←BACK『076:わが友よ冒険者よ

『違うそうじゃないっ』










………
……


 ──ギギギギ…

  ──ギチチチチ……

   ──キギギギギギギギギギッ


 剣──対──チェンソー。
互いの刃が閃光。交錯し、甲高い金属音が火花を散らす──現在進行形の戦闘。
両者とも一歩も引けず、ただ膠着が続くこの均衡状態。
一瞬の気の遅れが命取りになるため、早坂のような『普通』の人間なら、額に汗をにじませながら必死に耐えるのが定石だった。


──ただ、それはあくまで『普通』ならの話に限る。



   ──キギギギギッ──────


「ところで、君は何かアレルギーがあったりするのか?」

「…………は?」

「例えば~…動く鎧魔物アレルギーだとか! いや、金属アレルギーでもいいさ。そういうものを食べて発疹や過呼吸になったりだとか、苦い思い出があるなら……食事は共にできないと思ってね」

「…………………何を、おっしゃっているんですか………ッ」

「さっきも言った通り、俺が作ったこのゼリーは魔物飯なんだ。君がアレルギーになれば病院にいかなきゃいけない。病院にいけばお金がかかる。そして俺は持ち金がない。──」


「──…そうだハルオ!!」

「…………ぁ……………?」


「君はお金を持っているのか? …いやハルオじゃなくても構わない。キスギにオルル、少しばかりカンパできる者はいるだろうか??」

「…ぇっ……」 「……ラ、ライオ………ス…………」

「少しの金で、皆アレルギーを気にせず飯が食えるんだ。だからさ、『ちぇんそー』の君!!」

「え…?」



「君の首輪を是非とも俺に貸してほしい! そして食べよう!! みんなで同じ味を分かち合うんだ!!」

「……………イカれていますね…、…評判通り…………ッ…!!」



 真の『異常者』なアイツとなれば、この状況も日常生活の一ページに過ぎないんだろう。
能天気な顔を崩さずにいるその様子こそが、まさしく『異常』だった。
アイツは『異常』だから、たとえ矢口の腹部がグズグズに染まっていても、オルルが呪いで「着信きてんのか」ってぐらいブルブルブルブル痺れていても、全く気付く様子がなかった。

『異常』に侵されているのはなにも思考回路だけじゃない。
戦闘の最中だというのに、剣を握るのは片手一本。もう一方の手は、大鍋を抱えている。それを当然のようにやってのける二刀流も『異常』。
その問題の鍋──『首輪内魔物のうなぎゼリー風』はまだ冷め切ってないのか、ミトンをはめて持っている。
そこまでして意味もなく料理を持ち歩く執念も『異常』。

あまりに『異常』な光景ゆえ、私はついスマホでイギリス料理『うなぎゼリー』を調べてしまったけど、ヒットした料理画像も『異常』そのもの。
うなぎをぶつ切りにしてゼリーにしたという、料理文化を徹底的に凌辱したレシピも『異常』。
言葉を失った私は、オルルと矢口にその画像を見せたけども、両名の反応もシンプルに一言──『異常』。
元から惨状である本家うなぎゼリー。それを魔物で模倣したライオスゼリーなど、想像するだけで『異常』極まりなかった。


今は閉ざされたままの鍋内。
中に潜む、この世を全否定する『異常な』物体を思い、肝を冷やしていた折、


──私は気付いた。



 ──ギギギギ…

  ──ギチチチチ……

   ──キギギギギギギギギギッ


「…ていうか、あんだけ悪口大会しておいて結局仲間だったんじゃないですか、矢口さん。残ったライオス(コイツ)に奇襲作戦とは……卑怯も甚だしいッ………」

「いっ…ち、違う!!! ぁ、あの野郎は本当に…、」

「そうさ違うよ。ちぇん子くん」

「ちぇん子……」 「…………早坂ッ!! 早坂ですッ…」

「あぁすまないハヤサカ。彼らは俺の仲間ではない。このホテルでたまたま出会った同士の他人様さ!」

「他人…………? …見知らぬ人間のために、貴方はわざわざ割りこんできたと………?」

「そうと言えばそう。そうじゃないと言えば…わからない」

「……分からない…?」

「ただ、相席食堂って理屈は分かるだろう? 見知らぬ者同士でも食卓を囲めば、不思議と連帯感が生まれる。だから俺は鍋を持ってきたんだ」



 ──『異常』──。
普通に考えれば、『異常』だった。

さっきまで絶望の淵に座り込んでいて、今もなお死の危機はある状況だというのに、
──私は、私たち三人はスマホを見るという『異常』な行動をとっていた。

まるでライオスの能天気さが伝染したかのように、余裕を装えてしまう『異常』。


「…………そうとなればライオスさん。……少し、簡単なお話をしましょう」

「ん。魔物の話かい? …言っておくが、俺は魔物の話になるとちょっぴりうるさくな…、」

「取引です」


「…ぁあ…?」 「………なによ、取引って………」


 ──余裕(異常)──。
ただ、それは考えれば当然の『異常』だった。

全身を震わせながらチェンソーを押し込み続ける早坂に対し、ライオスは涼しい顔で片手だけで刃を受け止めている。
──言わずもがな、気狂いじみた鍋を片手にで。
『剣+鍋』の二刀流を難なくこなすその姿は、拮抗どころか圧倒的な力の差を十分示す。
力の差はまるで、カマキリと剣道師範との対決。

『異常』な戦闘光景に他ならなかった。



 ──ギギギギ…

  ──ギチチチチ……


「…貴方の実力、剣術は重々理解しました。……ただ、こうも拮抗だけで時間を経るのも生産性がありません。──」

「──そこでです。私と手を組みませんか?──」

「────そこの『仲間じゃない』子たちを始末、というのは」


「……なんだって?」

「は……?」 「え、ちょ…ちょっと………」


「『他人』なんですよね? …罪悪感や自責の念は感じないでしょうに」

「…………………」

「特に貴方のような人間なら尚更…ね?」



「………。──」

「──……そうだな…ハヤサカ」


「いや…ぃ、いや“そうだな”じゃないわよ………!! ラ、ライオス……!!」

「いいぃっ……ラ、ライオス……テ…メェ………ッ!!!!」



 異常な人間は、現れるだけで場の空気を変える──凄まじいエナジーを持つ。
それは良くも悪くも。良くも悪くもなエナジー。

楽しい場面に出現したら瞬間フリーズで緊張感が走り、逆に緊張感走る絶望下に現れたらすべてがぶち壊しになる。
あれほど押し潰されそうだった圧迫感も、
恐怖も、心臓の高鳴りも。
すべてを津波のように洗い流してしまう。


「………すまないハルオ。まずは君と勝負だ。フライパンの借りもあるしな」


「……ぁ、あぁあ………ッ?! …て、テメー……!!?」

「ラ、ライオスッ…………!! …てか、フライパンは私じゃ……」

「いやフライパンもヘッタクレもねぇっつーの来生!! ……いっっ…ゲホゲホ……………。──」

「ふざけんじゃねーぞ…ッ!!!! テメェエエエエ…、」

「君は俺のことを好きになれるか。──」

「………あ?」


「シュローに教えてもらったんだが、どうやら俺には、無自覚に人を傷つける短所があるらしい。……君らも、俺を良くない目で見てる可能性が、…なくはないだろう?」

「…………ら、ライオス……。………き、貴様は………」

「だからこそだよ。オルルにハルオ、そしてキスギ」

「…………え?」



「俺は試したい。君を、君たち全員をより好きになれるか。守り抜けるか。──」


「──そして君たちも、俺のことを好きになれるか。──」



「──これは『我慢勝負』だ、みんな」



「………………ライオス………」 「…………え」


「………勝…負………」



思えば、いるだけで七階が『魔』扱いされていた時から、その兆候は見えていた。
異常者は、存在するだけで建物も、全体の空気も、対峙相手も、ゲーム(殺し合い)の輪郭も。
──そして私たちをも、異常な世界観の住民にさせる。
──『普通じゃない』程度の私をも、異常という名のピースにはめこんでくる。


────いや、はめこんで『くれた』。



 ──ギギギギ…

  ──ギチチチチ……

   ──キギギギギギギギギギッ


「………交渉決裂……ですか…。──」

「──…言っておきますがライオスさん、貴方は自分のことを優しいと自惚れてるんでしょうけど、…断じて善人ではないですから」

「………ハヤサカ」

「なにせ貴方のその行動は本心じゃない。薄っぺらい、心にはない偽善。偽善なんですよ。…………優しい人間を装って何になるというんですか」

「はは、的は射ているな。それもシュローに言われたよ。お前からは本心が分からないって……、」

「はいはい貴方はいつも受け売りですよね。…だから私は気に食わない。………だから私は気が収まらないッ……。──」


「──手元が緩んでいますよッ!! ライオスッッッ!!!!」

「おっと…!」


 ──ブォオンッ


  ──ギュィィィィイイイイイイイイイイイイィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッ


「あっ!!」


常人が逆立ちしても届くことができない領域。
それはまさに天才か『異常者』かの二者択一。
文豪に奇人伝説が多いことを鑑みれば──『バカと天才は紙一重』ではなく、『天才と気狂いは紙一重』がより正鵠を射ているのかもしれない。


 気を抜けばコメディかと錯覚するような、異常な殺伐間の決闘。
早坂は隙だらけの胴体目掛けて、鋭く足を伸ばし、──結果、ライオスは大きくバランスを崩した。
その身体が揺らいだ瞬間を逃さず、早坂はチェンソーを振りかぶる。
唸りを上げる刃。一直線なその狙いは首筋に向けてだった。


「ライオスッ!!!!!!」


 ──ギュィィィィイイイイイイイイイイイイィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッ


「これでッ……、終わりで…、」

「そうだハヤサカ。君は『やさしい味』、好きかい?」


 ──ギンッ……


「え……」



ただ、斬首一回で終わるようでは異常者の称号が泣いて凹むことだろう。
チェンソーの回転刃が首筋に届く、──裂傷よりも先に、閃く剣。
ライオスは常軌を逸した速さでその刃を受け止めていた。



 ──ギギギギ…

  ──ギチチチチ……


「というのも、首輪型魔物は滋養強壮が豊富でね。リスペクトを込めて俺はあえて薄味、つまりやさしい味にしているのさ。君は優しい味派かい? それともパンチが効いた味が好みなのか?」

「な、…………なん………、」

「……まぁどっちでもいいか。ゼリーが通好みの味であることは変わりないからね。…身体には優しい料理だけども」



 ──ギンッッ


“あ…”────短く漏れた早坂の声が、勝負の行く末を示していた。
全身の力を込めたライオスの剣が、チェンソーを勢いのままに弾き返す。



「いいかハヤサカ。やさしい味を食らう。一方で毒も食らう」


「……く、クッ……!!──」


「両方を共に美味いと感じ、血肉に変える度量こそが、『食事』には。──」



宙を舞った後、大爆笑のような機械音と共に地面へ転がるチェンソー。
当然、早坂は慌てて唯一の武器を拾うという、普通な人間によるごく普通な行動をとり始めたが、
──時、すでに遅し。



「あ…っ」

「あ…!!」 「あっ!!」 「…!!!」



彼女の眉間寸前に、不敵な光を宿す剣先が輝いていた──。





「────そして『この世』には肝要なのさ」







「……………………ま………参り…まし……………、た」








………
……

【首輪うなぎゼリー】

  • 首輪魔物──1体
  • 水─────適量
  • 酢─────少量
  • 塩─────ひとつまみ
  • ゼラチン──少々

1: 首輪から魔物を取り出し、ぶつ切りにする。
2: 水を張った鍋に魔物を入れ、強火で煮立てる。
3: 体液が溶け出し赤黒い煮汁になったら火を止め、冷却する。
4: 自然に固まりゼリー状になったら完成。

[エネルギー]★★★
[タンパク質]★★★
[脂   質]★★★★
[炭水化物 ]
[カルシウム]★★
[鉄   分]★★★★★★
[ビタミンA]★★★★★
[ビタミンB2]★★
[ビタミンC]



「……思ったよりヤベェのが出てきたな」

「…どうすんのよ、これ」


「どうするも何も……食べないのかい? ほら、ハルオの好きなスプラッターハウスにもこんなの出てきただろ?」

「うぷっ!! …ただでさえ腹痛くて食えねぇっつーのに余計なこというなアホ!!!──」

「──…いやいやいや、待て!!? な…なんでてめぇーがスプラッターハウスを知ってんだよ!?? …ま、まさか……プレイしたのか!!? 室内にソフトがあったつうのかおい!!!?」

「ああ。エンディングで泣きそうになったよ。…俺は恐らくゲーマーの才能があるのかもな」

「黙れ!!! てめぇみたいな異常者があの名作ホラーゲームを遊んでんじゃねえぇぇ~~~!!!!!!! …うっ、いででで……」

「あぁ!! もう矢口!! 傷口開くから暴れるんじゃないわよもう~~~!!!!」

「大丈夫だオルル。たとえ死んでも、マルシルの黒魔術かABBAで一件落着さ!!」

「「黙れ悪魔!!!!」」




「はぁ……。…あほらし」


 早坂が去ってから暫く経つ。
私たちはあの『怒』をプレイした部屋で、あの半端じゃない鍋に唖然とさせられている。
…で、そのゼリーだけど、見た目は圧縮鍋で煮込んだ解体死体の一部。
中に白濁した骨や歯が透けていて、トイレにいるかのような半端じゃない香りが室内を満たしてくれる。

…言うまでもない。私たち三人は、電車で隣に変な人が座ったかのよな最悪の空気感をまとっていた。
そんな中、ただ一人──ライオスだけは空気を読むことなく、嬉々と巨大ゼリーを切り分けていく。
──彼の切り分け捌きときたら、『ケーキを等分できない非行少年』を思わず連想させてくれる。


……死にたくなる異常な料理で死にたくなるくらい狂っていて死ぬほど死にたくない料理。
私はこの異様な宴に、窒息しそうなほどの嫌悪と不安を抱えていた。そしてチームライオスの居心地の悪さがきつくて仕方なかった。

だから私は、部屋の隅で一人固まって座っていた。


「あぁ~もう、二人とも落ち着くんだ! ………あっ、そうだキスギ」

「……え。………な、何よ…」

「…言い忘れてたけど。俺、君のことが特別好きなんだ!」


「は?」 「…は!? キモッ!!!」

「…はぁあああああああああああ????????!!!!!!!!!!」


「もちろん恋愛感情ではない!! 下世話な話をするつもりじゃないぞ! …ただ君って、シュローにどことなく似ている気がするんだよなぁ。どうだい? 食事を終えたら、俺と一緒に剣を交えようじゃないか!」

「絶対しないし絶対食べないし絶対シュローに似てるって誉め言葉じゃないしそもそも『こういうホテル』で下世話とか言うんじゃないわよ!!!!!!!!???」

「…高望みだな!!」

「なにがっ!??」

「いや流石だぜ来生。やっぱライオスくん係はお前じゃなきゃ務まんねーわ」

「カスがっ!!!」

「…素晴らしいぞ来生さん。というわけで、わたしは矢口と修行(ゲーム)するから、料理は全部頼んだぞ」

「あくまっ!!?──」


「──はぁ………。──」



 …ほんと、私は一体何をしているんだろう。
殺し合いに乗って、なんとなくいっぱい殺して、後先考えずブラブラ──が、バス車内で築き上げた基本スタンスだったのに。
いつの間にやら仲間というパズルで括られ、『異常組』という包装の元、店舗に出荷されている。



「──…………まったく…。もう~…」

「はははは! キスギ、楽しいなぁ楽しいなぁぁァアアアアアア!!!!!」

「いや何そのテンションの壊れっぷり!!? こっわ!!!??」


だから、私は色々諦めて、このチーム唯一の『ツッコミ普通人間ポジション』に落ち着こうと。
現在決意に至る。




【1日目/B2/ラブホテル/7F/一室/AM.05:40】
【ライオスさん隊】
【ライオス・トーデン@ダンジョン飯】
【状態】健康、首輪解除
【装備】鋼の剣『ケン助』@ダンジョン飯
【道具】クリスマスプレゼント・電マ@わたモテ
【思考】基本:【対主催】
1:来生、ハルオ、オルルを守る。
2:一旦は食事だ!
3:主催者を倒し、ゲームを終わらせる。
4:来生が特に気に入っている。

【来生@空が灰色だから】
【状態】疲労(軽)、首輪解除
【装備】アーミーナイフ@大東京ビンマニュ
【道具】なし
【思考】基本:【静観】
1:ライオスさん隊のツッコミポジションを担う。
2:↑この異常な三人組↓と一応は行動。
3:…ほんとは私、異常なのにぃ………。
4:とりあえず目の前のゲテモノをどう対処し如何に巧妙に捨てることができるか塾考。

【矢口ハルオ@HI SCORE GIRL】
【状態】疲労(軽)、首輪解除、頬に切り傷(軽)、腹部裂傷(軽)、ダルシム@スト2技ラーニング
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:【静観】
1:ライオスの野郎を見直した。
2:↑この異常な三人組↓と行動。
3:大野、ガイルに再開する。
4:…オルルのやつ、ゲームど下手だから対戦おもんねーんだよなぁ。
5:あ、言い忘れてたけど腹の傷は俺のヨガファイアーで一応なんとかしたからな? …クソ熱ぃクソ痛ぇけど。

【オルル・ルーヴィンス@悪魔のメムメムちゃん】
【状態】疲労(軽)、首輪解除、右手裂傷(中/包帯処置)、全身の痺れ(軽)
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:【静観】
1:ライオス……悪魔ではない…ってわけなの?
2:↑この異常な三人組↑と行動。
3:わたしを子ども扱いしてくる矢口が特に異常だと思うっ!!!
4:………早坂……………っ。






………
……


 朝焼け。潮風が私の髪を撫でてくる。
空と海のブルーが混ざり合う、心地のいい浜辺。

──を高台から眺める、ラブホ外放置されプレイ中の私。
内笑美莉。


「……遅いっ、あまりにも遅すぎる……早坂…………!──」


「──…この遅さは…………グロいっ!!!」


 少し衝撃的な告白をしようと思う。
実のところ、私は、連れである早坂愛にめちゃくちゃストーキングされているのだ。
出会いはシャワー室での些細なもつれ。
裸体が絡み合ったあの瞬間から、早坂の私を見る目は、とてつもなく異様になってしまった。

断っておく。私は悪いがレ●ではない。いや、言いくるめたい。
早坂とは違って、私は女性の身体に特別な興味があるわけではない。
なのに早坂はじろじろ、いやらしい視線を向け続ける。私を眼差しで舐め回すように凝視してくる。

……かの黒木を連想させるような、じわりとした『グロさ』が、ヤツにはあったわけ………。


「……そうそうここはラブホテル。…かぐやを見つけた早坂が欲求を抑えきれるはずもなく。絶対お遊びになってるはずだ………!!──」




……
………

かぐやは頬を染めて、いつもの冷静さをどこかへ置き忘れたように視線を泳がせる。


「……その、早坂さ。……近いうちに私、会長と………キ、キスを…するじゃない…?」

「結論ありきでかましてきますね、かぐや様」

「……だから、ハヤサカ。練習として……その………。──キスを……してくれない…?///」

「はあ。………はぁああっ!?」


早坂は眉をひそめ、信じられないものを見るようにかぐやを見つめた。
ぎこちなく指を組み、視線を逸らすかぐや。
その頬は紅潮し、耳まで赤い。


「い、いいでしょう…? 会長との本番で失敗するわけには……いかないもの」

「…………バカ担当は書記ちゃんで十分なんですけど。……どうします? 明日学校はお休みになって精神科にでも…、」

「もうっ!! バカァ///」


──ちゅっ…


「……えっ?///」

「あくまで…練習なんだから……///。ん、ちゅ……んん……ん………」

「………か、かぐ…やさ………。──…あっ!!」


早坂は太もも付近の違和感で、喘ぎに似た驚声をあげる。
かぐやの細い指が、早坂のスカートをかきあげ魅惑の領域まで迫ってきたのだ。
そうかと思えば、たわわな胸元へ、優しく手が包み込まれる。

早坂は言いたかった。

それ、必要ですか?
胸とかを触ったりする意味ありますか?!
相手、男なんですよ!?? ──と。


………
……


「……それでも早坂は文句を言えなかった。言えるわけがなかった。…何故? それは主従関係が縛ったわけじゃない。……かぐやの甘くとろける香りに、脳そのものを麻痺させられていたからだ!!!──」


「──あぁグロいグロいグロいグロいグロい………。私を平然と差し置いて不倫まがいをする早坂がグロい。私に見せつけるかのようにイチャラブし始めるレ●カップルがグロい……。──」



……早坂……あんたがそうくるんなら……、
私だってもう容赦しないからね……!!!
ちょっと顔いいからって調子乗っちゃって……もうっ!!

………早坂愛という女は、ほんとに…………っ──


「──グロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロいグロい!!!!!!!!!!!」

「──グロテスク・愛・ラブ・ユー!!! グロッキンロールフィーバー!!!!!! 」



「違うっ!!! そうじゃないっ!!!!!!」



【#Episode 077】



【早坂愛@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 第一回放送通過】
【うっちー@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 第一回放送通過】



【1日目/B2/ラブホテル前/AM.04:18】
【早坂愛@かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~】
【状態】精神不安定(中)、罪悪感(大)
【装備】チェンソー
【道具】なし
【思考】基本:【奉仕型マーダー→対象︰四宮かぐや】
1:かぐや様、古見硝子以外の皆殺し。(主催者の利根川含む)
※:マーダー側の参加者とは協力したい。(→同盟:山井恋)
2:………………私は、どうすれば。
3:かぐや様…………。

【うっちー@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
【状態】健康
【装備】電動キックボード@らーめん再遊記
【道具】割り箸
【思考】基本:【静観】
1:早坂についていく。
2:黒木が『キモい』なら、早坂は『グロい』!! グロティカルパレード!!! グーロン・マスク!!!!
3:……てんやわんやで、早坂からいろいろ聞いたけど、……結構同情。
4:ていうか、あのハゲメガネ嘘喋ったってこと!? 超キモッ!!!
5:ライオスって人に要警戒。……キモさの欠片もない異常者らしい……。(; ' o ' )ゴクリッ…。




前回 キャラ 次回
076:『わが友よ冒険者よ 078:『洋服の青山
076:『わが友よ冒険者よ 来生
076:『わが友よ冒険者よ ライオス
076:『わが友よ冒険者よ ハルオ
076:『わが友よ冒険者よ オルル
076:『わが友よ冒険者よ 早坂
061:『らぁめん再遊記 第二話~情報なんてウソ食らえ!~ うっちー
最終更新:2025年09月25日 00:30
添付ファイル