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ヒースとソラ

最終更新:

hachiohicity

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概略:

 ヒースがさまよっている中で遭遇した人。


登場人物:




「こんばんは。俺に何か用?」
その人の前に出ようとするより先に話しかけられてしまい、肩が跳ねる。
「あ、こ、こんばんは……前に出てから姿現そうと思ったんだけど……」
後ろで手を組んで、頬をかく。黒を基調とした服装の長身の男性。ソラと名乗るレネゲイドビーイング。今回話をしてきてほしいと頼まれた相手だった。
その人は私の足元から頭まで見渡すと、「それで、要件は?」とたずねた。
「アンケート取りに来たようには思えないけど」
「いやえっとその……お話がしたくて……でも次からアンケート取りに来ましたって現れるのも面白そうだな……」
ひとりで呟いていたら、「ナンパをするには遅い時間だけどね」と歩いて行かれそうになる。
「あー待って待って! 正確には情報交換、というか?」
「あー、そっち」
なんだお客さんか、と振り返ってくれた。「良かった~」と反射で声が出るが、内心ではお客さん? と首をひねる。この人情報取り扱ってたの? と疑問に思っていたら周りのレネゲイドビーイングたちが「彼情報屋だよ~」と教えてくれた。知らなかった。この人建前も本質もレネゲイドビーイングだって思い込んでたんだけどなんでだ。まぁそれならライブラリアンって情報屋と一緒に行動してたことが多かったのも納得がいく。なんかいまいち掴みにくいし調子が狂う。そんな思考も一瞬のうちで、「ついでに、あわよくば戦闘データも欲しいな」みたいな、と言ってみる。言うのはタダだからね。彼は少し目を見開いて、「因果なもんだね」とデジャヴを感じてるみたいだった。ライブラリアンとの初邂逅もこれか。言葉選びミスったか?
「いいよ、やろうか。ちょっとはできるんでしょ?」
それが吉と出たか凶と出たかはわからないけど、少なくとも話には乗ってくれるらしい。捕食者のそれに変わった視線と煽る台詞に、気分が高揚する。え、全然ちょっと能力見てみたいなにしか思ってなかったんだけど、本気で戦ってみてもいいのこれ。頼まれた仕事だっていうのそっちのけで楽しくなってきちゃった。口角があがる。
「どちらかというと回避逃走向きの能力というか……まぁでもそう言われちゃったら、ちょっとはやらないとね」
「じゃあ決まりだねー」
そう言うと彼はゆっくり自分の手の甲を口元に運んだ。あ、食べてる。どうやらそれで戦闘形態になってるらしい。私は飛んでるのがそれみたいなものだけど、常に飛んでるしな。
「自分の肉っておいしい?」
「まぁまぁかな」
「そうなんだ」
「でも、君の方が美味しそうかな?」
「いやいや、美味しくないよ、多分空気の味がするよ」
会話が途切れて、視線が絡む。動いたのは彼の方が一瞬早かった。
彼の足元から青い炎の獣が燃え上がったと思うと、大きな口をあけてこちらを喰らう。攻撃を見ていて避けられなかった体の大部分を持っていかれて、すぐにレネゲイドの力で蘇生する。なるほどこれが暴食の捕食因子ね。
「ほら、立ちなよ。まだやれるんだろう?」
「もちろん。お味はどうかな?」
「悪くないね」
「なら良かった」
煽りにのって、その場から真空の刃を放つ。避けられてしまいそうだったので突風をもう少し追加するが、捕食因子に打ち消されてしまう。
「あいにく切り裂くような北風には慣れててね」
「あぁ、足りなかった? じゃあ遠慮なくもういっかい!」
捕食因子の作用を見様見真似して、炎を風にまとわせる。
「こんな感じかな!」
「俺の攻撃が……!」
動揺した彼の体は吹っ飛んだ。姿勢を戻した彼の雰囲気が、手合わせのノリだったそれから本気に変わったことに身の危険を感じ取る。彼は姿を縦横無尽に走らせて、気付いたら背後を取られていた。
(あ、これやばいやつだ)
とっさに体を気化させる。透明になった体を青い炎が切り裂いた。
「あっぶな……」
姿を戻す。ほんとに今のを喰らったら危なかった。でも彼は手を見せすぎたことを反省してるらしく、手をグーパーしながらまずったな、と呟いていた。私の気化は別に隠してないしな、この世界じゃ何度もできない技だけど。
「ま、お互いに本気出したってことで」
「まあ、それじゃあ、そういうことで~」
「でもまあもらいすぎなので。これあげます」
「ん? 何これ?」
あらかじめ用意しておいたメモを渡す。彼が探していると聞いたシャルベールの目撃情報である。
「へえ」と口角をあげた彼は、紙を燃やした。なるほど証拠隠滅、その発想あんまりないな。
「まいど~。今後とも、どうぞご贔屓に」
「こちらこそ」、と手を振って裏路地に消えていく彼に一礼して、闇の空気に姿を溶け込ませる。
「あ、名前名乗るの忘れた」
まいっか、とつぶやく。また会う機会があれば、そのときに。




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