新しい朝が来た、絶望の朝だ ◆EAUCq9p8Q.
☆キャスター
早朝。
世界が目を覚ますより早く、目を覚まし動く影があった。
先ほどまではそこに居なかったはずの影が、公園の隅、最早誰も気に留めず過去に置き去りにされ始めている電話ボックスの中に現れた。
ひょろりとした体躯に黒髪。彼こそ冥府の王となる存在・キャスター・
木原マサキ、その人であった。
マサキの手に握られているのは昨日夜半に見ず知らずの女(
江ノ島盾子と言ったか)より渡された電話番号。そして拝借した少々の小銭。
あの乱痴気女にどう対応するか、こればかりはマサキも少々考えた。
交わした言葉は片手で足りるほど。どうしてマサキにアタリを付けたかも不明(まあ、おおかた図書館周辺になんらかの監視を付けていたのだろうが)。
敵対ではない。だが単純な同盟でもない。同盟を申し出るならあの場で事足りる。
場所も時間も選ばない念話ではなく、ある程度場所と時間を制限される物理電話を用いた連絡というのも引っかかる。
声に出した情報の真偽を見抜く能力なども考えられたが、そうまでするならば江ノ島盾子の振る舞いは雑すぎる。あんな口約束、蹴ってしまえばそれまでだ。
ボタンをプッシュする。
ならば、ならばといくつもの可能性を切り崩し、見えていく江ノ島盾子という女の人物像。
語った言葉、隠された目的。あえてマサキを選んだ理由。
マサキの弾き出した答えに間違いがないならば、江ノ島盾子という女は、あるいは。
コール三回の後に電話が繋がる。
{もしもすぃ?
諸星きらりだにぃ☆}
「切るぞ」
{あー! あー! そういうのってないんじゃない?
私様はそういう態度にプンプンでいらっしゃる!!}
「チッ」
舌打ちを聞くと、女・江ノ島盾子は電話の向こうの笑顔まで浮かぶほどの笑い声を響かせた。
「最初に聞かせろ。お前はこの聖杯戦争を終わらせると言ったが」
{ああ、あれ}
「回りくどい言い方をせずに答えろ」
{んー……あたち、聖杯戦争、あきまちたの}
飽きた、ときた。
やはりそうかと口が歪む。
{だから、マスターも、サーヴァントも、主催者も、NPCも、ぜぇんぶひっくるめてド派手に行こうと思って}
硬貨を追加する。その言葉で、江ノ島盾子は、木原マサキと会話を続ける権利を獲た。
☆
積み上げた論理の先にあった結論。
江ノ島盾子は、単身でサーヴァントの前に躍り出て、正体を晒しながら会話をした。あまりに無防備、無計画、ならば聖杯を狙ってはいない。
江ノ島盾子は、単身で別のサーヴァントと情報を交換する機会を得ながら、それを蹴る道を用意した。あまりに無意味、無頓着。ならば聖杯戦争に抗ってもいない。
口にするのは玉虫色の返答のみ。否、あれに対するこちらの返答すらも江ノ島盾子の用意した物差し。
「それで? 俺にそれを語って何になる」
{よろしい、ならばお答えいたしましょう。
貴兄が小学校付近を歩き回っている様子は何度か確認させていただきました。
その中で分かる情報は二つ。
ひとつは聖杯狙いではないこと。聖杯狙いならば
フェイト・テスタロッサがおとなしく付き従う理由がありませんもの。
ふたつは脱出狙いでもないこと。脱出狙いと言うならば、突然現れた友好的なマスター江ノ島盾子ちゃんと
情報交換を行わない理由はありませんもの。
マスターと行動を共にしていない理由、仮定すればいくつもありましょう。ですが、貴兄の話し方動き方を考慮すれば別離の理由はおおよそ『マスターに動向を知られたくないから』に絞られます。
その理由は、マスターを入れ替えようとしている。あるいは、マスターすらも欺いてなにかをなそうとしている}
きっかり15秒で言い切り、続ける。
{マスターの交換前提ならば、令呪授与により後々マスターを有利にする捕獲令に従う必要はない。
フェイトをマスターにするためなら、後先の見えない捕獲令にフェイトを連れて行く理由はない。
他のマスターに令呪を与えるためならば、フェイトが従う理由がない。
ならば残るのはマスターを欺いてなにかをなそうとしている可能性}
続けて10秒、続ける。
{何を為すか。黙るべき理由と、危険を犯してまで主催者に会う理由}
つらつら並べられる論理たち。意味のないもののように並べられていく推測の取捨、仮定の正否。
そのどれもが様々なパターンを想定し、そしてそこに至るまでの過去とそこに至った場合の選択とその選択をした後の未来を論じている。
路傍の石と切り捨てるには、あまりにも輝きすぎるその声色。あの時見たドブ色の瞳は、らんらんと輝いているはずだ。
{それらからして、つまりあんたは}
声色が変わる。ベラベラと論を並べる時とは違い、上っ面を撫でるだけではなく、こちらの心臓に掴みかかるような声だ。
今までの会話は飾りとばかりに、たっぷりと間を取り告げる。
{主催すらまとめて、この舞台のなんかをひっくり返そうとしてる、ってとこじゃない?}
交わる二つの論理。顔を合わせる同じ穴の狢。
冥王計画の深淵に触れる、単なる少女のはずのもの。
単なる少女が広げる闇を覗き込む、冥王となる男。
{だから、私様はアンタを選んだ。
この舞台をひっくり返すという同じ夢を抱く者として、互いを滅ぼしあわねばいられない好敵手として}
硬貨を追加する。その推理で、江ノ島盾子は、木原マサキと交渉する権利を獲た。
☆
マサキが笑う。江ノ島盾子も笑う。
狢に出会えた喜びではない。
互いの狂気の輪郭に触れたのがむず痒くて笑うのだ。
生前、科学者・木原マサキに並び立とうとするものは多く居た。
だが、どれだけの凡夫が並ぼうと、木原マサキの内に秘めたものに指先が掠める者は居なかった。
それを、残された映像と、ものの数秒の接触で、寄り添うものがあった。
たとえそれが、聖杯戦争などという限られた世界で、英霊という劣化した木原マサキを相手にしたものであったとしても、ただの人間では辿り着けるものではない。
単なる狂気では届かない。崇高なる狂気と、狂気すら肯定する才能がなければ届かない頂だ。
唯一と思われた最高峰に突如現れた少女。
あるいはその少女もまた、この世界を灰燼に変え、絶望に染め上げ、そして蹂躙され尽くした世界に君臨する器なのかもしれない。
「よく聞け、女。俺は貴様すら踏み躙り、この茶番塗れの舞台に君臨する者……『冥王』となる男だ」
{素敵ですわ! ならば私は、貴方すら踏み躙り、私自身すら穢し、世界を絶望で染め上げるいたいけな少女……『超高校級の絶望』ですわ}
なのはなんかより、否、世界の誰よりソリが合い、だからこそ絶対に相容れぬ女。
怒りすら抱くほどの相似、憎しみすら籠もるほど理解。そして、喜びすら感じるほどの敵対。
それでも。
いや、だからこそ。
互いの狂気に触れたなら、語らずには居られない。
「自分の狂気を押し通し、お前の狂気を捻じ伏せる」と。
「だが面白い。ならば言ってみろ。
俺を腹の底から笑わせた褒美に、貴様の戯言に答えてやる」
{あわわわわわ、あんがとごぜますだ! あだす、感激!!}
江ノ島盾子はあわわわわと繰り返し、ひょっと息を吸って止まって、ぼんやり言った。
{冥王サマは、まず手始めに、何する気?}
手始めに。ここで語れば、お互いの手の内を晒すことになる。
どこまで語るかを、まず線引するのは、超高校級の絶望だ。
{私様はね―――}
語られる、荒唐無稽な計画。耳にする新たな情報と、既にばらまかれている絶望の種。
ここまでおおっぴらに舞台をぶち壊すと言うならば、主催者が動く可能性もある。
それは江ノ島盾子にとっての好機であると同時に、マサキの好機ともなる。
確信した。この舞台は、今日中に、冥府への道に踏み込む。
「そうか。俺は―――」
語るのは、神が蹂躙される未来。そこから広がる冥府への道。
江ノ島盾子よりは幾分か機動性には欠ける。それは彼女と違い英霊・サーヴァントという首輪があるが故の出遅れ。
だが、その障害を乗り越えれば、冥府への道は一気に開け、遮るものはなにもない。主催者すらも、握りつぶす。
江ノ島盾子はそれを聞き、「超イイネ! サイコー!」と嗤いながら叫んだ。
包み隠さず話したのは、自信があったからだ。
小娘程度に冥府への道を潰されぬという自信。
そしてそれは、程度と評した小娘も同じこと。
冥王にすらこの絶望は止められぬという自信。
あるいは、この数分にも満たないやり取りで得た同類への嫌悪すら混ぜ込んだ、世界で最も濁りきった信頼だったかもしれない。
互いの初手を聞き、互いの計画に照らす。
助力は必要ない。マサキも江ノ島盾子も、この程度の計画、片手間でもやり抜ける。
ならば後は、相手の手を潰すかどうか。
受話器を耳に当てながら考える。マサキの計画に江ノ島盾子の計画がどれほどの影響を与えるか。利するところが大きいなら、放置も策だ。
公衆電話のモニターの数字がひとつ減る。手元の硬貨はもう残り少ない。
また、日が昇り始め、世界が目を覚ましだした。なのはもそろそろ目を覚ます頃だ。
影が蠢く時間は、そろそろ終わりを迎える。
{おっと、それではこのへんで}
察したように、江ノ島盾子が話を区切る。
{じゃあね、冥王サマ。素敵な絶望ライフを}
「精々俺の手の中でもがけ、超高校級の絶望」
捨て台詞を吐き合い、電話を切る。
マサキは、充実感にも似た感情を覚えながら、主の眠る家へと帰るのであった。
【D-2/裏山付近/2日目 早朝】
【江ノ島盾子@ダンガンロンパシリーズ】
[状態]健康、絶望的にハイテンション
[令呪]残り三画
[装備]諸星きらりの携帯端末
[道具]なし
[所持金]大金+5000円分の電子マネー(電子マネーは自分の携帯を取り戻すまで使用できません)
[思考・状況]
基本行動方針:絶望を振りまく
0.世界に絶望あれ――――っ!!
1.まずはあいちゃんと夢バトル! 私様が勝ったらお前の夢絶望以下な!
2.更に冥王サマ(木原マサキ)と冥府バトル! 舞台ブチ壊しRTA、はーじまーるよー。
3.きらりちゃんと杏ちゃんも待ってて! 一緒に絶望させてあげるから!
[備考]
※諸星きらりを確認しました。彼女の自宅の位置・電話番号・性格なども事前確認済みです。
※
木之本桜&セイバー(沖田総司)、アーチャー(
森の音楽家クラムベリー)、
フェイト・テスタロッサ&ランサー(
綾波レイ)、双葉杏、
蜂屋あい&キャスター(
アリス)、
キャスター(木原マサキ)、アサシン(
クロメ)、諸星きらり&バーサーカー(
悠久山安慈)、
輿水幸子を確認しました。
アーチャーと情報交換を行いました。アサシンについて、宝具の一つが『死体を操る能力を持つ』ということをアーチャーから聞いています。
※自身の最後の書き込み以降のスレは確認できません。
※数十分、もしくは数時間、あるいは数日、ひょっとしたら数年は同じキャラを演じ続けられるかもしれませんし、続けられないかもしれません。
※ランサーのスキル『困った人の声が聞こえるよ』に対して順応しています。順応に気付いているかいないかは不明です。動揺しない限り尻尾を掴まれることはないかもしれません。あるかもしれません。
※バーサーカー(悠久山安慈)の敵対のきっかけが『諸星きらりの精神・身体に一定以上の負荷をかけた相手(≒諸星きらりを絶望させた相手)』と見抜きました。
そのラインを超高校級の絶望故に正確に把握しています。彼女自身が地雷を踏むことは(踏もうと思わない限り)ありません。
※蜂屋あいに夢バトルを仕掛けました。
※キャスター(木原マサキ)に冥府バトルを仕掛けました。マサキの計画の一部を知っています。
最低限それは邪魔しないかもしれないし、気が変わるかも知れません。
【C-3/公園/2日目 早朝】
【キャスター(木原マサキ)@冥王計画ゼオライマー(OVA版)】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]諸星きらりの電話番号の書かれたメモ
[思考・状況]
基本行動方針:冥王計画の遂行。その過程で聖杯の奪取。
1.可能な限りさいはて町を偵察。
2.予備の『木原マサキ』を制作。そのためにも特殊な参加者の選別が必要。アリシア・テスタロッサを奪うのも一興。
3.特殊な参加者が居なかった・見つからないまま状況が動いた場合、天のレイジングハートを再エンチャント。『木原マサキ』の触媒とする。
4.ゼオライマー降臨のための準備を整える。
5.フェイトから要請があればバルディッシュをエンチャント。
6.なのはの前では最低限取り繕う。
7.江ノ島盾子の計画に多大な興味。これを確実に発生する未来として行動計画に組み込む。
[備考]
※フェイト・テスタロッサの顔と名前、レイジングハート内の戦闘記録を確認しました。バルディッシュも「レイジングハートと同系統のデバイス」であると確認しています。
※フェイト・テスタロッサ&ランサー(綾波レイ)、江ノ島盾子、輿水幸子を確認しました。
※なのはからアーチャー(森の音楽家クラムベリー)について聞きました。
※天のレイジングハートはまあまあ満足の行く出来です。呼べば次元連結システムのちょっとした応用で空間をワープして駆けつけます。
あとは削りカスの人工知能を削除し、ゼオライマーとの連結が確認できれば当面は問題なし、という程度まで来ています。
※『魔力結晶体を存在の核とし、そこに対して次元連結システムの応用で介入が可能である存在』を探しています。
見つけた場合天のレイジングハートを呼び寄せ、次元連結システムのちょっとした応用で木原マサキの全人格を投影。
『今の』木原マサキの消滅を確認した際に、彼らが木原マサキとしての人格を取り戻し冥王計画を引き継ぐよう仕掛けます。
※上記参加者が見つからなかった場合はレイジングハートに人工知能とは全く別種の『木原マサキ』を植え付け冥王計画の遂行を図ります。
※ゼオライマーを呼び出すには現状以下の条件のクリアが必要と考えています。
裁定者からの干渉を阻害、もしくは裁定者による存在の容認(強制退場を行えない状況を作り出す)
高町なのはの無力化もしくは理解あるマスターとの再契約
次元連結システムのちょっとした応用による天のレイジングハートへのさらなるエンチャント(機体の召喚)
※街の裏に存在する固有結界(さいはて町)の存在を認知しました。
※アサシン(ウォルター)の外見を確認しました。が、『情報抹消』の効果により非常にぼんやりとしか覚えていません。
※プレシア・テスタロッサを確認しました。
※プレシアの願いが『アリシアの蘇生』であり、方法を聖杯に似た力を用いた『魂の復元』であると考察しています。
同じく、その聖杯に似た力に干渉すれば復活するアリシアを『木原マサキ』に変えることが可能であると仮定しています。
※フェイトとの念話が可能になりました。これにより、好きなタイミングでなのはとフェイトをぶつけることが可能です。
また、情報交換を約束しました。ただし、キャスターが事実を話すとは一切約束していません。
※プレシアから個人的な依頼を受けました。
- 内容:さいはて町の破壊およびさいはてのサーヴァント『エンブリオ』の抹殺。
- 達成条件:エンブリオの魔力が座に戻ったことをルーラーが確認する。
- 期限:依頼達成は二日目16時まで。報酬受け取りは図書館司書室にて二日目20時まで。
- 報酬:マサキの望む条件のマスター、あるいはサーヴァントの情報。
二日目終了時点でエンブリオが生存していた場合、キャスターとプレシアの司書室での一切はなかったこととなる。
また、どのタイミングにおいても、キャスターがアリシア復活を妨げる可能性があると判断した場合、プレシアは令呪をもって彼を自害させる。
※江ノ島盾子と冥府バトルをすることになりました。江ノ島盾子の計画の一部を知っています。
マサキ側にも利があるようならば最低限邪魔はしません。
最終更新:2020年07月26日 20:37