三人目 ◆EAUCq9p8Q.
まあ 座りなよ
えーっと……?
配点(かいしんのいちげき)
――――――――――――
×
(どうやら、二組居たらしい)
先の真昼の流れ星について、森林公園の散策を初めて数分も経たないうちに
シルクちゃんはそう結論づけた。
根拠は一点。
森林公園入り口から少し歩いたところにある開けた場所に残された、真新しい戦闘痕だ。
美しく整えられていたであろう芝生は、無数に穿たれたクレーターによって見るも無残な有様になっている。
離れたところからは、物の焦げたような臭いも漂ってきている。
『つまり……一人がもう一人を吹き飛ばしたってことか』
(そうだろう。そして……)
『そして、その吹き飛ばしたもう一人は、この近くに居る可能性がある……か?』
現場の状況を霊体化したまま見ていた
シルクちゃんのサーヴァント・ランサーが、そう念話で呟く。
それもまた、
シルクちゃんの結論と同じだった。
見えた流れ星は一筋。何者かが『魔法もどき』を使い、もう一方を吹き飛ばしたという仮説。
となると、残った一人は飛びもせず、流れもせず、えっちらおっちら歩いている可能性が高い。
そこで推測を止め、一息つく。そして、ランサーに向かって、どうしようか、と短く尋ねた。
『どうするもなにも、やるんだろう?』
(やるね)
『だったら、身を晒す他ないだろうな』
『我が実体化してるのを見て寄ってきたなら、それこそマスターの望むところだろう。
それに、身を潜めていて不覚を取りました、じゃあ笑えん』
いくら東国無双を誇ったランサーといえど、今は英霊の身。
霊体化している状態では近寄る者の気配すらロクに探ることができない。
更に、相手から攻撃を受けた際にどれだけ素早く霊体化を解こうとも防御に移るのは遅れてしまう。
シルクちゃんもまた、そのことを理解していた。
「じゃ、行こうか」
「Jud.」
ランサーが霊体化を解除し、今度は二人で歩道を行く。
クレーターまみれの地面を抜ければ、焦げ跡の残る木々があった。
「この先もこんな感じなんだろうか」
「どうだろうな」
怪しくない程度に会話をしながら歩を進める。
奥へ、更に奥へ。
×
しばらく森林公園を歩き、そろそろ出口というところで不意に、
シルクちゃんの足が止まる。
最初、
シルクちゃんには何故自分が立ち止まったのかが理解できなかった。
だが、隣を歩くランサーもまた、同じ方向を見ていることに気づき、そしてようやく違和感を思い出した。
何かを感じた。
視界の端に何かが映った気がした。森の影に、その場に居るはずのない者が居た気がした。
(……ランサー)
『どうした』
違和感に警戒し、あえて念話で声をかける。
ランサーも察したらしく、念話で返答をする。
(君には何か見えたかな)
『何かっていうほどはっきりは見えてないが、『何かが居る』とは感じたな』
(同じだ。私も、何かが居るような気がした。丁度、そこの森の中に)
『とすると、実際に何か居るんだろうな』
実体化したままのランサーが、足を肩幅に開く。土を踏みしめる音が、森に溶けていく。
(やる気だね)
『満々だ』
(それで、何をやる気なんだい)
『マスターが気付ける程度っていうんなら、そいつの隠れる能力はそれほど高くないってことだろう。
だったら、引きずり出してやればいい』
(方法が?)
『そうだな。まあ、いくらか見やすくはできるだろうよ。
宝具解放の魔力に釣られて出てきたなら、それもまた良しだ』
(だったら、やってみてくれ)
『Jud.。場合によっちゃあそのまま戦いになるかもしれん。
マスターは、少し下がっててくれよ』
応えて、ランサーが自身の象徴である武器を取り出す。
偉丈夫であるランサーの身の丈を上回るほどの長さのそれは、彼の逸話に記された東国無双の振るった槍。
ランサーに与えられた神格武装。穂先に止まった蜻蛉が二つに割れたことにより付けられた名は、『蜻蛉切』。
蜻蛉切の穂先が移すのは、広大な森。
シルクちゃんと、ランサーと、二人が『違和感』を感じた方向の木々の群れ。
「一振、運試しだ」
その穂先に結ぶのは『名』。
これから割断するものの名を宝具の真名に乗せる。
結んだ名は『森』。
目の前に広がる全ての木を寄せ集めた俗称。
「結べ―――『蜻蛉切』!」
空を裂く音。光の尾。瞬きするよりも短い間で、槍は横一文字に振りぬかれ。
不可視の斬撃が宙を走り、『森』を切り裂いた。
×
事象を割断する槍・『蜻蛉切』は万能ではない。
結んだ名が曖昧であれば、その真価を発揮することはできず、刻む傷は決して両断には至らない。
更に、同一の物がその場に複数あったならば、これもまた両断には至らなくなる。
だが、逆に言えば、結ぶ名が曖昧だったとしても、数が多かったとしても、威力の減衰を木にしなければ斬りつけることはできる。
有象無象の木々の生い茂る『森』に向けた一閃は、その曖昧さと数の多さ故『森』を構成する木々の一つ一つを綺麗に両断するまでは至らない。
だが、幹を傷つけ表皮を剥ぎ、野放図に生い茂る枝を切り飛ばし、葉を散らし、視界を開く程度には役に立つ。
ランサーの目線より少し低い(
シルクちゃんの目線よりやや高い)ところにあった枝葉が一斉に舞い上がる。
ばさばさと音を立てて切り払われた枝葉が落ち、深緑に空白が生まれる。
開けた視界に光が差し、闇に隠れていた何かを二人の眼前に晒す。
「何っ!?」
果たしてそこには参加者が居た。
木々の間に潜んでいたが、遮蔽物を切り取られ、身を隠すことが出来なくなったサーヴァント。
まるでトカゲをそのまま人型にしたような『そいつ』は、しまったというように顔を歪めて、両手を広げた。
ランサーが蜻蛉切を構え直すと同時に、『そいつ』が動く。
「『イオナズン』!!」
声とともに放たれたのは無数の光球。
だが、決してファンシーなイルミネーションマジックではないことは、ランサーからも一目瞭然だった。
強力なエネルギーが集束している。もし着弾すれば、周囲を巻き込んで爆発を起こすだろう。
そうすれば、丁度、先ほど二人で確認した戦闘痕のような無数のクレーターが生まれるはずだ。
成程、これが西洋に伝わるという魔術か、とランサーは心のなかで頷き、同時に自身の状況を確認する。
ランサーからそう遠くない位置には彼のマスターである
シルクちゃんが居る。当然この光球の範囲内だ。
彼女は、多量の魔力と大事に抱えている魔法の羽ペン以外はそこらの少女となんら変わりない。
この光球の一発でもくらえば、大怪我は免れないだろう。
ならばどうするか。
ふ、と短く息を吐き、構え直した槍に力が篭る。
迫る光球に対し、ランサーは避けるともせず、かといって
シルクちゃんをかばうでもなく。
ただ、槍を返して再び穂先に名を結んだ。
結ぶ名は『イオナズン』。ご丁寧にも相手が叫んだ魔術の名前。
「丁寧なのはいいことだが、そういうのは、相手を選ぶもんだぜ」
穂先が、再び世界を睨む。
次に割断するのは森ではなく、全てが同じ名を持つだろう魔術の光弾。
ランサーと
シルクちゃんに向かう光弾の数、視認範囲にておよそ十一。
刃渡り数十センチの『有効範囲』に放たれた光球の全てを捉えた刹那を、ランサーは逃さなかった。
「結べ、蜻蛉切!」
真名の解放、宝具が再び事象を割断する。
かの敵の手から空中へと放たれた無数の光弾が、着弾することなく、その場で大きく爆ぜる。
やたらめったらに発生した爆発が、周囲の木々を、土を舞い上げ、煙幕を成す。
鉢金の尾が揺れ、白髪が波打つ。ランサーの身体にも、木切れや土塊がたたきつけられる。
しかしそんな余波程度では、ランサーを妨げる障害には足らない。
振りぬいた槍の頭を返し、土煙に飛び込む。
名が分からず、視界が晴れていない以上、相手を倒すにはランサーの方から寄る必要があるからだ。
『そいつ』はランサーが光弾を斬るまで徒手だった。そして光弾が炸裂し、ランサーが動き出すまで瞬き数度分も時間は経っていない。
ランサーの睨み通り、敵は未だ諸手の平を晒したままランサーの方を睨んでいた。
一振り、森の木々をすり抜けるような軌道で槍を薙ぐ。軌道の先に『そいつ』の首筋を捉えて。
『そいつ』は、愚鈍そうな見た目に似合わぬ俊敏な動きで上手いこと穂先の刃をくぐり抜けて柄を腕で受け止めた。
徒手と槍がぶつかり合い、硬いものが折れる鈍い音が響く。
衝撃は相殺とはいかない。ランサーの方が押し勝った。『そいつ』の腕は、柄を受け止めたことによってなだらかなくの字に変わっていた。
受け止めているのを理解し、蜻蛉切を縮小する。三メートルの大槍を、一メートルの近接槍へ。
縮む過程で、受け止めていた『そいつ』の腕の骨の折れた部分の真上に、深い裂傷が刻まれる。
絞りだすような『そいつ』の悲鳴。
縮んだ槍を、今度は万全の力を込めて振るう。
肉を裂く音。浅い手応え。見れば、『そいつ』は、手の傷をかばおうともせず、体勢を立て直し、距離を取り直していた。
ならばと今度は刺突を放とうと槍を回す。
しかし、突きを放つよりも速く、『そいつ』はかっと口を開き、悲鳴の代わりに激しい炎を吐き散らした。
「おっと!」
ランサーが飛び退り、炎を避ける。
そして飛び出せるように姿勢を低くしたまま、穂先を輝かせ、炎の奥の『そいつ』の次の一手を待つ。
炎で来るならば『炎』を、イオナズンならば『イオナズン』を、他の魔術ならばまた他の魔術の名を結べるように。
もしも猪突してきたのならば、返り討ちにできるように。
逃げ出したならば、追い打ちをかけられるように。
炎の幕が上がってみれば、『そいつ』は数メートル分距離を取り、片手をランサーに向けて突き出していた。
「『メラゾーマ』!!!」
声とともに、先ほどの激しい炎を超える火炎が進路にある木々というを飲み込みながら、渦を巻いてランサーへと向かってくる。
だが、その地獄から湧き出たような火炎を前にしても、東国無双は一歩も引かない。
「お構いなしってわけか! 結べ、蜻蛉切!」
向かってきたならば割断するまで。
叫ばれた『メラゾーマ』という名をそのまま結び、槍を振るう。
その一撃は、炎の渦を見事割断した。
炎が掻き毟ったように傷跡を残してかき消され、再び視界が明瞭になる。
そして、開けた視界の先に、背を向けた『そいつ』の姿が飛び込む。
考えるまでもなく、逃走だった。
槍の穂先を翻しながら、ランサーは思考を逡巡させる。
遮蔽物の多い中にまた逃げ込まれたならば再びあの『姿を隠す能力』によって姿を晦ませ、追撃も手こずることになるだろう。
上位駆動で距離を詰めるには遮蔽物が多すぎる。
かといって、ランサーが相手の逃走を追い、孤立したマスターを別の何者かに狙われるようなことがあれば恥もいいところだ。
ならば取るべき戦法は一つ。なによりも、退却の脚を絶ち、その上で戦闘を続行できることが望ましい。
ランサーは、一歩を踏み出しながら背後の
シルクちゃんへと声をかけた。
「マスター!」
「『アサシン』だ!」
「Jud.!」
余計な言葉を次ぐことなく、やり取りは終わった。
名は既に結んである。
『アサシン』。
暗殺者のクラスとして呼び出されたサーヴァントの総称でしかない。真っ二つにはできないだろう。
だがしかしその単語さえあれば、背を向けたあの英霊がその単語を背負っているのならば、足を斬る程度は造作も無い。
大きく一歩を踏み出す。ゆらめく炎が、ランサーの足元で霧散する。
踏み出し、詰めた二メートルにも満たぬ距離が、遮蔽の奥へと逃げる背を、三十メートルの射程に捉える。
「結べ、蜻蛉切!」
蜻蛉切を薙ぎ、事象を割断する。
「何?」
しかし、悲鳴も、血しぶきも、上がらない。
轟と鳴いた風の声を背に、『そいつ』は木立の間に再び姿を溶けこませてしまった。
×
ぱちり、ぱちりと爪で掻くようなくすぶる火の音。
周囲に広がる、鼻につく焦げた木の臭い。
うららかな日差しに包まれた森林公園に相応しくない環境の中。
逃走されてから何十秒か経って、ようやく口を開いたのは
シルクちゃんの方だった。
「……しくじっちゃった?」
「らしいな」
「おかしな話だ。私にはあいつのクラス名は、確かにアサシンと見えてたんだけどね」
不思議そうに
シルクちゃんが呟く。
出会って以降、
シルクちゃんの目には確かに『アサシン』というクラス名が見えていた。
ランサーが戦闘中に名を呼んだ瞬間、場の状況と、彼の宝具の効果を理解して、その名を伝えた。その行動に間違いはなかった。
対するランサーも、一切おかしなことはやっていない。
当たり前のように名を結び、当たり前のように斬った。しかし『そいつ』を傷つけることはできなかった。
二人にとっては完全に不測の事態。だが、どちらも取り乱さずに、ただ淡々と、二人で意見を交換する。
「となると……アサシンの振りをしているが、実際はアサシンのクラスじゃない、ってところか」
「他のクラスがアサシンの名を騙っているのかな」
「さあな……案外、鹿角みたいに、宝具として呼び出されたやつかもしれん」
「偽物、か」
考察が敵の正体の核心に至れているかどうかは
シルクちゃんにもランサーにも分からない。
だから、二人は早々に考察を切り上げ。
「追うか?」
「追うさ」
三文字。返して三文字。それだけで、二人の方針は固まった。
何者かを見つけ、戦い、ただ、勝つ。そして、消えゆくものたちを弔う。
そのために今日もまた家を出たのだから、当然、それを成すチャンスを見逃さない。
シルクちゃんとランサーは歩を進める。
その方向は、アサシン……いや、偽アサシンの逃げていった、森林の奥。
×
歩いてしばらくすれば、森林を抜け、住宅街に出た。
あれ以降、
シルクちゃんも、彼女に付き従うランサーも、森林公園内でのように違和感を覚えることはなかった。
途中で進路を切り替えて森の奥深くに逃げたのか。それとも、
シルクちゃんたちと同じように町に抜け別の場所に身を隠しているのか。
前者ならばもう見つけ出すことは不可能に近いだろう。
ならば後者に賭けて探してみるべきかと、住宅街を歩いてみれば。
「行き止まりです」
入り組んだ路地でもない場所で、なぜか、行き止まりへとぶち当たった。
「行き止まり?」
実体化したままのランサーが、発言の主に尋ねる。
「行き止まりの世界です。
見えるでしょう? 進入禁止の標識。だからここは行き止まりなのです。
行き止まりの世界なのです」
「行き止まり、ねえ。どうにもそうは見えないがなあ」
こつん、こつん。標識を二度叩く。
エクスクラメーションマークが書き込まれた標識が、弱々しく揺れる。
どうやらランサーは、現状に何らかの違和感を覚えているらしい。
シルクちゃんもまた、その状況に違和感を覚えていた。
だが、ランサーとは違い、視線は一点……標識ではなく、その隣の、『行き止まりだ』と告げた生き物の方を向いている。
温泉妖精ゆげ子によく似たその生き物が単なるNPCであるはずがない。
NPCがこんな奇天烈な存在なワケがない。少なくとも、
シルクちゃんの知識にはこんなNPCは記憶されていない。
「妖精だ」
「わーお」
いきなり声を掛けられた妖精が、間の抜けた声を上げる。
「妖精が居るってことは、おそらくここは街じゃない。
誰かの陣地か、別の何かか。ともかく、ここは行き止まりじゃない。街とどこか別の場所を繋ぐ、出入り口なんだろう」
ぱきり。
まるで、殻にヒビが入るような小さな音とともに、標識の先の世界が開く。
まるで誘うように空いたドアの奥が、覗きこむ二人を行く先不明の暗闇で見つめ返していた。
「これは"その他の注意"。
"この先さいはて"の標識です。お気を付けて」
「どうするよ」
「……例えば、これが固有結界だったとして、ランサーにはそれが斬れるかい」
「どうだろうなあ。宝具の名が分かれば出来んこともないだろうが、『固有結界』じゃヒビが精一杯だろうな」
「それを聞いて安心した。だったら進もう」
「……さてはマスター、我がなんと答えようが最初から入り込む気だったな」
「当然だ。もしもキャスターの『陣地』だったなら、さっさと叩き潰しておいたほうがいい」
「ははは。確かに。ここに陣地があるってことは、さっきの竜もどきみたいに逃げることもないだろうしな」
片や帽子の位置を直しつつ、片や槍を携えた腕をぐるりと回しながら。
軽口を叩きながら少女と老兵は戸をくぐる。
手を振る妖精に見送られながら、街から、『さいはて』へ。
×
踏み込んでみれば、そこは……確かに街中ではなかった。
磨き上げられたリノリウムの床。謎のオブジェクト。
飾られたテレビが放送しているのは、見たこともない場所の天気予報。
この研究所めいた場所が『さいはて』なのかと歩きまわってみれば、なんとその建物から出ることもできた。
先ほどの『行き止まり』に帰れることを確認したうえで、建物を出る。
表に居た人物によれば、この施設の名前は『ハッピーエンド研究所』。
そして、研究所を出た場所にあったのは。
「驚いた。街中に、『町』があるのか」
ランサーが驚嘆の声を上げる。
その言葉通り、研究所の外には、『町』があった。
といっても、先程まで歩き回っていた街ではない。
薄ぼんやりとした広域と、何かがありそうな予感のする場所が幾つか。
街と呼ぶにはあまりに大雑把な、舞台設定が作りかけの物語のような『町』が。
「はは」
シルクちゃんが、彼女にしては愉快げに声を上げて笑う。
まるで当て付けじゃないか、と。
「なんだ、珍しい」
「……似ていたんだ、懐かしい場所に。全く別物なのにね、なんとなく、そう見えた」
違うとは分かっている。
でも、似ていた。『あの世界』のように、様々な地域が寄せ集められた『広域』は。
妖精も、地域の区切り方も、NPCの人を喰ったような喋り方も、世界を取り巻く雰囲気も。
どことなく彼女の知る世界に似ていた。
この『町』を作っているのが誰なのかは分からないが、
シルクちゃんに対してのあまりの粋な計らいに、苛立ちすら覚える。
「ランサー」
「どうした」
「少し、ここを見て回ってもいいかな」
「となると……飯時には遅れそうだな」
おどけるようにそう言ったランサー。
シルクちゃんは特に答えることなく、懐に入れていた『魔法の羽ペン』を取り出し、宙を走らせてみる。
すると、ペン先からこぼれた魔力が薄暗い広域に一筋の流れ星のように尾を引いた。
「ほお、本当に使えるのか、それ」
「『誰かの創りだした世界』ならね」
はらはらと広域の闇に溶けていく魔力を見ながら、
シルクちゃんはその羽ペンについてを思い返す。
この『町』は、誰かの創りだした世界。
シルクちゃんの愛した世界と同じ、誰かの愛した世界。
ならば当然、現実世界ではペン以上の役には立たない羽ペンが、『誰かの創りだした世界』では力を取り戻す。
ただのペンという忘却を脱ぎ捨て、『誰かの世界』に『そうぞう』を加える羽ペンとしての役割を思い出す。
「少し開けたところか……魔物の居そうなところでも目指そうか。これがどの程度使えるのかを試しておきたい」
×
誰かが言った。
開拓者は『自身の殻に篭る』者だけではなく、『他人の殻に篭る』者も居るんだと。
そうして、誰も予期せぬ『開拓者』が、さいはて町へと踏み込んだ。
【???/さいはて町 広域 ハッピーエンドラボ前/一日目 午後】
【
シルクちゃん@四月馬鹿達の宴】
[状態]魔力消費(小)
[令呪]残り三画
[装備]魔法の羽ペン
[道具]マツリヤの名刺
[所持金]一人暮らしに不自由しない程度にはある
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を手に入れて、復讐する。
1.さいはて町に興味。とりあえずは魔法の羽ペンを使ってみる。
2.さいはて町のサーヴァントを打倒?
3.探索が終われば……?
4.
フェイト・テスタロッサに対しては――
5.
ルーラーへの不信感。
6.時間があれば『本』について調べる。
[備考]
※偽アサシン(まおうバラモス)を確認しました。本物のアサシンではないことも気づいています。
※
フェイト・テスタロッサを助けるつもりはありません。ですが、彼女を
ルーラーに突き出すつもりもありません。
※令呪は×印の絆創膏のような形。額に浮き上がっているのをシルクハットで隠しています。
※出展時期は不明ですが、少なくも友達については覚えていません。
例の本がどの程度本編を書いているのかは後の書き手さんにお任せします。
※魔法の羽ペンは『誰かの創った世界』の中でのみそうぞう力を用いた武器として使用できます。それ以外ではただの羽ペンと変わりありません。
【ランサー(
本多・忠勝)@境界線上のホライゾン】
[状態]平常
[装備]『蜻蛉切』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:主の命に従い、勝つ。
1.さいはて町散策。
2.鹿角に小言を言われちまうな、これは。
[備考]
※宝具『最早、分事無(もはや、わかたれることはなく)』である鹿角は、D-7の奉野宅に待機しています。
×
二度目の敗走。魔王にあるまじきその姿。
しかし、恥じる様子は一切ない。
『そいつ』―――偽アサシンこと、まおうバラモスは知っていた。
この地に呼ばれたサーヴァント、その中には偽アサシンでは到底勝てない者が居るということを。
少し前に戦闘した勇者もそうだし、先ほど戦闘した槍使い(おそらくランサーだろう)もそうだ。
偽アサシンからすれば、完全に分を超えた相手。
「忌々しいが……生き延びることこそ一先ずの使命だ」
脱兎のごとく森を駆け抜け、森を抜ければそのまま遮蔽物に身を隠すため路地を走り、見かけた大きめの家の庭先に飛び込んだ。
結果、運良く追跡は撒けたらしい。数分経っても追ってくる二人の足音一つ、気配の少しも感じることはなかった。
「しかし、完全に姿を隠せてなければ効果がないということか……」
勇者との戦闘のあと、偽アサシンは遮蔽物の多い森の奥で傷を癒やし。
身体がほぼ完治したのを確認してから、それでも前回のような失態を犯さないようにと森林公園の森に沿って移動をしていた。
歩道からは数メートル、気配遮断があれば見つけられないと踏んでいた。
だというのに、木立の間からでも姿を見られたらしく、距離のあった二人の参加者に存在を気取られ、戦闘に雪崩れ込むことになった。
どれだけ劣っていれば気が済むのか、と聞きたくなるほどの性能に不平を口にしたくなる。
だが、言ったところで何も変わらないのは十分理解している。
「いよいよ、当てにならなくなってきたな」
自身の気配遮断の低さと発見される可能性を甘く見ていた。
予選期間中には見つかるようなヘマを踏まなかったというのに、ここに来ての有様に、頭が痛くなる。
「警戒を怠らぬよう……此処から先は、森もないのだから」
自戒するように呟く。
勇者やランサーとは違い、彼の言葉に応えてくれる人物は居ない。
邸宅の庭の外壁に背を預けて座り込み、ランサーの宝具を思い出す。
森を切り開き、放ったイオナズンを全て同時に叩ききり、メラゾーマをかき消した槍。
だが、姿を表した時も、逃げる時も、偽アサシン自体を攻撃することはなかった。
それに、口から吐き出した『激しい炎』も割断することはなかった。
最初から戦う気がなかったのかといえば、そうではない。
戦う気がないというのならば、藪をつついて蛇を出す必要はなかっただろう。
それがどうにも腑に落ちないでいた。
腑に落ちないといえば背後で聞こえたやりとりもそう。
「『アサシン』だ」という少女の声。何故あの瞬間に、偽アサシンのクラス名を看破し、伝える必要があったのか。
「……ううむ」
頭を捻ってみても、答えに繋がるような良い知恵は出ない。
所詮ここにいるのは本物の魔王バラモスの劣化品の劣化品、サーヴァントですらない宝具なのだから。
「ともあれ、宝具について知れたのは僥倖と言うべきだろうな。
忘れぬように、大魔王に伝えなければ」
勇者については情報が少なかったが、先の老齢の槍兵については戦闘中に『槍の伸縮』や『原理不明の斬撃』を目撃できた。
それは十分大きな戦果と言える、はずだ。
大きく息をつき右腕を見る。
折れた骨は既に治り、傷口も塞がりかけていた。
もう少し休めば、勇者から受けた傷も合わせて完治するだろう。
偽アサシンが傷の具合を見ている丁度その頃、遠くの空に光の槍が降ったのだが、小学校の方に背を向け座り込んでいた偽アサシンがそのことに気づくことはなかった。
【D-5/大道寺邸 庭/一日目 午後】
【偽アサシン(宝具『まおうバラモス』)@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ】
[状態]ダメージ(小)、疲労(小)、自動回復中
[思考・状況]
基本行動方針:大魔王城完成まで図書館には近寄らずに情報収集
0.早朝まで生きて残り、参加者の情報を大魔王
ゾーマに伝える。
1.気配遮断スキルを過信せず、身を隠しながら街を歩き回る。
2.参加者を警戒しながら情報収集。全快まで戦いは避ける。
3.
フェイト・テスタロッサを捜索。
[備考]
※
中原岬&セイバー(レイ)、
シルクちゃん&ランサー(
本多・忠勝)を確認しました。セイバーが勇者であることも気付いています。
※遮蔽物がある場合気配遮断もあって発見しにくいですが、見つかるときは見つかります。
※宝具であるため念話・霊体化は使えません。魔力はアサシン(
ゾーマ)のものを使用します。
また、実際のバラモスとは違って状況によって思考判断を行い、分が悪ければ防御・撤退もします。
※彼の持つ気配遮断:Eは『NPCには見つからない』『参加者には隠れていれば見つからない』程度です。
参加者に一人で歩いているところを見られれば見つかります。また、隠れていても直感持ちや敵発見の逸話持ちには気づかれやすいです。
※『NPCを極力殺さない』という
ゾーマの命令を守ります。ただし極力なので必要に応じて殺します。
※早朝、もしくは非常時と判断した場合にのみ廃教会に帰ってきます。
※
フェイト・テスタロッサを見つけた場合、彼女の危険性を判断します。
危険ではないと判断した場合、保護を申し出て教会まで連れ帰るつもりです。(ただし生存優先のため、危険であると判断した場合は交戦・逃走もやむなし)
最終更新:2020年06月21日 02:08