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ゴッサムシティ。
そこは様々な犯罪者、悪党が跳梁跋扈する衆愚の街。
そんな悪党達にも、大きな変化が起きている。
街の勢力図が劇的に急速に変化したのである。

グラスホッパー、自警団のようなこの組織は今では警察以上の力を持っており、ヴィラン達の最大の脅威と言える。

裏社会で急速な勢いで規模を拡大する、志々雄真実が率いる組織。この組織に潰され吸収された大規模な組織は少なくない。

ゴッサムで息を顰め不気味な存在感を発する。テロリスト最後の大隊。
そして個人で犯罪組織を潰しまわるレッドフードの存在も無視できない。

昨日は栄華を極めていた悪党が、明日には全てを奪われ、屍になる。
それが今のゴッサムである。

このめまぐるしい変化に対応出来ないものはどうなるだろうか?
淘汰される。
それは動植物でも、善良な一般市民でも、悪党でも変わらない。
それが自然の摂理。


West chelsea hillエリアにある、とあるバー「デンシャミチ」

店の壁面には「法律が通用しない」「スラムダンク」「バカ」など威圧的な文言が、スプレーによって書かれ、荒廃的なアトモスフィアを漂わせている。
階段を下りて店内に入ると、そこは酷い有様だった。
店の中も壁の塗装は剥がれ、辺りには酒瓶や壊れた机の破片が散乱している。
碌に清掃されていないせいか、床は埃まみれだ。

一昔前までデンシャミチはそれなりに繁盛していたバーだった。
だが、突如ヨコハマロープウェイクランが辺りを仕切りはじめ、ミカジメ料を請求してきたのだ。
周辺の他の店舗はその要求を苦渋の決断で飲んだが、デンシャミチのマスターはその要求を拒否する。
それが命取りだった。
それから、ヨコハマロープウェイクランによる執拗な営業妨害行為が始まった。
結果、デンシャミチのマスターは多額の借金を背負わされ、セプクして死んだ。

そんな曰くつきの店にスキンヘッドの黒人男性10名が集まっていた。
彼らはヨコハマロープウェイクランのメンバーだ。
残った店は今現在ヨコハマロープウェイクランが隠れ家として使用している。
しかし、メンバーの顔を見てみると、うかない表情をしている。

「これからどうするんっすか?」

メンバーの一人がリーダーらしき男に弱弱しく尋ねると。

「ウッセゾコラー!」
「グワーッ!」

帰って来た答えはリーダーによる鉄拳だった。

ヨコハマロープウェイクランのリーダー。名前はスミスと言う。
スミスは重大な局面に立たされていた。


ヨコハマロープウェイクランの主な収入源は、違法薬物メン・タイによるものだった。
スミスが独自に発掘したルートでメン・タイを仕入れ、売り上げの5割をバックについているマフィアに収めることで、メン・タイを売りさばくことができていた。

実際5割は厳しいが、これ以上下げるとルートを根こそぎ奪われ、クランごと潰されかねない。そういった意味では絶妙なラインだった。
そして上納金を納め、強者の庇護を得ることで、ゴッサムシティでの活動を、ある程度は保障されていた。
スミス達ヨコハマロープウェイクランは、ゴッサムシティに適応していたと言っていいだろう。

だが、環境は激変する。
突如自分のバックについていたマフィアが、志々雄真実が率いる組織に潰された。
抗争しているという噂も聞くこともなく、あっという間に壊滅させられた。
正確な情報を知った時はバックのマフィアが潰された後だった。

自分たちのバックについていたマフィアは規模で言えば、ゴッサムシティにおいて十指に入るといっていいだろう。
それほどの組織を瞬く間に壊滅させたということは、よほど入念に計画された奇襲だったのか、あるいはそれほど力の差が有ったということか。
後者だとしたら、今までその存在を隠し、潜伏できたことに驚きを隠せない。

スミスはすぐさま志々雄真実が率いる組織に接触し、上納金を納めることで庇護と行動の自由を保障してもらおうと考えていた。
今回も前と同じように上手くいくと信じていたが、それはオハギめいて甘い考えであったことを痛感することになる。
スミスの組織は庇護を受けるどころか、メン・タイの仕入れルートを組織に強奪された。
抗うことは不可能だった。
以前のバックの組織を瞬く間に壊滅させた、組織に刃向うことは蟻が象に挑むことと同意義だ。
その結果、最大のシノギを失ったスミス達ヨコハマロープウェイクランは瞬く間に衰退する。
周辺の店からミカジメ料を取っているが、これはバックに組織がいたから出来ること。
後ろ盾がないことが発覚すれば、ミカジメ料も取れなくなるだろう。
まさにジリー・プアー(徐々に不利)。
このままではクランのメンバーは野たれ死ぬ。
しかし代わりのシノギが一向に見つからない。

( ( (ブッタファック!どうしてこうなった!?) ) )

スミスは心の中で毒突く。
自分は細心の注意を払い、裏社会で生き抜いてきたのに、こんな理不尽にすべてを奪われるのか!
こんなことが許されるのか!?

スミスが頭を抱え項垂れ、メンバーも表情も沈んでいる。
場には重苦しいアトモスフィアが漂う。
まるでマッポーの世の住人のようだ。

KRAAASH!!

その重苦しいアトモスフィアは突如鳴り響く轟音ともにかき消された。
スミスの横を何かが恐ろしい勢いで通り過ぎた。

「アバーッ!」

後ろを振り向いてみると、スミスの後ろにいたメンバーの一人がトマトめいて潰れている!

「ワッザ!?」

メンバーを潰したものは入口の扉だった。
入口の扉がメンバーの一人を潰したのだ
何をしたのか分からないが、扉が人の頭を砕くほど勢いよく動くものなのか?
しかも入口の扉は、他のマフィアに襲撃されていいように、鉄扉だ。

扉の方向に改めて視線を向けると二人の人間が立っていた。
二人とも長大な槍を手に持ち、黒色の鎧武者のような出で立ち。
日本好きのコスプレマニアックス共か?
いや違う!その姿はあからさまにアーマードライダーなのだ!
彼らは通称、黒影トルーパーと呼ばれていた。

ゴッサムシティには明らかに不釣り合いなその姿を見た瞬間に、スミスはある噂を思い出した。
果実の鎧を纏った奴らに、マフィアやギャングが壊滅させられた。
それを聞いた時は、麻薬中毒者のほうがマシなウソをつくと思っていたが、
だが今目の前に居るのがその果実の鎧を纏った武者であり、噂は本当だったのだ!


「ドーモ、ヨコハマロープウェイクラウンのクズの皆さん。グラスホッパーです」

黒のアーマードライダーは侮蔑の感情を最大限に込めた声であいさつをした。

「「「「ザッケンナコラー!!」」」」

そのアイサツを聞いた瞬間、クランのメンバーは店内に隠してあったマシンガンを瞬時に取り出す。
この店はヨコハマロープウェイクランの隠れ家でもあり、武器庫でもあった。
ある者はメンバーが殺された怒りのために、ある者は侮辱された怒りのために、
8人は躊躇なく引き金を引いた。
しかしスミスだけは武器を取らなかった。
この相手に刃向うことは命に関わると、ヤクザセンスが素早く判断したのだ。
そのことを伝えようとしたが、声に出す前にメンバーが引き金を引き銃弾がばら撒かれる。
8人による集中砲火。普通の人間なら鎧を着ていても数十秒後にはネギトロになってしまうだろう。
だが黒影トルーパーは普通ではないのだ!

二人の黒影トルーパーは持っていた黒色の槍を素早く風車めいて回し始める。
それは残像によってまるで黒の円形の盾だ!
メンバーが放った数百発の弾丸は鎧に触れることすらない!
なんたるアーマードライダーに変身することで備わった身体能力と、槍を手足のように操る器用さか!

「「「アバーッ!」」」

それどこらか跳ね返された銃弾が脳天に当たり、三人死亡!
スミスは跳弾で死んだメンバーを見た瞬間、素早く床に身を伏せた。
他のメンバーは跳弾で死んだその様子を間近で見ながらも、メンバーは銃撃をやめない。
ここで止めれば黒影トルーパーにやられることは目に見えている。
相手に当たるよう祈るように引き金を引き続けるが、無情にも銃弾は当たらない。

数十秒がメンバーによる銃撃は止んだ。アウト・オブ・アモーだ!
その瞬間、二人の黒影トルーパーは一瞬でメンバーに近づき槍を横に振り払う!

「「「「「「アバーッ!」」」」」」

横並びに立っていたメンバーの首は一斉に跳ね飛ばされた、ナムアミダブツ!
跳ね飛ばされた首はバンクショットめいて壁に当たり、近くにあった大きめなゴミ箱に吸い込まれた。ポイント倍点!

床に身を伏せていたスミスは銃撃音が止んだので、ゆっくりと目を開け、頭を上げる。
そこには、血まみれの黒影トルーパー達が、スミスを侮蔑の目で見下ろしている。
そして、辺りを見渡すと首なしの死体が五体転がっていた。

「アイエエエ!」

スミスは恐怖のあまり失禁!

「ゆ……許してください」

すぐさまドゲザしながら、懇願する。
その様子を満足そうに見ながら、アーマードライダーは告げた。

「お前達のクランにミカジメ料を取られた被害者から、依頼がありました。
これ以上ミカジメ料を取らないようにしてほしいと、だからクランを皆殺しにすることにしました」
「ワッザ?皆殺しナンデ?」
「お前達ヤクザのクズは生きていても、ゴッサムの害にしかならない。よってグラスホッパーとして街の為にクズは排除しなければならない」
「許してください!財産はすべて慈善団体に寄付します!罪を償う為にボンズになります!」

スミスは大粒の涙を零しながら、黒影トルーパーの足元に縋り付き懇願する。
それを冷ややかに見ながら、もう片方の足でスミスの顎を蹴り上げた。

「グワーッ!」

顎を蹴り上げられたスミスはそのまま気絶。

「クズはどこまでいってもクズだ、死ね」

黒影トルーパーは槍を振り上げ、今にもスミスをケバブめいた死体を作らんとしている。

「ヘヘヘヘ、楽しいことやってンじゃねえか、オレも混ぜてくれよ」

槍を振り下ろすのを止め、声がした方向を振り向く。
その声を聞いた瞬間、まるで死神に心臓を掴まれたようなゾッとする感覚を味わった。

その男は拘束着を思わせるようなシノビ装束を身に纏い、拘束具を思わせるようなメンポをつけている。
逆立った黒い髪、病的に白い肌だった。
何よりその邪悪なアトモスフィアがニューロンに深く刻みつけさせられた。

「ドーモ、キャスターです」

黒の殺戮者、デスドレインのエントリーだ!


時は少し遡る。
デスドレインは、シェリルやヤモトの情報を得る為に、ダウンタウンに足を運んでいた。
ヤモトの情報は、このような治安が悪い地域に住んでいるヤクザやヤンクのほうが知っているかもしれない。
そんな単純な理由だった。

てきとうなヤクザやヤンクにインタビューしようと探していると周りを見渡していると、
黒影トルーパーに変身する、グラスホッパー団員を偶然で発見する。
一瞬で鎧のようなものを身に纏ったのはジツなのか?
興味を示したデスドレインは二人の後を追い、このツキジめいた惨状に出くわしたのだった

二人の黒影トルーパーはデスドレインを見た瞬間決断的に襲い掛かる!
二人はデスドレインを見た瞬間、電撃的速度で判断を下した。
こいつは今すぐ殺さなければならないと!
この邪悪な存在はこの世界に生きてはいけない。何よりここで殺さないと自分が死ぬ!

二人は殺戮バッファロー電車めいた速さでデスドレインに向って突進する。突きを繰り出すつもりだ。
常人を遥かに超える脚力で生み出したスピードに、常人を遥かに超えた腕力で繰り出し突きをのせる。
その威力は、通常の突きより何倍にも膨れ上がる!

「グワーッ!」

だが二つの槍がデスドレインの身体を貫くことは無かった。
一人目の黒影トルーパーの攻撃はアンコクトンの防壁によって防がれ、
もう一人は攻撃を当てる前に、間欠泉めいて噴き出したアンコクトンによって天井に磔さている。
どうにかして拘束から脱出しようにも、身体が数センチたりとも動かない。

「そんなバカな……」

一方もう一人の黒影トルーパーは驚愕の声をあげる。この一撃で傷一つ負わすことができないとは予想もしていなかった。

「ヘヘヘヘ、何ボケッとしてンだ。足元見ろよ」

デスドレインはアーマードライダーの驚きの声がひどく間抜けに聞こえたのか、笑いながら、足元を指差す。

そこにはバイオイカの触手めいた物体が絡みついている。アンコクトンだ!
冷静な状態ならば回避できたかもしれない。
だが、攻撃を防御されたことに動揺し、コンマ数秒の隙を作ってしまった。ウカツ!
ニンジャとの戦闘はほんのわずかな隙が命取りになるのだ!

「一人いれば十分か」

デスドレインはそう独り言のように呟くと、アーマードライダーをアンコクトンの触手によって、逆さ吊りの状態で天井まで吊し上げ、

「グワーッ!」

地面に向って思いっきり叩きつけた。

「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」

デスドレインは攻撃をやめることはなく、ししおどしめいて叩きつける。
部屋の中は叩きつける衝撃音と叫び声が、一定の間隔で響き渡り、何回目かの叩きつけで叫び声は聞こえなくなった。
地面には変身が解け、グラスホッパーの制服を着た青年の死体が横たわるのみだ。

デスドレインは死んだことを確認した後、拘束していたもう一人を吊し上げた状態で、自分の目の前に運んだ。

「クズは殺すンだろ?俺は相当のクズだぜ、ほら頑張れよ」

デスドレインは無防備に近づく、黒影トルーパーは拳を振りかざす。
だがデスドレインは自分に拳が当たる数センチ手前にアーマードライダーを固定させる。
結果、拳は当たらず虚しく空を切るだけだ。

「へへへ、残念!」

デスドレインは手を叩きながら、挑発めいて嗤う。
一しきりアーマードライダーの姿を見て笑った後、唐突にスミスのほうにアンコクトンを伸ばし、気絶から意識を覚醒させたのち、自分のほうに引きずり込んだ。


「おい、ヤクザ、質問に答えろって……スミス=サンじゃねえか!?」

顔を見た瞬間、驚きの表情を作る。
まさか自分と多少縁のある人物がこんな処にいるとは。

「ワッザ!?何で俺の名前を?」
「ヒャハハ!まあいいや、質問に答えてくれよスミス=サン。シェリル・ノームはどこに居る?」

デスドレインはスミスの疑問を無視して、問いを投げかける。
スミスも目の前が何故自分の名前を知っているかなど、疑問は尽きないが、今の問いに答えることに集中する。
出まかせは通用しない。
この問いに正しく答えないと、自分は死ぬかもしれない。そんな予感があった。
ニューロンから必死に答えを検索する。
人生において一番ニューロンを酷使したかもしれない。

「確か今日の18時頃にライブを開催するって聞きました。場所はUPTOWN BAY SIDEに建設されたイベント用ホール。そこに行けば居る筈です」

その答えを聞いたデスドレインはスミスに対して、アクションをおこさない。
その様子をみて、答えに納得したと解釈した。
スミスは心の中で胸をなで下ろす。
問いを聞いてからに答える瞬間まで、生きた心地がしなかった。

「じゃあ次の質問だ。ヤモト・コキの居場所はどこだ?」
( ( (ワッザ?まだ続くのか) ) )

スミスはわが耳を疑った。あの地獄めいた時間が続くのか。
神に祈りたくなる人の心境を今初めて理解できた。
だが、嘆いても始まらない。
またニューロンを酷使し、答えを検索する。

「わかりません……」

ヤモトの情報がまるで思い出せない。
スミスはこの言葉を発した瞬間。ソーマト・リコールが見えた。
自分はここで死ぬのだ。
今まで散々悪事を働いてきた罰だ。インガオホー。
生まれ変わったらボンズになろう。

「あっそ」

デスドレインは、スミスをアンコクトンから解放する。

「ワッザ?」

余りにも予想外の出来事にスミスは数秒呆けてしまう。自分は助かったのか?

「じゃあ、今すぐ探してこいよ、スミス=サン、とりあえず連絡できるIRC通信機をよこせ」

IRC通信機?携帯電話のことか?
取り敢えず言う通りにしておこう。
スミスはクランの死体の懐から携帯電話を抜き取り、デスドレインに渡す。

「ヤモトの情報がわかったら連絡しろ、そうだな、明日までに情報を提供できなかったら、どうなるか分かるよな?」

デスドレインはスミスにせせら笑いを見せた。
スミスは悟った。自分はまだ助かってはいない。
呆然としているスミスの脇をアンコクトンが通り過ぎる。

「ほら、駆け足!」

デスドレインは手拍子で、スミスを囃し立てる。

「アイエエエ!」

スミスは叫び声をあげながらメキシコライオンに追われる小動物めいて入口に走り、デンチャミチから脱出した。

「へへへへ、相変わらずからかうとオモシレえなアイツ。見たかよあの情けねえ面!」

スミスが遁走する姿を笑いながら見送り、黒影トルーパーに同意を求めるが反応は無い。

「へへへ、さて、次はお前にインタビューだ」

デスドレインは背筋が凍るような邪悪な笑みを黒影トルーパーに向けた。

「アイエエエ……」

この黒影トルーパーはデスドレインのストレス解消の一環として、文字に起こすのも躊躇われるようなインタビューを受け、絶命した。
その様子は余りにも悲惨であったがゆえに書き記すことはしない。

【GOTHAM CHALICE】


【GOTHAM CHALICE】

サガラが去った部屋で、ハナはスマートフォンをじっと見つめていた。
画面に映っているのは、チーム鎧武のメンバーの一人、高司舞の名前。
彼女は自分のことを特に気にかけてくれていた。
例え自分が今置かれている与太話のような状況を話しても、親身に相談にのってくれるはずだ。
あとは画面をタップするだけで電話がつながる。
だが、ハナは電話をすることなく、スマートフォンをベッドの上に放り、うつ伏せになって枕に顔を埋める。

もし、電話してしまえば聖杯戦争に巻き込んでしまうような気がしていた。
彼女達は自分から見れば、偽物のNPCにすぎない。
だが彼女たちはこの街で懸命に生きている。そんな彼女たちを巻き込んではいけない。
そうNPCは生きているのだ。
NPCはどのような職に就き、どのような家庭を築き、何を思っていたのかを。
そして彼らの想いを、夢を、希望を、人生を自分が断ったのだ。
彼らの命を絶つ権利は誰にも無いはずなのに。
その事実がハナを大いに苦しめる。

直接の原因は自分のサーヴァント、デスドレインがやったことだ。
しかし、あのサガラと名乗った男の言う通り、令呪を使うなり、言い包めるなりすれば防げたかもしれない犠牲。

―――これ以上の犠牲を出してはならない―――

サガラから話を聞かなければ、ハナは部屋の中に籠り震えていただけかもしれない。
だが知ってしまった。NPCは舞台装置ではない、この街で生きる人間なのだと。
それを知りながら、デスドレインを止めないのは殺人と同じだ!

何より、このまま放置すれば、自分の大切な人達が殺されるかもしれない。
母親と父親がNPCとして街にいるのだ。
なる達がNPCとしてこの街で生活している可能性はゼロではない。
もし、デスドレインがなる達を殺してしまったら、自分の心は壊れてしまうだろう。

そして、死ぬのが怖かった。
サガラはこれ以上殺戮を繰り返せば、罰則を下すと暗に言っていた。
どのような罰則なのかは分からないが、決して軽いものではないだろう。
聖杯戦争を生き抜くうえで、この上なく不利を被る。
そして、その不利が原因で死ぬ。

確かに自分の願いを叶える為にこの戦いは負けられない。
それ以上に死にたくない。死ぬのが怖くてたまらない
サガラが話したデスドレインの凶行の話を聞き、自分がサーヴァントと対した場合、どのように死ぬのか、ありありとイメージが浮かんでしまう。
それは、今まで遠く離れていた死が急速に近づいてきたようだった。

だが頭に過るのはデスドレインというサーヴァントの特性。
デスドレインはNPCを殺戮すればするほど強くなる。
逆に、デスドレインの殺戮を止めれば弱体化に繋がることになる。

だがNPCがデスドレインに殺されるのを見たくない。
ハナはNPCを殺さず、聖杯戦争に生き残る方法を必死に考えた。
ハナは天才でもないし、稀代の策士でもない、只の普通の女の子だ。
そんな妙案を思いつかないかもしれない。
だが、普通の女の子だからといってデスドレインの殺戮を見過ごしていいわけではない!

自分が持つ知識と発想を総動員して考える。
何分、何十分、何時間経っただろう。
ハナは時間の経過を忘れ、思考に没頭する。
そしてある結論に至った。


―――最強じゃなくていい――――

最強の者が必ず勝つとは限らないのが聖杯戦争である。
最も敵を倒したものが勝者ではない。最後に生き残ったものが勝者なのだ。
参加者の中で最も弱くても、戦いで疲弊しきった強者を倒し、最後の一人になればいいのだ。
例えデスドレインが最弱でも、最弱ですら倒せるぐらいに相手が弱るのを待てばよいのだ。

熟考の末、デスドレインがNPCを殺戮しなくても勝てる可能性を見出した。
それは砂浜の中から米粒を見つけ出す以上に困難なことかもしれない。
それでも、良心の呵責に苦しみ続けるより、何倍もマシだった。

だがデスドレインをどうやって止める?

令呪で『これ以上NPCを殺すな』と命令するか。
もしそうなったらデスドレインは怒り狂うだろう。
その形相を想像しただけで身の毛がよだつ。
下手したら逆上して殺されるかもしれない。

ならば自分の言葉でデスドレインを説き伏せ、殺戮を辞めさせるしかない。
今後の方針はおぼろげながら決まった。
あとは行動するのみ。
だが、ハナの身体は一向に動かない。
家を出て、デスドレインを探すなり、念話で呼びかけるなり、行動をしようとするが体の震えが止まらない。
良心の呵責、迫りくる死の危険。それらを重ねても、ハナの心の天秤はデスドレインへの恐怖に傾いていた。

怖い。どうしようもなく怖い。
あの狂人と対峙し、会話する。
それを想像しただけで体が震え、心臓が止まりそうだ。
怖いのは超人的力や、宝具を有しているからではない。
デスドレインの性根が何よりも恐ろしいのだ。
平然と楽しみながら、人を殺せるあのドブのようなどす黒い心。
念話で対話した時、声を聞くだけで、自分の心がどす黒いドブに染め上げられてしまうような錯覚に陥っていた。

( ( (動かないと、動かないと何も始まらないデス) ) )

己の恐怖に怯える心と身体を叱咤し、立ち上がろうとするが、よろけて床に倒れ込んでしまう。
その時、ベッドの下にある物が落ちているのを見つける。
それは自分にとってなじみ深いものだった。
ハナは腕を懸命に伸ばし、爪先がその物に振れた。
あとは爪を使い、物を手繰り寄せる。

「やっぱり」

物についていた埃を手で払う。
ピンクで彩られた鳴子。
それは大切なメンバーとお揃いのもの鳴子だった。

―――カッカッ
木製の物がぶつかった際に奏でられる、小気味良い澄んだ音が部屋の中に響き渡る。

―――カッカッ、カッカッ

ハナは二回、三回と鳴子を鳴らす。
この慣れ親しんだ音を聞くと、心が落ち着く。

「パーッとパーッと晴れやかに 咲かせましょう 花のように」

ハナは鳴子を手に踊り歌いだす。
皆と一から作り上げ、自分が皆と踊るはずだった舞を。
そして、脳裏にはよさこい部での日々が鮮明に思い浮かぶ。
共に汗を流し、衝突し、些細なことで笑い合った至福の時を。
辛いこともあった、苦しいこともあった。
今思えば、それすらも楽しかった。


「したいデス……皆とよさこいしたいデス……」

ハナは踊りを止めて、泣き崩れた。
ハナの心にある想いがフツフツと止めどなく湧き上がる。
したい!皆と再びよそこいがしたい!

ハナは暫く泣いた。
そして、顔をあげる。
その目には涙は浮かんでいない。

いつの間にか、ハナの身体の震えは治まっていた。
その目はサガラと対話していた時の怯えた目ではなかった。
決断的な意志が備わった目だった。

ハナは熟考の末、勝ち筋を見出した。
しかし、願いの為に、他人を蹴落とす覚悟はできていない。
だが、皆とよさこいをしたい、
その想いが、この戦いに生き残るために行動する覚悟を備えさせた。
あの絶対的な恐怖の対象であるデスドレインに対峙しようと決意するほどに。

この衆愚の街に来て、流さられるままでいた少女が、初めて自らの意志で行動することを決意した。
これはサガラが予想していたことなのか。
それは分からない。
ただ、ハナ・N・フォンテーンスタンドはこの聖杯戦争の舞台に今初めて登ったのだ。

「ただいま!」

それはサガラと同じように何の前触れもなく唐突に訪れる。
自分のサーヴァントが勢いよく扉を開けて入室してきた。
漆黒のキャスターのエントリーだ!

「キャキャキャスター!?」

突然の来訪。しかも実体化したままでだ。
この世の悪意をすべて詰め込んだような何という邪悪なアトモスフィア!
実体化するのとしないとでは、ここまで感じるアトモスフィアが違うのか!?

これが数十分前のハナであれば、姿を見た瞬間気絶していたかもしれない。
今すぐにこの場から立ち去りたい衝動に駆られる。
だが、鳴子を握りしめ、懸命に堪える。
このサーヴァントを説き伏せて、殺戮を止めることができるのか?
だが、止めなければ罰則を受けて、自分が生き残る可能性が低くなる。
そして、この街で懸命に生きるNPCの命が無残に刈り取られてしまう。
デスドレインを呼びつける手段がないなか、相手自らやってきた。
これは神がくれたチャンスかもしれない。
やるしかない!

( ( (なる、ヤヤさん、多美さん、万智さん、サリーちゃん、ママ、パパ、ワタシに勇気をください) ) )


「どうしたんですか?何か用ですか……」
「お前に渡すものが、有るンだよ」

ハナが恐怖に耐え、声を震わせながら質問を投げかける。
そんなハナの様子をつゆ知らず、楽しげだ。懐からあるものを取り出し投げ渡す。
戦極ドライバーだ。
デスドレインは黒影トルーパーからドライバーを奪い取っていたのだ

「それを腹に当てろ」

デスドレインは自分に何をさせたいのかは分からないが、とりあえず指示通りに行動する。
だが、特にこれといって何も起こらない。

「あ?貸せ!」

デスドレインはハナからドライバーを奪い取ると、腹に当てる。
ハナと同じように何も起こらない。

「ンだよ!ぶっ壊れってるじゃねえか!」

デスドレインはドライバーを思いっきり床に叩きつける。
激しい衝撃音を発し、ドライバーには様々な個所に亀裂が生じていた。


デスドレインはドライバーを奪い、インタビューして戦極ドライバーの使い方を聞いていた。
それはハナに使わせるためだ。

デスドレインにはある懸念があった。
ハナを教育し一緒に殺戮を楽しむにせよ、何もしないにせよ。圧倒的に弱いのだ。
クローンヤクザ一人すら倒せないほどに。
自分が殺戮を楽しんでいる時に、ハナが殺され強制的に座に戻されることがあれば、不完全燃焼もいいところだ。
そこで目をつけたのは戦極ドライバーである。
黒影トルーパーと戦った限りでは、少なくともサンシタニンジャ程度の実力はあった。
サンシタ程度でも、他のマスターや、そこら辺のマフィアに殺されることはないだろう。

計画は失敗に終わったが、すぐに次のアイディアを閃いていた。
他の奴らから奪い取る。もしくは作った奴にハナ専用のものを作らせることだ。
確か、グラスホッパーとか言っていた。
暇つぶしがてら、殺すついでにドライバーを奪っていき、作った奴を見つけ出す。

シェリル・ノームの居場所を聞いたデスドレインは、襲うのはライブ最中という計画していた。
どうせサヨナラ&ファックするなら、そっちのほうが派手でオモシロそうだからだ。
ライブは18時開始で、その間どう時間を潰すか考えていたところ。
その間に黒影トルーパー狩りで暇を潰すのは悪くは無いかも知れない。
どこに居るものかと考えていると。

「キャキャスター!話があります」

ハナの大声で、デスドレインの思考は中断された。

「ア?何だよ?」
「これ以上……人を殺すのを止めてください……」
「なんで」

ニヤけた笑顔を見せていた、デスドレインの顔が真顔になる。
ハナに向けられるのはほんの僅かな敵意。
その僅かな敵意でさえ、向けられた一般人は恐怖のあまり失神しているだろう。
だがハナを恐怖のあまり零れそうな涙をこらえ、言葉を紡ぐ。

「キャスターも聞きましたよね?……12時の放送を……」

デスドレインは特に返事をしないので、話を続ける。

「ワタシの処にサガラという人が来ました……これ以上NPCを殺したら……令呪をはく奪して、キャスターを賞金首にするって……」

無論、サガラはハナにそのようなことは言っていない、デスドレインを止めるために話を盛ったのだ。
だが、偶然にも賞金首、つまり討伐令を出され、他の参加者に狙われる立場になることは正しかった。

「いくらキャスターでも他の参加者に集中的に狙われて、全員を倒せますか?……
キャスターだって、聖杯で叶えたい願いがあるんですよね?……願いの為に、ここは活動を控えませんか?……」

デスドレインはハナの話をただ黙って聞いていた。相槌もせず反論もせず、ただ黙って聞いていた。
その反応はハナにとって不気味でしかたなかった。

「そうだよな!そうだよな!」

デスドレインは突如大声で叫ぶ。その突然の大声にハナは体をビクッと震わせた。

「囲んで棒で叩かれちゃオレ死んじまうよォ!そんなことにも気づかなかったなんて、何てイディオットなんだ!」

膝をつき頭を抱え涙声で泣き叫ぶ。まるでブッタに今までの行動を懺悔するかのように。

「オレ……オレ……もうこれ以上NPCを殺さない……」
「キャスター……」

デスドレインはハナの手を握りしめ、その目を見つめる。
ハナはデスドレインの豹変ぶりに戸惑いを隠せなかった。
だが、その目には邪悪なアトモスフィアがまるで感じられない。
本当に説得できたのかもしれない。
勇気をもってキャスターと対話することを選んで本当に良かった。
ハナの胸は安堵と喜びの気持ちで満ちていた。
だが。


「ンなわけねえだろ~!ハ~ナ~!」
「え」

デスドレインは舌を出し、ゲラゲラと嘲笑する。
そのアトモスフィアはこれまで以上に邪悪だった。

「何でやめなきゃいけなンだよ!好きなだけ殺して、好きなだけファックする!こんなオモシロいこと止められねえよ!」

「でも罰則が……」
『ででも罰則が……』

デスドレインはおどけて真似をした。

「そんなこと知らねえー!そんなことのためにオレが我慢しなきゃいけねンだ?
俺は自由!そう自由だ!オレの自由は誰にも邪魔させねえ」
「キャスターは聖杯が欲しくないんですか!」

ハナは思わず声を張り上げる。
このままでは罰則をうけ、圧倒的に不利になると知っているはずだ。
何故殺戮をとめようとしない?
デスドレインの思考が全く理解できない。

「そりゃは欲しいけどよ。その為に殺しを我慢するだなんて、無理無理無理!」

ハナの心は絶望の色に染め上げられる。
ハナがデスドレインへの説得は『聖杯を獲得するためにはNPC殺しを止めた方がいい』というものだった。
戦略のうえでNPCを殺しているなら、ハナの言うことを聞いて止めていたかもしれない。
だが、デスドレインは戦略のうえでなく、自分の楽しみのために殺している。
仮にデスドレインの宝具が「死の濁流(アンコクトン)」でなくてもNPCを殺すのを止めないだろう。
確かにデスドレインは聖杯を欲している。
だがそれ以上に、殺戮を楽しみたかったのだ!
これではハナの説得はデスドレインには何も意味を持たない。
この狂人を言葉で止めるなど土台無理な話だった。

ならば令呪を使って止めるしかない。
『NPCを殺すな』『ワタシに危害を加えるな』
この二つを命令すれば、自分の身の安全を守りつつ、デスドレインを止めることができる。
しかし序盤に令呪を二つ使っていいものなのか、躊躇していた。

「やりたいことを好きなだけやるのが、楽しいだろう。人生楽しまなきゃ損だぜ。そう思うよなハナ~」

デスドレインはハナに楽しげに語りかける。
デスドレインは今この生活を、この瞬間を最大限に楽しんでいる。
楽しんでいることは吐き気を催すほどの邪悪なものだが、純粋に楽しんでいる。
時間は限られている、ならばやりたいことをやって、楽しむべきと思っていた。
だが、この地獄のような状況でやりたいこと、楽しみたい事など一つも見つからない。
それなのにデスドレインはどうだ?
あんなにも楽しそうだ。
ハナにはデスドレインがどす黒く輝いて見えていた。

――何でアイツだけが楽しんでいる!許さない!―――

ハナの心にはデスドレインへの嫉妬と憎悪が芽生えていた。
令呪を使えばデスドレインの楽しみが奪うことができる!
デスドレインへの憎悪、そして令呪以外に止める術がないという事実。
令呪使用を踏み切ろうとした瞬間。
意気揚々と話していたデスドレインは真顔になり、驚くほど冷淡な声でハナに告げた。

「令呪を使って、オレを縛ろうなんて考えるなよ。オレは誰かに命令されたり、縛られるのがこの世で一番嫌いなンだよ
もし令呪なんて使ってみろ。殺すから」
「アイエエエ……」

デスドレインはハナに初めて殺気と呼ばれるものを向ける。
それを受けた瞬間、ハナはしめやかに失禁し、その場にへたり込んだ。

生き残るために、皆とよさこいを踊り、両親と暮らす未来を得る為に纏った勇気という名の鎧は粉々に打ち砕かれる。
そのむき出しの心はニンジャの暴威によって蹂躙された。
このサーヴァントに逆らうことはできない。
例え令呪で縛ったとしても、思わぬ方法で自分を惨たらしく殺すに違いない!
アイツを止めるには自害させるしかない!
だがその瞬間自分は終わる。

ハナは有る感覚を抱いていた。
自分はデスドレインという名のブレーキが壊れた暴走霊柩車に載せられて、谷底に向ってアクセル全開で向かっている最中。
そんな感覚を。
もうどうしようもできない。
このサーヴァントを召喚してしまった瞬間に自分の未来は閉ざされていたのだ。
今この瞬間、ハナの心の中に占める感情はデスドレインへの恐怖のみである。
よさこいへの想いも、NPCが死ぬことへの良心の呵責もすべて消え失せていた。


『臨時ニュースです。ミッドタウンのフォートクリントン地区で殺人事件がおこりました
被害者は全員窒息死、犠牲者は全員笑っていたそうです』

ハナがへたれこんだ先にテレビのリモコンがあったのだろう。
テレビの電源がつきテレビからニュースが流れる。
そのニュースに反応したのはデスドレインだった。

ただの殺人事件なら、見向きもしなかっただろう。
大量殺人でも、多少興味を持つ程度だろう。
だがそのニュースはデスドレインの興味を大いに惹いた。

「ヒャハハハハハハハ!全員笑い死にだと!?何の冗談だよ!」

デスドレインのバカ笑いが部屋中に響き渡る。
人が笑い死ぬ。それは恐ろしく異常な状況だった。
デスドレインも多くの人間を殺戮してきたが、笑い死にという死因で殺せたことは一度たりともない。
デスドレインは腹を抱えながら笑い続ける。

「ヒッヒッヒッ……こんなに笑ったのは久しぶりだぜ」

こいつだ!仲間にするならこいつだ!
ある意味かつての仲間だったラインペイジに匹敵にするほどの異常性。
こんな殺し方をする人間が正常なわけがない。
こいつとなら面白おかしくこの街で暴れそうだ。

一方ハナはデスドレインが馬鹿笑いしている様子を黙って見ていた。
何か殺人事件がおこったらしい。
そんなことどうでもいい。
何も考えたくない。
ハナの心は自暴自棄に陥っていた。
もう何もする気がおきない。
ただ眠りたい。
このまま眠り、一生目が覚めなければどれだけ楽だろうか。
失禁して濡れた下着が纏わりつく不快感を気にも留めず、ベッドに向った。

『ジェニファー・N・フォンテーンスタンド』

この音を聞いた瞬間、ハナの動きは止まった。
今何と言った?母の名前が聞こえた気がした。
気のせいだ。さっさと寝よう。

だが、自分の意志とは裏腹にテレビに向って足を運んでいた。
テレビに食いつかんばかりに近づき、テレビから流れる映像を凝視する。

『この事件の犠牲者は20名。ジェニファー・N・フォンテーンスタンドさん……』

ニュースのキャスターが感情を込めず淡々と母の名前を読み上げる。
そして、ジェニファー・N・フォンテーンスタンドの名前は視覚情報として、ハナの目に否が応にも飛び込んでくる。

嘘だ!嘘だ!嘘だ!嘘だ!
だが、自分の中にいるもう一人の自分のようなものが冷静に告げる。
ニュースと報道されたのだから、誤報ということはまず無い

―――ママは死んだ――――

この街にいる母はNPCである。極端なことを言えば母の姿をした人形だ。
悲しむことなど何一つない。
無いはずなのに。母との思い出が次々思い浮かぶ。
母の愛情が、母の温もりが。
その瞳から涙があふれた。
それをきっかけに関を切ったように泣き始めた。

「ママ!ママ!」

喉が張り裂けんばかりに大声で母の名前を叫ぶ。
もしこの場に人がいたら、この声を聞いただけで、ハナの海より深い悲しみが伝わり、胸が締め付けられるような思いだろう。

「え?何?もしかしてお前のママ死んだの?」

だがデスドレインはそんな悲痛な叫びを聞いても何も感じず、泣き叫ぶハナをデスドレインはせせら笑いながら見ている。

「笑いながら死ねるなんて良かったじゃねえか!サンズ・リバーでママも笑ってるぜ!」

部屋にはハナの悲痛な叫びと、デスドレインの邪悪な笑い声がいつまでも響き渡っていた。



【MIDTOWN REDHOOK(ハナの自宅)】

【ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)】
[状態]精神不安定(極大)
[令呪]残り3画
[装備]私服
[道具]特筆事項無し
[所持金]三千円程
[思考・状況]
基本:???
 1.ママ!ママ!
 2.キャスター(デスドレイン)が怖い!怖い!

[備考]
※キャスター(デスドレイン)の凶行を認知しています。
※キャスター(デスドレイン)に対して絶対的な恐怖を抱きました。
強いきっかけが無い限り、デスドレインに令呪を使うことはありません

【キャスター(デスドレイン)@ニンジャスレイヤー】
[状態]魔力消費(極小)、首に刺傷(ほぼ完治)アンコクトン増殖中
[装備]メンポ、ニンジャ装束
[道具]ヘルヘイムの果実、ヤモト・コキの指名手配書、血塗れの新聞紙(12/20発行) 壊れた戦極ドライバー、携帯電話
[思考・状況]
基本:自由!
1.自由を謳歌しつつ、魂喰いと補食によって己の力を蓄える。
2.ライブ会場に乗り込んでシェリル・ノームをサヨナラ&ファックがしたい。
3.笑い死にさせた奴(ジョーカー)を仲間にしたい
4. 一緒に愉しめる仲間が欲しい。いっそハナを教育してみるのも悪くないかもしれない。
5 戦極ドライバーを強奪、または作らせて、ハナに与える
6 この果実を何かに使ってみたい。
7 ガスマスクの男(クロエネン)はいつか殺す。
[備考]
※NPCの魂喰いと殺戮を繰り返し、魔力とアンコクトンを増幅させています。
※ヘルへイムの果実の存在を認識しています。
※アサシン(クロエネン)を視認しました。
※黒影トルーパーの存在を知りました。ベルトで変身することは認識しています。
※ジョーカーに強い興味を持っています。
※18時頃にUPTOWN BAY SIDEに建設されたイベント用ホールでシェリルがライブをするのを知りました。
※スミスの連絡先を知りました。


【GOTHAM CHALICE】

そこはハナが住んでいる家から、二キロメートル離れたとある喫茶店。
とある二人が車でそこに向っていた。

「何で休日に野郎とドライブしなきゃならねえ」

白髪の中年の男が嫌味を言う。

「デスネー」

嫌味を言われた若い男は、テキトウに相槌を打つ。

「全く、最近殺人事件が多すぎるだろ、このままじゃカロウシするぞ」
「デスネー」
「こんだけ殺人現場を巡っていると、ネギトロ喰いたくなるよな」
「デスネー」

彼らはゴッサムシティで働く刑事である。
中年の男はシンゴ・アモ。若い男はタバタ・ヤスキリ。
本来は休日であったが、殺人事件がおこったということで急遽駆り出されていた。

喫茶店についた二人は入口の扉を開け、現場に向かう。
目に飛び込んできたのはツキジめいた光景だった。
臓物や血液が辺り一面に飛散していた。
「一週間の飯はネギトロ丼だな」
「デスネー」
「どう考えても、強盗殺人ではねえな」
「デスネー」

二人は現場を見分する
この惨状では何人死んだか知らないが、全員原型を保っていないだろう。
いや、一人だけ原型を留めている死体があった。
それは金髪の女性であり、その胸は豊満だ。
その女性の衣服は乱れている。

何か手がかりがないか、現場検証を再開する。
するとシンゴは上半身が無く下半身のみの死体が目についた
服装や体つきからして男性だろう。

何気なく財布を抜き取って中味を確認する。
特に金銭やカードが抜き取られているわけではない。
やはり、犯人は強盗の類ではないだろう。
引き続き財布を調べていると、写真が目に留まった。
写っていたのは、大人の女性と少女と大人の男性だった。
おそらく家族写真だろう。全員満面の笑みをうかべている。

「ブッタは寝ているのかね」

家族の写真を財布に入れているぐらいだ、家族のことを愛していたのだろう。
そんな男性がこんな無残に殺される道理がどこにあるのか。
残された家族はどうなるのか。
同じ家庭を持つ身として胸が痛んだ。
免許証があるので、名前を確認する。
汚れか何かで名前は見えないがミドルネームとラストネームは読める

「N・フォンテーンスタンドか」

それは正午を過ぎたころだった。
ハナの家に向っていたデスドレインは偶然自分好みの女性を見つけた。
その女性は喫茶店に入って行った。
黒影トルーパーをインタビューして、ある程度イラつきは解消できたが、まだ完全には治まってはいなかった。
自分の性欲とイラつきを解消するために喫茶店に向かう。
店に入り、目当ての女性以外を殺害。その後女性をサヨナラ&ファック。

それが事の顛末だ。
その女性はハナの父親が経営している英会話教室のスタッフだった。
ハナの父親とその女性は昼食をとるために店に入り、そこで命を絶たれた。

ハナは自分のサーヴァントに父親を殺された。
それは自分のサーヴァントを制御できなかった事が原因ともいえるだろう。
これはハナのインガオホーと言えるかもしれない。

だが待ってほしい。
ハナが呼んだサーヴァント、デスドレイン。
この無軌道異常サーヴァントを制御することは、この聖杯戦争に呼ばれたどのマスターでも無理だろう。
父親の死をハナのインガオホーと言うにはあまりにも酷かもしれない。

【イット・メイ・ビー・シビア・トゥ・セイ・インガオホー】 終り

備考
※この事件はいずれニュースで放送されるかもしれません。




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最終更新:2016年04月07日 19:13