザナミと通じている奴がいたとすると、俺と永琳の会話を聞かれていたということになる。ipadの存在がばれた」
「ちょ、ちょっと! それって相当やばいんじゃないの!?」
「ああ。非常に厄介だ。……皆。悪いが放送を待っている時間はなくなった。早速出発しよう。今は一分でも時間が惜しい。放送はチームに別れて、移動しながら聞く。それでいいか?」
全員が素早く頷き、出発する準備を始めた。
「おいどういうことだ? 誰かが隠してるとかじゃないだろうな。もうああいうのは御免だぞ」
毒物事件のことを言っているのだろう。
瀬多は、アドレーヌを見つめて聞いた。
「俺達が眠っている間、取り乱したりはしなかったか? 自分を必要以上に責めたりとか、そういうことは?」
「た、たぶん……なかったと思いますけど」
だとしたら、この事態は何だ? 何故メダリオンが見つからない。
あの騒動の中なら誰でもメダリオンを回収することはできただろうが、そんなことを誰が……。
「……おいおい。まさか、そんなことは……」
「何か心当たりがあるの?」
永琳は言っていた。イザナミはメダリオンのことを容認していたと。それはつまり、メダリオンが脱出に関する重要アイテムだと知っていたことになる。
イザナミは毒物事件を引き起こし、メダリオンによって幽香を暴走させた。永琳の言うところの試練として。
だが、それがイザナミにとって、未だ試練となり得ていなかったとしたら。
「……くそ。それしか考えられないか」
「ちょっと瀬多君。わかるように説明してよ」
「メダリオンを持ち去られたんだ。おそらく、イザナミの息のかかった者に」
「……本当か?」
にわかには信じられない話だ。殺し合いの参加者の中に、まさか主催者と通じている人間いるなんて。
「それしか考えられない。……まずいことになった。会場内にイザナミと通じている奴がいたとすると、俺と永琳の会話を聞かれていたということになる。ipadの存在がばれた」
「ちょ、ちょっと! それって相当やばいんじゃないの!?」
「ああ。非常に厄介だ。……皆。悪いが放送を待っている時間はなくなった。早速出発しよう。今は一分でも時間が惜しい。放送はチームに別れて、移動しながら聞く。それでいいか?」
全員が素早く頷き、出発する準備を始めた。
最終チェックを済ませ、お互いのチーム同士で固まる。
時計を見ると、あと五分程で放送が始まるようだった。だが、放送で得られる情報は全員で聞かなければならないようなものではない。
この六人が再び揃うのは当分先の話になる。もしかしたら、六人が揃うのはこれが最後かもしれない。
それでも、全員が笑顔だった。
皆で生きて帰る。そんな強い決意が、全員の心にはあった。
「千枝。あまり飛ばし過ぎるなよ」
「わかってる。ちゃんと仲間にも頼るって。……瀬多君も、無茶はしないでね」
「ああ」
パン、と互いに手を合わせる。
言外に、絶対に死なないようにと言い含ませて。
時計を見ると、あと五分程で放送が始まるようだった。だが、放送で得られる情報は全員で聞かなければならないようなものではない。
この六人が再び揃うのは当分先の話になる。もしかしたら、六人が揃うのはこれが最後かもしれない。
それでも、全員が笑顔だった。
皆で生きて帰る。そんな強い決意が、全員の心にはあった。
「千枝。あまり飛ばし過ぎるなよ」
「わかってる。ちゃんと仲間にも頼るって。……瀬多君も、無茶はしないでね」
「ああ」
パン、と互いに手を合わせる。
言外に、絶対に死なないようにと言い含ませて。
「お嬢様。あまり我儘ばかり言って瀬多を困らせてはいけませんよ。私と違ってヤワですから、無理をさせて倒れられたら大変です」
「わかってるわかってる。適度に、な」
「ええ。適度に。倒れるぎりぎりまでこき使うのが主の務めです。下僕を殺さず、どこまで搾り尽くせるかが、主君の器を決めるのですよ」
「心得ておくよ」
そう言って、レミリアと咲夜は拳を突き合わせた。
「……なんだか物騒な会話が聞こえるんだが」
「あ、あはは。いくら咲夜でも冗談だよ冗談。……たぶん」
冗談のように聞こえないのが彼女達の怖いところだ。
「何が冗談なんだ? まぁ、私もそこまで無理を言うつもりはない。こいつもいるしな」
そう言って、ぽんとアドレーヌの頭に手を置いた。
「え? あ、あの……どういうことでしょう」
「ん? お前も一緒に来るんだろう? だったら、お前も私の部下だ。瀬多同様にちゃんと面倒みてやるよ」
それは、レミリアが初めてアドレーヌを認める言葉だった。
アドレーヌはしばらくぽかんとしていたが、やがて満面の笑みで頷いた。
「はい。ありがとうございます!」
「わかってるわかってる。適度に、な」
「ええ。適度に。倒れるぎりぎりまでこき使うのが主の務めです。下僕を殺さず、どこまで搾り尽くせるかが、主君の器を決めるのですよ」
「心得ておくよ」
そう言って、レミリアと咲夜は拳を突き合わせた。
「……なんだか物騒な会話が聞こえるんだが」
「あ、あはは。いくら咲夜でも冗談だよ冗談。……たぶん」
冗談のように聞こえないのが彼女達の怖いところだ。
「何が冗談なんだ? まぁ、私もそこまで無理を言うつもりはない。こいつもいるしな」
そう言って、ぽんとアドレーヌの頭に手を置いた。
「え? あ、あの……どういうことでしょう」
「ん? お前も一緒に来るんだろう? だったら、お前も私の部下だ。瀬多同様にちゃんと面倒みてやるよ」
それは、レミリアが初めてアドレーヌを認める言葉だった。
アドレーヌはしばらくぽかんとしていたが、やがて満面の笑みで頷いた。
「はい。ありがとうございます!」
「うし。じゃあ最後、全員で締めるよ! えーっと……じゃあ漆黒さん! テンション上がるやつお願いね」
「わ、私か? あまりこういったことをする機会がなかったから、どうすればいいのか……」
「こういうのはノリでいいの。ほら、漆黒さんなりのでいいから」
「わ、わかった。では僭越ながら」
ごほんと空咳をすると、漆黒は仰々しく剣を掲げた。
「我らの心を一本の剣とし────」
「長そうだから止めとこうか。じゃあレミリア!」
漆黒の騎士は若干項垂れているようだった。ショックだったのだろうか。
「貴様ら全員私に忠誠を誓い、その血を捧げることを────」
「なんか魂取られそうだから却下。じゃあ咲夜!」
「みんなベストを尽くして、神とかいうふざけた輩を潰しましょう。……死ななかったら」
「いいんだけどさー。最後の一文が不吉過ぎる」
「あの、千枝さんが締めればいいのでは?」
このままでは時間が掛かりそうだと感じ、見かねたアドレーヌが言った。
「え、私!? だってー、なんかこういうのって恥ずかしくない?」
「じゃあやらなければいいんじゃないか?」
「それはダメ! こういうノリは大事なんだから。……しゃあないなー。じゃあみんないくよ!」
恥ずかしいと言っておきながら、妙にやる気満々な様子で、千枝は腕を上げた。
「せーの! うおーやってやるぜーー!!」
「……え? 今の合わせるところ?」
「いや。それはさすがに無理だろ」
「だーもう! やっぱグダグダじゃんか!」
「というわけで、全員また無事に合流しよう。世界創世だか何だか知らないが、俺達が奴らの為に死んでやる義理なんてない。人間の力を神とやらに教えてやろう」
「「「「おー!!」」」」
綺麗に全員がハモッた。
「おい! 普通に締めんな! 私の苦労は一体なんだったんだ!!」
千枝の文句を軽く流し、瀬多チームと咲夜チームは、それぞれの目的地へ向けて出発した。
再び、全員が出会えることを祈って。
「わ、私か? あまりこういったことをする機会がなかったから、どうすればいいのか……」
「こういうのはノリでいいの。ほら、漆黒さんなりのでいいから」
「わ、わかった。では僭越ながら」
ごほんと空咳をすると、漆黒は仰々しく剣を掲げた。
「我らの心を一本の剣とし────」
「長そうだから止めとこうか。じゃあレミリア!」
漆黒の騎士は若干項垂れているようだった。ショックだったのだろうか。
「貴様ら全員私に忠誠を誓い、その血を捧げることを────」
「なんか魂取られそうだから却下。じゃあ咲夜!」
「みんなベストを尽くして、神とかいうふざけた輩を潰しましょう。……死ななかったら」
「いいんだけどさー。最後の一文が不吉過ぎる」
「あの、千枝さんが締めればいいのでは?」
このままでは時間が掛かりそうだと感じ、見かねたアドレーヌが言った。
「え、私!? だってー、なんかこういうのって恥ずかしくない?」
「じゃあやらなければいいんじゃないか?」
「それはダメ! こういうノリは大事なんだから。……しゃあないなー。じゃあみんないくよ!」
恥ずかしいと言っておきながら、妙にやる気満々な様子で、千枝は腕を上げた。
「せーの! うおーやってやるぜーー!!」
「……え? 今の合わせるところ?」
「いや。それはさすがに無理だろ」
「だーもう! やっぱグダグダじゃんか!」
「というわけで、全員また無事に合流しよう。世界創世だか何だか知らないが、俺達が奴らの為に死んでやる義理なんてない。人間の力を神とやらに教えてやろう」
「「「「おー!!」」」」
綺麗に全員がハモッた。
「おい! 普通に締めんな! 私の苦労は一体なんだったんだ!!」
千枝の文句を軽く流し、瀬多チームと咲夜チームは、それぞれの目的地へ向けて出発した。
再び、全員が出会えることを祈って。
【D-4 一日目 昼】
【瀬多チーム】
共通方針:豪華客船にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で咲夜チームと合流する。
共通方針:豪華客船にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で咲夜チームと合流する。
【瀬多総司@ペルソナ4】
[状態]疲労(中) あばら骨折 SP消費(小)、全身打撲
[装備] エクスカリバー@ファイナルファンタジー4
[道具]基本支給品一式 攻略本 銃の弾(残り15発)、不明支給品0~1 、携帯電話、携帯型ゲーム機、マスターボール、レッドの帽子、M1911A1(6/7)@メタルギアソリッド
[思考]基本方針:レミリアを手伝いながら、仲間と合流し殺し合いを脱出する
1. イゴールを見つけ出し真実を問いただす。
2. 死んでいった者のためにも、誇りをもって生きる
3. イザナミは絶対に許さない
※イゴールと『血の契約』を交わしました。瀬多は「イゴールを探索する」という目的を最優先しなければなりません。なお、瀬多が死ねば契約を知る者に契約権が譲渡されます。誰になるかはランダムです
[状態]疲労(中) あばら骨折 SP消費(小)、全身打撲
[装備] エクスカリバー@ファイナルファンタジー4
[道具]基本支給品一式 攻略本 銃の弾(残り15発)、不明支給品0~1 、携帯電話、携帯型ゲーム機、マスターボール、レッドの帽子、M1911A1(6/7)@メタルギアソリッド
[思考]基本方針:レミリアを手伝いながら、仲間と合流し殺し合いを脱出する
1. イゴールを見つけ出し真実を問いただす。
2. 死んでいった者のためにも、誇りをもって生きる
3. イザナミは絶対に許さない
※イゴールと『血の契約』を交わしました。瀬多は「イゴールを探索する」という目的を最優先しなければなりません。なお、瀬多が死ねば契約を知る者に契約権が譲渡されます。誰になるかはランダムです
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]疲労(中) 魔力(中) 額に酷い裂傷 全身打撲(全て回復中)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式
[思考]基本方針:主催者を倒し、どちらが支配者かを思い知らせる
1. 手下を作って脱出する。邪魔立てする奴は殺す
2. これ以上部下は殺させない
3, ゴルベーザを嫌悪
※時間さえかければ傷は治癒しますが、休息を取らなければ疲労感は回復しません
※弾幕を撃つのに溜めが必要。威力も制限されています
[状態]疲労(中) 魔力(中) 額に酷い裂傷 全身打撲(全て回復中)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式
[思考]基本方針:主催者を倒し、どちらが支配者かを思い知らせる
1. 手下を作って脱出する。邪魔立てする奴は殺す
2. これ以上部下は殺させない
3, ゴルベーザを嫌悪
※時間さえかければ傷は治癒しますが、休息を取らなければ疲労感は回復しません
※弾幕を撃つのに溜めが必要。威力も制限されています
【アドレーヌ@星のカービィ】
[状態]疲労(小)、深い悲しみと強い罪悪感、 腹に打撲
[装備]ピカチュウのモンスターボール@ポケモンシリーズ
[道具]基本支給品一式、アドレーヌの絵描き道具一式
[思考]基本方針:ゲームには乗らない。できれば人も殺したくない
1. 自分にとっての強さを知る
2. もう人が死ぬのは見たくない
[状態]疲労(小)、深い悲しみと強い罪悪感、 腹に打撲
[装備]ピカチュウのモンスターボール@ポケモンシリーズ
[道具]基本支給品一式、アドレーヌの絵描き道具一式
[思考]基本方針:ゲームには乗らない。できれば人も殺したくない
1. 自分にとっての強さを知る
2. もう人が死ぬのは見たくない
【ピカチュウ】
[状態]疲労(中)、全身打撲、PP消費(中)
[思考]
1, 自分にできることをする
2, レッドに会いたい
※レッドのピカチュウです。覚えてる技は「かみなり」「十万ボルト」「ボルテッカー」とあと一つです
※レッドと同じ時期につれてこられてます
[状態]疲労(中)、全身打撲、PP消費(中)
[思考]
1, 自分にできることをする
2, レッドに会いたい
※レッドのピカチュウです。覚えてる技は「かみなり」「十万ボルト」「ボルテッカー」とあと一つです
※レッドと同じ時期につれてこられてます
【咲夜チーム】
共通方針:閑古島村にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で瀬多チームと合流する
共通方針:閑古島村にあるクリスタルを回収し、テトラ発電所で瀬多チームと合流する
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]疲労(中)、胸骨にヒビ、鼻の骨の陥没(治療済み、衝撃を与えるとまた陥没する恐れあり)、腹部に痣、顔に痣、全身打撲
[装備]虹の剣@星のカービィ
[道具]支給品一式(食糧はなし)、凹んだ防弾チョッキ、釘打ち機、銀の大剣@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡、不明支給品1~2
[思考・状況]基本方針;ピエロを倒して異変解決。油断はしない。幻想郷の常識は捨てる。
1, リーダー、嫌だなぁ……
3. 漆黒の騎士に共感。自分の幸せのために生きて欲しい
[状態]疲労(中)、胸骨にヒビ、鼻の骨の陥没(治療済み、衝撃を与えるとまた陥没する恐れあり)、腹部に痣、顔に痣、全身打撲
[装備]虹の剣@星のカービィ
[道具]支給品一式(食糧はなし)、凹んだ防弾チョッキ、釘打ち機、銀の大剣@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡、不明支給品1~2
[思考・状況]基本方針;ピエロを倒して異変解決。油断はしない。幻想郷の常識は捨てる。
1, リーダー、嫌だなぁ……
3. 漆黒の騎士に共感。自分の幸せのために生きて欲しい
【漆黒の騎士@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
[状態]:疲労(中)、両腕に腫れ、額に大きな裂傷、頬骨あばら骨折、全身打撲、全身裂傷(全てスキルで治癒中)
[装備]:神剣エタルド 神剣ラグネル
[道具]:基本支給品一式 、上海人形
[思考]
基本方針:咲夜の騎士として彼女を守りながら自分自身を認めた生き方をする
1:仲間のために自分の力の全てを使う。
2:アシュナードは打ち倒す
※参戦時期はナドゥス城の戦い後です。
[状態]:疲労(中)、両腕に腫れ、額に大きな裂傷、頬骨あばら骨折、全身打撲、全身裂傷(全てスキルで治癒中)
[装備]:神剣エタルド 神剣ラグネル
[道具]:基本支給品一式 、上海人形
[思考]
基本方針:咲夜の騎士として彼女を守りながら自分自身を認めた生き方をする
1:仲間のために自分の力の全てを使う。
2:アシュナードは打ち倒す
※参戦時期はナドゥス城の戦い後です。
【里中千枝@ペルソナ4】
[状態]:疲労(中)、SP消費(小)、腹部に痣、全身打撲
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、万能薬×2@ファイナルファンタジー4、キラーボウ(13/15)
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1, 雪子のような人を出さないために戦う
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
[状態]:疲労(中)、SP消費(小)、腹部に痣、全身打撲
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、万能薬×2@ファイナルファンタジー4、キラーボウ(13/15)
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1, 雪子のような人を出さないために戦う
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
【上海人形】
[状態]背中に大きな裂傷 (かなり荒い治療済み。汚い布と汚い糸でこれでもかと汚く縫われている。)
[思考]
1:強くなって、またアドレーヌと合流する
2:霊夢を助ける
※サカキと霊夢の会話は全て聞いていました。
※羽が無い為、空を飛べません。
[状態]背中に大きな裂傷 (かなり荒い治療済み。汚い布と汚い糸でこれでもかと汚く縫われている。)
[思考]
1:強くなって、またアドレーヌと合流する
2:霊夢を助ける
※サカキと霊夢の会話は全て聞いていました。
※羽が無い為、空を飛べません。